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彼女を作るための10の方法  作者: ちゃんこ鍋之進
4/11

自己紹介

「いいえ、間違えてなんていませんよ。」


 その女性は俺の質問に笑いながら答える。

 というか、最初からずっと笑顔だ。

 素敵な笑顔だな。

 なんというか満面の笑みでじゃなく、優しく笑いかけてくれている感じで。

 まさに微笑みという表現がぴったりだな。

 それにどこかで聞いたことのあるような声だ。


 待て、そんなことを考えている場合じゃないぞ。

 なんで、俺の部屋に女性が居るんだ。

 泥棒か? いや、泥棒だったら俺と鉢合わせた瞬間に襲うなり、逃げるなりするはずだ。

 だとすると、保険のセールスか何かか?

 いや、勝手に侵入するわけがない。

 となれば、実家を出てから5年くらい会っていない、妹の柚葉ゆずはか?

 柚葉はもうすぐ二十歳だ。

 その年頃の女の子なら5年間もあれば見違えるように成長していてもおしくないな、最後に会ったときには化粧もしていなかったし。

 そうか、そうだったな、実家には一応、何かあったときのために、俺の部屋の合鍵は置いていたから、それを使って入ってきたんだな。

 それなら辻褄が会う、そうだ、そうに違いない。


「柚葉か、そうかそうか、久しぶりだな。

 しばらく会わない間に大きくなったなぁ、お兄ちゃん最初、誰だかわからなかったぞ。」


 柚葉だろ?柚葉であってくれ!

 俺は縋るような気持ちで、目の前の柚葉であろう女性に言葉を返した。


「柚葉さんですか? いいえ、違いますよ。」


 女性は俺の前に現れた時からの絵がのまま答える。


 デスヨネー

 いくら5年間会っていないからとはいえ、目の前の女性が妹の柚葉の筈がない。

 妹の柚葉は妹である。

 当たり前のことだと思うだろ?

 そう当たり前なんだ、そして兄妹だから当たり前の様に、俺と柚葉は容姿がそっくりなんだ……

 俺の見た目は、年齢=いない歴

 この事実で推して知るべし。

 柚葉はメスゴリラ界隈ならトップアイドルなれるだろう。


 そんな訳で、目の前のこの素敵な女性が柚葉である筈がない。


「こんなかわいい子が妹のはずがない!」


 心の中でリトル俺が叫んでいる。


 俺の前に立っているこの女性は柚葉とは似てもに似つかない。

 二重瞼でパッチリとした瞳。

 大き過ぎず、小さな過ぎず、真っ直ぐな鼻筋。

 薄く、うっすらピンク色な唇。

 髪は肩甲骨くらいまであるだろうか、しっとりとツヤツヤしている。

 スラリと伸びた脚に、華奢なスタイル、モデル体型というやつだな。


 とても美しい。

 正直言って好みだ。

[僕の考えた理想のヒロイン] である。


 そんなことばかり考えていても話が進まない。

 知り合いだったら失礼だが、直球で聞くしか手段はもうないだろう。


「あの、あなたはどちら様ですか?」


 勇気を出して聞いた。

 少し声が掠れた。

 風呂上がりなのと緊張で喉がもうカラカラだ。


「これは自己紹介が遅れました、私は、望美のぞみ かなうと申します。」


 望美 叶?

 知り合いにそんな名前の女性はいなかった筈だ。

 記憶を辿ってみるがやっぱりそんな名前の女性と仕事をしたことはない。

 他のシーンで知り合ったわけでもない。

 なにしろ俺には、仕事関係以外で女性との交流はないからな。


「あなたは?」


 望美さんとやらが俺に問い掛ける。

 この話の流れであなたは? とは俺の名前を聞いているんだろう。

 そうなると新な疑問が湧いてはくる。

 この望美さんは、俺の名前を知らない、つまり俺が誰なのか知らずにここに居たということだ。

 俺が誰なのかわからない?

 わからないのにここにいる?

 望美さんがこの部屋に居た理由、この部屋に留まっている目的がますますわからなくなってくる。


「ぼ、僕は、池内いけうち 照男てるお 会社員です。」


 会社員は必要なかったかな。

 そう思いながら、更に続けて


「その、望美さんは何者なんです? 何しにここへ?」


 何者なんて言葉、人生で初めて使ったぞ。


「池内さん、あなたは今日、本を買いましたね。」


「ああ、あのなべしっ、じゃなくて、あの How to 本。」


 なぜ望美さんがそんなこと知っているのだろう。

 ましてやそうだからといって何の関係があるのか。


「はい!」

 そう言いながら、望美さんは、今までの微笑みから今度は満面の笑みを見せてくれた。


 可憐だ。

 そんなこと考える時じゃない。


「確かに本は買ったけど、それと望美さんとどういった関係が?」


 この目の前の素敵な女性と、さっき買った眉唾物の

 How to 本。

 全く、関連性が見えてこない。


 ん?

 待てよ。

 さっきから望美さんの声、どこかで聞いたことがあると思っていたけど思い出したぞ。

 古本屋で How to 本を手に取った時に聞こえてきた声じゃないか?

 そうだ! この理想的な声はそうに違いない。


 だとすると、あの古本屋で俺を見かけてここまで付いてこられたということか?

 まさか、ストーカー?


 そんな考えが過り、望美さんに恐怖心を抱きそうになった瞬間に望美さんが口を開く。


「私は、あの本の霊なんです。」


 衝撃の事実。


「はーん、成る程ね、付いてこられたんじゃなくて、憑いてこられたってわけね。

 一本取られたな、こりゃ、アハハ。」


 なんてアハ体験♪

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