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詐欺師ではございませぬ

 悪いことをしている訳でもないのに、自分の行動を他人が見たら怪しむんじゃないかと、その憶測が自分を怯えさせた。小心者とはこういうものである。ありがちな、車の運転中に、パトカーを発見した時もやっぱり勝手にドキドキしてしまう。

 さて、番号は違っていたことが分かった。さすがに親父も、モロのままではまずいと思ったのだろうな。さすれば、親父の性格を読み切って、どう変えたかを推察するのである。お袋に教えてある関連付けた電話番号というキーワードを無視して、全く違う番号を加えることはないだろう。ということは配列を変えたのではないか、それも単純な入れ替えである。

『これはどうだ?』

# ピッ、ピッ、ピッ ~残高・・・~ ピッ‘カードを入れて・・・’

# シュルル ~暗証番号・・~

 今度は、予測した番号を押していく。

# ピッ ピッ ピッ ピッ

『・・・・』

 結果は、またガビョーンである。

 そして敗北兵は自陣に帰還して、カミさんに結果報告をしていた。

「エエ?、そうなんだ、違ってたのね。」

 やはり眠いと言っていたお袋は、さっさと布団に戻っていた。

「もう一回試そうとしたらさ、~一日の入力回数を越えましたので、本日はお取り扱い出来ません~になっちゃったよ。暗証番号の入力回数の制限って、そんなに少ないんだ。」

「アハハ、知らなかったの?、そんなの常識よ。」

「ふ、ふん、すみませんでしたね、社会常識が欠落してて。」

「そんなすねることないじゃない、じゃあ、銀行に教えてもらわないといけないわね。」

「ああ、お袋を問い詰めても仕方ないし、だから銀行に電話したらさ、“所定の様式をもってご照会願います。”、だって、それも結構きつい調子で言われてさ。」

「きつい調子?」

「ああ、“申請は必ずご本人の記入作成でお願いします、必ずご本人です。”、てね。」

「アハハハ、しかたないじゃない。これだけオレオレ詐欺の被害が出てて社会問題になってるんだもんね。しかも息子と名乗る男から掛かってくれば、そりゃまあ疑われるわよ。」

「私目は、息子でありますが、詐欺師ではございませぬ。」


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