恩着せがましい
『しかたねえか。』
仕方がないが愚かなアイツの頭の中を確かめるのかと思いつつ、着信履歴に返信を掛けた。
# ツルルルル・・・
℡「はい、大島です。」「あ、俺だけど。」
℡「あんた、なかなか出ないから、心配してたんだよ。お母さんから電話があって、大変なことになっているんだよ、知らないでしょう。お父さんが入院したんだよ、教えてあげないといけないと思ってね。」
でた、このいつもの勿体振った言い方。コイツは、人に何かをするときには、必ず恩着せがましいのである。昔、お袋からとんでもない事を言われたことがある。親父がまだ健状な時であったが、老後の時に備えて、この女の家へ来ないかと勧められたらしい。俺もいつかは俺の所へ来ないかと言っていたが、お袋は俺の嫁さんに気を遣っていたのか、その時になったらと話をそらしていた。その時、お袋からいきなり電話が掛かってきた。
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℡「お母さんは行っても良いと思っているんだけど、どうだろうね?、あんた、どう思う?」
アイツからそんな勧めが出たことにちょっと驚いたが、お袋がアイツの家の方が良いと決めたのなら、仕方が無いと思って賛同の返事をした。すると、お袋がこんなことを言い出した。
℡「姉ちゃんがね、その時は、あんたが大島さんに頭を下げないといけないからって言ってるんだけど、どう思うね?」
℡「な、なんで、俺がそんなことをしないといけないんだよ、勝手にアイツが来いって言ってるんだろ。俺が頼んでいるわけでもないのに、アイツの旦那に頭を下げるなんて有り得ないよ。」
℡「なんだろうけど、あの娘がそう言うんだよ。」
俺は、ふざけるなと思っていた。多分、自分の旦那を承諾させるために考えたクソ戦略であろう、でももしかすると、あの旦那がそう言ってきたのかとも、チラッと頭によぎった。というのもこの女の子供が、私立の高校に入るのに保証人が必要だということで、なんとお袋が俺になってくれと頼んできたことがあったからだ。自分の子供のことなのに、何でお袋にやらせるんだと思っていた。だいたいその保証人の内容がどいうものかも説明もしないで、母親を使って頼もうとする感覚は全く理解できない。更に扶養者である旦那が出て来ないことに、不快感があった。結局、子供の面倒をみてやろうとするお袋の献身さに負けて、判をついてしまったのであるが。いずれにしろ、人道的に筋を通さない常識外れの奴等に、何故こちらが気を使わなければならないのか。