それで事情を
℡“芦川様で宜しいでしょうか、安全センターの川村と申します、お母様のことでお伝えしたいことがあります、折り返しいただきたいのでお願いいたします。”
急いで返信の操作をする。
℡「ツルルルル・・・」
落ち着くこと、今はそれが一番大切と頭に浮かべていた。
『落ち着け!』
℡「はい、こちらはいきいき安全センターです。」
℡「す、すみません、芦川と申しますが、先ほどそちらの川村様からお電話をいただき、私の母のことでということなので、折り返ししました。」
℡「少々お待ち下さい。」
このいっときの待ちにさえ、抑えようとしている気持ちが煽られている。
℡「もしもし川村です、西山の方から引継を受けました。昨日の状況から判断しまして、本日もお母様の様子を確認させていただいております。」
おります、ということは、何かあったのだろう。
℡「それで事情を説明しますと、午前中から幾度もお電話しておりますが、お出になられません。お宅にも巡回職員がお伺いして、呼び鈴を押しておりますが、やはり反応されませんので、非常に心配しております。失礼ですがお近くのご親戚の方などに、家の鍵を預けておられませんでしょうか?」
やはり再び具合が悪くなったようである。
℡「いえ、鍵を預けていることはしていません。こんな時、どうしたら良いでしょうか?救急車を呼んだ方が良いでしょうか?」
℡「そうですね、ただ、お母様のご様子がどうなのか確かめられておりませんので、遠方の芦川様が掛けられても出動は難しいかもしれません。」
℡「そうですか、これから私も母に電話してみます。出てくれれば、なんとかなるんですよね?」
もう手詰まりになっている俺である。それでもそう答えるしかなかった。
# ・・・・
一瞬、言葉のやり取りが止まってしまった。つまり、安全センターも俺と同じくなんだろうか。




