お前
ということで、カミさんもオーケーを出したのである。俺は、再び電話の子機をもって、番号を押した。
℡「# ツルルルル・・・はい、大野ですけど。」
℡「芦川だけど、旦那を呼んでくれる。」
℡「え、あ、ちょっと待って。」
すると、電話の奥から、”おう、分かった”、という声が聞こえている。
℡「もしもし、電話を替わったが。」
よし、今度は俺が先制攻撃する番だ。
℡「先ほどは、色々とお話を聞かせていただきました。」
℡「おう、そうだな。」
℡「そこで、一つお伺いしたいことがあるのですが。」
℡「何だ。」
℡「貴方は、父母の家に泊まられたことがありますか。」
℡「いいや、どういうことだ?」
℡「それでは母と直に家で話をしたことがないということですね。」
℡「何が言いたいんだ。」
℡「いえ、それだけ聞けば十分です。母とは、何かを親身になって話されるようなことがなかったということが分かれば結構です。」
℡「なに、お、お前ええ。」
どうだ、ぐうの音も出ないだろう。お袋に認知症だから医者に行けなんてよく言ったもんだ、言えない立場を知らしめさせたかったんだよってのが分かっただろう。
℡「今、何て言われましたか?、僕のことを “お前 ”、って聞こえましたが。」
℡「ああ、言ったさ、聞き分けが無いからな。」
℡「失礼ですけど、貴方からお前って言われる筋合はありません、撤回して頂けますか。」
℡「なにを、お母さんを心配して言ってやってるのに、何で言うことを聞かないんだ。言い方は丁寧だが、俺に刃向かってばかりだからな。」
℡「お前って言われる筋合はないって言ってるんですけど、それに、母と話をしたことが無いのによくそんなことが言えますね。」
℡「俺の言うことは、正しいんだよ。この地位にいるんだからな、だから分かるんだよ。」




