お前の姉の配偶者?
℡「ああ、大島だけどね。」
前にも述べたが、人間の素養というものは、声にも現れるものである。自分から掛けてくれと頼んだ割には、どういう訳か話してやろうじゃないかという偉ぶった口調なのである。
℡「話があると留守電に入っていたので、掛けたんですけど、どうして掛けてきたんですか?」
実は、この言い方がまずかったようなのである。普通話があるというなら、まず相手の考えを聞いてみるのが本道であるはずで、“君の話も聞きたいと思ってね。”ということを予測して言ったのであるが、最初の横柄な口調を読み切れていなかった。
℡「どうして掛けてきたかって?君は、お母さんのことをどう考えているんのだね、お母さんの今の病気のことは分かっているのか?」
℡「はあ、昔から患っている心臓と最近の糖尿病のことでしょうか?」
℡「そうじゃない、認知症が出ているじゃないか。それが分かっているのに何故何もしようとしないのかってことだよ。医者に見せなきゃならないじゃないか。」
℡「はあ?主治医の先生からは、認知症だとは伺っておりませんが。だいぶ生活がだらし無くなってきているので、私が行った時は、掃除をしてあげないと思っておりますが。」
℡「病院に行く途中で、道端でおしっこをすることがあるようじゃないか、異常なことだと思わないのか?私なら医者に連れていくべきだ、何故しないんだね?」
失禁のことは十分に分かっている。主治医に相談して、年を取って排泄機能が衰えてきているのは当然で、本人もそれが分かっているので、痴呆が出ている訳ではないと聞いている。やっぱりコイツは、クソ女から泣いて頼まれて、俺がなんとかしてやろうなんて乗り出してきたのである。・・・馬鹿馬鹿しい、お前にお袋の何が分かっているというのだ。それよりも、帰省した時ぐらい、お袋をタクシーで連れていくこともやらないクソ女のしみったれぶりをただした方が良いんじゃないのか。
℡「これまで話を聞かせていただきました。申し訳ありませんが、僕は貴方の部下でも何でもありません、そのような命令口調で言われても、僕には何も響いて来ないです。」
℡「俺はお前の姉の配偶者として言ってるんだぞ、分かっているんだろうな。」




