表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/184

甘やかされた子供

 この時俺は、表面的な意味にしか捉らえていなかった。今考えるとこの言葉は、先々の状況を心配した深い憂慮だったのである。というのも、昔からあの女の感覚や行動は、理解出来ないと悟っていたからである。コイツはいつも自分の都合を第一に考えていること、そのために明らかな嘘をつくのも辞さないこと、いやなことは他人まかせにすること、クソと言われる奴は色々いるが、この女もこの様なことをする典型的なクソなのである。そのような奴だと察して、更にその不憫さを憐れんで、懸命に庇おうとする。自立させることが本人にとって一番良いのであるが、残念ながら出来の悪い子供ほど世話をかけたくなるのが親なのである。

 念のためお袋に、何故この女が激怒したのかを確かめた。

℡「最近おしっこが近くなってね。」

 どうも我慢できなくなって、行き道の途中でそそうしてしまったらしい。

℡「そうかあ、またバスで行ったのか?」

 俺は全く驚かなかった。確かに片田舎の地域とはいえ、道端の陰で用を足すのは常識外れである。しかし、もう年老いた身体で遠い病院の見舞いをすること、体調に影響する労力を使うことは分かっていたし、聞くところだと、あの女も注意していたらしい。

℡「どうしてタクシーで、連れて行ってくれなかったんだ?」

 敢えてその無駄な問いを出してみた。あの女がそんな簡単な気を利かせたこともやらないだろうことは分かっていた。それは、自分が車代を出すことになるからである。旦那が銀行員だからか、この女は結婚してから何かにつけ金の事を口にするようになった。そのためかお袋は、俺や女が帰省した時は、来てくれた感謝ということで帰りに金をくれていたのである。しかし最近、記憶力が散漫になり銀行で金をおろすのもままならなくなっているようである。なのでこのところ、お袋の生活費が苦しい状況になっているのを確かめて、たまに俺が送金してやっていたのである。金の管理が厳しくなりかけているのが分かっていながら、あの女は相変わらずお袋が差し出すのを受けとっている。

℡「そうだよねえ、あんたたちに迷惑をかけないようにしないようにしないといけないよねえ。」

俺は、涙が出そうになった。お袋は元来気丈な性格をしていて、人に謝ることなど昔は絶対にしなかった。しかし今度ばかりはあの女から激怒されたのが相当堪えたらしく、自分が一方的に悪いと思っているのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ