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第8話・人の名前は間違えないようにしましょう

今回、会話文多めです;;

もし見にくい、伝わりにくいようでしたら指摘お願いします。

加筆させていただきます^^;


誤字・脱字報告、並びに感想・評価お待ちしております。

「うぉーい。出来たぞーい。起ーきろー」


「うっ!ぐはっ!ちょっ!れ、!麗華……さんっ!!……うっわ。いい匂い!!ぐぉ!」


 会話文だけでは、一体どんな状況か理解できない人が、ほとんどだろう。


 簡単に説明すると。彼女はいつもの如く、夕御飯を作りに来てくれたのだが、俺は何故か突然の睡魔に襲われ、仮眠をとっていたのだ。料理が出来たのか、彼女が俺を起こしてくれたのだが、その起こし方が全て蹴りという、なんとも彼女らしい起こし方だった。


「しょうがねえだろー。両手塞がってるんだから」


 確かに右手にしゃもじ、左手にお椀、となんだか主婦のような格好をしているが、でも蹴りっていうのはどうかと思う。


 って!!まだ蹴ってるし!!


「ちょっ、いいっ、加減!蹴るのっ…やめっ!」


「早くしないと、ご飯冷めてしまうんですけどー?……あら?……うぎゃあ!!!」


 その瞬間、今まで俺の腹を蹴っていた麗華さんが、バランスを崩し今までとは違うところへ蹴りを入れた。

しかも、転ばないように蹴っていた足を踏張るようにしたため、俺に痛恨の一撃が加えられた。



「〜〜〜〜!!!」


「あ、悪ぃ。まさかのクリティカルヒット?」


「まさかの…………クリティカル……ヒット、です」


「いやー、すまん、すまん。まだ使えるよな?」


「た、多分……」


「試すか?」


「アホか!!!!」



 どこにあたったかは、想像で頼む。


と言うか彼女、この前の待ち合わせの時といい、大事なところばかり攻撃している気がする…。


「たまたまだよ、多分」


  どうやら彼女は人の心が読めるらしい…。


――――――



「いつもすんません。ご馳走様でした」


「はいさー。今日味付け濃くなかったか?」


「そうですか?そんな感じはしなかったですけど」


「マジでか。じゃあタクナリは味が濃い方が好きなんだなー」


 なんて他愛もない話をしていると、麗華さんがいきなり『んあ?』と声を出し、辺りをキョロキョロと見回した。


「ん?どうしました?」


「なぁなぁ。なんか、声聞こえねえ?」


 一瞬背筋が寒くなる。幽霊の類いが大の苦手、という訳ではないが、そう言われるとそっちの方向へ考えてしまう。そんな俺の気持ちに応えるように、麗華さんが付け加えた。


「いや、そういうのじゃなくて、なんか騒いでるっつーか……」


 その声を聞いて、思い当たる事がある俺は安堵の息を漏らす。と同時に、麗華さんに説明した。


「あぁ、多分高校生の奴らですよ。ったく、あいつら」


「なんだ、知り合いか?」


「いや、まあ。あいつら、時々あそこの公園……ほら、このマンションの真向いに、公園があるでしょ。そこで騒いでるんですよ。一度注意しに行ったんですけど、なんかそれから向こうが慕ってくれて。後輩みたいな感じです」


「ほーっ」


 意外、とでも言うような顔で俺を見る。そしてそのまま固まった。

 その瞬間俺は、とてつもなく悪い予感がした。だって見えてしまったから。彼女頭の斜め上辺りに、『ピカーン』と光る電球マークを。彼女が電球マークを出すときは、決まって何かを思いついたとき、そんでもってその閃きは、必ず俺もセットで巻き込まれるのだ。


「ねぇ……」


 麗華さんの顔がグッと近寄る。


「祭りに参加しようぜ」


―――――――



「はぁ……」


「なーにそんな溜息ついてんだよ。楽しい方がいいダロ?」


「確かにそうですけど……」


 別にいいんだけどね。いつもお世話になっている分、なるべくこういうことに付き合って行きたいと思っていたし。


 そう。俺達は、麗華さんの提案で真向かいの公園に向かっていた。

麗華さんが、その高校生達と話してみたいと言い出したのだ。


「でも、本当にうるさくて、生意気なやつらですよ?」


「生意気の方が話しやすいだろ。大丈夫、大丈夫。これでも年下には懐かれるほうなんだよ」


「そうですか……。なら良いですけど」


 でもやはり気持ちは乗らない。なんてったって、あいつらに会わせる訳だからなあ。



 そんなことを話していると、公園の中で騒いでいる声が、先ほどより大きくなった。


 見ると彼らは、5〜6人で花火をやっているらしい。


「あれ?拓也(タクヤ)さんじゃん」


「え?ホントだ拓也(タクヤ)さんだ」


「どうしたんですか?拓也(タクヤ)さん」


「どうした、じゃねーよ。うっせぇんだよ、おまえら。あと俺の名前タクナリだから!」


 こいつらは打ち合わせでもしていたのか?


「あ、すんません。拓也(タクナリ)さん」


「以後気をつけます、拓也(タクナリ)さん」


「細かいっすね、拓也(タクナリ)さんは」


 右耳に付いているピアスが目立つ男が小さな声で呟いたのを俺は聞き逃さなかった。


「人の名前間違えるのがいけねぇんだよ!!」


「つーか、俺らそんなうるさかったすか?」


 ピアス男が俺の意見をまるっきり無視して聞いてきた。


「あーもう、うるせえ、うるせえ。俺のマンションまでおまえらのバカ騒ぎが聞こえたわ」


「いやーすんません。俺ら拓也さん大好きだからなあ」


 はぁ?


「なに気持ち悪いこと言ってんだ、おまえら」


「俺らの愛の叫びが拓也さん呼び寄せちゃったんだよな」


「その通りだな、間違いねえ。だから拓也さん現れた訳だ」


「だって俺ら拓也さんのこと思いながら花火してたもんな」


 そう言うとこいつらは納得したように『そうだ、そうだ』なんて頷き合っている。


「すると……アレか。あんたらはタクナリのことを思いながらも、いい女いねーのかなあ。って思ってたってことか」


 今までずっと黙っていた麗華さんが、腕を組ながら近づいてきた。


「うわっ!ちょ、誰っすか!?拓也さん」


「いやーまぁ、この人はアレだ」


「彼女っすか?」


「いや、違う違う」


「あー彼女なんすね」


「人の話聞いてるか?日本語通じてますか?」


「にしても拓也さんの彼女。おっぱいでっかいっすねー」


 明らかにいやらしい目付きで、麗華さんの体を見る高校生の一人。


 うわー、こういうのがあるから麗華さんに会わせたくなかったんだ。こいつらは、男同士で話すような下ネタを普通に男女関係なく、発言してしまうのだ。

ったく、こっちがフォローしなきゃならねーんだぞ。


「あ!本当だ!めっちゃでけぇ!つか超やわらかそう」


「いや……あの麗華さん。こいつらは――」


「んだおめぇら。こんな乳も見たことねぇのか」


 え!?


 そんな言葉を発したのは、意外や意外。麗華さん自身だった。


そんな俺の驚きなんて知らずに、彼女は自分の胸を揉む。


「見たことねーっすよ、マジ。何カップなんですか?」


 麗華さんの態度に気を良くしたのか、わらわらと彼女の周りに高校生が集まる。

隣にいる彼女は、ガハハハハなんて呑気に笑っているのが、また驚きで。

でも麗華さんが一体どんな受け答えをするのか、少し楽しみなので、俺は見守ることにする。


「いやー、皆若ぇなあ。そんなに知りたいか?」


 興奮気味にコクコクと頷く彼ら。


 なんだか、男としてその姿は情けないぞ。高校生達に今、自分の意思表示をするための犬のような尻尾があるなら、多分風が起きるんじゃないかってくらい、ブンブン振り回されているだろう。


「ハッ、教えるかハゲ」


 あ、尻尾止まった。


 一瞬のうちにうなだれていく高校生達。


 そりゃそうだろう。麗華さんがそんな簡単に自分の胸のサイズを言うはずが無い。


「それに言わないで妄想するほうが、やりがいがあるってもんだろ。オナ――」


「ストォォォォップ!!」


 今まで見守って来た俺だが、今麗華さんがサラッとすごいことを言おうとしたようなきがするので、直ぐさに彼女の口を抑える。


「ふぁにすんだおぉ、ファクナリぃ」


「ダメです、麗華さん。女の人がそんな軽々しく下ネタを言ったら。このお話は、そういう露骨な表現を避けているんです」


「言ってる意味あ、よくふぁかんねえよ」


「え?そんなに言っちゃダメなんすか?オナ――」


「どりゃあ!」


「ぐはっ……!」


 またもや禁止ワードが出そうだったので、そいつに裏拳を一発食らわせて、大人しくさせる。


「あの拓也さん。なんだか随分と扱いがひどくないですか」


 よく見ると殴ったのは先ほどのピアス男だった。


 なんかさっきから、こいつがよく絡んでくるなぁ。


 そいつが起き上がりながら抗議をしたが、そんなものは知らん。聞こえん。


――――――――


 ある程度高校生たちと話し、麗華さんが満足したようだったので帰ろうと戻ろうしたら引き止められ、『もうちょっといてもいいじゃないっすかー』なんて言われたので、特に様もなかった俺たちはしばらくそこにいることにした。

と言っても彼らと一緒に遊ぶ訳でもなく、彼らが花火をやっている場所から少し離れたところのベンチで、その様子を見守っているだけなのだが。


「にしても、若ぇなあ。あいつら」


「本当ですね。まあ俺も高校の時、あんな感じでしたけど」


「へぇ。なんかタクナリ、高校の時は悪かった。って感じだよな」


「あー……授業中にお菓子食べたりとか?」


「あと授業中に寝たりとかな」


 2人で『小さいなー』なんて言いながら笑い合う。


 すると、高校生の軍団の中から、1人がこちらに向かって近づいてきた。


 うわ…。ピアス男だ…。


「おまえ、一緒にいなくていいのか?」


 麗華さんが聞く。


「いやーなんか疲れちゃって」


「遊んでて疲れるって、今の高校生そんなこと思うのか。俺なんかの時は、授業中とバイト以外の時は疲れたなんか思わなかったぞ」


「俺、そんな若くないっすよぉ」


「私よりも若いやつに言われると、嫌味にしか聞こえないな」


「あー確かに」


「そんな意味じゃないですよ!!まぁ俺体力はあるほうなんですが、花火ってあんま好きじゃないんですよね」


「ふぅん。私は好きだぞ、花火」


「麗華さんらしいですね」


「そうかな」


「俺も小さい頃は好きだったんすよ?他の事は率先してやんだけどなぁ。ホラ、倉持(クラモチ)とか体力無いのに、かなりはりっきてますし…」


「あ?誰だそいつ」


「何言ってんですか。倉持っすよ!!」


「名前じゃなくて、特徴で言ってくんねぇかな?」


「もしかして…拓也さん、名前覚えてもらってないんですか?」


「オイオイ、覚えるも何も、俺おまえらの名前なんて知らねぇよ」


「えぇー!?言ってませんでしたっけ?」


 なんで俺の周りには、自分の名前を言わない奴が多いんだろう。


「すると、アレか?タクナリは名前も全く知らねぇのにこんな慕われていたのか?じゃあタクナリの目には、高校生の軍団にしか見えてなかった訳?」


「えぇ、まあ」


「こいつらバカだなー」


 あなたが言えないでしょう、全く。俺も最初あなたを、コンビニの常連さんにしか見えてませんでしたよ。


「じゃあ折角なんで、覚えて下さい!俺の名前だけでもいいんで」


「あぁ、わかった」


「俺の名前、田中(タナカ)って言うんです!!」


「うわー……」


「なんすか、拓也さん」


「ここに来てまさかの普通の名字だな」


「あぁ。私も聞いた時思った」


「どういう意味っすか!寿だって一般的な名字じゃないですか!拓也さんの彼女さんだって、まだ名前聞いてないけど普通の名前じゃないんすか!?それに、一般的のほうが覚えやすいでしょ!?」


「タクナリの名字は珍しい方じゃないか?」


「えぇ、そんなに見かけないですね」


「いや、でも小川くん。一般的な名前でもいいじゃないか」


「田中ですっ。それに俺一般的な名字、否定してませんよ?一言も!」


「そうだよ中田くん」


「惜しい!田中ですっ。つーかタクナリさん、そこまでわかっているんなら、ちゃんと呼んでくださいよ」


「ごめん、ごめん。とぅなかくん」


「意地でも田中と呼びたくないんすね、コノヤロウ」


「だっておまえさっき名前間違えてるっていったら細けぇって言ってたじゃねぇか。だから、別に一文字くらい間違えたっていいだろ?」


「わかりましたよぅ。もうそんなこと言いませんよぅ」


「ったりめーだよ」


「ってことは他の奴らの名前も知らないんすか?」


「全く知らねえ。知ろうとも思わねえ」


「うわー、タクナリくんドSだねえ」


「いやいや彼女さん。拓也さんいつもあんな感じですよ。だから俺らちょっとびっくりしてるんです。『拓也さんが敬語使ってる』って」


「へぇー」


 む。何をこそこそ話しているのだろう。目の前にいるのに内緒話されると、まぁ……気分はよくない。


「コラコラ君たち。そこで、こそこそ話なんてしないの」


「あー悪い、悪い。タクナリくんヤキモチやいちゃうもんなあ?」


「そういう訳じゃないですけど……」


「ヤキモチなんて拓也さん可愛いっすねー」


「ちょっと黙ってろテメーは」


 パシッと田中の頭をたたく。


「……って!!だから扱い違くないですか?」


 なんか言っているが、知らん。聞こえん。

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