第4話・人の家にお邪魔するときは、事前に連絡をいれましょう ―2
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私って誉められて伸びるタイプなのかなー、と思った。
いや、それとこれとは関係ないのだろうけど、おもっいきり怒られるより、優しく怒られたほうが…なんつーか、結構『来る』。
「うーん、まあ俺が何も言わなかったのは、悪いと思ってます」
あぁ!もうそうゆうこと言われると、さらに罪悪感がっ!!だっだから、頭を下げるなあ!
あの後タクナリの部屋に無理やり入ったのはいいものの、入って5秒もしないうちに捕まり、私は全部自白した。それを聞いたタクナリはすぐに説教モードに入ったのだ。
その怒り方は本当に反則だと思う。ほぼ『説得』に近いものなのだ。
「あなたは女性ですから、この時間にこの辺りをうろうろするのは大変危険なんです」
「はい。…ごめんなさい」
私がそう言うと彼は小さく、『ふぅ。』と息を吐き、
「わかってくれたならいいですよ。では、この話はおわりにしましょう」
と言った。
「え…?」
私は意味が分からず、聞き返すとタクナリはにっこり笑って、私に言う。
「いつまでもグチグチ言われるのは気分が悪いでしょう。もちろん俺も嫌ですし…。だからきちんと区切りをつければ、気持ちの切り替えもしやすいでしょう?」
なんつーか、タクナリはすごいと思った。
「おまえ…良い父親になるよ…」
「はぁ?」
だって、本当に思った。だから私は素直な感想を言った。
タクナリは意味がわかってなかったらしく、頭の上にたくさんの『?』をつけていた。
「そういえば…なんでタクナリ、上半身裸なんだ?」
さっきまではあまり気にしてなかったけど、落ち着いたらタクナリの格好が気になった。
彼はジャージのハーフパンツを履き、なぜか上半身に何も着ていなかった。
こうして見ると、『男の人の体』って感じだ。
「え?…あぁ、さっきも言ったと思いますけど、俺クーラー点けないで寝るんですよ。だからいつも寝るときになると暑さ対策で脱ぐんです」
「ふぅ〜ん。私はてっきり、それで誘惑をしているのかと…」
「そんなわけないでしょ。それに誘惑できるほど見た目よくないですよ」
そう言うとタクナリは、ハハッと笑う。
うーん。自覚が無いだけなのか、社交辞令で言ったのかは分からないけど、かなり美形のレベルに入ると思うんだけどなぁ。
背だって高いし、顔は整ってるし、乙女心分かってるっつーか…。
実際に、バイト先の子がタクナリのこと好きっぽかったし…。
ま、こいつは気づいちゃいねぇんだろうな。天然っぽいもん。
「それで…?この後どうするんですか?」
タクナリはキッチンにある、冷蔵庫の中の牛乳パックを取り出しながら私に聞いた。
私も喉沸いたからあとで貰おー。
そうそう。後、タクナリの家は意外と片付いていた。
まぁ、部屋の造りは居間にキッチン。それと、襖で区切られていて分からないが、多分寝室だろう。あとはトイレに風呂…と至って普通のマンションだったが、部屋そのものはものすごく綺麗に片付けられていて驚いた。
ちなみに今私がいるところは、居間だ。2人がけのソファーがあり、その向かい側に机、その奥にテレビ。と、並べてある。
「んあぁ。泊まらせてもらうわ」
「ぶっ!?」
「汚っ!なに吐いてんだよ…」
彼は飲んでいた牛乳を、おもいっきり吹いた。
「だって…なに言ってるかわかってんすか?」
「ああ。わかってるよ。私はそこまで馬鹿じゃない」
「はぁ…。家、近いんじゃないんですか?」
「ん〜確かに近いけど、こんな夜中に外を歩くより、タクナリの家に泊まったほうがよっぽど安全だと思うんだけど?」
「あなた…最初からそのつもりだったでしょう?」
「さぁね?でも不思議なことに、ここにさっきコンビニで買った下着セットがあるんだよなぁ〜」
「バリバリ泊まるきじゃないですか…」
タクナリは溜息をしながら呟く。
まぁ、否定はしないけどね。
「それと、私は納得がいってないことがある!!」
私は思いだしたように、唐突にタクナリに講義に出た。
実際、本当に今思い出したんだけど。
「なんですか?」
「せっかく昨日、私を呼び捨てにしていい。と言う権利を与えたのに、さっきから名前で呼んでいないじゃないか!!」
そうなのだ。今思えば今日会ってから、一度も名前を呼ばれていない。いや、呼んでくれない。
無意識なんだろうけど、ちゃんと言っておかなきゃ!
「別に…そんなこと――」
「そんなこととはなんだー!!人間は皆、平等でなくてはならない。それなのにどうして私だけ名前で呼んでいるんだ?おかしいと思わないか!!」
「わかりましたよ…麗華、さん?」
「さんはいらない!!それに、なんで敬語なんだ?別にタメ口でもいいのに…」
「それはダメです」
「なんでだよ」
「俺は例えどんな人でも、年上の人に敬意を表すようにしてるんです」
「なんだそれ。誰の教えだ?」
「俺の母ですよ」
そう言った彼は、どこか悪戯好きな子供のような、口を両端につり上げて笑った。
初めて…そんな顔を見せた彼に、ドキッとしたのは私だけの秘密だ。
「あ…そうそう。コレ、どうぞ」
思い出したようにタクナリが言うと、私の元へ白い物をボフッと投げてきた。
「んあ?バスタオル…?なんだこれ」
「この時期、いくら夜でも外歩いたら汗、かきませんでした?だからシャワーでも浴びてサッパリしたらどうです?」
「おぉ!おまえ、なかなか良いこと言うじゃねえか」
そんな言葉を聞くと、彼はクスッと笑った。
「んー…おっきいかな…」
なんて呟きながら、タクナリは襖の向こうにある、洋服ダンスをあさっている。
ちなみに襖の向こうは、私の予想通り寝室だった。
私はそんなタクナリの行動を、バスタオルを抱えたまま遠目に見ていた。
「すいません。寝間着になりそうなの、これくらいしかなくて…」
そう言いながら、ジャージとTシャツを持ってリビングに戻ってくる。
「いんや、なんでもいいです。この際全裸でも平気です」
「いやいやいや。それはやめて下さい!!」
「がはははは!嘘だよ、嘘」
そう言って笑うと、タクナリは赤くなりながら、綺麗に畳まれた洋服を渡してきた。
「ったくもう…そうゆう冗談はよしてください。あなたが言うと、冗談に聞こえないんですよ」
「んだと、コラ。そんなに私が常識無いように見えるか。そんなに私がエロテロリストに見えるのか!!」
「見えます。それもかなりリアルに」
「なんでだよ、コラ。私はエロテロリストなんかじゃねーよ。私は変態であってエロテロリストじゃない!私は変態なんだ!エロテロリストなんかじゃ―――」
「どっちも変わんねーよ!しかもあんた変態なんですか!?」
「おう!泣く子も黙る、隠れ変態だ」
「そんな『隠れ』聞いたこもないですよ!全然レア感、感じないんですけど」
「がはははは!見つけた奴は、絶望感を覚える」
「ホントに何の役に立たない変態だな!」
「いやあ…タクナリはおもしろいなあ。ちゃんとかまってくれるから、ボケがいがあるってもんよ」
「麗華さんがむちゃくちゃなこと言うからでしょう。まあ…嘘だと思ってましたけど」
タクナリは溜息をつきながら言った。
「そんなことよりシャワー、いいんですか?」
「おわっ!すっかり忘れてた」
そう言いながら立ち上がると、彼はちょっと待って下さい。と言い、タオルを渡してきた。バスタオルより幾らかか小さい、普通のタオル。
「んだこれ。バスタオルならさっき貰ったぞ」
「違います。それ、体洗うときに使って下さい」
「なんで?」
「一応浴室に、体こするやつありますけど…俺が使ってるやつなんで…。やっぱりそうゆうの女性は気にするかなーって」
そんなこと…全然考えてなかった。いやあ…タクナリすごいなあ。気が利くよな。めちゃくちゃ。
「じゃあ…お言葉に甘えて、使わせていただきます」
そう言いながら、私が軽くお辞儀すると、彼もつられながらお辞儀をし、いえいえ。と笑った。
案内された脱衣所へ行き、服を脱いでカゴに入れると、浴室のドアを開ける。
おぉ。意外と綺麗じゃねえか。 浴室は白を基調とした、落ち着いたイメージでここも違う部屋と同様に、綺麗に片づいていた。
適当に頭を洗ってから、先ほどタクナリから借りたタオルを濡らし、軽く絞ってからボディソープをつける。
ソレで体を擦りながら、さっきのタクナリの言葉を思い返していた。
――『シャワーでも浴びたらどうです?』
――『女性はそうゆうの気にするかなーって思って』
優しいよなタクナリは。
自然と笑みがこぼれた。
あいつは優しい。いろいろな所に気が利く。だからモテるんだろうな…。
なんだか―――
「変わってねえな。昔から…」
静かに囁いた言葉は、シャワーのお湯が床に打ちつけられて出る音に負ずに…綺麗に響いた。
***
トントントントン。
微かに聞こえる音。それは何かを打ちつけるような音。
トントントントン。
でも不思議と嫌じゃない、どこか暖かみのある、懐かしい音。
トントントントン。
その音が、包丁で食材を切っている音と気づくのには、しばらく掛かった。
あぁ――そうか。昔、朝起きるとこんな音してたっけ。こんな音、どのくらい聞いてなかっただろう?そういや、そもそも誰がこの音を鳴らしているのだろう?第一俺は1人暮らしで…ああ。そうだった。昨日麗華さんが俺の家に泊まったんだっけ…。じゃあ麗華さんが?
俺は眠い頭をゆっくりと持ち上げ起きた。キッチンの方に目を向けると、1人の女性が立っていた。
やっぱりか…。
俺の予想を見事に裏切らないで、そこにいたのは麗華さん。なにやら作ってるらしく、鼻歌なんて歌いながら、手を動かしていた。
俺の気配に気づいたのか、体を後ろにクルッと振り向かせて俺の姿を発見すると、眩しいくらいの笑顔を俺に向けた。
「おぉ!やーっと起きたか!もう世界はとっくに動いてるぞ!」
「まじっすか…。今何時ですか?」
「えーっと…もう11時になるな」
「うわー。すいません…。麗華さん、何時くらいに起きました?」
そう言うと彼女は豪快にがはははっと笑う。
「気にすんな。私もさっき起きたばっかりだよ。待ってろ!今私が朝飯、兼、昼飯作ってるから。にしても…タクナリの冷蔵庫なんも入ってないのな。スーパーまで買いに行っちゃったよ」
「ええ?なんか…ほんとに迷惑かけてすみません…」
「いいんだよ、別に。私はお礼がしたいだけ。迷惑かけたからな…。タクナリの寝床奪っちゃったし…」
まあ確かに彼女を寝室のベッドに寝かせ、俺はソファーに寝た。だけれど、それほど迷惑じゃなかったし…。
そう言うと麗華さんは、
「いーや、それ以外に私は迷惑かけたし、それに私が作りたいんだよ。だからタクナリは私の料理を、おいしいと言ってくれるだけでいいんだ」
と、麗華さんは口の端を上げ、ニヒッと笑いながら言った。俺もそれにつられ、笑ってしまう。
「なんか…手伝うことありませんか?」
立ち上がりながらそう言ってキッチンの方に歩き、麗華さんの隣に行く。
「いい!いい!タクナリはなんもするなっ。お礼の意味がなくなんだろ?……顔、洗って来いよ。まだ寝ぼけたツラしてんぜ?平気だって。こう見えても私、料理上手いんだぞ?」
確かに、彼女はすごくなれていたようだった。普段料理を全くしない俺が手伝っても邪魔になるだけだと思い、素直に言葉に甘えることにした。
「わかりました。俺は出来上がるまで待ってます。そのかわり…美味い料理、お願いします」
笑いながら言うと彼女は持ってた包丁を俺に向けた。
「上等だよ」
いや、あぶないです、普通に。
――確かに麗華さんの料理は美味かった。パスタとサラダだったのだが、パスタは高菜と梅干しの和風パスタで、サラダは自分で作ったフレンチドレッシング、両方ともすごく食べやすかった。
「はあ〜腹いっぱいになったー」
そう言いながら麗華さんはソファーにボフッともたれ掛かる。
「いや、でも驚きました。麗華さん、あんなに料理上手だったんですね」
麗華さんは嬉しそうに笑った。
「だろお?私結構自信あるんだよっ。つってもさっきのは、ホントに簡単なやつだったけどな。タクナリは料理しないのか?」
「俺は全然。料理とか本当に苦手で、できませんね。いつも外食とか、弁当とかで済ましてますもん」
「ふーん。そうなんだあ」
そう言うと彼女はうーんと伸びをした。俺はそんな麗華さんの横に座り言う。
「時に麗華さん、これからの予定は?」
「ん〜?なーんもないっ」
「じゃあちょっと、『デート』しません?」
もちろん、深い意味なんて無い。それは麗華さんもわかっている見たいで
「おっ!いいなあ。ちょっくら外出て遊ぶか」
なんて、オヤジ臭いことを言ってきた。
次回、2人のデート編です。相変わらず大きな事件はなく、まったりなデートになる予定ですw あと…この小説の題名長いから略したいんだけど…いいのが思いつかない(泣 ただ今、「コンビニ〜」の呼び方募集してます!^^;笑