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第2話・自己紹介はすぐにしましょう

第2話突入です^^感想・評価おねがいします。


「ヨォ。コトブキさん。また会ったな!」


「またあなたですか。なに偶然を装ったようなフリをして…」


「ノリ悪いな〜。ブキさんは」


「勝手に気持ち悪いあだ名、付けないでください!!それに、なーにが暇な時来る。ですか!あなた毎晩来てますよ。毎日暇ってことじゃないですか」


「それを言われちゃうとなんとも言えねえよ」


 そう言いながら、ガハハと笑う。


 女性らしくない笑いだなーと、つくづく思った。

元は綺麗なんだから、にっこりと笑ってれば、絶対世の中の男性殆どを虜にできると思う。


 ちなみに今の彼女の格好は、レジのカウンターに両肘を付き、前のめりになって俺と会話している。


 他に客がいないからいいものの、俺たち以外の誰かいたら、迷惑行為以外の何者でもない。


ちなみに店員は俺以外に1人いるのだが…。この店員がまたどうしようもない。ずーっと奥に引きこもり寝ているのだ。

 この人を給料泥棒と言わずに、誰を言うのだろう?



 謎の女が俺に声をかけてから、1週間が経った。

彼女はあの日から毎晩俺のところに来て、他愛もない話をして帰る。


 話の内容なんて…大したこと無いものばかり。

まあ、最初の2日間は、ずーっと彼女の質問攻撃だったのだが。


 あれはすごかった。思い出しただけでも、嫌な汗をかく。なんか…転校初日から、女子に質問責めにあってる男子の気持ちが分かったきがした。



 実のところを言うと、最初この人の相手をするのが、ものすごくイヤだった。『仕事に集中したい』とか『あんたと話しててもつまらない』とか、いろいろ言いたかったんだけど、集中するほどの客は来ないし、意外と彼女との会話はおもしろくて、断る理由をすべて無くしてしまった。



 この1週間、彼女と話してみて少しだけ、彼女の情報が増えたので、あげてみよう。


 どうやら年齢は俺より上らしいが、細かいことは教えてくれなかった。


 それと1人暮らしをしていているらしい。しかも、俺の家から結構近いと言うこともわかった。




 ……………。


 1週間かけてこれだけの情報って、どんだけこの人は謎に包まれているんだ…。


 だって彼女、自分のこと話してくれないんだもん!

と心の中でボケても、誰も突っ込んでくれるはずもなく、虚しい気分になるだけだった。


 まあ、初めて会ったときよりか、彼女に突っ込みが出来るようになったのは、幾分か前進したと思う。


「なあなあ。コトブキさんも1人暮らしなのか?」


「あれ…?言ってませんでしたっけ?」


「ひ、ひどい!!私を誰と勘違いしているのよ!!」


「勘違いとかじゃなくて、あれだけすごい数の質問を一辺に聞かれたら、言ったことも忘れますよ」


「はいはい、わかりましたよー。どうせ私が悪いんですー」


 そう言うと彼女独特のハッて笑い方をする。

 そうそう、ここ1週間でわかったことと言えばもう1つ。彼女は思った以上に、口が悪いと言うこと。

その行動や喋り方はまさに『男』と同じ。



なんてことを思い出していると、ほら!質問の答え!と言いながら、カウンターをバシバシ叩いて、俺の答えを急かした。


「あぁ…まあ。1人暮らしですけど…。てゆーか、俺のことなんで『コトブキさん』なんですか?あなたの方が年上なんだから、下の名前で、呼び捨てでいいですよ」


 彼女は手を顎に添えて、うーんと考える仕草をしたあと


「それもそうだよなあ。じゃあおまえのことは呼び捨てにするわ!………そういやオマエ、名前なんつーの?」


と言った。


「あれ?これも、言ってませんでしたっけ?」


「ひ、ひど――――」


「その流れはもういいです」


 そう言いながら彼女の方を見ると、唇をとがらせて、チェッなんて言いそうな顔をしていた。


「俺の名前は、拓也(タクナリ)ですよ。タクヤと書いて、タクナリと読むんです」


「ふーん。タクナリ…ね。わかった!オマエはこれから成金だ!」


「なんでそうなるんですか!?………大体、予想は付いてるけど」



 後半は誰にも聞こえないように、小さな声でボソッと呟いた。


「タクナリのナリを取って、成金!!」


「やっぱりか…」


 俺は溜息を付くしかなかった。つーか今この場でこれ以上の、最適な行動があるなら、是非伝授してもらいたいものだ。


「せめて…名前っぽいものにしてもらえませんか?」


「じゃあ……クリリン?」


 俺はここ最近で最大の溜息をつく。


「はぁ――。もう……何でもいいです。成金だろうが、クリリンだろうが、ベジータだろうが、好きに呼んでください」 そう言うと、彼女は本日2回目のガハハ笑いをした。


「嘘だよ、嘘!もう〜そんなに拗ねないで。タクナリくん…?」


 クン付けも、この歳でどうかと思うけど…。なんてことを考えていると、俺の顔を両手で挟み、グイッとこちらに向けた。


 俺と彼女の顔の間、約5センチ。


「お姉さんが悪かったら、そんなに怒らないで…?」


 ものすごく甘い声で、そう言ってきた。


 多分彼女はわかっていないだろう。めちゃくちゃ綺麗な女の人の顔が目の前にあって、そんな甘い声を出されたら、世の中の男は我慢ができないということを。


 俺だって今、すごくギリギリのところで戦っている。


 5分以上経ったかのように思えた。


 実際にはそんなに経っていないのだろう。多分15秒も経っていない一瞬の間。でも、彼女の顔の近さとか、顔にかかる息のいやらしさとか、ほのかに香る甘い香りだとか…すべてが俺の感覚を狂わしていた。


 ダ、ダメかも俺――このままだったら………何かしちまう。


 俺だって男だ。こんな状況で理性が保てるわけ無いのだが、俺のプライドが許せない。


「あ、…あの――」


 この状況を何とかしようと、俺は必死に声を出した。


「ということで!タクナリには、私のことも呼び捨てでいい!という、権利を与えよーうっ」


 『うっ』のところで俺の両頬に置いてあった手を、パシッと叩いた。


「いって!!なんかものすごく、いい音したんですけど」


「がははははっ!気にしなーい」


 なんて――平然を装っているけど、ホントのところは顔は真っ赤で、心臓バクバク。頭の中ではあの甘い声が、なんどもリピートされていた。


 なんだか、この人の考えていることがいまいちわからない。


 叩かれた頬をさすりながら、彼女をちらっと見ると、あふれんばかりの期待に満ちた顔をしていた。


「さあほらっ!私のこと呼んじゃいなよ!!今ならお姉さんって付けてもいいぜ!さぁ、ホーレホーレッ」


 ホーレホーレって…どこの変態おやじですか。と苦笑いしながら突っ込むと、彼女は真顔で『人間誰しも、心の中に変態おやじが住み着いてるものなのだ』とさり気なく、ホラー映画にもなるようなことを言ってきた。


「それでは…」


と言うと、コホンと咳払いをして、彼女の名前を言おうとした。


「あ……あれ?」


「ん?どした?」


 彼女の名前が言えない。なぜか言えない。口からでてこないのだ。 それもその筈だ――。






「俺…あなたの名前、聞いてましたっけ?」



 …………。


 ………………。


 ……………………。


「あ」


そのコンビニには、しばらく気まずさが流れたという……。

読んでくださってありがとうございました^^評価・感想は作者にとってかなりの励みになります。是非よろしくお願いしますm(__)m 次回、タクナリのルックス、謎の女の名前、自己紹介をしてないと気づいてからのその後が明らかに!!←

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