第1話・それは突然、喧嘩を売られたかのように始まりました
初連載ですが、暖かく見守ってくださると嬉しいです^^是非、感想等お願いしますm(__)m
「1860円になります。お箸はお付けしますか?」
「あぁ。頼む」
「いくつ、お付けしますか?」
「1つ」
「かしこまりました」
今日も深夜のコンビニで、俺はおっさん相手に、営業スマイルをかましている。
俺の名前は寿拓也。タクヤではなくタクナリと読む。
今年で20歳になるのだが、仕事というのもこのコンビニのアルバイトのみ。俗に言うフリーターである。しかし、ニートとも違う。なぜなら俺はきちんと、『働く意欲』があるからだ。
「いらっしゃいませ」
店内に入ってきた客に、また笑顔を向ける。入ってきたのは俺と同じぐらいの女性だ。
深夜のコンビニとは、なかなかおもしろいものだ。最初は給料の良さだけに魅力を引かれたものだが、今は違うところに魅力を感じる。
それは、客だ。
深夜というのもあり、すごく個性的な客をよく目にする。例えば、18禁雑誌をごっそり買って帰る奴や、ものすごい酒臭い奴が10本くらいビールを買っていく奴。あぁ――そうそう。ものすごい真面目そうな男の人が、ちょっと照れくさそうに女性の下着セットを買って帰ったときは、さすがに驚いた。
コツン
さっき入ってきた客が、カウンターの上にカゴを置いたのでハッと我に返った。
「いらっしゃいませ」
そう言いながら客の方を見た。
肩ぐらいの髪をサラサラと揺らして、サングラスをかけている。タンクトップにショーパンというラフな格好は、その人のスタイルの良さを引き立てていた。
その女性は、レジの近くにある新製品のお菓子売場の方を見ると、そこにあるお菓子を手に取り、サングラスを外した。
すげぇ美人―――。
俺は思わず、動かした手を止めその女性の横顔を、まじまじと見つめてしまった。
否 見とれて、いた。
大きくくりっとした目は、存在感ばっちりな二重。スゥッと通った鼻に、つやつやのグロスを唇につけていて、それだけで色っぽさが倍増する。
メイクは濃すぎない、ナチュラルメイクだったのだが、元の顔が整っているせいか、それも気にならないくらいだった。
カゴに手をかけたまま呆然としていると、俺の視線に気づいたのか、彼女がこちらを向いて言った。
「あ?何見てんだよ。手を動かせ。手を!」
…………。
はい?
な、何か今、幻聴が聞こえたような……
「だぁから!なにボサッとしてんだよ。ちゃんと仕事しろよ」
その目の前にいる客は、言い終わったあとまるでバカにするかのようにハッと笑った。
え……?うそぉ?
さっきの台詞、この人が言ったの…?だ、だって顔に似合わず、ものっそい口悪い―――
そんな俺の混乱を知ってか知らずか、まるで田舎のヤンキーの様に立ち、(ショーパンのポケットに、両手の親指だけ突っ込み、体を斜めにして、こちらに傾けてる状態)目を細めて俺の胸元を見ている。いや、正確にはコンビニの制服の胸ポケットにある、ネームプレートを見ていた。
「オイ、おまえの名字、――なんて読むんだ?コ…ト、ブキで合ってんのか?」
「……は?あ、あぁ。まぁ。」
「おまえ…新人だろ?」
「いえ…違うと、思いま…す?」
「なんで疑問系なんだよ」
言い終わると、またバカにしたようなハッて笑い方をする。
この人は、今コレがマイブームなんだろうか?
それとも…癖?
「いや…新人かベテランかどうかっていうのは、自分で決めるもんじゃないと思うんで…」
「ほぉ〜。新人のくせに言うじゃねえか」
すると今度は今までとは違う、まるでニヤリという効果音が付きそうな笑い方をした。
ってゆーか、俺は新人と見なされたのか…。このバイト初めて一年とちょっと経つぞ…?さっきはかっこいいこと言ったが、ぶっちゃけ自分では、新人では無い気がするんだが…。
「ホラ、口だけじゃなく、手も動かせや」
いや…喋らせたのあんただろう!
とツッコミたくなったが、従業員という立場の俺がそんな文句も言えるはずが無く、申し訳ありませんでしたと謝ってレジを続けるしかないのだった。
「合計で626円になります」
「ムニム!ムニムかあ〜。なんかいやらしくね?6262円だったら、ムニムニだぜ?」
オマエはどこの小学生だ!そんなくだらないことで、ニヤニヤするな!しかもいい歳こいた女性が〜だぜって言葉、使っちゃいけません!!
と、心のなかでその人に、めちゃくちゃツッコんだ。目一杯ツッコんだ。
ちなみに、この時点でわかった人もいるだろうが、俺をボケかツッコミで表すなら、断然ツッコミだ。だからこの立ち振る舞いといい、発言といい、ツッコミ所が満載な彼女は俺にとって、体に良くない。
彼女は、合計の値段を聞いてから、お釣りを渡すまでずっとムニムか〜。2が一個足りねえんだよなあと、ブツブツ言っていた。
俺が品物を袋に入れて、彼女に渡すと向こうは俺をじーっと見てきた。
「な、なに―――」
「おまえってこの時間帯、いつもいるの?」
なにか?と、質問しようとしたら向こうも質問をしてきて、少しびっくりした。
質問の内容は、俺にとって???な内容だったが、一応俺は真剣に答えることにした。
「そう…ですね。ほとんどがこの時間ですかね…。時間があるときは、昼にシフト入れるときもありますが…」
「ふ〜ん。まあ、私が暇なときは、また来てやるよ」
「………はい?」
「まあ、期待して待ってな。コトブキさん」
まるで説得するかのように、俺の肩を叩いては、満足そうにクックッと笑って帰っていった。
この日から、俺と彼女のコンビニを通した、奇妙な付き合いが始まるのだった。
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