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7.FAQ(代わりの後日談、のつもりです……)

 三日後の夕暮れ。

「おっしゃ、それじゃ改めて、お疲れさん!!」

「「「お疲れっしたー!!」」」

 クロキのかけ声に応えながら、一同がジョッキを掲げる。

 リンカの『満腹亭』を貸し切っての探索達成パーティー、というクロキの奢りの慰労会である。

「いやー、今回はハードだったっすねー」

「さすがに、生きてる遺跡相手はキツいわー」

 ため息混じりのケンツに、ヴァニスもうなずく。それから、首だけミクリへと振り返った。

「ミクリちゃんも回復に時間かかったもんなぁ。もう大丈夫なんだよな?」

「うん! もうへっちゃらだよー」

 ジョッキ片手ににこやかに笑うミクリ。

 そうは言うものの、慰労会が三日も延期されていた理由は、ミクリの回復待ちだったのだ。

 遺跡地下から地上へと上がった時のミクリの状態は、一言でまとめるなら“瀕死”だった。

 全身の筋肉繊維及び健の損傷、骨の亀裂骨折、毛細血管の破裂は数えきれず。特に、加速粒子砲を食らった左右上腕部と、超高速移動を支え続けた両足については筋肉繊維と健は断裂、骨折もほぼ粉砕骨折レベルの重傷。さらには、過剰負荷により心臓他各臓器は機能不全を起こしていた。

 地上で待機していたレティアーナがいなければ、そのまま絶命していたことだろう。

 加えて、彼女がいなければ、月単位でベッドの上だったことだろう。たった三日で回復するようなダメージではなかったのだ。

 そういうことで、エルが遺跡を“封印”処理してコウベへ帰ってから、今日まで延期されていたのである。

「いやー、レティありがとねー。ホント助かったよー」

「い、いえ、間に合って本当に良かったです……」

 頭を振ってから、レティアーナは慎ましやかに笑った。

 その横で、サイコキネシスでジョッキを傾けていたハヤテがクロキへとくちばしを向ける。

「というか、天羽々斬を使うとはたまげましたぞ。我々に当たったらどうするおつもりだったのですか?」

「いや、位置取り的には大丈夫なはずだったしな。大体、地中に撃つわけにはいかんだろ?」

 あっさりと言うクロキ。はずだったでは済まない話だが、クロキの言い分は間違ってはいない。

 仮に、斜め上に、つまり地上へと撃たなかった場合、核融合エネルギーが最後は地中で爆発することになる。そうすれば、その上の地表までを巻き込んで、大地をごっそりと吹き飛ばしてしまう。

 遺跡周囲のクレーターどころではない。地形が完全に変わってしまうところだったのだ。

 だから、クロキは天羽々斬を斜め上へ向かって撃った。地上を突き抜け、上空まで届くまで、サイコキネシスで制御しきっていたのだ。

 とはいえ。

「それはそうですが、爆風で吹き飛ばされそうでしたぞ?」

 ハヤテの苦言。実際、いくら上空まで逃がしたといっても、エネルギー量が尋常ではない。地上の待機班にしてみれば、それこそ“空が爆発した”に等しい光景だったのだ。

 思い出したアシクの顔が青ざめる。

「死ぬかと思いました……」

「はっはっは! すまんすまん、それくらいは勘弁してくれや」

「そうそう、こっちもイッパイイッパイだったんだからよ」

 おおらかに笑うクロキに、ヴァニスも同意する。それから、ジョッキでカイを指した。

「なあ? カイ。ギリギリだったもんな?」

「ええ」

 それくらい、で済ませていいかどうかは横に置いて、カイもうなずいた。

 今にして思えば、オーバーキルではあった。67式のPCPLフィールドを停止させた後、もっと安全な攻め手もあったのでは、とは思う。

 しかし、それは“今”だから思うことで、あの瞬間、確実な手段だったことに疑いようはない。

「あ、そーいえばカイさんはどうしたの? あの時。なんか、すっごい具合悪そうだったよー?」

 思い出したようにミクリが訊ねる。

「ああ、フルダイブモードの反動が出てたんですよ。PMDの出力では足りなかったので、脳を回路に組み込んで直接電子世界に潜ったんです。自分をPMD化するようなものですね。遺跡のデュアルシステムに介入するには、あの時点ではそれしかなかったんです。アンチウィルスをパーソナルファイアーウォールで対消滅させて、メインシステムの管理権限ブロックに侵入して強制介入したことで、分かってはいたのですが彼我境界線が著しく曖昧になっ……あ」

 つらつらと話してから、カイは思い出した。

 ミクリが幼児化しかかっている。

「あ……えっとですね、そのーー」

「まあまあミクリ、難しい話はおいといて、飲みましょお」

 カイよりも早く、エルがフォロー。手に持つジョッキをミクリの口に当てて、中身を一気に流し込む。

「む、むごっ、ごっごっごっごっごっ! げふっ、な、何すんのさエルーーぅいっく」

 急にミクリのテンションが変わる、というか、一気に酔っぱらい化した。

「にゃ、にゃにをのまひぇ、って、このかおりはまさかぁ?」

「はぁい、ミクリちゃんの大好きなマタタビ入りエールです♪」

「にゃんてもにょを、いきなひのまひゅんにゃよ~。いきなひだったかりゃ、せかいがぐ~るぐ~るひてき……にゃはははは~♪」

「あぁら、もう酔ったのぉミクリ?」

「よってにゃい! よってにゃいよ! よってにゃいの~ぉ~よぉ~」

 いや、酔っている。

「もう、仕方がないわねぇ」

「にゃはははは、くすぐったいにょら~エル~」

 喉元をしっとりと撫でられて、ミクリは上機嫌に笑う。そして、転がるようにエルの膝の上に頭を預けた。

「はいはい、酔ってないのねぇミクリ」

「よってにゃい、よってにゃい」

 ゴロゴロと喉を鳴らしながら、気持ちよさそうにじゃれるミクリ。

「かわいいですね、ミクリさん」

 端から見れば、甘える美少女を美女があやす図。レティアーナが思わず微笑んでいる。

「ね」

 しっとりとミクリに指を沿わせながら、エルも微笑んだ。

「……ホント、可愛い娘だわぁ」

 若干ひきつる、カイの口元。

 その小さなつぶやきも、一瞬の舌なめずりも、しっとりと肌をつたう指先も、“知っている”カイから見ると全く別の意味に見えてしまう。

 種族的にはミクリは捕食者側のはずなのに、完全に逆の食われる側に……。

「言うなよ?」

 いつの間にか真横にいたヴァニスがささやく。

「ははは……」

 笑ってごまかすカイ。

 そこに、リンカの威勢のいい声が割って入った。

「何だい、もう酔いつぶれちまったのかい? せっかく料理が出来たってのに」

「いや、待ってたぜリンカ!」

 ヴァニスが何事もないように応える。

「まあいいさ。今日は“大冷蔵庫”から直接卸してきたから食い物はたんとあるよ! どんどん食べていきな!」

「「「よっしゃあ!」」」


 真夜中になって。

 テラス一番外側の、柵の横の席。

 背もたれに体を預けるクロキがグラスを傾ける。氷が打ち合う音が、テラスに軽く響いた。

 店内へと続くガラス扉が開く音。

「ん? 終わったのか?」

「はい」

 エルが軽くうなずく。

 酔いで軽く上気した頬。

 静かに歩み寄るエル。

「みんな酔いつぶれましたので、リンカさんに毛布を借りてかけておきました」

「はっはっは、そうか」

 始めの方で、アシクは速攻帰宅させられていた。その後についていけるとは思えなかったのだ。

 案の定、羽目を外したどんちゃん騒ぎとなり、テンパったレティアーナが豹変する→ケンツが踏まれて昇天する→残った全員でレティアーナを酔いつぶす→同時に全員酔いつぶれる、といつものコースをたどって、今に至る。

 基本的に全員酒豪なのだが、実は、タガが外れたレティアーナが一番強い。なので、総掛かりで酔いつぶすのが定番になっている。

「カイは?」

「途中で帰られましたよ。ついていけないって」

「おお、賢明だな」

「ですね。さすが、研究者」

 軽く笑うクロキに、エルも含み笑いをする。

 クロキの後ろに立ち、エルは柵に手を乗せた。

「……実際、何者なんでしょうか?」

 夜空へ目を向けながら、つぶやくエル。

「……さあな」

 グラスの氷が鳴る。

 ロストテクノロジーに精通し、遺物を思うように操り、ロストアーツも修めている、若きニンゲンの研究者。

 今の世界の基準で考えれば、異質極まりない。

 “今の世界”ならば。

 だが。

「だが、コウベの研究者で、探索もこなせる、俺たちの仲間だ。頼もしい、な」

 朗らかに言うクロキ。

 そう、それ以上の詮索は不要だ。それだけで十分。

 誰しも、何かしら抱えているものだ。

「そうですね」

 エルもにっこりと笑った。

 思い出したかのように、遠慮がちに、夜風が吹き抜ける。

 まだ、夜に夏の気配は感じられない。

 手櫛で髪をすくエル。

「……あの方は、あれで良かったのでしょうか?」

 軽くうつむくエル。

 瞼に浮かぶ、崩れ落ちた機兵。

 30世紀の孤独の果ての、残骸。

 クロキがグラスを傾ける。

「あれが、あいつの望みだったんだろう。もう十分だっただろうさ」

 遠い声。ここではない、遠くへ、遠くへ向けた言葉。

「……そう、ですね」

 小さい声。行き場に迷い、漂い、消えるだけの言葉。

 すれ違う、二つの言葉。

 一陣の夜風。

 エルの髪が流される。

 エルの目が追う。

 クロキの顔の横を、絹糸のように泳いだ。

 触れなかった。

 静寂。

 エルの手が、柵から浮く。

 静かに、髪の流れた跡をたどる。

 体が、手の跡を追う。

 少し、軌跡を外れて。

 愛おしい背中に。

 そこ、に。

 ……届かない。

 エルはそこで止まっていた。

 あと一歩、あと数センチ。たったそれだけが、届かない。いつも、どうしても。

 届かない。届きたい。届けたい。届けたくない。

 二人は動かない。ただ、星だけが瞬く。

「……そういえば、次の日曜日、また頼みたいんだが」

 クロキの声が、空気を動かした。

 とっさに手を引っ込めるエル。

「あ、はい……カリンちゃん、お元気ですか?」

「ああ。一月ぶりの外出だからな、楽しみにしている。お前にも会えるってな」

「まあ。訓練なのに、カリンちゃんったら」

 にこやかなクロキの声に、苦笑で応えるエル。

 クロキの娘のカリンは、生まれながらに強大なパイロキネシスを持っていた。故に、能力が暴発しないように、普段はカナコの元、つまり“ノアの箱船”の中で暮らしている。カナコが創るPCPLフィールドで発火現象を封じているのだ。

 月に一度の外出は、親子の時間であるとともに、能力のコントロール訓練を兼ねている。もしカリンが暴走しても、鱗の紋様を全開にしたクロキならば何とか押さえ込める。

 エルは、その付き添いだ。

 同じ能力者の先輩として、経験者としての。

「では、いつものようにお散歩して、お食事して、ショッピングして……お墓参りですね」

「ああ。あいつのな」

 一息おいてエルが続けた言葉に、クロキがうなずく。

 外出は、最後に、カリンの母親の墓前に花を添えるのが暗黙の決まり事になっていた。

 クロキの亡き妻の墓に。

 クロキが死なせた、殺した、最愛の女性の。

 グラスの氷が、鳴く。

「……すまんな」

「……いえ」

 何を謝ったのだろう。

 娘の訓練につきあわせること?

 妻の墓参りにつきあわせること?

 想いに応えられないこと?

 夜風がひときわ強く吹いた。

 その中で、エルの唇だけが、音を立てず動く。

「ずるい人」

 風がガラス扉を細かく震わせる。

 扉が鳴いた。

 カタカタ、カタカタ、と。

 その小さな雑音の中、扉の向こう。

 酔いつぶれたフリをしていたヴァニスが、密かに舌打ちする。

「バカヤロウが……」


 その数時間前。

 自室に戻ったカイは、とりあえずガラス瓶から水をグラスに注いであおった。

 どんちゃん騒ぎが脳裏に浮かぶ。

 ……全員うわばみとはな。

 ため息と同時に頭を振るカイ。

「賢明だったわね、カイくん」

 PMDからちびカナコが現れる。

「あそこからが本番なのよ?」

「マジですか……」

 レティアーナが豹変したところで抜けたのだが、その時点でもかなり飲んでいたはずだ。

 これ以上は翌日の二日酔いがシャレにならないとふんで正解だったようだ。

「あの子たちは総じてアルコールに強いから。私たち人間の基準で考えると、とんでもないわよね」

「そんなところまで強化したんですか?」

「いいえ? 30世紀の間に、そう進化したのよ。私の思惑も超えちゃったわ」

「さすが“超越種”」

「生み出した私もびっくりよ」

 朗らかに笑うちびカナコ。その笑顔のまま、目つきだけが引き締まった。

「“超越種”って俗称を知っているってことは、やっぱり、貴方は前世界の人よね?」

 正式名称『超人類種』、新人類創造プロジェクトの産物。その俗称は正式な文書には残っていないものだ。

「……ええ。その通りです。雨宮佳奈子博士」

 目を閉じて答えるカイ。

「私のデータベースでは、日本の科学者に『あきつ かい』という名前は無いわ。どちらの国の方?」

「ご存じでしょう?」

「AMPSS-038はアメリカの宇宙開発局で採用されていたわね?」

「ご明察」

 カイが唇の端を持ち上げて笑う。

「お名前は日本名と見受けるけど?」

「ええ。安鬼津海です。留学して、そのまま」

「そう」

 ちびカナコが言葉を切った。

 カイがグラスを置く。

「聞かせてもらえるかしら?」

「約束ですからね」

 約束。探索に同行させる代わりに、来歴を明かすという。

「……私は、アメリカの外宇宙探索兼適性惑星地球化移民船団のエンジニアでした」

「アメリカの“ノアの箱船”計画ね?」

「そうです」

 当時、各国は人類の生き残りに向けて様々なプロジェクトを進めていた。それらは総じて“ノアの箱船”と呼ばれた。日本の“箱船”は量子演算装置内蔵永続運用機構、つまりカナコであり、アメリカのそれは文字通り宇宙“船”だったのだ。

「上手くいかなかったの?」

「少なくとも、私の所属した“フロンティア・クルーザーズ”では」

 亜光速で航行し移住に適した惑星を探したが、テラフォーミング、地球化を実行できる星は見つからなかった。

「妥協しなかったのが最大の敗因だったと、個人的には思いますが……。そして、移民船団の中で意見が対立するようになりました」

「対立?」

「はい。さらに進もうとする者と、戻ろうとする者との間で」

「戻る? そこまで行っておいて?」

「ええ。想定を遙かに下回る成功率の低さに、続行への疑問が生まれたのです。その時点で、地球では何十世紀かは経過している。もしかしたら、人間が住める環境に回復しているのではないか、と」

 実際、人為的な氷河期が終わり、環境自体は回復していたわけで、結果的には見当違いではなかった。

「議論の結果、望む者は地球への帰投を認められることになりました。数は多くなかったので、一隻に集まって地球へ出発しました」

「その船が、あの地表の遺跡ね?」

「はい」

 目に浮かぶ残骸。地面に突き刺さるように墜落した、ゆりかごになるはずだった船。

「どうしてあんなところに、いえ、そもそも日本に降りてきたの?」

「“箱船”は国家の命運を賭けたプロジェクトですよ? 放棄することは国家への背信行為です。万一、アメリカ政府が存続していた場合、何らかの罪に問われる可能性だってある」

 そう言いながら肩をすくめて、カイは続けた。

「状況を、様子を見るために、出来れば安全な場所を選びたい。その意味で、同盟国だった日本はちょうど良かったんですよ」

 アメリカが即座には手を出せず、そしてアメリカ国籍を無碍には出来ない外国。様子を見るために時間を稼ぐには都合が良かった。

「で、着陸場所を探っていたら、宇宙船の発着信号らしき信号を出している所が見つかりました」

 一度話を切って、カイが「貴女は感知しなかったんですか?」とちびカナコに目を向けると、「地上のレーダー施設は壊滅しちゃったから」と、ちびカナコは両手を挙げた。

「そうですか……。まあ、ひどく断続的で不鮮明、間隔の長い信号でしたが、ある以上はドックがあるはず。それで降下を決めたんです」

「確かに、ドックはあったわね」

「ええ、ありました。ですが、本来船の入港時には解除されるはずのPCPLフィールドが解除されていなかった。あまりにも常識でしたからね、気づいたのはフィールドの対消滅の瞬間です」

「ああ、それで……落ちたのね?」

「……はい」

 宇宙船の浮力、推力、そして船体の防御はPCPLが担っている。だから、船がドックに入る際は、ドック側がPCPLを解除するのが常識だ。

 それが解除されなければ? 当然フィールド同士が相互干渉して対消滅、浮力も防御力も失った船はそのまま墜落し……。

 カイが歯ぎしりする。

 突然制御を失う船。船内に沸き上がる驚きの声。何が起きているかを確認するまもなく地表へ激突。衝撃で爆発、続けざまに誘爆。

 吹き飛ばされ、炎に巻かれるクルーの悲鳴。

 日課でAMPSS-038の装着訓練、安鬼津心意流の鍛錬をしていたカイだけはその生命維持機能で守られたが、為すすべもなく船外へと吹き飛ばされた。

 本当に、為すすべが無かった。

「……あの地下施設は、私のデータベースにも無かったわ。防衛大臣あたりの秘密施設か、四菱あたりの私設かしら。フィールド解除用の特別なパスコードがあったのかもしれないわね。オペレーターのいない状況だから、システムはパスコードが送信されない限り秘匿モードで自動運転だった、ってところかしら」

 ちびカナコのつぶやき。あえて、淡々とした口調の。

 無言のカイ。

「……で、その後、森をさまよって、コウベへ着いたのね。今回の探索に同行したのは、生存者を探すため?」

 ちびカナコがカイを見つめる。

 それは、機械的な目に見えた。

「……いえ、生存者がいないことを確認するために」

 応えるカイの目から、感情は読みとれなかった。

「そう……」

 無言で見つめあう二人。

 船のシステムログは確認した。

 あの瞬間、誰かが脱出した記録は無かった。

 周辺へのサーチもかけた。

 生存者の痕跡は無かった。

 船内の様子は、言うまでもない。

 始めから、想定していたことだった。

 覚悟はしていた。

 だから、ただの確認。それだけ。

 不意に、ちびカナコの頬が緩んだ。

「で、どう? この世界は?」

 いつもの調子になったちびカナコの問いに、軽く面食らうカイ。

「どう、とは?」

「貴方の知っている世界、地球と比べての感想は?」

 少しきょとんとしてから、カイは苦笑した。

「ずいぶん違いますね。まるで別世界に来たようですよ。超人だらけですしね」

 肩をすくめて答えるカイ。実際、正直な感想はそれだった。

 ちびカナコは軽やかに笑った。

「あらあら、それを言うなら、貴方だって超人ですよ?」

「は?」

 意味が分からないカイ。

「この世界では解析不可能なロストテクノロジーに精通し、活用することが出来る。今の文明レベルから数十世代どころじゃない先の知識を持っている。それって、みんなから見れば超人じゃない?」

 言われたことを頭の中で復唱して、カイも笑った。

「なるほど、そう見えるわけですか」

「見えるわね。エンジニアさんだから、ウィザードってところかしら?」

 カイレベルのエンジニアは、前世界では、大体ネット上でウィザード級のハッカーでもあった。ちびカナコはそれを茶化しているのだ。

「貴女には到底及びませんが」

 ちびカナコの笑顔に、カイは手を軽く挙げて応えた。

 ちびカナコが手を差し出す。

「ふふっ、この騒がしい世界に、地球にようこそ。これからよろしくね」

 そのホログラムの小さな手に、カイは握るように手を重ねる。

「こちらこそ」

 以上、これが“コウベの魔法使いカイ”の、その来歴。

完結です。最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。m(_ _)m

評価や感想(ダメ出し)も、少しでもいただければ嬉しいです。

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※冬の童話祭2018、参加表明してます※

※if桃太郎『鬼火が空を覆っている』※

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ちなみに、ファンタジー系のお話としては、

◆ボケツッコミの連作ショートショートコメディ……「モアイ像として召還された俺の存在の耐えられない軽さについて」

◆近代SF風バトル有り……「姫君と仮面の男」

◆シリアス系超能力医療物?……「クリーンルームを閉鎖するにあたって」

があります。


文芸寄りとしては、「平々凡々たる原田くんのセイシュンノホーソク(青春?物)」「白詰草の詩(恋愛物)」「ひかり(シリアス物)」とかあります。

ショートショート以下の字数のは、シリーズにまとめたりしてます(「ショートショート集」とか)


よろしければ、またご覧ください。


どうもありがとうございました!

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