6.34世紀目の遺跡(その2:※実はサバ読んでます……)
「……んん……あ……」
「お、気がついたか?」
うっすらと目を開けるエルに、ヴァニスが語りかけた。
「ああ、ヴァニス団長……って」
「ヨウガンセキリュウを仕留めた後、気を失ったんだよお前」
「ああ、すみません……」
ヴァニスの真剣な目に、少しうなだれるエル。
「もうちょっと気をつけて力を使えよな?」
「はい……。あ! ミクリ! ミクリがっ!」
「落ち着け、エル」
「あ、あたしどのぐらい気絶してたんですか!?」
「落ち着けって、まだほんの数分だよ」
胸ぐらをつかむ勢いのエルを、ヴァニスが冷静になだめる。
そこまで時間が経っていないことに、少し安堵するエル。しかし、すぐに心配顔に戻った。
「ですが、落ちた先が……」
「ああ。生きた遺跡だ。楽観はできんな」
エルの顔が凍った。が、ヴァニスは冷静さを崩さない。
「だが、先輩が一緒なんだ、すぐにどうこうならねぇよ」
「……はい、そうですね」
ヴァニスに言い含められて、エルが表情を和らげる。
が、無理しているのがその顔に出ていた。
「さて、こっから先はちょっとばかしイレギュラーだ。ハヤテ、アシクくんと残れ。二人で周囲を索敵、問題なければレティアーナたちを穴の付近まで連れてきて待機だ。救急の準備を整えとけ」
「了解です」
「は、はい」
ハヤテとアシクが同時に応える。
「さて、エル、気分は大丈夫か?」
「はい、もう大丈夫です」
エルがしっかりとうなずく。
「よし。お前はどうだ? カイ。行けるか」
ちらりとディスプレイの表示を見るカイ。
残存エネルギー量67%。
先ほどの戦闘で結構削られている。が、まだまだ問題のない量だし、何より、ここで自分が行かなければ話にならない。
お荷物になるために来たわけではない。
「大丈夫です」
うなずくカイを見て、ヴァニスもうなずいて応えた。
「よし、行くぞ!」
「「「はい!」」」
ハヤテはアシクを乗せて飛び立ち、ヴァニスとエルとカイは大穴へと飛び込む。
「先の様子は?」
「地下3階以降は分かりません」
方向をコントロールして自由落下しながら、カイはヴァニスに答える。
地下1階の元ドックの大空間を通り越しながらスキャンをかけたが、やはり遮断フィールドがかかっているらしい。
「そうかあだっ!?」
ヴァニスの返答が驚きに変わった。
停止、というより何かにぶつかったように止まるヴァニス。
「え? ったぁ!?」
「っと!?」
エルとカイも続けざまにぶつかる。
「な、何だこりゃあ?」
座り込んで地面をさわるように叩くヴァニス。
何もない空間で。
「こ、これ?」
エルも困惑気味に、足が着いている何もない空間に触れる。
カイの横のちびカナコが下を見ながらつぶやく。
「フィールドね」
「ですね」
予測通りに遮断フィールドだ。だが、単に隠すためだけではなく、進入を阻む効果も付与されている。
……進入不可も追加された? 警戒レベルが上がったということか?
自分たちを進入者として認識した? だが、まだ進入していないのに?
「クロキさんたちが通ったからでしょうね」
ちびカナコが、カイの疑問に先んじて答えた。
下で何かあったか。
「カイくん、フィールドで相殺しなさいな」
「そうですね」
ヴァニスとエルへ「フィールドを消します」と言って、二人がうなずくのを見てから、PMDを操作するカイ。
エネルギー消費の少ない、単純反射フィールドを展開。
PCPLフィールドは問答無用の反則技ではあるが、実際は非常に緻密で繊細だ。ほぼ同系統のものがぶつかれば、その構成にエラーが生じて効果を保てなくなる。
つまり、両方消滅する。相応のエネルギー量が必要ではあるが。
一瞬、足下が歪んだように見える。
唐突に足場の感覚がなくなり、落下再開。
同時に地下3階へ突入。
その瞬間。
「うおっ!?」
「きゃあああっ!?」
「くっ!?」
予想外の落下速度に驚く3人。
さっきまでよりも、いや、不自然に速い。
違う、自分の体が異様に重いのだ。
重力制御か!?
瞬く間に迫る地面。
「カイくんっ!」
「ちっ!」
フィールドを単純反射から重力遮断+慣性制御へ切り替え、同時に範囲を拡大。
3人まとめて停止。
目と鼻の先で地面と向き合って、カイが「ふぅ」と息を吐き出す。ヴァニスも「あっぶねぇ」と顔をひきつらせ、エルが胸をなで下ろした。
フィールドを再調整。効果範囲はそのままで、普通に立てる状態へ。
周りを見回して、ようやく一息つく。
スキャンしてみると、思ったよりも広い空間だった。体育館のような感じで、天井も高い。でなければ、間に合わず地面に叩きつけられていただろう。
生命体、というより動く物の反応は無い。
地下3階到達。
「何だここは?」
「運動スペースのようですね」
同じように見回すヴァニスにカイが答える。
地下シェルターではたまに設計されるスペースだ。
相当な長期間、多くの人が避難生活を送るような、大型のシェルターに限っての話だが。
「誰もいませんね……ミクリ……」
不安そうなエル。このシェルターの存在理由を推測するのを中断して、カイはスキャン範囲を拡大した。
「……! この先に反応があります!」
「何!?」
ヴァニスが振り返る。
「ホント!? カイさん!?」
「はい、この次の部屋に反応が……4つ」
カイはエルに応えながら、最後はためらいがちになった。
ヴァニスがそれを拾う。
「4つ?」
「はい。3つはミクリさんたちですが、もう一つ反応が……。集まって、4つあります」
密接状態だ。
そして動きはない。
平和的に交渉中か、近接戦闘の膠着状態か、不明。
「急ぐぞ!」
「「はい!」」
駆け出す3人。
開いたまま停まった自動ドアに近づくと、隣の部屋の薄明かりがはっきりと見えてきた。
そのまま飛び込む3人。
「よお、待ってたぜ」
迎えたのはクロキの声だった。
隣の部屋も負けずに広い。が、先ほどよりはやや手狭な印象だった。
かろうじて機能しているダウンライトが、中を照らしている。
その灯りに浮かび上がっているのは、巨体と力比べをしているクロキの後ろ姿。
その両肩に、ミクリとケンツを担ぎながら。
「ミクリっ!」
「あー、エル、やっほー」
半分悲鳴のエルに、ミクリはのんきに応えた。
ヴァニスが吠える。
「どうなってんだ、先輩!」
「いや、ここは体が重くなっちまうんで、俺がコイツ等を担いでんだよ。担いで気合い入れてればコイツ等も平気みたいでな」
「そうか、紋様か!」
カイがはたと気づいた。
クロキの鱗には紋様があり、PCPLフィールドを微弱ながら展開できる。不沈艦と言われるほどの代物だ。それが、クロキに密接している範囲ぐらいならカバーしているのだろう。
「で、コイツは俺以外の攻撃は通じないらしい」
真正面の相手を見ながら説明を続けるクロキ。
お互いの手を合わせて、押し合いをしているような構図だ。
首が無く胴体から盛り上がっている頭、それでもクロキよりも頭一つ以上大きく、身幅もある。全身金属に覆われた、というより金属以外に無い、いわゆるロボットだ。
「陸自の67式!?」
日本の陸上自衛隊自律型戦闘機兵、2167年制式のモデル。ヴァージョンは最終版の改Ⅲ型だろうか。50年近く現役で活躍し続けた、高い完成度と安定性を誇る、そして一般的なマシンソルジャーだ。
それにしても。
「ずいぶんと歪な」
「ツギハギだらけね」
カイのつぶやきに、ちびカナコもうなずく。
67式は、人間をベースとした半人半機械のⅠ型から、完全機械制御の改Ⅲ型まで、広い互換性を保っていたタイプだ。損傷してもパーツ交換が容易で、それが長く活躍した理由の一つでもある。
眼前の個体は、それこそⅠ型から改Ⅲ型まで、ありとあらゆるパーツが混在している状態。
劣化したパーツを交換し続けて、今日まできたのか。
「30世紀以上も経ってるんだぞ……?」
驚きを隠せないカイ。
「量産型でも、こういうこともあるのね」
ちびカナコの目は、懐かしさを漂わせていた。
しかし、郷愁に浸っていられるほど余裕のある場面では、ない。
今のところ力比べは互角の膠着状態だが、クロキがやや劣性に見える。いや、機兵と互角に持ち込めるクロキが異常なのだが。
サイコキネシスやパイロキネシスは効かないのか?
カイの疑念に応えるように、クロキが話を続ける。
「何か、素殴りしか効かねえんだよなぁ。仕方ねえから、コイツ等担いで押さえ込んでるんだよ」
「いやー、面目ない」
「ないっす」
ばつが悪そうなミクリと、素直に頭を下げるケンツ。
クロキがカイたちへちらりと目を向けた。
「って、お前等は何で平気なんだ?」
「カイが何とかしてくれてんだよ」
「お? そんなこと出来んのか、カイ。んじゃこっちも何とかしてくれや」
クロキの声が軽く弾んだ。
が、そもそもの声音が軽くない。
「いや、実際、余裕無いんだよ。そろそろ、気合い、入れてる、のも、限界、なんだ、わ」
言葉が少し途切れ途切れになってきた。
「もう少し保たせてください!」
PMDを手際よくタップするカイ。
操作モードをハンディからフルへ切り替え。
ここからは電子戦だ。
カイの目の前にスクリーンが幾つかと、コントロールパネルが3D投影される。
この施設自体にPCPLフィールドが展開されている、ということは、この施設の管制システムが稼働している。
ならば、システムをハッキングしてフィールドを停止させる!
ディスプレイの残存エネルギー表示は58%、いや、57%へ。現状のフィールド維持だけでも消費されていく。
のんびり出来る余地は、どちらにも無い。
予め登録しておいたショートカットコマンドから強制解析を実行。大量のデータをランダムに叩きつけ、ブロックパターンを割り出す。
十数秒ほどでコンプリート。それを3DGUIで表示。
カイの目の前の空間に、解析結果が3Dイメージで描写された。
典型的なボールタイプか!
表示されたファイアーウォールは完全な球形、スタンドアローンに次ぐ機密性を実現するために、極力アクセスを遮断したタイプ。
だが、ネットワークがある以上、完全遮断ではない。
球形の側面に4カ所、小さな穴が空いている。
出入り口、データをフィルタリングしているポートだ。
4つ同時に大量データを叩きつけて、フィルタリングに差がないかを比較。
鉄砲水のように出入り口を襲う、大量の光の粒。
差はない。
ならば、4つ同時に相手をする理由はない。
改めて3Dイメージを凝視。
生きてるならあるはず……あった!
穴の一つから、一定の間隔で光の粒が出てきている。
青い粒。
このシェルターの設備へと指令を出しているのは、このポートだ。
そこから出ているデータを拾って、フィルタの通過条件を分析。
進行度17%……18%……
遅い。
31……33……
出てくる量が少なすぎる。
58……59……
「カイ、まだ、かぁ!?」
「もう少し!」
クロキがじりじりと押されてきた。
その体のあちこちから小さく血が吹き出す。
血管と筋肉繊維が断裂、皮膚の色が変わっている。
ダメか? このままでは……。
他の手段を、と迷いが横切ったところで、急に進行度が跳ね上がった。
78、97、98、99、コンプリート。
よし!
即座に、今度は通過条件を付与したデータを大量にポートへ叩きつける。
同時にシステム解析用ウィルス、通称“Snatch Bee(ひったくり蜂)”も紛れ込ます。
小さな青い蜂を乗せて、青い光の洪水が穴へと襲いかかった。
球形にノイズが走る。大量データによる過負荷に、システムが悲鳴をあげている。
いつの時代でも、Dos攻撃は効果的なのだ。単純だが、圧倒的物量は一つの真理である。
その中、蜂が流れに逆行して戻ってきた。
持ち帰った情報を受信。システムのOSが判明。
「フィールド消えます!」
叫びながら、カイはさらに大量データを送信。
一回り以上増した洪水が球形に襲いかかる。
ノイズが一気に酷くなり、球体がブツっと消えた。
システムダウン。
ダウンライトが一瞬消え、自動で非常電源に切り替わり再点灯。
機兵の動きが、戸惑ったようにいったん止まった。
「ぶはぁっ!」
特大のため息を吐きながら、クロキが仰向けに倒れる。
その肩から影が二つ飛翔。
「やあっ!!」
「はあっ!!」
ミクリとケンツの同時攻撃。無防備な機兵に直撃。
が、リアクションは割れた。
「っしゃ!」
「あれ!?」
小さなガッツポーズのミクリに対して、ケンツの表情は困惑だ。
「て、手応えが無いっすよ?」
その言葉が示すように、機兵に斬撃の後は無い。
「二人とも下がれ!」
ヴァニスの声。ミクリとケンツがクロキを担いで飛び退く。
「おらぁぁぁっ!!」
「はあっ!!」
ヴァニスから雷が、エルから火花の鞭が走る。
しかし。
「なっ!?」
「うそっ!?」
雷は触れたところで消え、火花の先の業火も現れない。
「先輩と同じってことか!」
ヴァニスが吠えた。
ほぼ正解。全く同じではないが、67式にも防御用PCPLフィールド展開機能が、Ⅱ型から実装されている。
先ほどの膠着状態は、結果的に相殺となる紋様を持つクロキだからこそ成り立っていたのだ。
そのクロキがミクリへ声を飛ばす。
「ミクリ、その手甲ならいける、行け!」
「がってん!」
跳ね飛ぶミクリ。
ガガガガガガガッ!
「うぉりゃりゃりゃりゃあっ!」
乱打音とかけ声が混じって響く。
ミクリの手甲は、クロキの鱗を集めたもの。抜け落ちた鱗から“まだ使える”ものをつなぎ合わせて作ってある。
つまり、クロキの紋様が生きている。だから、機兵のPCPLフィールドを相殺出来るのだ。
機兵の体がわずかながら揺れているあたり、攻撃が届いているのは間違いがない。
しかし、機兵は無防備のまま、無警戒にミクリを見下ろしている。
機兵の装甲は六方晶窒化炭素と高密度強化人工ゴムとの複合素材だ。軍事用途では汎用素材、特別品ではないが、剛性と弾性が高いレベルで両立した、実用化当初は“夢の素材”と謳われた素材である。
ミクリの打撃では軽すぎるのだ。
機兵の右手が拳を引き絞るように構えられる。
「ヤバいっす! ミクリさん!」
ケンツの叫びに合わせるように、ミクリが「にゃっ!?」と飛び退く。
同時に機兵の拳の乱撃。
右手一本で、ミクリのラッシュ並の手数。
ギリ回避、のはずが数発ヒット。
「ふぎゃあぁぁぁ!」
吹き飛ばされるミクリ。だが、直前に跳んでいたため衝撃はかなり逃せた。
「手、手が伸びた!?」
クロキの横に着地しながら驚くミクリ。機兵の高速乱打は、肘から先が瞬間伸びるおまけ付きだったのだ。予想外のリーチ、それがミクリが攻撃を食らった理由である。
「バカ、力を“通せ”よ」
「あ、ごめーん」
仰向けのクロキに向かって、ミクリが頭をかく。
「カイ、何とかなんねぇのか!?」
「ちょっと待ってください!」
ヴァニスの怒鳴り声に応えながら、カイは3Dイメージを凝視していた。
この手の施設なら、必ず再起動用のサブシステムが存在する。メインがダウンした今、サブがメインを復旧させるはず。その復旧中に、蜂が持って帰ったOS情報でメインをハッキング、管理権限を奪ってしまえば……!
システムを掌握、さらに、システムを通じて67式も機能停止させられるはず!
蜂の情報を読みとって、3Dイメージを再描写、ダウンしたシステムの全体像が現れる。
暗い光で描かれた球体の内側に、同じく暗い光で描かれた、歪な塔。
いや、塔ではない。四角いコアモジュールの上下に、細長いブロックが積み重なった形状だ。ブロックの長さ大きさはバラバラで、とれるはずのないバランスをとった積み木細工のようである。球形のファイアーウォールの穴から、通り道がその上下の先へと続いていた。
その向こうに、光輝くもう一つの塔。
「何っ!?」
カイが驚くのと正に同じ瞬間、暗かった手前の塔の中心が再点灯。さらに、上下のブロックも次々に点灯していく。
「デュアルシステムだと!?」
サブシステムではない。全く同じシステムをサブとする、二重システムだ。
デュアルの場合、サブは単なる再起動用ではない。エラーを起こしたメインを代替し、ウィルスなどによるエラーも修復する役割を果たす。
メインとサブがつながっている以上、二つ同時にダウンさせ、同時にハッキングしない限りは、無限に修復されてしまう。
「させるかっ!」
メインの再ダウンを……っ。
再度Dos攻撃。青い光の波が襲いかかる。
しかし、攻撃を察知してサブシステムが接続コースを変更、青い波がサブシステムへと流れ込んだ。
サブシステムがダウンする前に、メインシステムの再起動、さらに自己修復まで完了。サブがダウンすれば、今度はメインが交代。
イタチごっこである。
カイのPMDのデータ出力では、これ以上のDos攻撃は不可能だ。現状維持で手一杯。
「ダメですっ、手が回せません!」
声を張り上げるカイ。
「俺が相手をする。ミクリ、動けるようになるまで、少しでいいから時間を稼げ」
息を整えながら、クロキがミクリへ指示。
鱗の紋様で体力は回復しなくても、切れた筋肉や健は回復する。
時間があれば。少しでも。
「う、うん」
「今、レティをっ」
ミクリがうなずくのに続いて、エルが飛び上がった。
「ダメだっ!」
「飛ぶなっ! エル!」
カイは知識から、クロキは直感からエルへと叫ぶ。
「え?」
空中へ舞い上がったエルへ、機兵が顔を向ける。
ミクリが疾走。
機兵の眼前に光の渦が超高速で発生、即座に収束。
閃光。横への薙ぎ払い。
「ぎゃんっ!!」
機兵とエルとの間に跳んで割り込んだミクリが撃墜される。とっさに腕の手甲でガードしたが、鱗の紋様でカバーしきれなかった上腕部の外側が抉られた。
「くぅぅぅ……っ」
ミクリが苦悶する。
「ミクリぃっ!!」
エルの悲鳴。地面に落ちたミクリの両腕から血が広がる。
骨まで届く傷。かなりの出血量だ。
エルの形相が変わった。その周りに火花がちらちらと広がり始める。
「このお……っ」
「バカ! よせエルっ!!」
火力が上がる前にヴァニスがエルへ飛びつく。その途中で発火、しかし耐えきってエルの両肩をつかみ、そのまま地面へと引きずり降ろす。
焼けた手でつかまれたエルが小さく呻いた。
「熱っ!」
「ぐっ……このバカ! ミクリちゃんも焼くつもりかっ!?」
「あ……ご、ごめんなさい……」
自分の肩以上に焼け焦げたヴァニスの一言で、正気に戻るエル。
「ったく、さっき気をつけて力を使えって言ったばかりだろうが……」
「ヴァニス団長!?」
膝を突くヴァニスを、エルが慌てて支えた。
「すみません、団長っ……」
「なぁに、ちと動けねえが死ぬことはねえよ。大丈夫大丈夫」
ヴァニスの捨て身の機転で、この部屋中が火の海にならずに済んだ。彼の実質的戦線離脱は痛いが、最悪は回避されてカイは胸をなで下ろす。
同時に、小さな疑問が頭を横切った。
火力が低い? 67式に装備されている加速粒子砲の出力はもっと大きいはずだ。この施設への被害を考えて、エネルギーを絞ったのか?
……判断能力は生きている?
「カイくんっ!」
ちびカナコの声に呼び戻されるカイ。
「はっ!?」
「フタクビアカゲギュウの肉をミクリちゃんへ! いいわね? クロキさん! ヴァニスさん!」
「おうっ、俺は大丈夫だ!」
「こっちもな! 頼むカイ!」
効くのか? あの重傷にこの一切れで?
言われて半信半疑ながら、分析用に残していた肉をミクリへ投げる。
「ミクリさん!」
「う、うん、……あむっ!」
飛んでくる肉に何とかかぶりつくミクリ。
「うううぅぅぅ…………ぷはぁっ」
大きく息を吐いて、ミクリの表情が緩む。
驚くカイ。
出血が減った。効いたのだ。
「ミクリ! 手甲で傷を塞げ!」
「うん!」
クロキに言われたとおりに手甲を引き上げるミクリ。肉の超回復と鱗の回復効果で、出血がさらに減っていく。
様子を見るように停止していた機兵が、活動を再開。
クロキへ向かって踏み出す。
機兵は、クロキを相手と認識しているらしい。
「ケンツ、時間を稼いでくれ!」
「了解っす!」
クロキの指示でケンツが疾走、目で追えない斬撃が間断なく繰り広げられる。
が、やはり全く効かない。機兵は気にもとめず、淡々と足を進めている。
「なら!」
地面に刀を突き刺すケンツ。そして、機兵が踏む瞬間、滑らすように刀を振り払う。
ズゥゥゥン……。
足下をすくわれた形で転ぶ機兵。
“地面に立つ”ためには、足の裏にPCPLフィールドを常に展開している訳にはいかないのだ。
「っしゃあ!」
ケンツのガッツポーズ。
機兵もわずかな間ピタリと止まっていた。しかし、あっさりと立ち上がり、また歩き始める。
足止めとしては短すぎる。クロキはまだ上体を何とか起こせる程度。
時間が足りなさすぎる! このままでは……。
戦場と3Dイメージとを交互に見るカイ。電子戦は完全に膠着状態、現状の処理速度では、これ以上の手は打てない。
……やるしかないか!? しかし、それでも間に合わない!
「よっし、治ったあーーーっ!!」
カイの迷いを断ち切るように、ミクリの声が響いた。
治った、といっても血は止まったが、完全な元通りには、さすがにまだ遠い。
しかし。
「ミクリ、頼めるか!?」
「あいよ、おっちゃん! とっておき、行くよ!」
クロキの問いに、力強く答えるミクリ。
「やるよぉぉぉおおおオオオオオオオオオ!!!」
吠えるミクリの声が怒号に、いや、雄叫びに変わっていく。
その腕が、足が、体が一回り大きくなる。
筋肉が隆起し、全身を毛が覆っていく。
顔つきが、いや、顔の形が変わる。
金に黒の縞模様の毛並みに、虎の顔。
「オオオアアアアアアガァウッ!!!」
まさに獣の咆哮だった。
「な、何ですアレはっ!?」
「アレがミクリちゃんの全力よ。変身出来るのよ、短時間だけど」
「博士、貴女が開発した“超越種”にそんな能力は無かったはずだ!」
例えばヴァニスのように、デフォルトで人外の姿のはず。
「ええ、私の新人類創造プロジェクトで誕生した超人類種はあくまで人間をベースに、人間から作り替えられた種族。変身能力なんか組み込んでないわ」
「なら!」
「だから、元々の人間部分にあったんでしょう。ほら、狼男とか、あるじゃない?」
「そんな根も葉もない伝承が……」
戸惑うカイ。
「現に存在するのは事実よ」
ちびカナコはミクリへと目を向ける。
「分かってるはずよ、カイくん。私たちの科学は、文明は本当に多くのことを解き明かした。それでもなお、全てを識り尽くしたわけではない。むしろ、分からないことがいかに多いかを発見していっただけだってことを」
ちびカナコの言葉は、紛れもない事実である。
物理法則をねじ曲げ、生命体として人類を超越した新種を創造してなお、解明されない謎のいかに多かったことか。
一人の科学者として、それはカイも重々承知していた。
「ガアアアァァァッ!!」
咆哮とともに獣の姿が消える。
同時に、機兵の体に叩き込まれる衝撃。
ドガガガガガガガガガッ!!
四方八方上下左右からの拳撃が、タイムラグなしに。
全包囲からの同時攻撃だ。
たった一人で。
「……なんてスピードだ……」
カイのつぶやきに、はっきりと驚きが表れている。
ディスプレイがトレースして映し出す姿は、完全に分身状態だ。
速すぎて処理が追い付かない。いや、処理は追い付いているかもしれないが、カイの、人間の目が追い付けない。
無数の金色の光が乱れ飛んでいるようにしか見えないのだ。
「ああなれば誰にも防げないわ。“金色の獣皇”の“無間の檻”から逃れる術はない。ただね?」
「ただ?」
「長くは保たないわよ? 獣化はミクリちゃんにも大きな負担なの。あのまま動き続ければ、いずれは肉体が壊れる」
戦場へと振り返るカイ。
戦況は一方的といっていい。機兵はまるで手を出せず、ミクリの打撃も威力を増し、そして“通って”いる。機兵の体が激しく揺れいているから、間違いはない。
それでも、67式を破壊するまでには至っていない。
あの重爆撃のごとき拳撃でもなお、火力不足なのだ。
優勢でも決定打がない。
「……何かないんですか、手だては?」
「クロキさんなら。でも、先にPCPLフィールドを解除しないと」
結局そこに帰るわけだ。
しかし、それなら。
時間が稼げている今なら。
「……時間の猶予はどれぐらいですか?」
「獣化は5分が関の山よ。あと4分、いや3分かしら?」
間に合うか? いや、間に合わせるしかない。
「博士、PMDのリソースを返してもらいますよ」
「カイくん?」
PMDを手早く操作、3Dコントロールパネルに警告画面が表れる。
!!!Caution!!!“Full-Dive mode”Do you execute it really?
「カイくん!? 正気!?」
「時間がありませんから、失礼」
Yesをタップ、 「待っ……」と言いかけたちびカナコが消え、カイのバイザーがPCPLフィールドを展開、カイの頭、いや脳を組み込んだ回路を形成する。
カイの視界が一気に遠のく。
吐きそうになる一瞬を過ぎて、カイが浮かんでいるのは、宇宙空間のような、果てしなく広がる黒の世界。
そこに光る歪な塔が2つ。
青い光の洪水に襲われながらも、交互に復旧しあっている。
「通らせてもらうぞ」
洪水に乗って一気にファイアーウォールの内側へ侵入。
侵入を感知した塔から、光の円盤が多数出現。カイへと襲いかかってくる。
フルダイブは脳を回路としてしまって、意識、精神が直接電子世界へと“潜る”アクセス方法。Dos攻撃と違って、意味のあるデータの塊となったカイをウィルスと認識したシステムが、アンチウィルスを放ったのだ。
アンチウィルスは“食った”対象を、意味のないデータへと書き換える。
それはつまり、精神的な死。
「どけ!!」
手を振ったカイのその先に、無数の光の盾が表れる。小型のパーソナルファイアーウォールと衝突した円盤が対消滅する。
同時に、カイの手にノイズが走った。
意識で直接ファイアーウォールを発生させる、プログラムを起動する。それは、フルダイブ中で精神を電子化している今、ブログラムからプログラムを発生させていることになり、自他の境界が曖昧になることを意味する。
自己を明確に保たないと、自分とプログラムとの、データとの区別がつかなくなる。
下手をすれば、広大な電子の世界にデータとして拡散してしまいかねないのだ。
霧のように。
それが、フルダイブが規制されていた理由だ。
次々と襲いかかる円盤。
対消滅させる光の盾。
円盤に、アンチウィルスに捕まれば、一気に浸食されておしまい。だが、盾を作れば作るほど自身の形に走るノイズが酷くなっていく。
早くシステム内部へ……!
カイの焦りを突くように、背後から円盤たちが迫る。
振り返った目前に円盤。
しまっ……!
光が弾けた。
「……って?」
まさに直前で、円盤が砕け散ったのだ。
続けざまに、周囲の円盤が砕け散っていく。いや、撃ち抜かれていく。
「まったく。無茶をする人ですね」
頭上の声に、カイが振り返った。
穏やかな笑顔。出発する前に見た、ショールを巻いたホログラフ姿。その左右に浮かぶ菱形の多角形から、光の弾が連射されていた。
「博士!?」
「この世界なら、貴方のPMDのリソースを使う量も大幅に減らせますからね。とっさにこの分身を圧縮して、電子戦用に書き換えました」
にこやかに微笑むカナコ。
「サポートしますから、急ぎなさい、カイくん」
「ありがとうございます!」
弾幕に守られながらシステムへ再突進、蜂が持ち帰った情報を頼りにコアモジュールへ、管理権限を設定するブロックへと向かう。
「ここだ!」
無理矢理手を突っ込む。
カイの体に大きなノイズが走るが、かまわず、歯を食いしばって、力ずくでコアモジュールの壁をこじ開ける。
その奥へ手を伸ばす。そして。
つかんだ。
システムと直結したカイの体が歪む。
「しっかりしなさい! 自分を見失わないで!」
「う、うおおおぉぉぉっ!!」
か、管理者権限、の登ろ……く……。
シス……テムの、コントロ……ール開始。
サ、ブシ、ステ……ムの干、しょ……う遮、断。
同……時に……サブ、シス、テ、む、の、か、き、カ、エ、ヲ…………。
オ………ォ………。
……………………。
「カイくんっ!!!」
「ォ、ォ、ォォォオオオおおおっ!!!」
カナコの声に、怒号で応えるカイ。
システムが一瞬明滅。
円盤が一斉に動きを止めた。
静寂に包まれる電子の宇宙。
カナコがカイに飛びついて、コアモジュールから引き剥がす。
「しっかり! しっかりしなさいカイくん!!」
「だ、大丈……夫です、よ」
答えてはいるが、とても大丈夫には見えない。ノイズで全身が点滅している有様だ。
しかも、端から霧散し始めている。
「何言ってるの! 早くフルダイブを解除して! 肉体の感覚を感じないと消えてしまうわ!!」
「は、はい」
言われるままに解除、一気に戻ってくる五感の強烈さに、そして疲労に膝を突いて吐くカイ。
「うっ、ゲェェェッ! ゲホォッ!」
「な、何だカイ、どうした?」
事情が分からないヴァニスが慌てて声をかける。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫です……焼け焦げて動けない貴方よりは」
真っ青な顔で無理矢理軽口を叩くカイ。
「何を言ってるの。あんな無茶、もう許しませんからね?」
再登場とともに真剣な顔になるちびカナコ。
「ははは……、二度とごめんですよ」
カイも苦笑いして、すぐに表情を引き締める。
「ですが、これで」
「そうね、これで」
システム制圧完了だ。
「戦況は?」
顔を上げるカイ。
「ガアアアァァァッ!!」
ドガガガッ! ドガッ! ドガガッ!!
相変わらず乱れ飛ぶ金色の影、揺さぶられる機兵。
ただし、絶え間ない連撃だったものが、今は乱発。その合間に機兵が拳を放ち、ミクリがかわすようになっている。
……何故だ?
何故、加速粒子砲を撃たない? いや、範囲攻撃なら散弾タイプの拡散型プラズマブラスター、全方向用の電磁式高密度衝撃波だってあるはずだ。それなのに、何故拳だけしか使わない?
直接拳を交わしているミクリも、間近で見ているクロキも、似たような疑問を持っていた。
いや、それ以上のことを察していた。
息継ぎでクロキの横に着地したミクリがつぶやく。
「師匠、この人は……」
「ああ、多分な」
機兵は、ミクリとクロキを標的としている。それ以外はほとんど無視。
飛び道具を使おうとしない。拳のみの肉弾戦。
攻撃は的確、格闘技術は間違いなく高い。なのに防御する気は全くない。知らないはずはないのに。
まるで、自分に通じる強者と戦い、攻撃をしてもらいたいかのように。
「どうしよう?」
「それが、こいつの願いなんだろうさ」
ミクリへ淡々と答えてから、クロキはカイへ声を上げる。
「カイ! どうにかならんか!?」
「これからあいつのフィールドを解除します! そうすれば普通に攻撃は効きます!」
「助かる! 俺ももうすぐ動ける、頼んだ!」
それからミクリへと目を戻す。
「カイが何とかするまで、もう少し稼いでくれ」
「了解、師匠。少しキツいけど、やれるだけやってくる」
「すまん、頼んだ」
ミクリが跳ぶと同時に、カイはコントロールパネルに向かう。
Dos攻撃を解除、正式にシステムへアクセス。施設内の設備のコントロールプログラムを展開。
システムから機兵は常にアクセスを受けている。施設の警備ユニットだからだ。なら、システムから停止コマンドを送ればいいだけの話。
システムを完全制御した今なら、数秒で終わる話だ。
なのに。
「……警備ユニットじゃない!?」
カイの声に困惑が混じる。
警備ユニット一覧に67式が存在しない。
そんなバカな、ならあれは一体?
システム内検索で稼働している67式を検索、該当は一件。
警備兵一覧に。
「人なのか!?」
そんなことが……。
システムから稼働中67式へアクセス。機兵のシステム情報を3Dイメージで再現描写。
いくつかの光る球体が輪を描くように並ぶ。同一軌道上に惑星が並んだような配置。
その中心に、ひときわ大きな塊。おそらくメインシステムのイメージ像だろう。
脳。人間の。
「そんな……」
呆然とするカイ。
「人間、なのか……?」
「そうね」
あの67式は、人間をベースにした初期型に、他の型のパーツを換装し続けて出来た姿ということになる。
カイに答えてから、ちびカナコは懐かしむ目になった。
「まだ、生きている人がいたのね……33、いえ34世紀近くも経ったというのにね」
「いや、生きているとは……もう人間とは言えない……」
カイの戸惑う声。
イメージ像の脳は、暗い光。稼働していないことを示唆する表示だ。
つまり、脳は死んでいる。
言うなれば、周辺のプログラムによって死体が動かされているようなものだ。
「そうかしら? 私は意思を感じるけれど。クロキさんとミクリちゃんとだけの肉弾戦を望んでいるように見えるわ」
「そうだとしても、それは残った機体コントロールプログラムがそう動かしているだけで……」
「それと、私と、どう違うのかしら?」
言葉に詰まるカイ。
優しく微笑むちびカナコ。
違う点は挙げられるだろう。しかし、本質的には……。
違うと、断言はできない。
「……あの人は、多分、もう疲れたんでしょうね」
無言のカイに代わってコントロールパネルを勝手に操作して、ちびカナコが続けた。
ちびカナコが調べた結果に目を向けるカイ。
あの機兵の換装パーツの元々の所持者。それは、全て、同じように機兵化された警備兵たちだった。
機能停止していく同僚から、体を託されて生き続ける。
最後の一人になっても。
誰もいなくなっても。
それから、一体どれほどの時間が過ぎたのだろう。
脳が死んでも、死ぬことを自分が許せなかったのだろうか。
託された自分が終わってしまうことを許せなかったのだろうか。
いや、許されないと思ったのか。
だから、許してくれる相手を求めているのか。
終わることを。
ドガッ! ドガガッ! ドガッ!
響くミクリの拳撃の音が単発になっている。
「グゥッ、ウゥ……ゥウガアァッ!!」
息を切らせながらも、それでも跳ぶミクリ。着地する度に足がガクガクと震えている。
限界を超えている。
「カイ! まだか!?」
クロキの声。膝を突いているが、もう体を起こせるところまで回復している。
「カイくん」
「……はい」
コントロールパネルをタップ。
システムからの強制干渉。機兵のPCPLフィールド強制停止。
機兵が動きを止めた。そして、自分の両手を見るような仕草をとる。
自身のPCPLフィールドが消えたことを、理解したのだ。
「……解除しました」
「よし! ミクリ、下がれ!」
「うんっ!」
クロキに言われて、ミクリが後ろへと跳び下がる。
クロキの後ろへ着地した途端、地面へと手を突くミクリ。その姿が見る見るうちに元の少女の姿へと戻っていく。
「ううっ、げほっ!」
ミクリの口から吐き出される血。体を支える両手足が震え、あちらこちらに内出血が浮かび、そのところどころからは皮膚が破れて血が流れ出している。
限界を超えた反動が、まとめて出ていた。
代わりにクロキが片膝を突いたまま、右手を引いて構えた。
理解した機兵が、クロキへと体を向ける。
数mの距離で、対峙する両者。
見下ろす機兵。
見上げるクロキ。
動かない二人。時間が止まったかのように。
「もう休め」
クロキの静かな声。
そして、正拳突き。
クロキのパイロキネシスとサイコキネシスが同時に発動。サイコキネシスで超高圧力を拳の前に発生させ、パイロキネシスの高熱をさらに、劇的に上昇させる。超高圧と超高熱でプラズマが発生。
この現象を、機兵まで連続で発生させ続けて“通す”。
先に発生したプラズマの熱量が加わり続けて、乗算でエネルギー増大、超々圧力と超々高熱によって、わずかながら分子が熱核融合を起こす。
つまり、小型の太陽に等しいエネルギー。その力が一直線に、機兵を貫くように“通される”。
二つの能力、そしてロストアーツを極めたクロキの奥の手。
物質が形を留めることを許さない閃光。
終の技、“天羽々斬”。
その終焉の光を前に、機兵は両手を広げていた。
迎えるように。
キュゴオオオオオオォォォォォォ!!!
サイコキネシスで囲われている故に周囲に被害は出さず、しかし通る直線上は全て消滅させた閃光。
機兵の胸から上と、その向こうの壁のその先まで。
機兵の残骸が、膝から崩れ落ちる。
クロキが、入れ替わりに立ち上がる。
その視線の先に横たわっているのは、遙かな孤独の名残り。
クロキの唇が、静かに動いた。
「永い間、お疲れさん」
それは、穏やかで、そして敬意が込められた声だった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
評価や感想(ダメ出し)も、少しでもいただければ嬉しいです。
6章、最終章でした。あとは後日談を少々で、このお話はお終いです。
最後までお付き合いいただければ幸いです。
ちなみに、ラノベ寄りのお話としては、
◆近代SF風バトル有り……「姫君と仮面の男」
◆シリアス系超能力医療物?……「クリーンルームを閉鎖するにあたって」
があります。
また、文芸寄りでは、
◆だらだら青春?物……「平々凡々たる原田くんのセイシュンノホーソク」
◆片思い恋愛物……「白詰草の詩」
◆シリアス医療系の重め……「ひかり」
があります。
よろしければ、またご覧ください。
どうもありがとうございました!




