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過去の男とめくるめく散文たち

いちごと15

作者: 水岡きよみ

心臓が、跳ね上がる

池に投げられたパンを取りにくる瞬間の鯉のように

びくん、どどん、跳び上がった

秘密がばれたときよりも反射的に激しく

抑えきれないこの喜びは

エンターキーを押して数秒 昂ぶり

そして数十秒して

エアコンの音以外に音沙汰のない部屋に佇み

ひとり、沈む


忘れるところだった

わたしの立場を

舞い上がっていた

君のよろこびは私の喜び

完全に、思い込んでいた

もう君の心はわたしのもとに戻ることはないのにね


まさか、忘れてたなんて言わせないわよ

もうひとりのわたしが、わたしをそう責め立てる

無自覚 注意散漫 集中力欠如

君がかけた、恐ろしい呪いは

あのときから1年たつけれど

いまだ解ける気配はなく

ただ、このこころだけが

いつも激しい振幅と発熱を持って溶けそうになるばかり


いつか わたしは

蒸発してこの想いを、まるで初めから存在しなかったかのように

空気と浄化させてきれいに消すことができるでしょうか

この15がふたつ重なる夏の日に

去年より明けが少し遅かったように感じる梅雨がもたらした思い出

甘さが染みてむしろ辛いようなショートケーキに

6本の蝋燭を挿して

わたしの熱で火を点ける

この火が炎となっていつか君を わたしを

呑み込まないものかしら


そんな馬鹿げたことを考えながら

阿呆で頭の足りない恋する鳩は

君の香りのする街へ



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