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第5話

「ではまず、こちらへどうぞ。サフィア・レジュナ・ミント・陽菜さん」

「好きな呼び方でいいですよ。どれも私自身の名前だからな。愛称をつけたいなら、それはそれで良いけど。個人としての名も今の名も私の名前だ」

「でしたら、そうですねー……うーん、考えときます」

 平凡な女学生のミント、敬虔なシスターのサフィアとしては、ファティマに対して親愛を抱きつつあった。

 しかし、シリアルキラーのレジュナ、テロリストの陽菜としては、ファティマの話がまだウソかどうか、それを判別するには情報がまだ少な過ぎる事と、ここに居ると言うもう1人の住人が誰で、どういう人物か――それを見定めるまでは、安心はできない。

 どれが主人格と言う訳ではなく、全ての人格が混ざり合って出来た人格である為に、仮に2つの人格思考が納得しても、もう2つが納得しなければ完全に納得したことにならない――それが、サフィア・レジュナ・ミント・陽菜と言う存在が、まだまだ不安定である事の一因である。

「――どこまで行くの?」

 廊下は、石と金属――そして、樹木が入り組んだかのような様相。

 床や壁、天井は石で出来ているのに、柱などは金属――そして、それらにアクセントを添えるかのように、絡みつく樹木。

 この時計塔には正式名称はなく、それぞれが“世界樹”、“天の柱”など様々な呼び名で呼んでいると言うのを思い出し、世界樹と言うのはなんとなく納得をしつつ――ファティマに問いかける。

「私の仕事場――書庫にです」

「書庫?」

「この時計塔は、全ての世界と次元、時空を支える要であると同時に、全ての世界の輪廻転生を司る、魂の循環機関でもあります――その過程により生まれる、英知を記した書物を保管する書庫と、記憶を奏でるオルゴール。それらを守り、管理するのが私達時計守の仕sいお事です」

「――壮大な話ですね。世界を支える柱にして全ての魂の循環機関……か。じゃあ私のオリジナルの魂もここに? 全ての英知がここに、か」

「改めまして……私はファティマ。時計守りにして――」

 芝居のかかった動作と名乗りを行い、辿り着いた重厚な門――その扉のノブにある、小さな手形にそっと掌を重ねて……

「この英知の書庫の管理者です」

 重い音を立て、ゆっくりと扉が開いていき――そして。

「……わあっ」

 中にあるのは、立ち並ぶ本棚――それも、高層ビルかと言わんばかりに、とてつもなく高い本棚が立ち並び、通路だけで地平線が見えると言う程に広い空間。

 勿論本棚には、ぎっしりと本が詰められており、サフィア・レジュナ・ミント・陽菜は全人格一致で、その光景に圧倒されていた。

「――ここを、お1人でですか? 半端じゃない広さだな。すごい、図書館なんて物じゃないよ。天井も壁も見えないなんて、一体どれだけ広いんだ?」

「うん、1人でやってるよ。そりゃあ、全ての世界の知識だからね」

「……私でも読める物はありますか? とりあえず、何か読んでみたい。でも、こんなにある中であるかな? 無理なら言わないが」

「大丈夫だよ。ここの本は読む人の合わせて文字が変わるから、そこらの本を取って読んでみても良いよ。ただし、図書カードの登録してからじゃないと、対応しないけどね」

「――では、お願いします。これだけすごい場所で、まさか小学生みたいな事をやるとは。それにしても、すごいなあ。一体どんな物が読めるのか?」


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