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第3話

次の日の朝。

時計塔が朝を知らせるメロディを、オルゴールが演奏し――人々がそれぞれの生活を始めるその時分。


 カランカラン!


「おっ、いらっしゃいませー……あれ? ティムの旦那じゃないっすか」

「おはよ、レンさん」

 レン・フォーゼル。

 背まで伸びた銀髪を三編みにし、メガネとベレー帽をつけた、雑貨屋フォーゼルの店主。

 元々は旅の行商人だったが、ここに腰を落ち着け雑貨屋フォーゼルを開業したという、たくましい経緯を持つ女性。

「注文の品は揃ってるっすけど? ああっ、もしかして昨日の迷い子っすか?」

「はい。と言っても、まだ目が覚めてないんで、とりあえず食料の追加買い出し――と言う訳で、いつものをもう1人分の願い」

「了解ですぜ。ちょーっとお待ちを」

 銀髪の三つ編みを翻し、一路食料品の納めてある場へと赴き、幾つかの品を袋に詰めて、ティムの元々の注文品の詰まった袋と共に差し出す。

「ありがと。それじゃ――えーっと」

「お支払いは、2860ロノスっす」

 ロノスとは、この世界における、紙幣、金貨、銀貨、銅貨からなる通貨の名称。

「ロノスの扱いに離れた?」

「金勘定は商人の生命線ですぜ旦那」

「そっか。じゃあ頑張ってね」

「ありがとうございましたー」

 雑貨屋フォーゼルから出ると、次に向かうのは――

「いらっしゃーい。あれ、ティム君?」

「おはよ、プレセア。薬頼みたいんだけど良い?」

 魔法薬局ドラグポーション

 店主のプレセアの笑顔の出迎えに、ティムは笑顔で応じて薬の注文を。

「ふんふん――わかった。じゃあ調合するから、ちょっと待っててね」

 プレセアの魔法薬は、注文を受けてから作られる。

 調合したら保存が効かない物、出来たての方が効果が高い薬が多い為、プレセアは特に焦る事無く薬草保存庫を開き、必要な薬草を取り出し調合し始める。

「~♪ ~♪ はい、出来たよー。お会計は、1400ロノスね」

「はい」

「はい、ありがとうございましたー」

「さてと、帰るとする……」

「ティム!」

 ドラグポーションから出てすぐに、1人の男性が声をかけて来た。

 自警団員を務める男、夜瀬澪次。

 肩までかかる黒髪の前が身で片目を隠し、露わになっている眼は、死祖と呼ばれる吸血鬼特有の血の様に紅い瞳。

 戦いで生き残る事だけに順応した、細身ながらも引き締まった筋肉の付いた身体ながら、優しげな雰囲気を持つ少年は、心配そうにティムに問いかけた。

「あっ、おはようございます。澪次さん」

「ああっ、おはよう。昨日の迷い子来訪の件だけど、大丈夫だったかな?」

「今はまだ寝てます――けど、自警団の力を借りるほどじゃないですよ」

「そうかい? ――わかった」

「澪次さんは、ここには薬を買いに?」

「ああっ、自警団も人手不足だから色々と大変だ。それでは」

「はい」

 澪次がドラグポーションに入って行くのを見送り、ティムは時計塔に向けて歩を進める。

「――えーっと……シルクの所には、目覚めてからでいいか。さてと、帰ったらランチの準備して、早くオルゴールの点検しないと」


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