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プロローグ

 大きな、と言う表現では追いつかない、巨大な時計塔がある。

 その時計塔を中心に、その周囲には木造から石造りまで、それぞれ違う文化体系の建物が取り囲み、寄り添うかのように立ち並んでいる。

 その中心に据えられた時計塔から、時間を告げる巨大オルゴールが鳴り響くと、朝ならば一斉に目を覚まし、昼ならば一斉に昼食をとり、夕方ならば一斉に帰宅し、夜ならば一斉に眠るという風に、呼応するかのように街は一斉に動き出す。

 今、その時計塔に備え付けられた書庫の片隅で、小さな管理人が1人せっせと本を片付けている。

「よいしょ、よいしょっと」

 ファティマは頑張り屋な女の子で、仕事は書庫の管理と書物の整理。

移動用の台車に乗り、積まれている本を抱え、地平線が見えるほど広い書庫を駆けまわり、抱えている本の分類を示す表記を探し、本を納めると言う単純ながらも大変な作業を、今日もせっせとこなしている。

一体いつからそうしているのかは、最早少女自身もわからない。

「――ふぅっ」

 本を納めると、一息ついてから腰を伸ばして、また台車に乗って、次の時間を知らせる鐘が鳴るまで、それを延々と繰り返す。

 少々埃にまみれたウサ耳フード、そしてお気に入りのケープ、そして手袋を少々払いつつ、自動的に移動する台車に乗って、少女は書庫を見回り。


 ~♪ ~♪


 そして、終わりの時間を知らせる音色が鳴り響き、丁度最後の一冊を片付け終えたファティマが、万歳する様に両手を挙げる。

「――お仕事おしまい!」

 移動用台車がこれまで来た道を逆走して、そこでファティマはフード、ケープ、手袋を脱いで、埃を払い落しながら――。

「今日のご飯は何にしようかな?」

 食事当番の為、今日は何を作ろうかの思案に入りつつ、台所へと歩を進めていった。


 そして、時計塔に備え付けられた巨大なオルゴールでも、もう1人の小さな管理人がせっせとオルゴールの点検をしていた。

「これでよしっと」

 ティムはファティマより少し背の高く、要領のいい男の子。

 機械油と錆で汚れた作業服に手袋を脱いで、時計塔と同じ基準に合わせた愛用の懐中時計を手に、機関室を出て笛を取りだし、そっと口を当てる。

 時間となり、ティムはオルゴールと呼応するかのように笛を吹き、音色を合わせ、次の時間を知らせる時計守。

「――さて、と」

 ティムは階段を駆け下りて、時計塔にある自分たちの生活スペースへと駆けだし、作業服を脱いで洗濯かごへと放り込み、手を洗う。

「ファティマー!」

「ご飯ならまだだよー!」

「じゃあお風呂沸かすからな―!」

「わかったー!」

 2人は時計塔を守る、時計守。

 全時空、全次元に存在する世界を支える時計塔で、時の英知を守る少女ファティマ、時の音色を守る少年ティム。

 この奈落の底、あるいは楽園、あるいは次元の狭間、あるいはエデン、あるいは地獄――世界を支える土台であるこの場所で。

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