旅立つ子らに祝福を
潮見
極北内海沿岸地域を中心として見られる船乗の職位。他の地方だと航海士とか水先案内人として言われる事が多い。
極北内海諸地域の海図に精通している古参の船員が務める事が多く、その指示には船長や船団長も一目置かなくてはならない。と言うか船長といえども彼等の助力なしに港への安全な道筋をたどることが困難である。
元々は経験豊富な地元の水夫を現地での交渉役兼案内人として雇い入れたのが始まりで古い仕来りを持つ船団だと港ごとに潮見担当を変えていることが多い。
【西の凍らず】は船の行き来の途絶えるときはない。
出会っては別れて、別れては再会し、人生は旅のようなものであると街そのものが表している。
そして今日も・・・・・・・・・・・・・・・・
「絶対ここでみんなで会おう!」
「いってくるねー」
「どうしても行かないと駄目なの?」
「俺たちもお前ら見送ったら行くから」
「暖かくして寝るんだよ、風邪引くんじゃないわよ、あなた達ならどこ行ってもやっていけるから・・・・・・・・」
「おんなせんせー!」
新たなる旅立ちをする子供たちと別れを惜しむ者たちがいるのである。
「お前らも行って来い。」
「もう少しいちゃ駄目?」
「食費くらい稼ぐからさぁ・・・・・・・・・」
「馬鹿言ってないで冥界に行って生まれなおして来い。もともと、冥界行く金を稼ぐためにがんばったんだろ・・・・・・・・・・・」
「そうなんだけどさぁ・・・・・・・・・・・・・みんなとバイバイするのが嫌・・・・・・」
「お菓子食べられなくなるの・・・・・・・・・・・・・・」
「そっちかい!」
「そろそろ良いかな死霊っ子ども。冥界への道をつなぐぞ。」
「ええっ!もう!」
「そんなことを言っても船出の時間はもうすぐだ!潮の流れも今がよいときだからな、これを逃したら遅れてしまう。さぁ、行くぞ。」
「死霊っ子ちゃん達またねー!」
「これ持ってけ。道中腹減るだろ。」
「小僧っ子の兄さん!ありがとう。」
「いいのー?」「ありがとうー」
別れ、別れて出会うことなき旅路に向かう死霊っ子達は孤児っ子達とも別れの挨拶をしたり勇者(笑)相手にまだ居たいと駄々捏ねたりしているけど弔い手の一言に旅立つ実感がしみてくる。
そして、朗々と響き渡る弔い手の祈りの詩に冥界の案内人が天より歩いて降りてくる。
さぁ、往こうか幸いなる子供達。死して尚、見事に幸いの種をまいた、花開き実りの時を見られぬのは残念だろうけどそれでもお前達の成した事は着実に世界に花開くであろう。
死したる者はあるべき場所へ、生きてる者がこれからは進めていくことだから。(by冥界の案内人)
「えー、それって出番取られて可愛そうだから手加減してやれってこと?」
死霊っ子、その表現は間違いではないが取り繕ってくれ。神も英霊も死霊も勇者も過去の遺物で世界というものは今居る者達で進めていくべきものだからな。(by冥界の案内人)
「案内人さん、お願いします。」
勇者(笑)が案内人に菓子の入った袋を渡しながら死霊っ子達の後生を願う。お願いするときは対価は大事である、決して賄賂ではない。
十分賄賂だと思うのだが。(by極北諸神群砥石の盾を抱く英霊神)
ここは労働の対価と言う物だ。我にも分け前よこせよ。(by冥界の門衛)
その菓子は後で我に供出する様に。(by冥界神)
菓子を受け取ると案内人は光り輝く道を指し示し、一歩歩みを進める。
さぁ、小さき者よ旅路を往こう。
この地にて君達の成すべき事はなく、冥界にて眠り休めるもよく、先に進むのもよい。死したる後に幸いの道筋をつなぐ稀有なる者よ、君達の名を語り継がれずとも君達の行いがやがて誰かの幸いの一助となるだろう。道におびえる子よ、案ずる事はない。この道は誰もが至る道、世界に還り生まれ戻るその日まで魂を休め研鑽するための場所。優しき眠りを司る冥界の神の腕へと誘おう。
さぁ、小さき者達よ旅路を往こう。(by冥界の案内人)
冥界の案内人の言葉に死霊っ子達は小さくうなずくと恐る恐る光の道に足を進める。
「にーちゃん、往ってくるね。」
「神官さん、おせわになりましたー」
「まだ居たいよぉ・・・・・・・・・・・・・・・・」
思い思いに別れの言葉を発する死霊っ子、少し離れた所に死霊っ子やら孤児っ子の見送りに着ていた町の衆やら神職達が静かに見届けている。その中には死霊っ子の家族だった者の姿も見える、死霊っ子の一人が光の道から飛び降りて家族の下へと・・・・・・・・・・・・・
「かあちゃん、みんな・・・・・・・・・・・・・往ってくる。」
「馬鹿息子、ふらふらしてないでとっとと冥界にいきな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。」
泣きべそをかいて光の道をかけていく死霊っ子・・・・・・・・・・・
死霊っ子達が進むたびに道は解けるように消えていく・・・・・・・・・・・
そして死霊っ子達が去った後には道の痕跡はどこにもなく、いつもの港の光景となるのであった。
死霊っ子達の去った後を弔い手は幸いであるようにと一言祈って【眠りの園】へと帰るのである。
ああ、幸いなる子。愛しい子、妾はこの地に戻ってくる日を待っておるぞ。(by極光神)
「神官さん、僕達も行くね。」「ごはんありがとー」
「兄弟、元気でな。」「お前こそ腹出して寝冷えするなよ!」
「では、僕達も行こうか・・・・・・・・・・」
「神官殿、この子達の事はお任せあれ。我等が氏族の名にかけて、面倒を見ましょう。」
「まかせておけ!」
「神官さん男達は頼りないけどあたしたちがいるから大丈夫だからね。」
「皆さんこの子達のことをよろしくお願いします。」
「女先生さん、この子達の事はあたし達が責任もって育てるから安心おし。」
「せんせー、せんせーもげんきでね。」
「私よりあんた達のほうが心配だわ。」
「先生病み上がりじゃん、やっぱ心配だよ。」
孤児っ子同士やら大人達を交えての挨拶やら様々な約束事が改めて交わされる。極北の民は情に厚い、孤児っ子達の旅立ちに街の衆からも祝福や忠告が贈られ神職達も旅路が恙なき物である様にと神々への願いが捧げられる。
「向こうについたら我の友がいるから何かあったら彼に頼るのが良いぞ。」
「わかった。鍛冶屋のおじちゃんも元気で。」
「酢の実に嫁いだ又従妹がいるからよろしく言って置いてくれ。」
「うんっ!」
「逆立つ髪、【東の凍らず】で合流しよう。」
「うむ、人日卿もよき旅路を。」
「荒野の面々にもよき旅路を。」
様々な言葉が交わされるが、潮の流れというのは待ってくれる物ではなく海路を行く連中を乗せる船の潮見(航海士に当たる)は長々と交わされる挨拶に歯止めをかける。
「皆の衆、悪いが潮の流れが変わる前に海に出たい。船長、出航の命令を。」
船長は船員達に号令を出す。
「野郎共帆をはれぇぇぇ!出るぞぉぉぉぉ!」
港で長々と別れを交わしていた者達はあわてて船に乗り込む。
帆は風をはらみ黒い海へと乗り出す。孤児っ子たちは陸に居る者達へと大きく手を振る。
勇者(笑)も陸の者達に大きく手を振る、彼もまた別れを惜しむ者の一人なのだから・・・・・・・・・・
勇者(笑)や孤児っ子達を乗せた船をはじめとして東に進む船は次々に出港して潮の流れに乗るのである。
願わくば彼等の旅路が健やかなるものであるように・・・・・・・・・・・
願わくば彼等の行く先で幸いが得られますように・・・・・・・・・・・・・
陸に居る者達は水面に消えていく彼らのことを想い、それぞれの道を行くのである。
その日【西の凍らず】の孤児院は閉鎖される。
多くの孤児達が養い親を得て四方に散っていったからである。子供達はそ勇者(笑)の菓子の技術を携えて其々の地で懸命に生きていくのである。
愛し子よ、汝らの道筋に幸いあれ。(by極光神)
導なき子供らよ、汝らに道開く力が常にあらんことを。(by極北神)
朝が早いから眠たい眠たい。
そして飲みながら仕事をしてはダメなんて酷い事を言うものだから、体がだるい。
さて、飲もう。




