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旅立ちは突然にと言うけれど

巨人族


人族の数倍から十倍程度の体躯を誇る人外種族の一。古の巨人ともなると世界を足場にして移動した等と言う伝説もあるが通常見かける物は人族の三倍から五倍程度、性質はおおむね温和である。

その巨躯と剛力から人族と敵対する乱暴者と思われがちだが大半の者は農耕や牧畜で生計を立てる穏やかな者達であり、【狭間の国】や【魔王領】では力を買われて荷役や建築に携わる者も多い。


主な勢力地域は【極北連合】の【霜の郷】を中心とする【霜の一族】、【狭間の国】は【地竜山地】近郊の【丘の一族】、【魔王領】の諸地域に(以下部族名の列記)


【知的種族図鑑】巨人族の項目より

【雪の船団】の痘痕面をやり込めた極北の面々は他の商船団の船を雇うなり自力で旅立つなりして故郷へと帰る準備をする。その手に土産となる物資は少ないけれど、多くの友好と土産話を携えている。その他にも将来有望な子供達を脇に抱えている者も見受けられる。


「ねぇねぇ、族長さん。いくら何でも僕ら荷物扱いっていうのは・・・・・・・・」

「私なんか肩に担がれているんだけど・・・・・・・・・」

「いくらなんでもたいぐうかいぜんよようきゅうする!」

「うるさい!そうでもしないと逃げ出すだろう。」

「そんなことしないもん!ちゃんとしたおとなだったら!」

「そうそう、よっぱらってげろはいたり、かみさまにしかられたりしするようなだめなおとなといっしょにいただだめっておんなせんせいがいっていたもん。」

「少なくともモヤシな神官様より弱い大人の元だったら自分で身を守る以上に手間だもん。」


孤児っ子達の要求する親の条件と言うのは意外と高かった。

因みに勇者(笑)は戦力的には弱い方である、あの時勝てていたのは相手が酔っぱらっていたことと【聖女様の菓子】をうまく口腔内に放り込めたからである。経済力的には族長連中よりも上だったりするのだが・・・・・・・・・・・・・

そもそも族長と言っても特権階級と言うわけでもなく仲間内での交渉役と言うかまとめ役的な意味合いが強いので左程他の極北の民との生活と変わらない。其処を追及するのは酷という物であろう。


それ以前の問題として酔態を見せた大人の子としていたくないというのが本音だろう。(by極北諸神群氷の塊の上に坐す祖神)

酒に呑まれるようでは修業が足らぬようだな。(by極北諸神群青草の風を楽しむ祖神)

異界の者の方が孤児っ子達の養い親に相応しいのは否定できぬ。我が子等とはいえ何とも情けない事だ。(by極北諸神群 黄金の原に寝転ぶ祖神)

我等が大神が何とも情けない事をするから・・・・・・・・・・・それを子等も真似ているのだろう(by極北諸神群花の冠を編む祖神)


なぁ、我が眷属神達よ。我に対していう事があるのか?(by極北神)

そりゃ言いたいことはありますぞ、我等が大いなる神よ!大地を離れたる身(死霊の事を指す)であってさえ、自らの身を養い、下の者の事を案じ、大地に根ずく者(生きている物の事を指す)の禍に対して憂いて自らの蓄えを差し出す優しき者の生計の道をただの一時の欲の為に台無しにする行為。これは我等が大いなる祖神と言うものがこのような行動を行うなんて・・・・・・・・・・・(by花の冠を編む祖神)

更に言わせてもらえれば親無き子供等の危難に対して最初に手を差し伸べたるは大地離れたる幼き死霊と世界に寄る辺無き身である異世界の若者であろう!なぁ、大いなる者よ。問いたい!我等の子等は何をしていたのだ?身を削る母のみに任せて子等の幸に目をかけぬとは何という非道!我等の子等は一切れの麺麭を分かち合う事を忘れてしまったのか?しかも我等を祀る者達が傍にいるというのに嘆かわしき事よ・・・・・・・・(by黄金の原に寝転ぶ祖神)

祖神よ祖神!始まりの祖神。我等の子等の範となる者よ。何故に我等の子等が酔うて自制する事を忘れる?酒は楽しくあるべきものであろう。酔いどれて子等に無体するとは・・・・・・・・・・嘆かわしくて嘆かわしくて・・・・・・・・・(by青草の風を楽しむ祖神)

それは些細なこと、なれど薊の子に対する事は何かいう事あろうか?かの幼子、親を失いし後だというのに同朋の贄となるなどとは・・・・・・・・・・・・・・・

幼子を贄とする我等が子の不甲斐無さを責めたくもあるが、それを是として今まで見出さ無き我ら一同の在り方は子等を見守り教え導く祖霊であろうか?子等に降りかかる吹雪を切り払う剣としての英霊としての在り方であろうか?我等が大いなる神よ、その眼は何を写す。我等が大いなる神よ、その耳はなにを聞く?我等とて神域にて惰眠を貪っていたことを恥じよう、なれど人界にて広く動き回っていて何をしていたのだ?酒か?酒か?酒か?それとも大いなる夜の姫神や可愛い巫女たちとといちゃこらするので忙しいのか?糞野郎が爆ぜろ!(by氷の上に坐す祖神)


なぁ、氷の上お前のはただ単に彼女がいなくてうらやましいとしか聞こえないのだが。(by極北神)


神々の会話はさて置き・・・・・・・

「なぁ、極北神殿の老神職さん極北の神々って・・・・・・・」

「異界の神官殿、そこは言わないでくれ。確かに極北神様は【狭間の国】の市場で飲み歩いていたり極光神様も付き合って食べ歩いていたり、英霊神様方は武器振るって戦っていればいいぜヒャッハーだったりとか、女性神様達は良い男に色目使っていたりとか、祖神様方は普段は神域で惰眠貪っていながらいざと言うとき役に立たないわ・・・・・・・・・」

「老神職さん、老神職さんうしろうしろ・・・・・・・・」

冷や汗かいている勇者(笑)の言いかけた言葉に従って後ろを見ると神々の姿が・・・・・・・・・・


ふむ、言いたいことがあるならば言うがよいよ。(by極光神)


その後の事は勇者(笑)は知らない、思わず回れ右をして孤児っ子やら死霊っ子達の元に逃げていったからだ。翌日合った老神職は目の下に隈を作って疲れていた様子を見せていたがやりきったいい笑顔をしていた。本当に言いたいことを言っていたようだ。その日は神々はとても大人しかった、その日だけだが・・・・・・・・・

しかし、なぜに勇者(笑)とか老神職は神々の会話を聞けたのだろうか?

「そりゃ、【神気察知】の特性を持っているから・・・・・・・・・」

ああ、確かに勇者(笑)は持っていたな。神職達も半数以上は所持しているし・・・・・・・・・何故か孤児っ子達も取得しているのは笑い話・・・・・・それだけ神々が菓子を狙っていたりとか菓子を強請っていたりとか・・・・・・・

決して神々に愛されたとは言わないのがミソである。後言い忘れていたが勇者(笑)地の文に(略)


愛してはいるぞ、あの菓子の腕前を・・・・・・・・・(by極北神)

そこは、あの子達の在り方を愛しく思っている位言わないと(by砥石の盾を持つ英霊神)


極北神様台無しです。




孤児っ子やら死霊っ子達の元に寄った勇者(笑)は子供達に囲まれる。【族長達の会議場(笑)】出の宴席が終わり、死霊っ子達は己の旅路の費えを用意できたことを知り、孤児っ子達は新しくできた朋との別れとか兄弟分が其々の岐路に分かれて旅立つ事を小さい頭で理解している。自分等もこの時得た縁が元で親になりたいと申し出る大人達と出会い大半はそれを受け入れている。受け入れていないのは自ら氏族を起こそうとする薊の子とかそれに付き合って手伝おうとする弟妹分、年齢的に徒弟に入り自ら身を立てようとしている年上の子達位である。それでも、遠くに向かう兄弟分達とお互いに手紙をやり取り欠かさぬようにしようとかこの街に戻って来いよとか果たされるかどうかも判らぬ約束を延々と交わし続けている。

そして死霊っ子達もその約束すらできないのだから最後の日はみんなで騒ごうぜ、とか、名残惜しさを表に出さないようにしていても漏れだしているのがバレバレな態度で遊びに行こうとか言っている。

勇者(笑)にも駆け寄って色々約束をせがむ孤児っ子にこれからの旅路の不安を訴えたりいちゃダメなのかと問い詰める死霊っ子。それらを捌きながら泣いている子の頭を撫でたり、質問に答えたりしている。小さくとも情の深い極北の民、馴染みとなった朋との別れは、下手すれば永久の別れともなろうものに思いを揺さぶられているのである。

子供等の姿に孤児院の女先生を始めとする世話役の面々も思わず涙を貰っているのは付け加える必要がないくらい当たり前の光景である。彼女達もまた孤児っ子達の母であり姉であり家族であったのだから。

「一応姉は私ですからね。」

女先生、若く見られたいという気持ちはわかりますけど地の文に(略)



そして数日後、旅立つ準備というものは意外とかかるもので人生は旅路という【荒野の民】や一時滞在で半月ほどいては郷へと戻る戦士連中ならばいざ知らず、【西の凍らず】から殆ど出たことがない孤児っ子達では準備にかかる手間が違う。


「ほら、おまえら!ちゃんと温かい服を着ろ!道中何かあるといけないから薬と保存食は自分でも持っていろ!あと、野営もあるんだから短刀は一つ持っておけ、これはお前等の最後の抵抗手段でもあるんだ!あと足りないものはないか?そうだな、菓子をたくさん持っていけばいい!向こうに着いたときに皆と食べて仲良くする切っ掛けになるだろ。他に何かあったかな?そうだ神々の加護だ!今にーちゃん神様にお願いして(おどして)お前等の幸を祈ってやるから。」

「神官さん神官さん、そんなにもらったらお返しできないよ。」

「あのなぁ、これはお前らの働きに対する追加報酬だし旅立つお前等への餞別だ。市場でも美味しいと評判で売り上げも上げていただろう、神殿でも神様も神職さん達も喜んでくれていただろ、【族長達の会議場(仮称)】でも極北中の大物の胃袋をつかんだんだ!お前らはちゃんと良い仕事したんだから胸を張って受け取ればいい!ほらっ、道中冷えるから香辛料をもってけ、これを料理に振り掛ければ体が温まる、体を冷やしたら風邪のもとだぞ。」

「にーちゃん、大盤振る舞いが過ぎないか?【狭間の国】までの旅費・・・・・・・・・・大丈夫なのか?」

「それは【極北連合】と【荒野の民】持ちだから問題ない。せいぜいお小遣い程度あれば・・・・・・・・・あと氷竜族から竜鱗やら竜角貰ったから、換金すればいいし・・・・・・・・・・・・小僧っ子、おまえにも分け前渡しとかないとな。」

「ちょっ!にーちゃん、そんなにあったら一財産だよ!って、無造作に一掴みとかって・・・・・・・・・・」

「孤児っ子達も一枚づつもってけ!」

「神官様いいの?」「しんかんのにーちゃありがと。」「きれー」

「きれーなふくといいいいの?」

「いいの、いいの。お前等は俺の弟やら妹みたいなものだ。お前らの晴れの舞台に綺麗な服を着せてやりたいというのは当然だろ。気にせず喜んでいればいいんだよ。」


勇者(笑)は氷竜族から詫びとして貰った竜鱗を小僧っ子には一掴み、孤児っ子達には一枚づつ渡していく。それだけでも子供達には大金である(交換比率銀貨4枚相当)。小僧っ子は国の母親に手紙と共に送り何をしているんだと心配されたりするのは遠く離れた異国の地では知ることがない話。ちなみに氷竜族側は喜ばしい席で無様を晒した氷竜戦士の鱗を問答無用で毟って勇者(笑)や他の氏族への詫びとしているのである。これだけでも結構痛い処分なのだが、毟った後によく聞く傷薬を思い切り塗り込められて氷竜の悲鳴が思い切り響き渡っていたのは誰も見なかったことにしているのである。


死霊っ子達も竜鱗を興味深げに勇者(笑)から数枚借りてしげしげと眺めていたりするのだが僕達にもほしいと言い出したのを受けて、苦笑いしながら一枚ずつ渡す羽目となる。

それをもって近くに住む家族(生きている)の元に渡しに行く死霊っ子達とか、美味しいものを食べ歩いたりする死霊っ子、神殿に喜捨する死霊っ子だのそれぞれの行動をしたりしている。

後程子供に大金を持たせるなんてと女先生やら人日卿から叱られるのはどうでもよい話である。


そして、正統なる薊の氏族の子である赤髪薊の準備は色々な面で大変であった。

失われた氏族の継承者が現れ、今代有数の古強者と互角とも言っていい戦いぶりを認められ神々から名を与えられる。そこまでに故郷を失い苦難の旅路の末にこの地に落ち着くことができたのだが、そこでも幼き弟妹分を守るために苦労を重ねながらも懸命に生きている。

この美談を極北の民がほっておくことが出来るだろうか?答えは否である。

特に薊髭と相対して一歩も引かぬ胆力と一矢報いる知恵の在り方は勝てぬまでも男の意地を見せたと族長連中は好意的である。ついでにいけ好かない【冬の船団】の痘痕の船長をやり込めて【東の凍らず】での意趣返しをした時は良い土産話であると戦士達は面白がっている。神殿の面々も神々が直に名を与えた少年を無視するわけにもいかないので彼の世話を焼く。

その結果、赤髪薊の装いは派手に飾られるのである。


「親父、この若造に武具を一つ見繕ってくれ。」

「どれどれ、まだ体のできてねぇガキじゃないか!酢の実の・・・・・・・・・おめぇ、お遊びで武器をもたせるんか?」

「馬鹿を言うな!こいつはガキで毛も生えていないような童貞野郎だが根性だけは座っているんだ。意地と知恵だけであの薊髭と引き分けているんだぞ。」


正確には運であったりするのですけど(by槍神)


「ああ、あの薊か・・・・・・・・・・ならばこいつでよかろう。」

武具屋の親父は短剣を用意する。長柄や重さのある武具を好む極北戦士の間では異質といえるだろう。もちろん短刀やら鉈の類を持っている者もいるがあくまでも道具とか予備としてである。


「こ、これは・・・・・・・・・・」

「ほぅ・・・・・」

その短剣は刃が波打っている。それはまるで薊の葉のようである。

「ふっ、まだ体の出来ていねぇガキには重たい物を持たせるのは無謀だろ、それはおいおい体と戦い方が出来てからだ。まずは短剣でももっていな。」

「しかし親父よう、それはえげつなくないか?」

「この短剣の美しさは薊の葉みたいで丁度好いじゃないか。どうせ戦いの場に出さねえのだろ。」

「逆にこれで攻撃するなんてなったら出せないわ!」

親父と酢の実の戦士のやり取りが理解できていない赤髪薊は

「なぁ、この短剣がどうしてえげつないの?」

と聞く。それに答えて酢の実の戦士

「よく聞け、赤髪薊。この件はギザギザしているだろ、そのキザギザでつけられた傷は治りづらくて膿みやすいんだ。しかもその短剣でつけられた傷は治療の神術を受け付けなくする呪いまでかけられているだろう。間違ってもこれで戦おうなんて考えるなよ!って、言うかなんて言うものを作っているんだ親父!」

「ふふふっ、武器というのは使わないで置いたほうが良いものだ。だったら使うならばどれだけ惨たらしくして敵味方に自制を求めさせる武器というのもありじゃないのか?」

「とか言って、遊んで作ったんじゃないのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・ばれた?」


台無しである。せっかく武技の意義を否定した武器の話に感心したのに台無しである。赤髪薊はそれでもこの短剣の美しさを一目で気に入った。武器としての惨たらしさは兎も角、自分の氏族である薊を模して短剣というのは面白いと・・・・・・・・・・・手に取ってじっくり眺める。


「おい、にーちゃん気に入ったんかい?作った俺が言うのもなんだがそれは使いどころ間違ったら人が死ぬんだぞ、しかも惨たらしく。わかっているんか?」

「でも武器ってそういう物でしょう?実際綺麗だし薊の葉というのが気に入った。」

「・・・・・・・・・使いどころ間違えるなよ。この武器は本当に人を傷つけて殺す以外に使い道はないんだからな。」

「うんっ!」

「赤髪薊、おまえ本当にそれでいいのか?そっちの戦斧とかいいんじゃねぇか?」

他の武器を進める酢の実の戦士、彼は斧が最高と思っているから斧系統を進めてくる。確かにあの重たさと物を断つ時の衝撃は癖になるが・・・・・・・・・・・・

それでも赤髪薊はその短剣を気に入って手に入れるのである。


「まぁ、短剣はいいとして見栄えのあるものを持たせないとだめだよな。長柄斧とか・・・・・・・・」

「それならばこっちでよかろう。」

さらに極北の男らしい重たく武器を選んでいる。そこで用意されたのが一振りの鉄棍、ただ一本の鉄の棒である。

「これならばいざというとき折れる心配が少ないだろ。長柄の武器を使うにしても大剣を求めるにしてもいろいろ学べるだろう。」

赤髪薊が持ってみると確かな重たさと冷たい感触が武器を持っているのだなという自覚を促してくるのである。それでいて振り回せないというほど重たくないし硬くて丈夫そうだなと思っている。これでいいんじゃないかと思って赤髪薊が同意をすると

「ならばこれに布を巻いておこうかな。そうすれば寒くても手の皮が凍傷でべろべろにならずに済むだろ。あと滑り止めだな。」

武具でさえこの調子なのだからすべて揃うまでどれだけ手間かかったのかは推してい知るべし。すべてが終わるころには寝床でつぶれているのである。そして、後程武具の拵えが出来たのを見たとき短剣の鞘に『抜かぬ剣の意味を問え』と綴られているのが笑いを誘った。


其処は笑っちゃいけないよ。なぁ、小さい子、抜かぬ剣に価値があるのか?振るわぬ剣に価値があるのか?嗚呼私の価値に問いかける良い言葉だ。それを追い求めて私に聞かせてくれ(by剣神)

剣打つ者にあるまじき言葉だな、だがそこに込められた切望を我は愚かと切り捨てる事はせぬ。(by戦神)




旅立つ日、その日の天気は晴れだけど一部雨である。


あーさー(by太陽神)


【西の凍らず】の孤児院、そこは雨が降る一部である。

旅立つ子供達と送り出す大人達が互いに離別を喜びながらも寂しがっている。

極北の民は愛情深い生き物だ、喜ばしき旅立ちだとしてもすべて受け止める事が出来るほど強くはない。

「せんせー!ぜったい向こうに付いたら手紙書くから!」

「無理しなくていいのよ、手紙だって送るのにいっぱいお金かかるでしょう。」

「大丈夫!神官様に貰った給金でなんとかなるから!」

「あたちも」「ぼくもー」

「絶対忘れないでね。」

「わすれるものですか、可愛い可愛いおちびちゃん達。貴方たちは私の可愛い子供達なんだから・・・・・・」

旅立つ孤児っ子達は女先生に抱き付き、女先生もそれに応じる。

町方の職人や商人達に徒弟として行く子供達も遠く離れていく兄弟分と共に喜びと悲しみを分かち合うのである。


そして用意された朝食はちょっぴり豪華でちょっぴり塩辛かった。




勇者(笑)の投宿する宿。ここも涙雨である。

わらわらと群がっている死霊っ子達に抱き付かれながら眠る勇者(笑)、とても寝苦しそうである。


その日まで、死霊っ子達は菓子を作り売ったり振舞ったり・・・・・・

冥界の先に安息があるのかと心配になって神々の教えを受けに行ったり、世話になったり馴染みになった者へとお礼に行ったり。いつものようでいつもと違う日々を過ごす。

そしてこの夜は旅立つ死霊っ子と旅立つ死霊っ子の互いに別れを惜しみ、互いの再会無き旅路への幸を祈りあうのである。宿の者も気を利かせてか死霊っ子達に彼等の導き手である勇者(笑)に大部屋を用意して夜通し語らう事が出来るように手配してくれたのである。

夜の帳が下りて星々が語らうその下で短いながらも尽きぬ思い出を語り合ううちに一人落ち、二人落ち・・・・・・最後に残った死霊っ子達を寝かしつけながら自らも横になる勇者(笑)なのであった。


そして朝には先にあったように死霊っ子団子の中で寝苦しさに呻いているのである。

「にーちゃん、あさだよっ!・・・・・・・って!にーちゃん埋もれているじゃないか!」

朝餉の時間となっても起きてこない勇者(笑)に死霊っ子達を起こしに来た小僧っ子が埋もれている勇者(笑)に吃驚して掘り起こしにかかるのである。


「ううっ!全身金縛りにあったかと思ったら死霊っ子達か・・・・・・」

「おにーちゃんごめんなさーい。」「ごめんごめん。」

「寝相が悪いのには慣れたけどさー、流石にこの数は・・・・・・」

「にーちゃん、普通に金縛りだと思うんが・・・・・・」

死霊っ子達にもみくちゃにされてすごく寝乱れている勇者(笑)を見て謝る寝相の悪い死霊っ子達を片手をあげて赦しを与える勇者(笑)に思わず突っ込み入れてしまう小僧っ子なのであった。


確かに金縛りという物は霊が押さえ込んで起こる事だから間違いではないが・・・・・・・・・・・(by冥界の案内人)

子供と寝るとそうなりますわね。(by冥界の女門衛)

一人でもきついのにこんだけの量となるとだな・・・・・・・・(by冥界の案内人)


そして朝餉でも行きたくないとか一緒に居たいという子供達。

だけど死者は死者のあるべきところで安息を得るのが正しく、生きている者達は彼等の思いを覚えていることくらいしかできる事はないのだ。理屈では分かっていても自分の身に降りかかるとなると・・・・・・・

受け入れがたいのは誰もが一緒なのであろう。



同時刻、極北戦士達の集う天幕も雨である。

「薄雪草のまた会うのは次の芽生えの季節だな。」

「松鶏の近くではないか、徒歩の旅路で十日ほど主の健脚ならばその半分でも」

「馬鹿を言うな、合わせて二十日も離れていたら郷が滞るし皆に怒られてしまう。主の方が来ぬか!」

「わしか?来るのは構わぬが帰った時に長の座が残されているのかどうかが・・・・」

「長の座位如何でも宜しかろう、と言っていたのは主ではないか。」

「ふむ、せめて息子に継がせてやりたくてな。最悪・・・・・・・・・・」


「白雪草の氏族が美しき花、雪解けの一滴よ。郷に戻って許しを得てから迎えに行きます。それまでご壮健で。」

「ええ、通さぬ盾。早く迎えに来てくださいね。」


族長同士の再会の約束があれば、この場で結ばれた男女に嫉妬の涙を流す男達がいて、



「そういえば甥孫よ、【寒鱈港】で良き娘御と縁を結ぼうとしたそうじゃな。」

「・・・・・・・・・・・えっと、大叔父。どこからその話を・・・・・・・・・」

「お前と同道していた連中が盃片手に教えてくれたぞ。」

「お爺様、白雪髭にもそのようなことがあったのですか?」

「おおっ!雪解けの一滴か。この白雪髭の馬鹿がな・・・・・・・・」


族長説明中・・・・・・・・・


「まぁ、ひどい!せめて金貨の10枚位を借りてでも用意して事に挑まないと・・・・・・・・」

「なんという事を!その娘さんが余計に行き遅れてしまうのではないか!」

「それ以前に我が氏族が嫁を迎える金すら持たぬ貧しき者と思われてしまう。」

「女にとっても一大事なのですよ、白雪髭!あなたなんという事を・・・・・・・・」

族長の説明中に何事かと集まってきた白雪草の一族、族長の説明が進むにつれて白雪髭への非難の目が増えていく。

因みに雪解けの滴は金貨6枚用意されて、更には通さぬ盾の一族からは祝いとして見事な細工の施された盾を白雪草の一族に送っている。

【北國連合】も【極北の民】の流れをくむものも多く、習俗も似通っているのである。【寒鱈港】近辺だと相場で金貨3枚、適齢期をやや超えかけて・・・・・・・もとい食べごろの麦酒売りの姐さんの婿金としては高いかもしれないけど常識の範囲である。その気になれない相手に対して吹っかける事もあるけど、金貨5枚ならばその位の甲斐性を見せてみろと発破かけている部分もある。


「・・・・・・・・・・・・・せめて、公の場ではなく仲立ちを用意して然るべく行うべきであった物をこの馬鹿者が!相手の娘さんの面子を潰すとは何という事をするのだ!」

「まったくだ!族長。郷に戻る船は【寒鱈港】を経由すると思ったのですが・・・・・・・」

「ふむ、荷の積み下ろし位だから一日二日の余裕しかないが詫びに行かねばならぬようだ。」

「で、白雪髭。その娘さんは良き娘なのか?」

「大叔父、そりゃ・・・・・・・金を溶かし込んだような髪に絹のような肌、極北の神がいればその場でさらうのではないかと思われる程好い女だ。だけど、彼女の麦酒造りの腕はそんな見てくれにも劣らない素晴らしい物だ!あれは連れ合いにしたいと思うのは本心だ。その時金貨一枚しか持っていなかったのは俺の間違いだったが・・・・・・・」

「まぁ、そんな彼女に金貨一枚ですって!」

「ガキだガキだと思っていたけど彼女の価値すらわからぬガキだとは・・・・・・・・・・あたしゃなさけないね。」

「え、えっと・・・・・・・・・・・・その後殴られてぼこぼこにされたんですけど・・・・・・・・・」

「殺されなかっただけましだろう。情けない。」

「族長、少し白雪髭の性根を鍛え治したいのですが?」

「許可する。【寒鱈港】に付くまでに治せるだけ治しておけ!」

「ちょ、ちょっと!俺が悪いの?そりゃ、婿金の値段を間違えたのは悪いけど・・・・・・」

「いってらっしゃーい。」

「今日は旅立ちの挨拶があるから顔だけはやめておいてね。」

「ちょっとちょっと!俺の意見は?」

「そんなもの」

「はなから」

「ない!」


極北戦士達の天幕は白雪髭の涙と血の雨が降るのであった。





現場が変わるための準備とか引継ぎとか・・・・・・・・・・・・・一介の派遣にやらせるべきことではないと思うのですが・・・・・・・・・・・

販売計画とか改善提案とか・・・・・・・・・上の仕事でしょう。


エタらんぞ!エタりはせんぞ!


と言いながら酒を飲みます。

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