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食う気は誰も読めないで

氷剣酒(凍り酒の一種)


凍り酒、強い酒を凍り付くような夜にゆだねると凍り付く部分と凍らない部分とに分かれる。凍らない部分は寒さに強く酒の精がたまっている部分であるからそれだけを集めるととても強い酒ができる。

蒸留よりも安価で出来る事から【凍り酒】は極北の民の胃の腑を燃やすことに貢献している。

その中でも【氷剣酒(アイスソード)】は胃の腑を貫く剣のように強い酒なのであるがこの名を名乗れるのは【氷剣酒造】の歴代当主が相応しいと認めた酒でないと付けられることがない銘酒中の銘酒である。

宴は続く、と言うか宴の間にあらゆる事が決められて、国が形造られている。

極北の話し合いと言うのは素面の時間と酔いどれの時間があるに違いないと他国民であり異世界人である勇者(笑)には思えて仕方がない。そこには建前で語らねばならない部分と本音を語ってそれでもこれを選ばねばならない辛さを吐き出す部分とを共に共有することで決定的な断絶を避けようとする知恵があるのだろう。


だからと言ってもこれは酷い・・・・・・・・


酒盛と力比べで死屍累々の男達に薬が効きすぎたのかのたうち回っている駄目竜、鼾をかいている巨人に相も変わらず樽を開けている氷竜。獣人達は食べる専門で女子供達が自分等のために作っていた食事にたかっている。そして遠くには赤毛が特徴の孤児と片目の筋肉爺が所在なさげに互いの料理を食べているのが見える。

この草原の所々に剣戟の跡があり焦げたような所があり、吐瀉物の跡さえ見受けられる。


宴というか会議というかもうお開きなんだろうなと思うのだが、取りあえず見なかったことにしようと思う勇者(笑)であった。

うん、自分で作ってなんだけど土中蒸しは中々旨くできたな。これを応用して、先日人日卿が釣り上げた座布団サイズの鰈も調理できないものかなと酒の入った頭で考えてしまう。もっともその鰈はおろして切り身にしてから焼いたり塩漬けにしたりしているのだが。大きな魚の丸ごと調理というのは浪漫掻き立てるものだろうし、やってみたいという気持ちが起こるのは仕方のないことである。



「おにーちゃん、何現実逃避しているの?」

「早くしないと食べられちゃうよ。」

「おじちゃんたち食べ過ぎ!これぼくたちの!」

「いいじゃねぇかよ!みんなで食べたほうがおいしいだろ。」

「そりゃ、そうだけどおじちゃんたち酒飲んでたじゃない!」

「あっちで赤髪薊のにーちゃんがおっきなじいちゃんと料理作っているんだからそっち行ったら?」

「つれねーこというなよ。旨そうな物をぶら下げておいて我慢しろなんて酷なこと言うねぇ・・・・・・げふっ!」

「何だいあんた達、小さな子供の取り分を取ろうだなんて恥ずかしいとは思わないんかい!」

「おばちゃん、おばちゃん。このおじちゃん白目剥いてのびてるよ。」


うん、こっちもこっちで酷い有様だった。

食事は戦場だなんて兄弟が多かった友人が言っていたが確かにと実感するのであった。

って、言うか食事の準備をしている間に何があったのか把握するのをやめた勇者(笑)である。


「うん、初めての割には結構いけるな。あとはたれを用意するのが課題か・・・・・・・」

「にーちゃん、これは面白い料理だけどにーちゃん所の世界の料理か?」

「小僧っ子、俺のいた国より南に行ったところにある島々の料理だ。皆で材料を持ち寄って、皆で食べるんだそうだ。その場所ではバナナ・・・・・・・と言っても分からないけだろうが大きな果物の木の葉っぱが蓋代わりに使われるんだよ。」

「へぇ、面白そうだな。でも、うまみの汁が地面に吸われるのもったいなくない?次は木の皿かなんか置いてやってみようよ。」

「そんな大きな皿どこで作るかが問題だな。」

「うーん・・・・・・」


ちなみにうんちくを語るとバナナは草である。


うむ、これは面白い。地面の中で蒸し焼きにするとは異世界の料理は斬新だな。(by極光神)

ちょっと塩欲しい所だ。(by極北神)

ところでお前等良いのか、赤髪の少年と片目の勇士の対決の立ち会いやっていただろう?(by決闘神)

ああ、それなら食べて判断だけ下してこっちに来た。(by極北神)

「かみさまー、こっちの辛味つけるといいよー!」

「おにーちゃんが作っていた、せんず(あうとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!by節制神)だよ。」

「おとーとちがうでしょ、それをいうならまん(さくじょぉぉぉぉぉ!by節制神)でしょ。」


正解はカンズリである。念のために言っておくとこの文章を読んでいるであろう日本語圏文化で問題発言になりそうだから節制神様は活動しているのである。この世界にはこの世界なりの言語があるので・・・・・・・・・ここの場合は極北共通語(極北語)と人族連合圏共通語(人族語)の入り混じった会話である。


ちび死霊共、そんな卑猥な調味料はないだろうが。カンズリだろカンズリ(by節制神)

「あーそうだった。カンズリだ、カンズリ。削除の神様教えてくれたてありがとう。」

「これつけると極北のおじちゃんたちが味が引き立つって言ってた。」

「ぴー音の神様も食べる?」

うむ、これは・・・・・・・・・・面白い。(by極北神)

うむ、いただこうか・・・・・・・・・って、誰が削除やらピー音の神様だ!(by節制神)


ばりばりばりばり!


「うわぁ!ごめんなさぁい!」

あまりにひどい表現に節制神も切れたようだ。自身の感情を節制していないなぁ・・・・・なんて突っ込むのは駄目である。

少なくとも死霊っ子達の表現はいろいろと酷かったのだから。


あの異世界人は子供の教育に悪そうだな。(by節制神)


いや、悪いのは周りの酔っ払いたちじゃないのかと・・・・・・


ふむ、それは否定できん。(by節制神)


節制神様地の文に(略)




酔いつぶれた者を除き宴の会場は勇者(笑)や女衆の料理が並ぶここに移っている。

子供達はある程度腹を満たすと場所を譲り(逃げたともいう)、女衆は一緒になって飲む者と料理を作るものに分かれる。勿論作りながら飲む女性もいるし戦士達の中にも料理の技能を持つ者がいて自分のつまみを作る者もいる。

宴に飽きた子供達はそれぞれに広い草原を駆け回って遊んでいたり、午睡を楽しんでいたりする。勇者(笑)に頼まれた分の菓子作りとかは材料が切れたために作業終了。後片付けをしている年上の子達を除きのんびりとしていて、それを孤児院の女先生がおちびちゃんを膝で寝かせながらにこやかに眺めているのである。


「神官殿よぉ!何こそこそしているかと思ったら旨そうな物作っていたなんてヒデエナァ・・・・もっと飲めや!」

「そうそう、せっかく来たんだから氷剣酒(アイスソード)を飲んでみろよ!」

氷剣酒(アイスソード)?」

「しらねぇんか?俺達がこさえた強い酒を凍りつくような雪の夜に置いとくと凍る部分と溶けてる部分があるんだ!その溶けてる部分を集めて作ったのがこの氷剣酒(アイスソード)というわけだ。」

「まぁ、これを名乗れるのは実際には氷剣醸造所一か所のみで他のは【凍り酒】なんていうんだがな。」


なんか聖騎士さんが手に入れたら殺されそうな名前だなと思いながらすすめられるままに一口・・・・・・・


ぶはっ!


あまりの強さに吹き出してしまうのであった。


「勿体ないだろ!」

「酒の一滴血の一滴!」

「だまれ!つよすぎるんじゃ!ぼぉけ!」

勇者(笑)と極北戦士達の乱闘が始まる。


ぼかぼかぼかぼか・・・・・・・・・・・・・


戦闘経験がないのに意外と上手いこと避けて菓子をご馳走する。なぜかその菓子を食らった極北戦士が悶えているのだが・・・・・・・・気にしてはいけない。どうせ、【聖女様の菓子】(劇物指定)を複製して彼等の口に放り込んでいるだけなのだから。


数分後、そこには顔中腫らした勇者(笑)にのた打ち回っている極北戦士がいるのであった。


「ああ、美味しすぎて食べ過ぎているんだね。仕方ないねぇ・・・・・・・・胃腸薬を用意してあるから飲むといいよ・・・・・・・・・・・」

顔中から表情を亡くした笑いを浮かべていつの間にか療養神殿謹製の【二日酔いの薬(?)】を手にした勇者(笑)がのた打ち回っている見苦しい極北戦士の傍らに片膝をついて

「さぁ、君達はお酒が過ぎているのだろうし食べ過ぎているのだろう。これは俺からのさぁぁびぃぃすだ。遠慮せずにやってくれたまえ。」

と口から思い切り注ぎ込む。そこで鼻をつまんで飲み込みやすくする事を忘れていないのが彼なりの気遣いなのであろう。

「がぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼっ!」

【二日酔いの薬(?)】を注ぎ込まれた極北戦士はピクリともしなくなった。

勇者(笑)は慈悲深いともいえる笑みを浮かべて残りの連中にも薬を施し健康なる事の幸を教え込むのである。


「しばし眠るといいよ。調子が悪い時は眠るのが一番の療養法だからね。」

いい笑顔の勇者(笑)に乱闘を見ていた女衆の一人(見た目40代)が

「異国の神官さん、あんたも顔を治療したほうがいいさね。男前の顔が腫れてしまっているじゃないか。薬つけてあげるからこっち向きな。」

「あ、すいません。お願いします。」


腫れているから見分けつけづらいが表情をいつもの緩いのにもどした勇者(笑)は女性の前に向いて治療を受け入れる体制になる。

「ちょっと、しみるけど我慢しなよ!」

「うぎゃやややややややややああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


ちょっとどころではない沁み方だったらしい。

それを遠巻きに見ていた孤児っ子やら死霊っ子は

「あれって、効くけどとても痛いんだよなぁ・・・・・」

「あの【二日酔いの薬】もとても苦くてまずくて次の日食べ物の味がわからなかったよ。」

と経験者らしいことを言うのであった。


「療養神はん、あんんた、なんてぇぇものぉぉぉ!」

我が作ったものではない。でも、愚かな理由で愚かな行動をする者には【二日酔いの薬】も【傷薬】も十分に効果をもたらすだろう?匙を投げぬだけありがたいと思うがよい。(by療養神)


世界中に安価で提供されている【二日酔いの薬】に【傷薬】は療養神の差し金だったようだ。

もう少しおとなしい薬を用意してほしいものだが・・・・・・・・・・・


そもそも、あの薬はバカな事をした者の為に用意しているものであって、まっとうな者への薬は別にある。バカな事をしなければよいのだ。(by療養神)


療養神様説明ありがとうございます。でも地の文に(略)






草原は死屍累々である。【族長達の会議場(正式名称は略))】は十分宴会場ではないのだろうかと小僧っ子は思っている。自分でも合間合間に食べているのだが、食らう口が多すぎて作る人数が少なすぎる。勇者(笑)の作った土中蒸しも結構な量があったはずなのだが女子供のみならず戦士連中や【荒野の民】も物珍しさからか一口二口とつまむためにすぐに消えてなくなってしまう。

それでも、孤児っ子や死霊っ子たちの分は周りの女衆が作ってくれた料理を互いに交換するということで賄われていたのはよかったと思っている。子供達も極北の地の古くからある味をたらふく食べることができて満足である。下手すれば孤児院では出すことができない料理とかもあるので今は亡き家族やら故郷の味を口にして泣いている子もいたのは良かったと思うのが半分、どうしてこの子達に苦労があるのかなと思うのが半分であり、短い間ながらも新しく出来た弟妹分の幸を願わずにはいられないのである。


その願い聞き届けよう。(by極北神)

聞き届けるまでもない。あの子達は自力で幸いを掴み取る地力はあるのだ、小さな聖徒の子お前の弟妹分はそんなにやわではないぞ。(by極光神)

「って、神様方!おいらの心を読まないで下さいよ!」

読むまでもなかろう、顔に出ておるぞ。(by極光神)


小僧っ子は赤面した。

極北の神々は民との距離は近い、宴に紛れ込み酒を飲み料理をつまむ。極北神夫妻も小僧っ子が作る異国風(極北から見て)の料理をつまみに自らの子供達の幸なる様を楽しんでいるのである。


少し離れた所では二度と食べることができないと思っていた味に出会った孤児っ子が涙ぐみながらかっ込んでいるのが見える。その姿は極北の民達の涙腺を刺激するらしくもっと食べなとさらに大盛りの皿を置かれるのであった。

「うめぇ、うめぇなぁ・・・・・・・・・・・・・かぁちゃんが死んでからこの味が食えるとは・・・・・・・・・・・うめぇ・・・・・・・・ぐすっ」

「うんっ、小さい頃一度みんなで食べたっきりだったもんな・・・・・・・・・・・」

「孤児っ子達、お前さんらは白雪草の氏族だったんかい?これはあたし等の土地の料理だよ。」

「わかんない、かぁちゃんが懐かしい味だから作ったって言ってた。」

「うん、一度しか作ってくれなかったけど美味しかったのは覚えてる。」

「ほらほら、まだあるからたんと食べな。」

「「うんっ!」」

孤児っ子らの琴線を揺さぶった料理は彼等の母親の故郷の味であった。他にも振る舞われた料理は彼等の血の記憶を呼び起こし、今は亡き両親の事を偲び涙ぐませるのに十分であった。孤児院は神殿と【西の凍らず】の篤志家の助力によって飢えず餓えず凍えぬ様には運営されているが親の亡き寂しさというのは拭い切れる事がないのだろう。それでも捻じれる所がないというのは育ての親の仕込が良いのであろう。

料理を振る舞う女衆はこの子達が今ここに居るのは孤児院の育ての親の治療費を稼ぐ為に異国の神官【菓子振る舞う者】のお付として働きに来ているという話を思い出す。病の床に居る育ての親の為に幼い弟妹分の為に懸命に働いている姿をみて、自分等の氏族の流れを汲むらしき子供が他愛もない料理を涙ながらに食べる姿を見て苦労しているんだねと思わず涙ぐむのである。


少々訂正すると孤児院の女先生は今現在快癒してこの場におりますし、涙ぐんでいるのは懐かしい味に逢った感動と家族を失った寂しさを思い出したからであるし、働いているのは孤児院の運営の為というよりも自分等の小遣い稼ぎなのだがこの場では言わぬが花なのであろう。

「おばちゃん、料理ありがとう!」

「ごちそうさまでした。」


食後の礼を述べる孤児っ子等に思わず抱きしめる女衆、その光景を見ている白雪草の長は何事かと女衆に問いかけ答えを得ると

「孤児っ子よ、我らの氏族に来るか?あの一皿を懐かしむならば我等の流れを汲むものであろう。汝等に記憶がなくともその舌の思い出は我らの一族であることは明白、我は白雪草の名の下に汝等を我等の子として受け入れよう。汝等が父母の名を思い出せるか?」

「父の名は雪割る槌、母の名は天の火。氏族の名は知りません長様。」

「一族の者よ、この名に覚えはあるか?」

「該当するものが多すぎて・・・・・・・・・・・・」


ちなみに【仮名(かりな)】であり、同じような名乗りをしている者が多く時々によって名を変える者もいるため誰だか判らないとしても仕方ないのである。しかも白雪草の氏族は万にも届く数がいるためにすべてのものを知るというのは不可能なのであろう。

「まぁ、良い。宴での立ち振る舞いと言い、作り上げた菓子と言い我らが氏族に迎え入れるのに相応しい・・・・・・・否、喜ばしいことである。この場にいる我等が白雪草の名を継ぐ者よ反論はあろうか?」

「長、ならばこの子達は我らが家で迎えたいですわ。幸いにも子供達も家を離れ寂しいところでありますし。」

「異論はない、だけどこの子らは我が世話したい。幸いにも我が家には知恵溢れる年寄りに事欠かぬ。白雪草にふさわしき教えを垂れるであろう。」

「何を言うのです!雪崩割、年寄りの世話なんてさせるために呼ぶつもり?」

「沈まぬ昼、おまえこそ子供をかいぐりまわしたいが為に入れようとしているではないか!」

「父上、我が家に迎えましょう。私もかわいい弟がほしかったですの。」

「娘や、お前が末っ子だから弟分が欲しいのはよく判るが・・・・・・・・」

氏族の面々は幸ある子供を迎え入れることに異存はないようだ。そこで一言加える男もいる。勇者(笑)に同道していた極北戦士が一人白雪髭である。付け加えるならば白雪草の長を大叔父に持つ、氏族の中でもそこそこ名家だったりする。

「大叔父、一つだけ言いたい。」

「なんだ?」

「この子達の意見を聞いてないだろ。」

「ふむ、わしとしたことが子供達よ、我等と共に来るか?」

「うーん・・・・・・・・・・ごめんなさい。」「いけないや。」

「なんでだ?」

「だって、チビ共の面倒見ないと・・・・・・・・」「まだ、女先生本調子じゃないし・・・・・・・・・・孤児院の金稼がないと・・・・・・・・赤紙薊のにーちゃん薬代の分神官さんに金借りているし手伝わないと・・・・・・・・・・」

「ふむ、お前等は求められて迎えられるのだぞ。孤児院の事なんぞは我等も手を貸そうではないか!それでもだめか?」

「・・・・・・・・・・・・・・自分の事だから自分でけりをつけないと・・・・・・・・」

「大叔父、我等は振られたようだな!でも、チビ共お前らは白雪草の名乗りを受け入れることはいいだろ。」

「そのくらいなら・・・・・・・・・・・・・」「いいの?」

「ああ、いいともさ!お前等は俺の可愛い弟妹分みたいなものだろ。そこに俺の氏族だという名乗りが加わるだけだ。兄貴分の贈りもんだ受け取っておくのが礼儀というものだろ。おぅ!天にも響け地にも轟け!神々よ!世界よ耳の穴かっぽじって聞け!ここに居る孤児っ子どもは我ら白雪草の氏族として我等が一族として迎え入れる!文句あるものは名乗り上げるがよい!この拳と雪割り槌にて話し合いに応じよう!」

白雪髭は手にした得物・・・・・・・・・・・打ち付ける部分が平たんではなくやや凸面がある大槌を高く掲げ世界中に響けとばかりに宣言する。その声に応じるが様に長も

「我白雪草の長、凍りつく滝が我が甥孫の宣言に同意し、文句があるものは拳と武具にて話し合いをしよう!」

と続く。氏族の者達はそれぞれに同意の叫びを返し、その叫びに他の孤児達も駆けつけて突如湧いた兄弟分の幸を喜び合う。小僧っ子も駆けつけてその背中を叩き、出来立ての料理を祝いだと言って置き、腫れた顔をした勇者(笑)は人族連合式の祝福の型を示して神々に子供等の幸をいのる(おどす)

死霊っ子達は友の幸を喜び空を舞う。


そして、それに異を唱える者もいるもので・・・・・・・・・・・・

「白雪髭、お前と言う男に失望したぞ。我等【荒野の民】が十三氏族が一つ【赤岩】がこの子等の師父として名乗り上げるつもりであったのを横取りするなんて・・・・・・・・・」

「バカ言え蔓苔桃の一族が薊の兄弟分を引き受けるのだ。何せ薊の兄弟分であるならば我等が一族だからな。」

「繁栄の街の片隅に捨て置いておいて何を言うのだ!しかも育ての親の危難に気が付かなかっただと!これだから西の連中は我ら東の大氏族が代表して氷川がすべて貰い受けよう。心配するな!薊の子供無念も含めて極北の男としての在り方を教えてやろう。」

「寝言を言うな各々方!【荒野の民】十三氏族が一つ【琴抱】が幸いを求める詩を世界に刻む子供等を諦めると思っているのか?」


うん、取り敢えず子供等の意見を聞かぬ子供好きの馬鹿者達の言い争いであった。【極北の民】は同族の子であれば育てるのを義務とするし、【荒野の民】は道を知らぬ子供を教え導くのが大人の役割だと信じている。彼等の通り過ぎた跡には浮浪児も孤児も残らないのは笑い話である。

ましてや保護すべき子供に対して苦難を強いる輩には無慈悲なほどに酬いを与えるから性質が悪い。先の【啓蟄戦役】においては導くべき民に無体を強いる貴族・神官を吊るしまくったのいは【荒野の民】であるし、【傷跡娘の物語】において愛すべき【傷跡娘】の母親を嬲り者にした挙句、彼女を奴隷として売り払った地主貴族に対して鉄拳制裁を与えたのは【極北戦士団】である。

そして忘れてはならないのは【菓子の神官様】こと勇者(笑)の存在である。彼もまた子供に無体を強いる存在に対しては例え神々であろうと遠慮する事がない大理不尽である。その在り方は聖徒王国は【黒の都】の孤児院に存在していた不正と暴虐に対して一人大暴れしたことにも表れているし、西方平原国は【白の都】においても子供達に身を立てる術を与えた事によって死霊と孤児の守護者として認知されている。本人には自覚はないのだが。

取り敢えず醜い醜い子供の取り合いが始まるのである。そこに救いがあるのだとすればどの道を進んでも物理的な意味合いにおいては満たされるという一点であり、そこは子供等の選択肢を求めたりするのが筋だと思うがそれでも子供等に選択させるのは酷ともいえるだろうし・・・・・・・・・

この争いは子供等が引いてそのまま離れた所で野営を始めても続き、双方の神々が調停と言う名の言い争いを始めたり、あまりの醜さに節制神が争いをする馬鹿者を黙らせる(物理説得)まで続くのであった。



「なんて言うか暑苦しい愛情だな。」

「にーちゃん、他人事のように言うなよ。あたしたちにはめんどくさいんだから。」

「だきしめられたらつぶされそうだね。」

「あっ、殴りあい始めてるよ。」

「神様まで出始めたよ・・・・・・・・」

「うわぁ!何であんな劫火の中で・・・・・・・・・・」

「お前らもっと離れるぞ、どう考えても巻き添え食らう近さだ!」

「そーいんたいひー!」

「たいひーといってもうんこじゃないぞ!にげろ-!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

「薊のにーちゃが・・・・・・・・・・・・・・にーちゃが・・・・・・・・・」

「馬鹿、かまうな!逃げないと酷い事になるぞ!」

バリバリバリバリ・・・・・・・・・・



えっと君達、何をしたのか判っているのかね?(by節制神)

以下節制神様の説教が続きます。便乗して幼女守護神様と幼児守護神様、性愛神様、療養神様が交代で説教を始めております。



「うん、そこでどうして神々の介入が始まるとか俺ほんとにお呼びでない?

「呼ばれない方がいいんじゃない?」

「取りあえずバカ騒ぎに巻き込まれないように全力撤退!」

「1000歩くらい離れる?」

「命知らずがどう考えても【西の凍らず】まで逃げるのが・・・・・・・・・・・」

「ばかばかしいね。今更あたしたちを見出したなんて・・・・・・・・・・何であの時・・・・・・・・・」

孤児っ子の言葉は誰も聞く者がいない。

勇者(笑)はその子の叫びにもならない問いかけに優しく抱きしめるしか行動を起こせない。

なんて言うか、馬鹿騒ぎで終わってしまった気がする。

ぐだぐだ・・・・・・・・・・・・


酒でも飲もう。

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