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神討ちの少年

コケ


極北に生えるコケは集めて乾燥させることで野菜の代用品として利用される。

もともとは毛長牛が食べているのを見たある若者が我等も食えるのだろうかと試したのが始まりとされている。

「孤児っ子達、こづかい稼ぎするつもりある?」

「なぁに、神官さん?」

「あたしたちを夜のご奉仕とか?」

「いやいや、それはないから・・・・・・・後ろで女先生がにらんでいるし。」

「なにやるの?お菓子作り?」

「まぁ、そうなんだけど。前に極光神様に借りを作ったから、お礼の気持ちをね。」

「ああ、わいろー。」

「ばかだなぁ、賄賂だったら先に渡すんだろ。神官のにーさんが言いたいのは謝礼ってやつだろ。」

「そっかー、ミカジメ料」

「こらこら、そんな人聞きの悪い事言ってはだめだろ。」


こつっ!


極北神のつまみ食い騒動の翌日、流行風邪で床に臥していた女先生を見舞いながら孤児っ子達を誘いに来ている勇者(笑)。ちなみにミカジメ料だなんて少々言葉が悪いと思うのは私地の文だけだろうか?言うなれば用心棒代とか・・・・・・・・


かわらんぞ、地の文。(by極光神)


失礼いたしました。でも女神様、地の文の発言に(略)


人聞きの悪い事を言っている孤児っ子に軽く拳固をくれつつ内容自体は否定しない勇者(笑)、孤児達も仕事自体は興味もって受けるつもりみたいである。背後でにらみを効かせている女先生も仕事内容が普通に健全であるため睨みを緩めている。


「一人頭銅貨30枚、昼飯付でどうだ?」

「せめて銀貨一枚でこっちも生活かかっているんだから。」

「こっちは持ち出しばかりで持ち合わせが少ないから銅貨35で限界だな。」

「にーさんけちけちしないでよ。死霊っ子の菓子屋台で儲けているんだろ?銅貨90!」

「馬鹿言っちゃいけねぇよ。あれは死霊っ子達の【弔い銭】を稼ぐためのもんだから俺に儲けがないんだよ銅貨38、これ以上は昼飯をつけないぞ。」

「ちょっと、こっちの足元見すぎだよ。飢えた弟妹分達に旨い物食わせてやりたいんだからもう少し色つけてよ、昼飯付と銅貨70。」

「銅貨70?素人の子供につけるには吹っ掛け過ぎだろ。せめて死霊っ子位に腕を上げてから言えよな。銅貨40で昼飯付。」

極北の民は脳筋だと思っていたのだが意外に交渉ができる子供に値段交渉は白熱している。


「ねぇねぇ、女先生。おにーちゃんと赤髪の孤児っ子が角つき合わせて交渉しているけどいいの?」

「いいんじゃない。赤髪薊が頑張ればこっちの夕飯のおかずが一品増えるんですし、神官様もそれほど無茶な値段設定していないから十分問題ないわ。」

「だんだん、凄い事になっているけど大丈夫なの?」

「まだまだ大丈夫よ。このくらいじゃれ合いの範疇でしょ。ほらほら赤髪薊、最低60は持っていかないと貴方の分だけおやつ抜きよ。」

「ちょっ!女先生!それはひどいよぉ!このにーさん手強過ぎるし!そう言う事で俺のおやつのために銅貨70飯抜きでいいから・・・・・・・・」

「薊のにーちゃん、神官様のご飯美味しいからそれは守らないと!神官様にーちゃんのおやつはいいから銅貨50昼飯付、ここまで譲歩するから美味しいご飯とおみや宜しく。」

「神官さん、短期でしょ。少し色つけて50と昼飯で手を打とうよ。」

「雪茸!軟韮!おまえら、おれを売るんか!」

「うるのはにーちゃんのおやつだけだし、問題ない。」「そうそう、おみやを一つ多くあげるからさぁ。」

「赤髪、お前苦労しているなぁ・・・・・・銅貨50昼飯付で手を打つとしようか。」

「同情するなら金をくれ!普通、神官ならば慈悲の心で60は守ってくれるもんだろ!」

「適正な価格とか守るべき評判とかあるからね俺にも、なんたって俺は【けち臭い神官様】だから!」

「くぅ~!わーったよ!銅貨50昼飯付。孤児院にいるちび共の分も昼飯はつけてくれよ!」

「いいだろう!交渉成立だな!ちび共も総出で使ってやるから昼飯くらいは出してやるよ!」


女先生と周りの横槍が入らなければもう少し粘れたのだろうが、孤児っ子側にも悪くない条件で労使交渉は締結されるのである。因みに死霊っ子達の給金は一日銅貨30枚プラス歩合(純利益の五割)なので大体、一日銅貨70枚程度貰っている。勇者(笑)も一日に銀貨一枚強の利益があるのだが死霊っ子共に食わしていたらすぐに消えるのである。もっとも、彼には【白の都】の孤児屋台から利益配当やら聖徒王国の年金があるので持ち出しが無ければ良い程度にしか考えていないのだが。

港の荷役で銀貨一枚前後、見習い職人で銅貨30枚(食事付)市場の売り子で平均銅貨80枚(歩合なため一定せず)なので本当に好条件なのである。


「で、仕事内容は?」

「お菓子を作って極光神殿に奉納。礼拝にこられる信者の皆様にも食べてもらうのさ。」

「奉納までは判るけど何で配るのさ?」

「死霊屋台は【西の凍らず】の皆さんの好意によって成り立ってきたんだ。死霊っ子等が旅立つに当たって必要以上は溜め込んじゃだめだろ。」

「人気取りだと思っていたよ。」

「そこは否定しないけど、あの馬鹿死霊が極北神殴り飛ばしているから奴の身を守るためでもあるんだがな。不本意な【神討ち】なんて色々周りが突っかかってくるだろう。極北神殿とか・・・・・・・」

「本当にさっきのミカジメ料だね。」

「まぁ、お前らも十分当事者だからな。」

「にゃ!なんだって!」

「だって、その場にいただろ。」

「うわぁ!あたし等目をつけられている?」

「・・・・・・・もう少し迷惑料代わりにふっかけてもよかったか?」

「表立ってあれこれされる心配は無いけどな。自分等の神がつまみ食いして返り討ちなんて言えないだろうし。」

「それって裏から・・・・・・神官さん亡命希望!」

「あらあら、神官さんからかい過ぎでしょ。」

女先生が窘めにかかりネタ晴らしをする。

「孤児院に極北神殿の側女(そばめ)さんが来て内密にと来てましたよ。そのときに神官さんが極北神殿の女性衆へおみやとして菓子を振舞っていましたでしょう。少なくても神殿として行動を起こそうとすれば女性陣を敵に回すことになるのでしょうし。」

「ばらさないでくださいよ。もう少し引っ張りたかったのに。そう言う事、そもそも極光神様が保護してくれるから蒸し返したら極北神の髭が毟られてしまうだろうよ。」



髭毟るな(by極北神@生焼け)


何で極北神様が生焼けなのかは(お察しください)



そんな事で菓子奉納が始まるのである。





翌朝、極光神殿の入り口には孤児っ子やら死霊っ子が礼拝に訪れ、その場に居合わせた信心深いもの達に菓子を振舞うのである。ちび共も両手に抱えた菓子をどうぞとするのだから、信心深い者達の目じりが下がるのである。


「どうしたい、あの神官のにーちゃんが自分の欲深さに反省して神殿の門をくぐったんか?」

「あたしちいさいからわからなーい。」

「雪韮の小さい子相手に生臭い話しない。」


「どぞー」

「おやまぁ、ありがとうねおちびちゃん。」


「そういえばお前が【神討ち】になったんだってな。その祝いか?」

「いえ、神官のにーちゃんが町の衆のお陰で金貯める事出来たんだからお礼しろと言われて。」

「ケチの神官様らしくない言葉だな。」

「ケチかなぁ?払いはちゃんとしていたし?」

「神官というより商人だしなぁ・・・・・」

「それは言えてる。だからこそお金の使い方に厳しいのだろうな。」

「金は武器だろうからな。」


「おばちゃんどれがいい?」

「じゃあ、そこの緑のを貰おうかね。」

「はい、コケ味。」

「コケってあのコケかい?かゆの増量材に使う・・・・・」

「美味しいよ。」

「本当なのかねぇ・・・・・って、普通に食える!」

「でしょでしょ!」


可愛い孤児っ子や健気な死霊っ子達が参列者に菓子を振舞う様は本当に良い光景である。

その光景を眺めながら勇者(笑)は神殿の金庫番やら長老尼等と共に茶を喫するのである。

「本当に愛らしい子等でありますね。彼等に我等が女神の祝福がありますように。」

「しっかし、自分等の【弔い銭】をためきるとは中々やるものだな。」

「二三日、お茶を濁す程度の売り子をさせて誤魔化そうかと思ったら意外なほど売り上げ上がるし面白いもんだな。」

「極北の子等を見くびりすぎですよ【菓子作る神官】様。」

「ええ、結果を見て驚いております。評価を改めないといけませんね。」

「あの菓子が食えなくなるのが寂しくあるが、子等の事考えれば仕方ないのだろうな。【菓子作る神官】殿、作り方(レシピ)を残してもらえんかな?」

「金庫番、そんなんだからその腹なんでしょう。神官様作り方(レシピ)はいりませんよ。」

作り方(レシピ)位ならば良いですけどね。厨房神殿にも奉納してますし、そこから取り寄せればすぐ手に入りますし。」


まぁ、異界の若者よ。子供等については我が気を配っておこう。極北神(あれ)に関してはきっちり話をつけておいたからな。しかしこの菓子は美味であるな、異界の若者よ妾に仕え・・・・・・って、またつまみ食いか?(by極光神)

良いではないか我が連れ合いよ!あの一撃は我が不意を突かれたからといっても見事な一撃であったぞ。(by極北神)


なぜか紛れ込んできた極北神夫妻が神職達の菓子をつまんできているので見習いの少女が神々の分まで茶を用意するのである。


「極北神様に関しましては私はともかく、あの死霊っ子の分は手打ちにしていただきたいと願うのですが・・・・・・・」

異界の若者よ、菓子で手打ちとしよう。(by極北神)

妾にも用意するのですぞ。話を仲介したのですから。(by極光神)

「畏まりました。」


極北神の顔に流れる冷汗と極光神の背後から溢れる神気は見なかったことにして勇者(笑)は子供達にばれないように話をまとめるのである。


地の文、我の恐怖を記すでない。我の権威というものが・・・・・・・・(by極北神)


それについては今更というするのですが、あと地の文に(略)

「ついでといったら何ですがお二方には【白の都】でつまみ食いしている神々にも釘を刺しておいて貰えないでしょうか?」

我が言っても説得力は無いだろうが伝えるだけは伝えておこう。(by極北神)

確かに極北でこのような事を為されては他神(ひと)の事は言えませんものね。(by極光神)


正確には一緒になってつまみ食いしていたのだから今更という話である。

後にそのことがバレ折檻を受けるのであるがここで語ることではあるまい。


だから、そんな物騒な未来を・・・・・・・・(by極北神)

あらあら、外地でそのような情けないことを・・・・・・・・後でお話をいたしましょう?(by極光神)


あそこでもそのうち【神討ち】だの【神殺し】がうまれそうなんだが。





施しをしている死霊っ子達にに対して如何にも武人然とした男が

「【神討ち】の死霊っ子とお見受けする。一手お相手願えないであろうか?」

等と挑戦状をたたきつけにくる。

「え、えっと・・・・・・・・断ります。」

「ふむ、そうか・・・・・・・・・【神討ち】と仕合えればいい土産話になると思ったんだが。」

「土産話で物騒なことしないで貰えると良いんだけど・・・・・・・・・土産話ならばこの菓子を食べれば良いじゃない【神々もつまみ食いしたくなる菓子】だよ。」

「うむ、馳走になろう。これは美味だな、確かに神々も欲するものであろうぞ。でも、本当に一手相手願えぬか?」

「はいはい、つまみ食いを懲らしめるくらいしか出来ない子供に挑まない。挑むならば神々に挑めばよいじゃない。」

「どこに行けば神々に挑めるのであろうか?」

「おじちゃん、そこにいるよ。」「見えないの?」


武人に話しかける孤児っ子の示すほうを見れば黒焦げの塊が・・・・・・・

そこにあったのは極光神に折檻された極北神の残骸・・・・・・・・・・・・


まだ、滅ん(しん)でない。(by極北神)


「さ、さすがにあれは・・・・・・・・殴る場所が残っておらぬでは無いか!」

そもそも、殴る前提かい!

「子供と仕合うのとどっちがましなんだろうね?」

「ふーむ・・・・・・・・悩むところだ。」

「普通は子供に相手願うほうがまずいでしょう!」

「おとなげないよ!」

「大人毛生え・・・・・・・ぐえっ!」

「下品な発言禁止!」


武人は下ネタをかまそうとしたところを勇者(笑)に粛清されたようだ。

因みに仕合は有耶無耶の内に流れてしまったのである。




そして朝晩の礼拝にあわせて菓子を配った子供達の姿はとても愛らしく健気な物であったと鼻から溢れる愛情がシミとなった日記が伝えられているのである。

「おいっ!それ危ないだろう!主に子供等の貞操的な意味合いで!!」


勇者(笑)地の分に突っ込みいれない!

因みにその日記は孤児院出身の孤児っ子達の兄貴分である極北戦士某の日記である。

「孤児っ子逃げてー!超にげてー!」


ただのブラコン、シスコンであるのだが・・・・・・・愛情は溢れているけどちゃんと彼女もいるし・・・・・・・問題ないと・・・・・・・・・・・信じたい。

後、勇者(笑)何度も言うけど地の文に(略)



さてと、酒がほしくなったのでこれまで。


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