死霊の屋台
むかしむかし 神様が地上に遊びに来たり、語りかけていた時代。
とある霊園に死霊の子供達がいました。
子供達はお腹が空きすぎて死んだり事故にあったり病気だったりで死んで霊園に投げ捨てられるように葬られていたのです。
勿論死んだ後で案内してくれる人がいる事も知らないで放置されていたのでそこでつっと居続けるのでした。
霊園の管理者達はまずはお金がある人から案内しているので子供達の事を忘れ去っていたのでした。
忘れ去られた子供達は雨の日も雪の日もお日様が降り注ぐ中もそこに居続けるのでした。
そんなある日一人の死霊っ子が言いました。
「そうだ!僕たちが忘れられているのはお金を払っていないからだ。だったらお金を稼げばいい!」
その言葉に
「どうやって稼げばいいの?」
「まずは働く場所だよね?」
「うーん・・・・・・・・・・・」
思いついたことは良いのですが方法が思いつきません。
他の死霊達は放置されたら暴れて自分達を見捨てないでと駄々っ子状態でアピールしているのでそれと比べたらまだましなのかもしれませんが。
悩みつかれた死霊っ子達はならば困った時の神頼みとばかりに神様の元に相談しに行きました。
戦の神様の神殿では
「強さもないガキには価値がない」
と門番に追い返されてしまいました。
商売の神様の所では
「金がないのに相談を受け付ける馬鹿はいないだろう」
と受付で追い出されました。
技術の神様の神殿では
「お前らが金を稼ぐために技術を学びたいというならば手を貸すが日雇い仕事の紹介は出来ないなぁ……悪いな。」
と相談に乗ってはくれたのですが解決には至りませんでした。
芸術の神様の所では
「ぐふぐふぐふ・・・・・・・・・・・・・可愛い子供。ちょっと裸になってモデルになれば・・・・・・・・まぁ、なにがあっても・・・・・・・・・・げへへへへへ・・・・・」
神様が気持ち悪かったので死霊っ子達は逃げ出してしまいました。
エッチの神様の所は・・・・・・・・・・・本気で泣いて手助けしようとしてくれたのですが、そこの神官さんをはじめとする人たちの方が大変そうだったので悪い気がして手助けをしてくれる話を断ったのでした。
いくつもの神殿で断られたりしたのですが極光神様の所では女神様自らが子供達を抱きしめて話をつけてくれることになったのですが、
「ちゃんとお金を払うのが正しい事だよね。だから・・・・・・・・・ちゃんと自分で稼いで払いたい。」
と馬鹿な言葉を馬鹿なりに言うのでした。
おバカな子供ほどかわいいと俗に言うのでしょうけど極光神様も情けを得るべき立場ながら筋を通そうとする馬鹿な子供の事を気に入って神官だの巫女だのに命じて仕事を見つけてくるのでした。
最初の仕事は町のごみ拾いでした。
死霊っ子達はまじめにまじめに働くのでしたけど、ゴミを拾った傍からごみを捨てていってゴミが残っているとお金が支払われませんでした。
次の仕事は海辺の浜拾いでした。
集めた物を売る段階でお金が必要なのを知らなくてすべてお役人に没収されてしまいました。
三度目の仕事で異国から来た神官様の付き人をしました。
神官様は黒髪の調理人で美味しいお菓子の作り方をいくつもいくつも知っているのです。その美味しさは神々が思わずつまみ食いに来て王様が国から出すことを許さなくて貴族が列を成して出来上がりを待つほどでした。彼にとっては久方ぶりの休みなのでそんな騒動はまっぴらなのでありました。
死霊っ子達は神官様のお世話を一生懸命しました。神官様も死霊であるとは言え甲斐甲斐しく世話してくれる子を無碍にすることはありませんでした。
ある時神官様は聞きました。どうしてはたらくのかと。
死霊っ子達は自分が冥界に行くための旅費をためていることを聞くとそれならば商売をしたらどうだとお菓子の作り方と商売の計算を教えてくれるのでした。
その間に神官様はコネを使ってお店の準備をするのでした。
数日が過ぎて店を開いたら、あの神官様のお菓子と言う事で長い列が出来ました。
一日目は断るので大変で、二日目は作っても間に合いませんでした。
その後も繁盛して地元のお菓子屋さんから勘弁してくれと泣かれてしまいました。
そうして十日ほど過ぎてみんなのお金がたまりました。
神官様もオレ仕事に来たんじゃないんだけどと頭を抱えながら国に戻られました。
死霊っ子達が冥界に行こうと霊園に向かうところで多くの多くのお客さん達に捕まってしまいもっと作れもっと作れとせがまれるのでした。
作っても作っても間に合わないお菓子作りにいつになったら冥界に行けるのだろうと考えてしまうのでした。
商売は繁盛しましたが死霊っ子達が冥界に行けたのはそれからずっと後の事でした。
どうしてこうなったのでしょうか?
それは死霊の分際で無駄に技術を持ったからなのです。
童話【死霊の屋台】より
「はいどうも、一個銅貨一枚で10個だから銅貨9枚におまけだよ。」
「こっちは?」
「こっちは一個銅貨二枚、ジャムとかつけると美味しいよ。」
「戦槌が言っていた【菓子作る神官】様の菓子か・・・・・・・・・・思ったよりも食べごたえありそうだな。」
「そりゃ、こっちの人達は体大きいから小さいの作っても間に合わないって、おにーちゃんいっていたしね。」
「実際僕らでも三つくらい食べちゃうもんね。」
「【白の都】で白雪髭のおじちゃんが店を占拠して延々と食べ続けていたのを見たことあったよ。」
「作り手の子、終わらないって泣いてたね・・・・・・・・・・・」
「あいつら何をしていやがったんだ?では、貰っていくぞ。」
「戦士長様、ありがとうございまーす。」
がやがや
前日の夜。
店を開いて稼ぐとなれば行動が速いのが勇者(笑)である。とは言え、自由市での商業許可と場所決め位なので大した手間ではない。外国人である彼等に許可が下りないのではとも思われたがたまたまそこにいた編み込み髭に
「おうぅ、このにーちゃんは旨い菓子を作る料理人だぞ。俺が食いたいから許可しろ!」
と戦斧片手に保証人になってくれたり、極光神殿の女性神職達が
「あらあら、あのお菓子で保証人ひきうけますわよ。」
「神殿の名前出しても問題ないですわ。あの子達イイ子だし・・・・・・・・」
「長老尼様に怒られても問題なし!」
「私達の分美味しいの用意しておいてねー」
となんか節制を旨とする聖職者にあるまじき事を言いながら神殿に無許可で保証するのである。ちなみにこの女性神職達は神殿に無許可で保証をとりつけたことがばれてしまい反省室でおやつ抜きの刑に処せられたのはどうでもよい話である。
その合間に聖徒の死霊っ子を頭として菓子を仕込みにかかったり材料の買い出しをしたりするのである。
そして話は市場へと戻る。
市場では作り上げた菓子が薄高く積まれているのだが、それもなんだかんだと売りさばかれている。
「おにーちゃんから追加きたよー!」
「今度は何味?」
「ヨモギ味に樺の樹液風味だって。」
「坊主、そっちの出来たても序に貰おうか。みっつくれ。」
「あいよっ!おっちゃん、樺の樹液味も入れておくぞ。」
「気が利くじゃねぇか。またくるぜ!」
「全種一個づつもらえます?」
「まいどっ!」
「こんな小さい子が本当に健気なモノだね。」
「本当だ、自らの旅費をためようと頑張っているのにこいつらときたら・・・・・・・・・・」
市場の衆の反応はおおむね好意的である。まぁ、愛らしい子供が自力で頑張ろうとしている姿を見ているのをみれば頬も緩むという物である。それ以前に市場で飲んだくれて転がっている酔っ払いと比べてみれば・・・・・・・・・・
「同じ死霊なのにこんな小さい子が自らの物を稼ごうとしているのにこっちの男連中ときたら・・・・・・・・・・」
「でかいのは図体だけか?」
「うんうん、よぅがんばっておるの。わしにもいくつか貰おうか。」
「おじいちゃん、どれがいい?」
「そうじゃな、そっちのを10個くれ。孫のおやつによさげじゃ。」
「まいど!」
物珍しさと健気さに引かれて売れ行きは上々である。
「ふむ、釣りはいらん!」
「そんなっ!竜鱗貨(銀貨5枚相当)じゃ多すぎるよ!」
「お前らが旅をするのに金はいるだろうに、文句あるか?」
「その金もちゃんと稼いだものじゃないと気持ちよくいけないよ!」
「ふむ、そうか・・・・・・・・・・・ならば釣りをもらおう。」
「まいどっ!」
「ガキのくせに固いんだから・・・・・・・・・・」
「まぁまぁ、青韮の束さんやガキの可愛い意地くらい見守ってやらないと・・・・・・・・お前さんだってそんな時あっただろう。」
「う、うむ。氷川のおやっさんが言うならば仕方ないか・・・・・・・・・」
「坊主、こっちにも10個ほど見繕ってくれ。」
「銅貨9枚ね。」
「そんなんで儲けが出るんか?」
「それは企業秘密と言う事で。神官さんがちゃんと仕組み作ってくれているから。」
「ならばいいんだけどよ。がんばれや。」
「はいっ!」
「お前らちゃんとやっておるか?」
「神官さん!」「にーちゃん!」
「売っても売っても追いつかないよ!」
「次はまだ?」
「取り敢えずこれで今日の分は最後だ。後は保証人になってくれた神殿と編み込み髭さんへの差し入れの分を残さないとな。後ひと踏ん張りだ!売り切って売り逃げするぞ!」
「「「「おうっ!」」」」
「さぁ、いらっしゃいいらっしゃい!のこりわずかだよぉ!」
「じゃぁ、俺がさらっちまってもいいか?」
「あと100個はあるよ?」
「はははっ!ちょっと多すぎたな5個くれ。」
「まいどっ!」
そんな菓子も結構売れて残りわずかとなっているころ、物欲しそうに見ている幼子がいる。
「如何した?欲しいのか?」
「うん、でもお金ないから・・・・・・・・・・・・」
「仕方ねぇなぁ・・・・・これ形崩れたのくれてやるから!泣きそうな顔してんじゃねぇ!」
「うん、おにーちゃんありがとう!」
幼子が満面の笑みでお菓子を手に駈け出したのを見計らって勇者(笑)は売り子の少年に言った。
「この菓子の代金分はお前の取り分から引くからな。」
「ちょ!にーちゃんそれくらいいいじゃない!」
「神官様のごうつく。」「かわいそうじゃない!」
「あのなぁ、お前らが可哀想可哀想言ってタダで配ったらお前らが帰れる時が遅くなるだろ?それでもいいのか?食えないからって死ぬわけでもなし。」
周りの客達もちょっと引いている
「あの異国の神官様、ちょっと酷いわね。」
「金勘定で仕事しているんか?」
「少しくらいいいじゃねぇの。けちくせぇな。」
ごちゃごちゃ煩い周りを尻目に・・・・・・・・・・
「かまわねぇよ!銅貨の数枚分くらいはらってやらぁ!」
「本当に馬鹿な奴だな。」
気持ちのいい宣言に勇者(笑)は売り子の少年の頭をくしゃくしゃかき回す。
「意地っ張りの大馬鹿が!本当に馬鹿だな・・・・・・・・・・・」
とさらにくしゃくしゃと頭をかき回す。
「バカバカ言うなよ!」
「タダで商売物を挙げてそれで良しとする売り子が馬鹿じゃなくてどうする?なぁ、おきゃくさんよ。」
「どうしてそこを俺に振るのかわからねぇが、商売として考えるならば馬鹿らしい間違いだな。でも、そんな馬鹿は悪くないだろ。あの子は近くの孤児院の子で小遣いらしい小遣いはもらえないはずだからな、それを考えたらいい事をしたんだろ。」
と勇者(笑)が言わんとするところをくみ取って子供達よりも頭一つ以上大きい男が最後の菓子を全部買い取っていくのであった。
「明日もやっているんか?」
「うーん、金が稼げたら終わるつもりだからどうだろ?」
「この子達の弔い金には足りないから数日くらいはやりますよ。」
「ならば明日も楽しみにしておくか。」
「おまちしてまーすっ!」
その日作った菓子はすべて売り切れたのであった。
「さて、極光神様の所にお菓子届けに行くぞ。お前らも全員ついて来い!」
「「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」
菓子の売り子も作り手も全部従えて神殿へとむかう、異国の神官の一行であった。
極光神殿
勇者(笑)は久方ぶりにがっつりと労働をした疲れを見せながらも満足げに一日の感謝をささげるために祈りをする。死霊っ子達も彼に付き合ってなのか一緒になって祈りの姿勢を見せる。
「ああ、貴方がこの子達の保護者である【菓子作る神官】様ですのね。昨日は美味しい菓子をありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそ市場の保証人となっていただいたり、この子達に祝福を与えていただいたり・・・・・・・・・・・とても感謝しておりますよ。」
「それは我が女神がこの子達を認めてくださっているからですわ。ところでそちらにあるのは?」
「忘れていました。女神様ご注文の菓子でございます。」
「これはこれはご丁寧に・・・・・・・・・・・」
ふむ、これは美味そうだ。(by極光神)
数日ほど、市場で菓子売りをしていたら酔っ払いの死霊達の姿が見えなくなっている・・・・・・・・・・・
なぜだろうと勇者(笑)が訝しんでいたが、子供達が働いている中で飲んだくれていたらとても外聞が悪い悪い・・・・・・・・チクチクと言われているうちに一つまた一つと逃げるように冥界送りの旅に向かっていたのであった。根性が座っているのか、面の皮が厚いのかわからない少数の酔っ払いたちも【弔い手】達の【御霊送り】で強制的に冥界逝きにされているのである。
「このくそ野郎がぁぁぁぁぁぁぁ!!!とっとと冥界逝きやがれぇぇぇぇぇぇぇ!ひっさつぅぅぅぅ!みぃぃっぅいたぁぁぁぁまぁぁぁぁぁぁぁおぉぉぉぉぉぉくぅぅぅぅぅぅぅりぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
「ちょ、ちょっとまて!今必殺とか言った!何でそこでスコップを振り上げているのかとかそのスコップが思いきり不自然に光って力がみなぎっているかとか聞きたいんだけど・・・・・・・・・・・・た、たぶげっ!」
かきーん!
見事にとんだな。(by極北神)
ただいまの飛距離冥界入口までぇ(by酒精神)
「ふっ!今日のスコップは一味違うぜ。」
冥界まで叩き飛ばされてしまった愚かな死霊の酔いどれは冥界の門に思い切りたたきつけられて汚い壁画となるのであった。
ああ、我が親愛なる弔い手よ。スコップでたたき送るのは【御霊送り】じゃないからな。(by冥界神)
この流れで酒を飲んだら俺、叩きのめされるかな?




