死霊っ子の一日 夕暮~夜
極北の食生活
気候ゆえの条件により半遊牧、狩猟生活者が多いこの地においては農産物が食糧事情に占める割合は意外と少ない。主食は肉等と揶揄される彼等極北の民だが、その食生活は興味深い物がある。
寒冷で農作物の生産量が多くないこの地において輸入された穀類や芋類が主食になる。これらを単純に粥にしたり蒸かしたりして食べることが多く粉にして加工するのは単純な物を好む彼等の気質からか加食部分を減らされることを厭うからなのかあまり行われていない。地の物で主食とするならば寒冷地に適応したオオムギの一種があるのだが食味の面で輸入品の方が人気が高く辺境の一部他、祭礼の時以外に食されることは少ない。
副食物にしても馴鹿、毛長牛等の乳や肉の加工品、狩猟で得られた野肉、魚介類を用いられるのが多く、主食は肉類等と他国の者に言われることが多い。野菜類は生産量が少なく生野菜を食べるというのはそれだけで贅沢と言われるくらいである。野草の類でそれを補ったり、岩に生える苔を粉末にして食したりと体を養う努力には伝わる知恵が各所に見受けられる。
海の民の方では魚介類の他にも海藻の類を主食である穀類粥の増量材として利用としたり地の物を利用する生活が見受けられる。
勿論狩猟生活者と海の民の交流は続いており、その集大成は【宴つまみ】である。
彼等にとって海の物と陸の物を一緒くたに食するというのはとても贅沢なのである。
【極北料理入門】より前文部分抜粋。
時間は少しさかのぼる。
ざばーん、ざばーん
寄せては返す波が大地を削っている岩場、そこには人日卿と小僧っ子が糸を垂らしている。
「人日様、これ食えるんですかね?」
「小僧っ子、それは煮付けると旨いと勇者(笑)が言っていたぞ。」
びろーん
そこにあったのは一匹の鰈であった。未だびちびちしている座布団のような鰈を見て小僧っ子は調理人としてこれをどうすればと思い悩むのだが人日卿は知識のある勇者(笑)に全て丸投げすればよいと気楽に構えている。同道していた泥斑は何か興味深い物を見つけたのか近辺をうろついている。
遠くには草を食む馴鹿が見え、合間合間に白黒斑の山羊が角を突き合わせている。草を食むものは焦げ茶色をした小さな生き物がいるのだがその正体を二人は知らない。
「まぁ、そうなんだけど。釣って丸投げするとにーちゃんぼやくんだよ。『下処理位しておけよ・・・・・・・』ってね。」
「とは言え騎士である私にその手の知識がないのは当たり前だろう。」
「調理人のおいらは?」
「・・・・・・・・・・うむ、今日教わっておけ。」
「そうなるわけね。」
ざばーん、ざばーん
打ち寄せる波の音を聞きながら二人はのんびりとしているのであった。
「おっと、あたりだ。」
人日卿の竿に力がこもり魚69がかかる。
「小僧っ子、これを見てくれ。どう思う?」
「すごく、大きいです。」
あうとぉぉおぉぉ!(by節制神)
そのセリフは臥所で使う物でしょうに。(by文芸神)
違うでしょう、文芸神。雪隠で言ういいまわしでは・・・・・・・・(by芸術神)
それ以前の問題といたしまして、如何してこの御二方は腐った事しか言わないのでございましょうか?(by発酵神)
貴女に言われたくないわ。(by芸術神)
なんだかんだいって人日卿も小僧っ子もそれなりの釣果を得ている。魚籠の中は少なくない数の魚が詰まっている。夕餉の菜はこれで賄えるのだろう。やはり勇者(笑)がいるときには人日卿の釣運が激減するのだろう。
「ほっとけ!」
人日卿、地の文に(略)
「でもにーちゃんほっといていいのかな?」
「あの分だとせいぜい酒盛に巻き込まれるくらいで実害はない。それともなんだ?一緒に酒盛したいか?」
小僧っ子の答えに人日卿の返答。それに対して首がもげるかのごとくに否定の意思を示す。
延々と続く宴席に次の日の二日酔い、とどめとばかりに療養神の不味い薬。小僧っ子が逃げたくなる気持ちも分からなくもない。
お酒は大人になってからー(by酒精神)
小僧っ子の否定を微笑ましげに見ている人日卿、当の本人も巻き込まれたくないから良く判るのだが。取り敢えず生贄がいるからそれに任せておけばよろしかろうと暢気に構えているのである。
泥斑は自ら捕えた獲物を見せびらかすかのように引きずっている。
世は既に事もなく、気楽な護衛任務の傍ら竿道楽にその日を費やすのである。
話は元に戻る。
市場で買い食いしたり興味深げに見物している死霊っ子共(出身地色々)色々と日が沈みかけていたりするのでそれぞれの寝床に帰ろうとする。
勇者(笑)の投宿する宿は市場の端にある。地元の子達と別れるときにはその宿の姿が目に入る。
「ばいばーい!」
「あしたつきあってくれよー!」
「いいよー、かみさまはやさしいからだいじょうぶだよー」
「そ、そんなことをきいているんじゃないやい!」
「だいじょうぶだっててんじょうのしみ・・・・・・・・・・『あうとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!(by節制神)』」
「つよがっちゃってー」
適当すぎる別れの挨拶をしながら分かれていくちびっこどもであったが。
「おや?お前らが死霊っ子達と遊んでいた子か?飯でも食ってくか?」
「「「「「ごちになりますっ!」」」」」
というたまたま宿から顔を出した勇者(笑)の誘いを受けて飯にありつくのであった。
「うめぇ!」
「にーちゃんおかわり!」
「こっちも」
「ぼくもっ!」
「わたしもっ!」
あくあくはくあく・・・・・・・・
子供等の食欲はとても見事と言うべきものである。
ましてや死している身であるとは言え食うや食わずであれば美味にあった時の食欲と言う物は・・・・・・・・
うんうん、その食欲を馬鹿にするいわれはないよね。飢えるということはとても辛い事なんだから・・・・・・(by作者)
夕餉の菜は人日卿達が釣り上げた魚である。泥斑も地栗鼠やら松鶏を捕えたらしいのだが、これは下処理の仕方が判らないので宿の者に任せている。もっとも、泥斑等猫の一家には宿の者が切り分けた獲物が振舞われている。これは猟犬の取り分と言う風習なのだが猫にも適応されるらしい。猫達は人間たちの風習など知った事かとばかりにむさぼるのであるが。
「ああっ、うめぇなぁ・・・・・・・」
一人の死霊少年が食べながら存在を昇華させている。
「あにき!一人だけ逝くなよ!」「明日みんなで逝くんだろ。」
「おいおい、少年。一人でさっさと行くのは女に嫌われるぞ。」
勇者(笑)その一言は子供に向けて言うべきではないでしょう。
「まだ食後のデザートと言うのが待っているんだ。今逃したらいつ食えるかわからないぞ。」
ニヤリと悪い笑みを浮かべる勇者(笑)に逝き掛けている死霊少年は
「おっと、それは!」
と存在を確定させる。
勇者(笑)、そこは見送るべきところだろうが。(by冥界神)
まぁまぁ、冥界神様。勇者(笑)殿も明日に彼等を送り届けるのですから見逃して差し上げましょうよ。(by冥界の案内人)
死んだのならば執着を振り払って冥界に来てもらいたいものなのだがな。(by冥界神)
食後、薬湯を飲みながら
「冥界ってどういうところなんだろ?」「怖い鬼とかいないよね」
「おとーさんたちいるかな?」「さむくないよね・・・・・・・」
等と不安げな子供達に
「だいじょうぶだよ、案内人さんは良い人だし。」「いい人過ぎて『いい人』になれないんでしょ。」
「そこは『悪い人ね』ってなれないのが彼の限界・・・・・・・・」
「はいはい、死霊っ子達。案内人さんをディスらない。あの人は本当にいい人なんだから・・・・・・」
「はーい。」
不安げな極北の死霊っ子達に聖徒の死霊っ子達はのんきに答える。
因みに話のネタになった冥界の案内人は一人ではないが馴染みになっている案内人の一人である。
ううっ!(by冥界の案内人(独身))
「でも、色々やりたかったなぁ・・・・・」
「ほんとう、立派な戦士になりたかった。」「あたしはお嫁さん。」
「【熊討ち】目指していたんになぁ……」「ぼくもっ!」
「お前ら小さなぁ!狙うなら【神討ち】だろ!」
「【神討ち】って?」
「聖徒のお前等じゃわからねぇか。オレ達極北戦士の強さの階位だ。神様とさしで戦えるだけの実力があるというか神様でさえ倒せるというか・・・・・・・・・・取り敢えずとっても強いんだ!」
「それならおにーちゃんも【神討ち】だね。ぶんげーしんさまとかげーじゅつしんさまとか後西方平原の神様とかお菓子で撃ち落としていたもん。」
「良く叩きのめしているのは盗賊神様じゃない。つまみ食いしているから。」
「すげー!神官のにーちゃん。」
「どうやってどうやって?」
「そうだな、俺は良く菓子を作っているんだがそれを狙う頭の黒いネズミたちがいるんだ。それを、この【軍用菓子(檄堅)】で叩きのめしているんだがそこに何故か神様が良く紛れ込むんだよなぁ・・・・・」
「えっと、神様ってつまみ食いするの?」
「何でお菓子で打撃が入るの?」「お菓子は武器じゃないでしょ?」
がじっ!
「硬い!」「歯が折れちゃう!」
「確かにこれぶつけられたら痛いだろうね。」
「そういえばおにーちゃんこれで壁に穴開けていたね。」「孤児院の石の壁だっけ?」
「何で出来るの?石は固いじゃん。」
「それはな、俺の菓子は神をも穿つからさ!」
「全然答えになってないじゃん!」「わけわかんないよ!」
「普通、お菓子は砕けてしまうでしょう!常識で考えて!」
「おにーちゃんのお菓子を常識で考えちゃだめだと思う。」
「普通、昼間から遊びまわる死霊の方が非常識だと思うんだが・・・・・・・」
「「「「「「「「「おにーちゃん(神官さん・にーちゃん)には非常識扱いされたくない!」」」」」」」」
総突込みである。
がじがじがじがじ・・・・・・・・
なんだかんだで菓子をつまんでいる死霊っ子達。硬い菓子も何のその、ふやかして食べているんだが
「そういえばにーちゃん、オレ達にも金稼ぐ方法ないか?」
一番年上の極北の死霊っ子の少年が勇者(笑)に問いかける。
「なんでだ?」
「にーちゃんとこの子が金を持って奢ってもらうってのは気が引けるんと、【弔い手】達に渡し賃払わねぇってのは貧乏臭くって恥ずかしいだろ。」
「実際金がねぇんだから素直に受けときゃいいのに。」
「そりゃそうなんだけどよぉ。なんていうか・・・・・・・・・・」
言葉にできないようだ。うーんとあまり宜しくないおつむで言葉を紡ぎだそうとしている少年に勇者(笑)は彼の頭をくしゃくしゃに撫でまわして、
「しゃーないなぁ、明日一日市場で菓子の屋台でもやるか?歩合で小遣いくれてやる。」
「いいんかい?無理言っているようで悪いんだが?」
「市場の商業権取るのがどうしたものかと思うが無理はないだろ。おまえらもいっしょにやるか?製造と販売を分けておけば一日に何度か出来たてを・・・・・・・・・」
「おにーちゃんそれ本格的すぎ。」
「基本グータラなのに凝り性なんだから・・・・・・」
「【西方平原】の都の真似だね。」
「真似っていうか考えたの俺だし・・・・・・・・それで色々売り上げの一部手に入っているし。」
「ぼくもいいの?」「やってみたい!」
「あしたはおみせやさんごっこ・・・・・・っていたい!」
「ごっこじゃなくて真面目でやるんだ!金を受け取る以上半端は許さんぞ!」
「神官さん痛いよ!」
「お前ら明日店開くから準備するぞ!」
「「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」
ごっこ発言した死霊っ子に拳固を落とす勇者(笑)、物理攻撃無効な死霊っ子に打撃を与えられる点で彼も大概非常識である。
そうして死霊の菓子屋が明日開店に向けて始まるのであった。
ゴールデンウイークってなんだろう?
休みっておいしいの?
酒でも飲もう。




