死霊っ子の一日 昼間
黄金色のお菓子
異世界人某が冗談で制作したお菓子。金貨を模した造りとなっており、賄賂っぽく渡したり子供がお店屋さんごっこをする時の疑似通貨として使われたりする。
冗談で作ったのは良いが造りが精巧なため型枠が贋金作りに使われるのではないかと問題になったのは笑い話であり、【紅鱒港国】の貨幣鋳造職人が
「この程度の造りで我が国の金貨を模したなんて」
と、抗議に行ったのは大人げないなと当時の人々の失笑を誘ったのは有名な話。
勇者(笑)の支度は極北の男達に比べてとても短い。
伸ばし手入れする髭がなく、短く整えられた髪の毛を水をつけて寝癖を取るくらいだからである。
彼にしても異世界生活で不便に思える事は幾つかある。
その一つが身支度に使う道具の事である。歯ブラシがないが楊に似た木の枝を噛み解してブラシ状にしてから歯垢を取るのは慣れたし、その後に薄い香草茶で口をゆすぐのも口の中がさっぱりして気持ちが良い物だと思っている。ついつい飲んでしまいそうになるのは笑い話だが、実際の話飲んで口中の臭いどころか胃袋にたまった酒臭さを抜いている者もいるので間違いではない。
水の冷たいのにも慣れたし、出来れば熱いおしぼりで顔を拭きたいなとか思うのだがそれを用意する手間を考えれば・・・・・・・・・
そんな中で不便に思えるのが剃刀である。T字カミソリがないのはとても不便である、剃刀と言えば小ぶりなナイフで代用していて切れ味がすぐに悪くなる。時々研ぎに出して手入れしないと髭どころか皮膚まで切ってしまうのである。ナイフで髭を手入れしている連中を見て髭を伸ばすのはその辺にも理由があるのかなとも思案したりもする。
そういえば作者は刺身包丁で髭をあたっていたねー(by酒精神)
まぁ、作者は置いといて勇者(笑)も周りの者が髭を伸ばしているのを見て自分も髭を伸ばそうと試してみるのだが数日後に伸びた髭のみすぼらしさに断念することになるのだが別の話である。
昼頃まで寝て漸く活動開始した勇者(笑)は身支度をして町でもぶらつこうかと思うのだがそこにブラシを咥えた一匹の白猫が・・・・・・・・・・
うみゃーお
ブラシを勇者(笑)の手前において一声甘えた鳴き声。
「なんだ?俺にブラッシングしろと?」
うみゃー
肯定するように鳴く白猫、仕方ないなと肩を竦めて白猫を持ちあげて寝床に腰かける。
因みに白猫のブラッシングは勇者(笑)の身支度の倍以上の時間かかった。
傍らの笊には子猫が山盛りになって寝ている。ちなみに父猫である泥斑は人日卿に付き合って釣果のおこぼれを狙っている。
勇者(笑)はその日宿に籠って、菓子を作ったり子猫とじゃれたりしているのであった。
その頃死霊っ子達は・・・・・・・・・・
「うわぁ!」
「すごーい!はないっぱいだぁ!」
【柔草の園】にて極北の死霊っ子達と遊んでいるのである。追いかけっこしたり、花をつついて揺らしてみたり、白い綿毛の種を風で飛ばしてみたり。花飾りなどを編んだりしているのは女の子達で追いかけっこしたり綿毛飛ばししているのは男の子達である。
極北の季節は冬とそれ以外しかなくて本当に短いそれ以外の季節にこれでもかとばかりに裂いている花は見事な物である。
駆け回った後で草を寝床に寝っ転がったり、花と同じ視点に立って何がいるのかと眺めたり、地栗鼠が草をついばんでいるのを観察したりと思い思いに過ごすのである。
「あの地栗鼠は脂乗っていて旨いんだよなぁ・・・・」
「地栗鼠って食べられるの?」
「表面をカリカリに焼いても中から脂がにじみ出てくるくらいうまいんだぞ。」
「市場で買えるぞ、冬が来る前が一番脂がのっているだろ。」
「だけどそれは禁猟期・・・・・・・・」
「たまたま、ウサギの罠にかかったんだ。食わないともったいないだろ。」
「そのたまたまに作為を感じるんだが・・・・・・・」
幼い子供が・・・・・・・・・と思うだろうが厳しい極北の地で食べる物が少なければ何でも食べるしかないのである。
「いやいやいやいや、本当に美味しいんだから。今から石を当ててみるかな?」
「投石器あればいいんだけど。」
「まぁ、あたち達食べる必要ないから無理して狩る必要ないからいいけど。」
「地栗鼠食べないなんて・・・・・・・」
食文化はそれぞれ・・・・・・・・・・
地栗鼠は己が皿に乗る妄想をされていたとも知らずに草を食んでいるのである。
そうして満足したのか巣穴に引きこもるのであった。
野で遊んだ死霊っ子達は小腹がすいたので市場をふらつくことにする。
野にあれば青草の新芽とか花の蜜とか吸うのも悪くないのだが、それもやりつくした後であるから腹に溜まる物をつまみたいのだろう。朝方に勇者(笑)からもらったお小遣いもある事だしちょっとした食事位購う事が出来るのである。
「おおっ!腸詰腸詰!」
「あっちのスープもいい匂い!」
「さぁさぁ見ておくれ!雨水国から直送の林檎だぞ!」
「麦はいらんかね?」
市場には大きな者達が・・・・・・・・・・・極北の民だから大きいのは当たり前であるが人族連合の地と同じように売り買いしているのである。
食べ物を扱っている店が大半なのであるのだが少数の小物屋等も見受けられる。そんな中ですぐに食べる事が出来る軽食類を扱っている店を探しつつも市場見物をする死霊っ子達である。
白の都の自由市場みたいに市場で調理する店は見かけないが、自宅で調理したであろう麺麭を扱っている店がありその店で買った小ぶりな麺麭に近隣の店で売っていた塩蔵肉やら燻製の魚を挟んでぱくついている。
美味しそうに食べている子供等(死霊だけど)を見てほほえましそうに見ている店主。
「おじちゃんいくらなの?」
「お前ら金持っていねぇだろ?ガキが遠慮するなって。」
「でも、お小遣いもらっているし、タダでたかっちゃダメっておニーちゃんも言っているし。」
「ちゃんと良いしつけされているんだな。銅貨20枚だ。」
「はい、銅貨二十枚ね。いち、にの、さんの・・・・・・・・・・・」
「ちょうどだな。死霊っていえばダダ飯をたかるのが当たり前の存在だと思っていたが・・・・・・・」
店主の嫌味を聞いた死霊・・・・・・・・・・・極北戦士達とその日何度目かになる乾杯をしていたのだが・・・・・・・苦い物を食べたかのような顔をして聞こえなかったふりをしている。
「えー、お金払わないと泥棒と一緒だって言っていたよ。」
「おじちゃん達だって生活あるでしょう。」
「うんうん、良く判っているじゃないか、このちびっこどもは。それに引き換えいい年した男なのにあそこの死霊どもは・・・・・・・・・・」
「お金払ってないの?」
「びんぼうなの?」「すかんぴん?」
「僕らって食べる必要ないんだよね?」
そこかしこで「ぐはっ!」だの「どきっ!」だのと言う声が聞こえるが気のせいだろう。
まさかそこまでただ飯ただ酒を食らっておきながら良心の呵責とか言わないよなと某女神さまが言いそうだが・・・・・・・・・
普通に気が付いて居た堪れなくなっているだけましとしておこうか・・・・・・・・・・・
酔いも冷めかけているし。
「死んでまで誰かに迷惑かけるなんて恥ずかしいよね。」
「ここに来たばかりの時に戦士長のおじいちゃんがおにーちゃんに文句言っていたのって」
「お前ら、あの異国の神官様の連れか・・・・・・・・・・一応あの戦士長様は長老衆の一人でとても偉いからな。というのはおいといて、あいつらの飲み食いは戦士達の経費から出ているんだが支払いがしぶくってな・・・・・・・・・・・・・」
「おじちゃん達も苦労しているんだね。」
「わかるか・・・・・・・・・・俺だって飲みたいの我慢しているのに奴らときたら朝から晩まで・・・・・・・・・・」
だんだん極北の死霊達が遠ざかっている。なんていうか逃げているのだろう。それに伴って極北戦士達も会計を済ませて帰り支度をしている。彼等は戦いを生業としているものである、無謀な戦いをするのは本職として恥ずべきことである。勝っても負けても痛い思いしそうだしと言うのが本音だが・・・・・・・
その日、酒類の売り上げが少々下がっていたのは笑い話である。
それ以前に連日酒盛していたのだからその日くらい下がっても、そんな日があるさと笑い飛ばせる程度なのだが死霊っ子達は知らないことである。
眠気に襲われたのでこれまで。




