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死霊っ子の一日 朝方

我等子供は願い捧げる 常に我等を見守るように

夜の帳に万色の衣翻して 星を足場に舞うお方

我が子の代にも伝えましょうぞ 孫子の代にも伝えましょうぞ

我等の住まうこの地の女主人(あるじ) 白き世界に黒き闇

この地は真に慈悲深く


我ら子供は誓いをたてる 共に喜び分かち合おうと

短き春に少なき実り それでも我等を養うに足る

我が父祖の地に誓いましょうぞ 我が母祖の血に誓いましょうぞ

やさしき乙女が季節をめくり 険しき男が氷を閉ざす

この地は真に厳しくも


我ら子供は感謝を捧ぐ この地に貴女の言葉を見つけ

灯見える海原の果て 灯見える氷原の果て

我が朋輩に感謝しようぞ 我が血族に感謝しようぞ

我等が命が貴女の言葉 世界のすべてが貴女の教え

この地は真に思慮深く


我ら子供は歩みを止めず 貴女の御許に向かいましょう

数多の時を超えてなお 貴女を慕う我等の思い

我が足跡踏み越えていけ 祖等の足跡越えて行こうぞ

いずれ貴女に超える子を いずれ貴女が誇る子を

この地は母胎 貴女の表し




極光神殿礼拝聖句【白き世界に黒き闇】より

「おにいちゃんすーぷができたわよ。」

「いつもいつもすまないねぇ・・・・・・」

「こんなときに小僧っ子のにーちゃんがいてくれたら・・・・・・・・・」

「あいつのことは口に出すんじゃない!」


なんか古典コントのようなやり取りであるが極北の地について数日後の勇者(笑)と死霊っ子の朝のやり取りである。単純に二日酔いの勇者(笑)に朝食を渡しに来ただけなので小僧っ子も連日の宴会に附き合い切れないと人日卿と共に海釣りに逃げているだけなのである。

二日酔いには具だくさんのスープがよく、よく蜆の味噌汁等と親父が頼んでいたなと故郷の事を思い出しながら啜っている勇者(笑)を尻目に死霊っ子達は


「おにーちゃんあたしたち遊び行ってくるね。」

「極北の死霊っ子達となかよくなったの」「今日は軟草の園で花が咲いているって聞いたからそっちいってくる。」「おかしちょうだい!みんなでたべたいから。」「いちばにおかしすくないしたかいもんねー」「おこづかいもちょうだい!」

と口々に言ってくる。

二日酔いで朦朧としているのにキンキンと話されて頭を痛そうにしている勇者(笑)は


「ああ、わかったわかった。お小遣いはそこの小銭入れもってけ、気をつけて行ってくるんだぞ!」

と、頭を抱えながら

「そうだ、そこにある菓子を極光神様の神殿に届けておいてくれないか?挨拶も行かないで申し訳ないと言って・・・・・・・・・・・」

乳脂の薫り高い菓子の山を示す。

「わかったー!」「いつのまにつくったの?」

「しかしいっぱいあるねー。」

「宴会の間に仕込んでおいだんでね。ううっ!頭が痛い。」

「のみすぎだよー」「きょくほくのおじちゃんたちとはからだのおおきさがちがうんだから。」

「ううっ!もう、今日は酒なんか飲まないぞ!」


この言葉が実行されるかはさておき・・・・・・・・・・・・・

「じゃあ、いってきまーす!」「あそびいってくるなー!」

「お皿はあとで宿の人が取りに来るって。」「おこづかいありがとうねー」

「おにーちゃん、お菓子は女神さまのところにちゃんと届けるからねー」

元気な声をそれぞれに挙げて死霊っ子達は外に飛び出していくのであった。


「やっと静かになった。もうひと眠りするか・・・・・・・・・・・・・」

二日酔いの異世界人は寝床にもぐりこむのであった。

そして勇者(笑)は気がつかなかった死霊っ子の持っていた小銭入れには銀貨が数枚入っていたことに・・・・・・現在進行形で稼いでいる彼にとってはお小遣い程度なのだが。








暫し後、弔いの園。


旅をした時期がよかったのか短い花の季節である。死者を弔う祭壇のほかは柔らかな青草や数多の花が一面を覆っている。ここにいる弔い手も巨躯の極北の民で眠たげに身支度を整えていた。

極北の男達の朝の支度は時間がかかる。何しろ髭の見事さが男振りであると信じている彼等は朝起きると共に髭を洗い整えるからである。弔い手達も例に漏れず香油を垂らして髭にブラシをかけている。


「髭の毛並みは最高で今日も一日いいことがありそうな気がする。」

「おう、今日は菫の香油か?洒落をきかせやがって!」

「髭に季節を取り込むのは趣というものだろうよ。そういうお前は菜花色の髭リボンだと飾りが過ぎていないか?」

「あれはよい、油を塗りすぎて匂いがきつすぎのは無粋だろう!」

「男は黙って冷水にて髭周りの皮膚を引き締めるのがよい。」


色々と拘りがあるようで・・・・・・・・・・・・

彼等から見て髭を生やさない異国人は男らしさのない連中と思っているのだがそれはどうでもよい話。

異国人の側から見ても彼等の髭に対するこだわりは呆れかえるほどなのだが・・・・・・・・・・・・


「おはよーございまーす!弔い手さん達。」

遠くから死霊っ子達の元気な声が聞こえてくる。

「おうっ!ちびっこ共か!神官のにーちゃんはどうした?」

「おにーちゃん二日酔い。」「今頃癒し手さんから苦い薬飲まされているかも。」

「二度寝しているんじゃない?」

「はははっ!あれしきの酒で二日酔いとは情けないな!」

「たった二本で・・・・・・・・子供か?」

「二本も飲めば普通潰れるって・・・・・・・・」


極北常識では勇者(笑)は下戸らしい。

「俺達はその倍はのんでいたんだがな・・・・・・・・」

「長老連中と乾杯返杯続けていたから楽しく飲めなかったんだろ。」

「儀礼酒も面倒だよな。乾杯返杯は一度で済ませろと決めてなかったっけか?」

「爺様達も酒が入って忘れてしまったんだろ。」

「どんだけのんでいたんやら・・・・・・・・」


ついでいえば、テラ(地球)系世界ヤマト系諸地域(分類適当)の酒席文化の中では注いだら注ぎ返してのやり取りがあるからついつい故郷の風習と重ね合わせて飲み続けてしまったと・・・・・・・・・・

髭の手入れを続けながら弔い手達が思い出したかのように

「そういえば何で来たんだ?お前等も送ってほしくなったンか、こいつらのついでだから一緒に送ってやるぞ。」

「ちがうちがう、こっちの死霊っ子たちを遊ぶ約束したから」

「そっか、そっか・・・・・・・・・・さっさと冥界に行ってくれると楽なんだがな・・・・・・・・・・・」

「冥界行く前にこっちで遊ぶんだって言っていたから夕方か明日には行くんじゃない?」

「あっ!聖徒の死霊っ子ちゃん達だ、今日は何して遊ぶ?」「あそぼあそぼ?」


わらわらとにじみ出てくるかの如く現れる地元の死霊っ子達。ふゆふゆと一つの団子みたいにまとまる集団を見て、こんなに居たんだと送る手間を考えてげんなりとする弔い手達であった。


「あっ!いいにおいがする。」「なになに?おかし?」

「たべていいの?」「だめー!」

「おにーちゃんに頼まれてめがみさまのところにとどけにいくんだから。」

「ちょっとくらいいいじゃん。」「だめなの。」

お菓子に集ろうとする地元の子と聖徒っ子達の間で攻防戦が始まろうかという時


「こらこらチビ共、その菓子は女神様へのささげもんだぞ。勝手に食べちまったら雷おとされるぞ。」

「「「「はーい。」」」」

「後、そこの聖徒のちびっこ共もそういう用事は最初に済ませること。うちのチビ共だって欲しがるの判っているだろ。」

「はーい。」


つまみ食いされたくらいで妾はそんなことはせぬのに・・・・・・・(by極光神)


うまい事まとめる弔い手であった。

「遊ぶ前に神殿行って極光神様に渡してきな。」

「「「「「「「はーい。」」」」」」

死霊っ子達は群がりながら神殿に向かうのであった。




極光神殿

極北神群の中でも最高位に当たる極光神を祀る神殿。外側には極北神群の神々の絵姿が飾られ、季節がらなのか花の植わった植木鉢が並べられている。風雪に耐える石造りの素朴な建物に防寒のためか内側に漆喰が塗りこめられているのが興味深いものである。


本当は外側にも塗りたかったんだがねぇ・・・・・予算の都合で(by極北神群の女神某)


女神さま世知がたいことをばらさないでください。


漆喰は白く塗られていて左官の趣味なのか花や蔓草が彫りこまれている。そこに色が付いていないのは残念と取るか趣深いと取るか。


本当は漆喰画にする予定だったんだけど、人族連合から連れてくる予定だった画家というか職人が急病でね・・・・・・・・代理のは無理だったし、せめてもの慰めとして漆喰を塗る職人が工夫してくれたのよね。(by極北神群の女神某)


この花の細工は見事なものでふゆふゆと漂いながら死霊っ子達はすごいねだの綺麗だねだの言いながら奥へと進んでいく。

極光神の神殿には礼拝堂というべき広間があるだけで後は彼女に仕える神職達の為の宿舎だのがあるだけである。

広間の中をうろついていると死霊っ子達の来訪に気がついたのか年嵩の女性神職が


「おやおや、彷徨える幼子達よ。今日はどんな御用で来たのかな?」

とにこやかに問いかける。それに勇者(笑)につき従う死霊っ子のおねえちゃんが

「こんにちは、うちのおにーちゃんじゃなかった菓子作る神官から女神様にお菓子のお届け物でーす。『直接お届けにあがれず申し訳ない。』っていってました。」

「これどこおいとけばいい?」

「あらあら、まぁまぁ、これはこれは美味しそうなお菓子を沢山。これは我等が女神がとても喜びそうなものですわね。」


死霊っ子達が持ち込んだ菓子を見て目をほころばせる女性神職、主に喜ぶのはお前らだろうという突っ込みを感じたのは表に出してはいけない。そして、やり取りを見ていた他の女性神職達が期待している目で見ているのは見なかったことにしよう。

極寒の地で穀類が人族連合の諸地域に比べて高めな為、焼き菓子というものは少々贅沢品なのである。甘味としてならば果物の蜜煮とか干し果物が一般的である。甘味材料としての砂糖大根や楓蜜はあるので聖徒王国に比べれば甘味を食べる割合は高めである。

極北の死霊っ子達の目もお菓子に向けられているのを見た女性神職はそばにいた見習い少女に


「極光神様に捧げる器を用意しなさい。あと、手隙の者にお茶の用意をさせなさい。礼拝の後の小休止に皆で分かち合いましょう。」

「はいっ!長老尼様!」


お菓子が食べられる事が嬉しいのか見習い少女は宿坊に向かって駆け出して行った。

「まったく、神殿の中で走るものでないというのは何度言ったら理解してくれるのかしらね。」

呆れたように少女の背中を見つめる女性神職

「あなた達もご一緒に礼拝していきなさい。その後に皆でお茶でもしましょう。」

「はい。」

と答えるのは聖徒の死霊っ子達、

「やったー!」「いいの?」

とか目を輝かせているのは極北の死霊っ子達。

その辺は菓子に対する熱意と教育の差なのであろう。


そうしている間にも神職達が集まり、近隣の信心深い者達も混じり礼拝の準備が整う。

とはいっても入り口にある水鉢で手を濯ぎ、思い思いに屯して時を待つだけなのであるが。

ある程度人が集まったと判断したらしく、進行役の女神職が張りのある低音で

「称えよ、我等が夜の体現者にして七色の衣纏う尊き御方を!」

とはじまりの言葉を高らかに謳いあげ祈りの言葉が唱和される。


祈りの言葉は短くも数多の声に彩られ歌にも似た響きを持つ。

老いも若きも男も女も生者も死者も女神を求めて誓う詩を捧げているのである。


短き祈りの時は終わり、死霊っ子達と応対していた女性神職はたちあがり手短に説法する。

神職達だけでなく職を持つ者達が貴重な時間を費やしてきているのだ、長話は宜しくないのである。

極北の民の特性として長話をすると眠気を誘ってしまうというのもあるのだが


「ちょっと、それは違うと思う。じっさい、そうこうこくでせっぽうちゅうに居眠りしていた兵隊さんいたもん。」

死霊っ子、地の文に(略)あと、霜降国の兵士はその後隊長から絞られて懲罰訓練させられていたのは別の話だ。




説法も終わり自らの職分に戻る信仰者達。彼等が立ち去ったのを見て広間にお茶の用意をする神職達。

広間の中心に車座になって座り中央には黄金色のお菓子。そう記すと賄賂っぽく感じるけど実際そうなのだから仕方がない。


「そこにいる死霊っ子達の養い親である【菓子作る神官】様よりお菓子が送られてきました。皆感謝を込めてこれを分かち合いましょう。」

との女性神職の口上に場にいる神職達はそれぞれに感謝を示しながら茶を喫し菓子をつまむ。別に禁欲を旨としていないからこういった贅沢品もたまにはあたることもある。菓子を一口つまんで笑みを浮かべるのは幼い見習いとか女性神職達で中にはでっぷりとした腹をしてお前厨房神の美食家ではないのかというような中年男も美味美味といって味わっている。


「そういえば【菓子作る神官】様はどうなされたので?」

と話を持ちかければ

「おにーちゃんは二日酔い。」

「神官殿は酒に弱かったですぞ。10人くらいと杯を交わしていたら撃沈していたし。」

と大きなお腹をした中年神職。彼も勇者(笑)をつぶしたものの一人だろう。

「腹声、彼は我等極北の民ではないのですからそれほどお酒に強くないのですよ。」

「これは手痛い事で長老尼様。杯のやり取りは我等の同朋かと思うくらいだったからつい加減を忘れてしまったわ。」

と腹声と言われた中年神職は薄めの頭を叩いて反省の意を示す。

「おにーちゃん寝だめしているだけだから気にしなくていいんじゃない。」「たしかにー」


極北の死霊っ子達はお菓子に夢中である。



おやおや、妾の捧げ物を先に食べているとはな。(by極光神)

七色の衣を纏った女神が現れる。


平伏する神職達、極北の死霊っ子も自分等の信奉する女神の来訪に平伏する。

死霊っ子達も頭を垂れ

「おにーちゃんのおつかいできました。」「おかしみんなでどうぞって。」


ふむふむ、我が子供達よ冗談じゃ、妾の分もあろう。皆で頂こうぞ。(by極光神)

その一言で女神の祭壇に捧げられていた別の取り分け分が極光神の前に置かれ菓子をつまむことを再開する。


美味。異国の小さき者よ、異界の者に礼を言っておくがよい。また頼むぞと・・・・・・・・(by極光神)

「はい、女神さま。」


そして迷える子供らよ。汝等もこの地に縛られることなく先へと進むがよい。汝等は我等が子である、それを誇り奢ることなく進むがよい。(by極光神)

「はい、めがみさま!」

極北の死霊っ子らに祝福を与えながら死霊の身を案じる女神、


「しかし、不思議。人族連合だと死霊を不浄だというのに何で受け入れているの?」


なんと不遜な聖職者達だ。死霊になろうとも彼等は同胞であり導くべきものであろう。我はこの極北の地に生まれ死せるもの全ての母である。子等を案じぬ母はおろうか?子等を思わぬ母はおろうか?嘆かわしき事かな。生者も死者も等しく愛しい子らであるというのに・・・・・・・・・・(by極光神)


「いいなぁ・・・・・」「僕もここに生まれたかったなぁ」


小さき者よ、冥界に旅立ち再びこの地に生まれるか?冥界のに言付けておくぞ。白き世界は厳しいが子供達は懐深い善い子達じゃ、聞けばお前達も導かれざる者の元に導きの糸を届けたそうではないか。彷徨えるその身で優しさを抱く子等は妾としても歓迎するぞ。(by極光神)


死霊っ子達は悩んで・・・・・・・・・・・・

「ごめんなさい、女神さま。あたしはおにーちゃんの面倒見ないと。」

「ぼくは死ななければいけないのはなぜか知りたい。」

「せめて、私が戦争の原因にならないようにしないと・・・・・・・・」

「冥界に行くのはいつでもできるし」「・・・・・・・・・・・おにーちゃんとはなれたくない。」

それぞれの理由を言って誘いを断る。


実際のところ勇者(笑)のそばならば美味しい物が食えるのも最大の理由なんだろうが。

「地の文さんひどーい!」

そこでいうことではないな。(by極光神)

皆して地の文に(略)


振られたことを気にするそぶりもなく。


おやおや、振られてしまったようじゃな。優しき子供達、お前達の気が向いたらいつでもこの地に来るがよい。百や千の年月くらい些細な差であるからな。妾の祝福を受けて行くがよい。(by極光神)


地より湧き出るように光があふれ、天より祝福するかのように極光が舞う、その場にいるすべての者達は光に飲み込まれそれぞれに祝福が与えられる。天を舞う万色の光は【西の凍らず】はもとより近隣の一帯をも女神の力を顕わす。


「おおっ!」「我等が尊き御方よ」

神職達が祈りを捧げる中


小さい子、お代はお菓子でよいからな。(by極光神)


「ありがとうめがみさま。」

「おにーちゃんをせっつかせておきます。」

「なにかようぼうあるの?」


えっと、極光神様・・・・・・・・・・祝福がお菓子の代金ですか?


悪いか?(by極光神)

酒が切れたからこれにて、脂の乗ったカマスが私を待っている。

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