表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/152

海越えるのは難儀な物で

鰊の酢漬け


北岸諸国の沿岸部、極北の民の間で常食されている魚料理、鰊を酢でつけておく保存食。生に近いのを酢で洗っただけの物から塩漬けにしてから酢で〆たものまで多種多様な物がある。それこそ家ごとにと言うか作る人ごとに味があるといっても過言ではなく、その好みで喧嘩が勃発するのはこの地方ではよく見られる光景である。その争いには厨房神殿も匙を投げて関与しない。

「しかし菓子作る神官殿も災難だったねぇ。」

「まったくで、癒し手さんの所に【匂い消し】があって助かりましたよ。」

「まぁ、この手の事故は年に数件あってねぇ・・・・・備えておいて損はないんだよ。この備えがないばかりに家を追い出された哀れな連中が・・・・・・・・・・・ああ、いやなもんだったよ。」

「なにがあったんで?」

「あの【壺漬鰊】の汁をかぶった娘さんが臭いが取れるまで家に帰るなと追い出されて・・・・・・・・・」

「まさか、ならず者に・・・・・・・・・・・色々口にできないことを・・・・・・・」

「そう、ならずものに・・・・・・・・・・・・」


そう癒し手は言葉を切って茶でのどを湿らせる。

「そう、ならず者に・・・・・・・・・・・・・・臭いって避けられたのだよ。淡い金髪の綺麗な娘さんだったから誰かに避けられるなんていうことがなくってねぇ・・・・・そのことに切れた娘さんが・・・・・・・・・・・ならず者たちをぼろ雑巾のように叩きのめしてから【壺漬鰊】の汁をたっぷりとしみこませた挙句に・・・・・・・・・『この者不埒者』と書いた立札と共にさらしたのだよ・・・・・・・・・・」

「そっちっ!」

「不埒者達は町の有力者の身内でねぇ・・・・・・・娘さんは・・・・・・・・・・・・不埒者の身内から『なんて酷いことを』と騒動になったんだ。」

「まぁ、不埒者達にしてみれば酷い事だよねぇ・・・・・」

「そこでもめにもめて・・・・・・・・・・・いつもならば娘さんに粉かけてくるのにその時とばかりに避けたのが悪かったのか避けるときに『臭いぜこのブス!』等と言ったのがさらに輪をかけていたのか、『匂いが取れたら相手してやるぜ!』と綺麗なバックステップで風上に退避したのが悪かったのか・・・・・・・・・・」

「ぜんぶ娘さんの神経逆撫でだよ!」

「・・・・・・・・・・・まぁ、そういう事で娘さんに対して暴行罪で罰金刑が・・・・・・・・・・・」

「いやいやいやいや!そこは不埒者達にも非があるというか・・・・・・・・・流して話勧めていくところじゃないでしょう!」

「確かに不埒者の言動は良くないと言えるけど手足を丁寧に叩き折ってから顔の形が変わるまで叩きのめしていくのが・・・・・・・・・普通か?」

「・・・・・・・・・・・金玉までつぶされなくてよかったと言っておきます。」

「そこは『租チン』と書かれた紙を・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・不埒者達はケンカ売る相手間違えたのでは?と言うしかないですな。」

「以後、彼らは女性に対して不埒な言動をしなくなったから町の有力者からは『いい薬だったのだろうあの一件は』等と言っているけど治療するこっちの立場になってほしい物だ。臭いが染みついたけが人を手当てする方にもなってほしい!臭いが取れるまで半月かかったぞ!それまで治療所が別な場所に移さざる得なかったしその馬鹿の為だけに場所を用意しないといけなかったし・・・・・・・・・・きっちりとどめさしておけば埋めるだけで済んだものを。」



いやいやいやいや、癒し手さん。そこは仮にも療養神殿の眷属なんですから汁までかけるなくらいで押さえておかないと・・・・・・・・・・

因みに不埒者達は今では更生してまっとうに暮らしている。ただし、女性が怖いらしく未だ独身なのは薬が効きすぎているとしか・・・・・・・・・・・


その辺は勇者(笑)に関係はないし終わった話である。

「そんないきさつがあったから【匂い消し】を確保しているんですね。おれは不埒者に感謝するべきなんだろうかね?」

「そこまではしなくてもよろしいのでは?」


どっちでもよい話である。

治療所の助手たちも勇者(笑)の持ち込んだ茶菓子に舌鼓をうち、そっちはそっちで茶を喫している。

死霊っ子達は自分らに被害のない状態で治療所を来るのが珍しいのかふゆふゆとあちらこちらを眺めている。


そして、癒し手は勇者(笑)が提供してくれた香辛料の数々を見て

「しかし、これだけの量を安く提供してくれるとは助かります。」

「それは別にいいんだけどね。こっちも損はしていないし・・・・・・・・・・・」



「しかし、腹が減る匂いだよなぁ・・・・」

「もともと調味料だしね。」「これ使うと美味しいものができるんだよ。」

「なるほど、食べて予防か・・・・・・・・」


傍では香辛料の臭いで食欲を刺激された助手と死霊っ子が他愛もない会話をしている。その後に助手が夕食にこの香辛料を使った料理を作って薬を食べるとは何事かと怒られたり、その匂いにつられて運び込まれた病人がそれをつまみ食いして病が快方に向かったりしたのは別の話。

更にその事からこの香辛料を使った料理が寒鱈港国の御馳走になったり薬食いとして流行ったりするのは後々の話である。





【壺漬鰊】の騒動の後、勇者(笑)にはすることがなかった。

海を渡って進もうにも船の都合がつかず(馬の輸送する船が少ないため)小分けに海を渡っているのだが、臭いの染みついた勇者(笑)は他の乗客のみならず乗組員からも避けられるために臭いが取れるまで乗船拒否されているからである。その辺の滞在費もあの屋台の男から一部出されているのだがそれは知る由もない。市場に行っても【ぶっかけ様】と親しみを込めて呼ばれているし、【弔いの園】で使者たちを慰めようにもこの話が伝わっているのか逆に死霊たちに


「にーちゃん酷い目に合ったなぁ。」

とか

「ああ、あれは酷いもんだ。オレの時なんて・・・・・・」

等と同情交じりの笑い話となって・・・・・・・・


「そんな酷いのがいるのに俺たちはここにくすぶってグチグチ言っているのだろう・・・・・・・・・」

と冥界に向かっていくのである。


慰める相手である死霊にまで慰められる現状に・・・・・・・・・弔い手達も

「え、えっと・・・・・・・・・・死霊たちを慰めてくださいましてありがとうございます。」

としかかける言葉がなかったのである。







「ぶっかけ様よ、酢漬けの鰊はいらんかね?麺麭に挟んで食べると旨いべよ。」

「ばあちゃん、鰊て臭くないの?」

「おちびちゃんや、あのどぐされの【壺漬鰊】と一緒にするでねぇよ。こっちは普通に美味しいからたべるべよ。」


市場をふらついている勇者(笑)と死霊っ子達に露店を開いている婆さんが声をかける。でもぶっかけ様って・・・・・・・色々問題のある表現で・・・・・・・・・・・


ぶっかけって日本語は世界共通語なんだよね。(by芸術神)

流石は世界に名だたる変態紳士国家(by性愛神)


女神様方、そこで反応して出てこないでいただきたく。真の紳士(へんたい)は英吉利人だと・・・・・・亜米利加人も彼等の系譜を・・・・・・・・(by節制神)


えっと神々の皆様方わかりましたから神域に戻りましょうね。

つやつやと脂ののった鰊を見るに勇者(笑)もこれは旨そうだと一つ買って啜りこむのである。


少々酸味がきいているけど脂ののった鰊と酢の相性は良くそこに加えられた香草が味に変化を加えて更に魚特有の臭みを軽減させている。

酢漬けの魚と言えばコハダかサバかと言った物しか知らない勇者(笑)・・・・・・・・・

「いやいや、小鯛の笹漬とかアジやイワシの南蛮漬けも酢漬けだろ。」

酢漬けの魚に対する突っ込みは良いけど地の文に(略)

取り敢えず鰊の酢漬けは喰らったことがない勇者(笑)は新鮮な魚の酢漬けに頬を綻ばせる。

死霊っ子達も露店の婆さんから一切れづつ受け取って口に含むのだが酸味が苦手なのか顔をしかめる。


「酸っぱい。」「生臭い」

魚の生食に慣れていない内陸部出身の死霊っ子達にはまだ早かったのか?

「くっくっくっ・・・・・・・・・・・生に慣れていなければこっちはどうだい?」

とむせたり顔をしかめている死霊っ子を見た婆さんは燻製の鰊を渡す。


「美味しい。」「むぐむぐ・・・・・・・・・・・」「こっちはだいじょうぶだ。」

加熱していれば食べる事が出来るらしい。

「この海で取れた鰊は旨いんだよ。たんとお食べ。」

他国者に味を教えているというか餌付けと言うか・・・・・・・・・・


そんなこんなしているうちにも隊商の男達が

「婆さん酢漬けを呉れ。」「こっちは燻製だ。」

「あいよ。」

鰊を買い付けている。今夜の酒のあてであろうか?

それを尻目に勇者(笑)は鰊の酢漬けを麺麭に挟んだものを食べている。

少々の辛子に玉ねぎ、挟み込んだ香草が鰊の脂を流すかのように調和している。麺麭も雑穀かライ麦を使っているのか重たい味わいであるのだが口の中で噛んでいるうちに味わいがあふれ出してくる。

人によっては酸味とか雑味が強いと嫌うのだろうが鰊と合わせているとこれはこれで旨いのだと思えてくるから不思議だ。

後は麦酒があれば最高なのだが、婆さんの店にはおいていない・・・・・・・・・・・って、隣の店で売っている。


「姐さん、ビール一杯頼むよ。」

「銅貨二枚ね。」

「はいよ、」

「まいど!」


婀娜っぽい泣きボクロの女性がなみなみに溢れた麦酒を差し出す。それを流し込んで一息つける。重たい麺麭には麦酒が最高である。わしわしと食べてがっつり飲む。その一口ごとに幸福な口福が満ち満ちてくる。


「にーさん、そういえば【壺漬鰊】ぶっかけられた神官様だよね。」

「ぶぶっ!」

泣きボクロの姐さんがいきなり忘れたい事実を聞いてくるものだから思わず口の中の物を吹きだす。

「忘れたかったのに・・・・・・・・」

「判るわ、あたいも寒鱈港にこの花ありきと言われたんだけどあれぶっかけられてから男が寄り付かなくて・・・・・・・・・あの時に匂い消しがあればよかったのに・・・・・・・・・・・」

「それは災難でしたね。」

「お前さんの場合はそれを馬鹿にした阿呆を鉄拳制裁したからだろうが。」

婆さんの突込みに

「あらあら、イイ女が汁まみれなっただけで避けて馬鹿にするような男には当然の酬いだわ。」

「えっと・・・・・・・・・姐さん、その男達の手足を丁寧に折って鰊をぶっかけてさらし者にしたことある?」

「あら、嫌だ。そんなことまで知られているの?」

「癒し手さんが股間に『租チン』と書いた紙を張り付けたとまで・・・・・・・・・・」

「あの糞親父!つぶしてやる!」

なにをだ?

「そんなことまでしていたんかい・・・・・・・・・・そりゃ、あの阿呆どもが泣いて町を離れたのが良く判ったよ。」

「だって、お婆ちゃん!あの馬鹿者達言うに事欠いて『男にぶっかけてもらえないからって鰊で代用しているんだろ』とか言うんだよ!さらに『オレ達よりも鰊が良いのかへっへっへっ!』なんて馬鹿にするし・・・・・・・・・・・・実際計ってみたら椎の実だったから。」


姐さんと婆さんのやり取りに勇者(笑)はあきれ返ってしまう。

まぁ、姐さんの言い分は良く判るが仕返しが過激である。

本当に喧嘩を売る相手を間違えたんだなと見も知らぬ不埒者に同情をする勇者(笑)であった。

同情はするけど反撃を食らったのは当然だとも思っている矛盾である。



そんなやり取りをしていると周りの男性陣は引いている。黙っていればイイ女なのに・・・・・・・・・・

この様子ではだれもつく虫がいないのだろう。

実際の話あの一件以降に男性が避けるようになってこの花ありきと言われていたのがこの茨ありと・・・・・・・・・


「えっと、地の文さん・・・・・・・・・・さっきから失礼な文面を綴っていない?」

えっと、泣きボクロの姐さん地の文にっ(略)ていうかその握りしめた拳は・・・・・・・・・・・って・・・・・・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁ!




地の文は粛清されてしまいまして今回の話はここで・・・・・・・・・・・終わりにさせていただきます。(by詩人神)

「地の文さんに敬礼!」

無茶しやがって・・・・・・・・・・・(by大寒神)

いい奴だったのに・・・・・・・(by小雪神)

奴は正直すぎたのか・・・・・・・・・・・(by海洋神)



い、いや・・・・・・・・・・・私は死んでないから・・・・・・・・・・(ぼろっ!



死にかけだし・・・・・・・・・・(by療養神)







えっと、地の文が麦酒売りの女性に潰されたので変わりに私地の文が次話より交代いたします。

なんだろう、話が脱線している。

因みに泣きボクロの姐さんは地の文殴りで【神殺し属性】を得てしまいますがどうでもよい事です。


さて、酒でも飲もう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ