馬車とかもめ
商船団
海上交易を生業としている海の隊商。北国連合を根城としている【雪の船団】や極北連合出身の武装商船団【極北商会商船部】、【竜鱗船団】、大寒国の運営する【砕氷商会】が有名である。南方だと【南方商業組合乗合商船団】や【鮫肌商会】【丁子屋】、極東だと【子の日】【正本】【菊一文字】等が有名である。
通常は数隻から多いときで数十隻の船が少しづつ日時をずらしながら出航する。これはある程度まとまることで、海難への備えとする一方、海難の一斉遭遇を防ぐための知恵である。後は、多数の船が一気に来航したら港の処理能力が破綻するなんていう現実的な理由もある。
これらの商船を仕立てるのは並大抵ではなく、人員、資本、遭難時の保障等数々の難点があり素人が参入することはまず不可能である。それ故に国家事業として海軍の航海訓練を兼ねて商船団を仕立てて海上交易をするなんていう国もある。事実、この利益が馬鹿にならないらしく軍すべてを商船団として商売敵をなぎ払いながら交易しようなんて話もあったくらいである。(流石にこれは交易相手国との関係悪化になるので却下されたが。)
【北の航海事情】より抜粋
海である。
青黒い水面に白い波の花、漂う匂いは内陸の土と違うものである。
さばーん、さあばーん
「これがうみ?」
小僧っ子の疑問交じりの声が小さくこぼれる。
霧の都から旅立って半月あまり、北国連合の【寒鱈港市国】に到着する。周りにはむさくるしい男共・・・・・・・・・もとい、堂々の極北戦士達に荒野の民達、聖徒の人日卿。見事に女っ気のない構成である。
ああ、いるにはいたけど死霊っ子は子供だし・・・・・・・・・・
「しつれいしちゃうわね。」「ほんとほんと。」
「おーい、死霊っ子共、早くしないとおいていくぞ!」
「まてまってー!」「おいてかないでー!」
「おいていかれたらさ迷う死霊になっちゃう!」
入国の申請の順番待ち・・・・・・・・貴族もいるから一般市民から比べて早く済ませることが出来るのだが、それでも
「えっと、一行の代表は聖徒王国の人日騎士爵様で同道が狭間の赤岩子爵様、極北の戦槌戦士長様と夫々の御配下で計46名・・・・・・・・・菓子作る神官様と付き従う聖徒宮廷料理人見習と死霊の子供が5体、馬が60頭・・・・・・・・・・・・・・」
「うむ、うち数頭が孕んでいるから出る頃には増えていたりしてな。」
「はははっ!それは子馬ならば見て分かりますし問題ないでしょう、で目的が『極北~狭間への航海』こちらで宜しいですか?」
「うむ、出来れば信頼できる商船団と宿、放牧場の案内は出来るか?」
「うちに立ち寄る商船団でしたら、どこも信頼できるところばかりですが宿は・・・・・・・貴族様向けの宿だとこの人数は納まりきりませんし隊商や船員向けの宿とかになってしまいますが・・・・・・・・・・」
「よい、清潔な寝床と旨い飯があれば文句は言わん。」
「それでしたら【やもめのジョナサン】をお勧めしますね。私の名を出せば多少の融通はしてもらえるはずです。其処でしたら隊商向けでありますし放牧場も近くにございます。」
「ふむ、感謝するぞ門衛。これは駄賃だ。」
門衛と話していた人日卿は門衛の手に銀貨を落とし込むと一同に移動を促す。
それほど広くない隊商街、雑多な男達が屯している。服装も民族もそれぞれ違うが旅慣れた雰囲気だけが共通しているのである。その中で歩みを進める一行は明らかに場違いである。鎧こそは纏っていないが明らかに軍装である騎士様に極北の大男達、馬から下りることのない異民族、極めつけは死霊を引き連れた神官。死霊を見るなり男達は神々に対する祈りの文句を言ったり印を切ったりしている。
普通、死霊など町に昼間っから現れるものではないのだ。子供とはいえ取り殺されたりしないかどうか気が気でないと・・・・・・・・・
「なぁ、あの神官様死霊が憑いているぜ。」
「どうして5体も取り憑いて大丈夫なんだ?」
「さぁ?」
「そういえば噂で聞いたことがあるんだが、聖徒に【死霊慰撫する菓子】を作る神官様がいて彼には常に死霊が取り憑いているそうな。」
「そんな馬鹿な話は・・・・・・・・・・・って、あれを見ちゃ信じるしかないな。」
「で、何でそんな偉い神官様がこんなところに?」
「何でも聖徒でお偉いさんの経営する孤児院の不正を見つけてお偉いさんごと叩きのめしたらしくて追放を食らったとか・・・・・・・」
「俺、その神官様が【白の都】で死霊と酒盛りをしていたという話を聞いたことがある。」
「しっかし、死霊大丈夫なんかね?」
「さぁ?」
「ねぇねぇ、おじちゃん【やもめのジョナサン】ってどこにあるの?」
「うわぁ!」「でたぁ!」「おたすけぇ!」
「失礼しちゃうわね。」
「こんなかよわいじょせいをみておびえるなんて金○付いているのかしら?」
「おたすけくだせぇ!俺には国に帰れば3人のかかあと5人の子供がいるから生きて金かせがねえと!!」
「こらこら死霊っ子達、お前達は基本怯えられる存在なんだからいきなり行くな。」
「騎士様、このおじちゃんたちったらひどいんだよ!」「こんなかわいい私達を見て死にそうなくらい怯えているんだから。」
「無害なのにねぇ。」「ねー」
「え、えっと。騎士の旦那、死霊がそばにいても大丈夫なんで?」
「死霊くらい慣れてしまえば問題ない。それにこの子達は害はない。この剣に誓って言おう。」
「そ、そうなんですか?」「気味悪くないんで?」
「おーい、死霊っ子。お前等またやっているんか?見知らぬものにいきなり語りかけたら相手が吃驚するだろう常識で考えろ。」
「えー、ここの極北のおじちゃんとか霧の都の皆は普通だったよ。」
「がははははっ!お前等ガタイだけか?こんなちび助に怯えるなんてないだろう。」
「チビじゃないもん!」「おじちゃんたちが大きすぎるだけなんだもん!」
なんか会話が混沌としている。
「で、お前らに聞く。【やもめのジョナサン】という宿はどこになる?」
「へ、へい。旦那、もうひとつ通りを越えたところになりまさぁ!其処に馬車とかもめらしき看板がありますので見間違えないと思いますぜ。」
「ふむ、礼を言うぞ。」
人日卿の断言により怖くないことを覚った男達を尻目に宿へと向かう一行。
宿はすぐに見つかった。馬車?かもめ?な看板であったのはご愛嬌であろう。看板なんてものは分かればよいのだ分かれば。
死霊に怯えた男達はその夜死霊にあった話を酒のつまみにするもビビッていたことを見られており馬鹿にされたりするのだが
「まぁ、あれは本当に怖かったぞ透き通っていて浮いているし。」
「だけどガキだろ。びびる方がおかしいってもんだ。」
「いきなり背後から声かけられてみろお前だって腰抜かすぞ!」
からんからん!
「あっ!さっきみちおしえてくれたおじちゃんたちだ!」
「やっほー」「さっきぶりー!」
「うわぁ!死霊!」「おたすけ!」
「おうっ!ちびっ子共か無事ついたか?」
「うんっ!」「変な絵だったけど・・・・・・・」
「やっぱ、変だと思ったか。」
死霊っ子に慣れた先程の男達は気楽に挨拶を交わしているのに対して同席の男達はしっかりと腰を抜かしていた。
「なにが、ガキに怯えないだよ。しっかり腰抜かしているじゃないか。」
「やれやれ・・・・・・・・・・・・」
「お客さん困りますよ、ほかのお客さんつぶしちゃ・・・・・・・・・・・」
「すいません。」
その脇で店主に平謝りの勇者(笑)であった。
「がははははっ!おびえてしまって悪かったな。」
「よく見りゃただのガキじゃないか。死んでいるくらい気にしちゃだめか!」
普通死んでいるのは気にするものです。
「えっ!死んでいても穴があれば楽しめるぞ!」
其処の男地の文に突っ込みを入れないように、後下品だ。
死霊っ子を見て腰を抜かしている男達に対して詫び代わりに飲み物を一杯づつ奢ると途端に態度を変えて普通に受け入れ始める。
「なぁ、にーちゃん。これって買収といわないか?」
「だから悪いことなのか?」
「うーん。」
あっさり酒で買収された他の客達の片隅で実利と倫理観の狭間で悩んでいる小僧っ子なのであった。
酒は偉大なり(by酒精神)
「一杯づつ奢っても銀貨半分にもならないしそれで問題が解決するならば楽じゃないか。」
「そうそう。」「みんなで呑んで楽しめば問題なし。」
「だけど死霊っ子!お前らは酒はだめだ!」
「えー!」「なんで?」
「お前らはまだ小さいだろ。酒は大人になってからだ!それに其処の入り口の影に療養神殿の癒し手達が・・・・・・・・・・・・・・」
「いやぁぁぁぁぁぁ!」「やだぁぁぁぁぁぁ!」
「おくすりいやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
酒を飲もうとした死霊っ子に釘を刺す勇者(笑)。躾に療養神殿を使うのはどうかと思うが。
周りの男達も
「まぁ、あの薬は糞不味いからな。」「今だって飲みたくないぞ。」
「しかし子供の躾にあの薬か・・・・・・・・・・・面白いな。」
「いやいや、それは親としてどうかと思うぞ。」
どれだけ不味いのやら・・・・・・・
酒場の影からは
「ちっ!」
治療師の衣を纏った者がいたのは・・・・・・・・・
「いやぁぁぁぁぁ!あそこに癒し手がいる!」「しかも、懐に薬隠し持ってるぅぅ!」
怯えて勇者(笑)にしがみつく死霊っ子。
それに苦笑しながら
「癒し手さん、子供が酒飲まなければ無理やりはしないよね。」
「この死霊どもは私の事を鬼だの魔族だのと勘違いしているのか?ひどい偏見だ。」
「いやぁ、西方平原で例の薬を飲まされまして怯えているんですよ。」
「はははははっ!あれは作っている我々でさえもひどい味だと思う代物だからな。」
「一杯付き合いません?その薬は抜きにして。」
「ふむ、有難く頂こうか旅の神官殿。」
その夜は寒鱈の癒し手と知り合い、土地土地の名物等を教えてもらったり、勇者(笑)の手持ちに香辛料があることを知ると薬とするために融通してくれないかと商談を持ちかけたりと賑やかな夜をすごすのであった。
そばで、死霊っ子が二日酔いの薬を怯えているのを見ていた酒場の酔客達は死霊には例の薬が聞くと勘違いして療養神殿に薬を求めるのであった。確かにあの薬は死霊にも効くけど基本的に味覚ダメージなんで撃退することは出来ないのだが・・・・・・・・・・・・・
いやいや、あれはひどい味だぞ。あの時だって導かれざる者達が泣きながら冥界の門を大挙して潜り抜けた時には何があったかと思ったぞ。(by冥界神)
己の不摂生の罰には良い味だろう。(by療養神)
だからって療養神、飲んだ次の日に甕ごと置いておくのはやめて。(by大雪神)
飲みたくなくって池にあの薬を流し込んだときに下界に悪臭漂う雨が・・・・・・・・・(by小雪神)
お前か!あの雨のせいで山野の獣がのた打ち回っていたぞ。(by霜降神)
あれは撒き散らすものではないのだが・・・・・・・・・・・・(by療養神)
そんだけ威力があるならば武具に塗りつけてみるか。(by槍神)
いいのか?その匂いしていたら俺は逃げるぞ。(by盗賊神)
そもそも自分でその匂いに耐えられるかどうかが問題ですけど(by剣神)
ふむ、傷薬にしておくか・・・・・・・・突いて癒してを繰り返しながら痛みを与える。(by槍神)
神様方、何でしゃしゃり出ているのですか?
なんか変な方向に行っている気が、気にしたら負けなんだろうな。
酒でも飲もう。




