聖都は今日も平和です。
灯明奉納
起源は不明、聖徒の都の神殿街を照らす灯りは各国から道行く巡礼の足元を照らして恙無く進めますようにとの願いを込められて奉納される。
最近では奉納される灯りは霜降国の細工灯が主流となっている。他にも極北産の氷竜族の鱗を用いた氷細工や雨水国の水晶を用いた透かし水晶等も所々で目につく。巡礼のうちでも経済的に余裕のある豪商や貴族が富める者の義務として奉納する。面白いのが神殿街の一区画を自領の細工で決めてしまった霜降国の菊枕卿であろうか。一つの意匠で様々な細工を施した霜降細工灯をずらりと並べているのはまさに壮観なのである。
他の人族連合内の都市でも神殿周りに灯りを奉納するという風習が出来、夜でも光るは神殿か色街か等と言う戯れ歌も出てくるのである。(よくよく考えたら色街も性愛神殿の管轄下だから神殿と大して変わらないだろうというのは突っ込んではいけない。)
「えっと、まだ霜降国ですか?ゆるりとした旅路ですわね。」
場の一同の中でも年長の女性が、報告を受けるなり愚痴をこぼす。
「第三の流石に霜降国のを抗議するのは哀れじゃぞ。どっちにしてもそれは護衛と案内を司っている【極北戦士団】と【荒野の民】の手落ちであるしな。おかげで我等が支払う旅費も上手いこと向こう持ちになっているしな。」
「第一のそれでもたってから一年経過しておりますわよ。」
「時間がかかってもこちらからの持ち出しがないですから、遅いとせっつくだけでよろしいでしょう。実は勇者(笑)には生活費としての年金しか払っていないのですよ。それも第三伯の遺産で十分賄えますし・・・・・・・・・・」
「というか、神官としての布施と西方平原国での事業収入で生計すら賄っているという笑い話があったぞ。合間に軍用の保存食の開発者報奨もあるから、報告だけ受けておいて放置でも問題はあるまい。」
「早く戻って来てもらって、私が食べられる菓子を用意してもらいたいものでありますけどね。」
「第二、東南門がうつっていないか?」
「第五、貴殿とて東南門と一緒に勇者(笑)に襲撃かけていたではないか。」
「第二、第五、話がそれておるぞ。」
「「それは失礼。」」
五公爵の中で年若な第二、第五公爵は窘めにかかる白髪交じりの第一公爵に謝罪する。
「まぁ、若者達の胃袋は健全で底がないものだ。後で厨房にでも襲撃をかけようではないか。がははははっ!」
「第四、貴方は窘める年でしょう。」
「悪い悪い!第三の大叔母様。」
「あまり奴の話題をしていると食べ物と厨房への襲撃の話題にすり替わるから決だけ取ろうぞ。勇者(笑)に関しては遅いとせっつく命令書は出しているがそれ以外は静観でよいか?」
「わしとしては問題ない。子供達が勇者(笑)の菓子を欲しがっているからサッサと済ませて戻ってこいとか菓子の作り方を教えろとかと付け加える程度だ。」
「私も異存ありませんよ。私と第一公爵令嬢との式に祝いの料理を作ってもらいたかったのですが。」
「現状においてはそれが一番でしょうかね。狭間の大使を呼びつけて検分して貰う方が簡単でしたでしょうが旅が始まっている現状では今更戻ってとも言えませんでしょうし。」
「それしかないのだろう。うちの東南門が後を追いかけたがっているけど許可するとこっちの政務が滞る。上巳だけでも戻ってきたのが助かるがな。」
第二以下それぞれの公爵達は賛意を示すとこの話題は終了となる。
遅いだけで特に問題はないし、最悪遅いのは向こうの責任として言い逃れができる。
「皆、東南門が隠居願いと家禄を息子に譲り渡すことを願い出ているがどうする?」
「私よりも若いのに隠居ですか?それは許せませんわね。」
「第三の貴女より年上言ったらほとんど居らんではないか。」
「第二、女性に対して年の話題はよろしくありませんわよ。」
「いやいやいやいや大叔母様、話題を振ったのはそっちでは・・・・・・・」
「おだまり!」
「で、第三のは自分が隠遁できないからの僻みであるから置いといて、これについてはどうする?東南門の長子も次子も経験不足の面はあろうが東南門の名跡を継ぐに足る人材である。わしは反対せぬがな。」
「何れはと言うことですから早まっただけでしょう。私としても反対はないですよ。」
「俺は家禄移譲は構わんと思うが隠遁はまだ早いだろう。」
「私は反対ですわ、まだ十分に一線で働けますのに隠遁だなんて・・・・・・・・・・・・で、当事者の第五はどうしますの?」
「ふむ、家禄移譲も隠遁も手続き上は問題ないし息子達の手腕も悪くない。今抜けられると辛いのは事実だが後になっても同じことだろう。だが、却下する理由としては足りないのだ。最悪家禄移譲は認めるとしても隠遁は却下といったところか。」
「ふむ、実質的な利害関係のある第五が言うからにはそれが無難だろう。子息達にも経験を得たり引き継ぎをする時間があるのは良い。」
「それならば問題ないと思いますわ。第一、私もそれに同意します。」
「引き継ぎと当面の事業が片付くまで隠居は保留ということで命じればよろしいでしょう。」
「そんな所だな。どうせあの親爺は隠居とか称して諸国に食べ歩きをするのだと言いかねん。それならば外交も押しつければよいのだがな。」
「では、皆の意見ということで伝えておきましょう。さすがに出奔とか・・・・・・・・・・・」
ばたんっ!
「会議中失礼いたします。東南門子爵様が『世界の美味が待っている。』と旅立ちの準備をなされておりますが如何いたしましょう?」
いきなり入ってきた伝令に無言になる公爵達。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とりあえず拘束しとけ!抵抗するならば仕事ができる程度に痛めつけるのを許可する。」
「はっ!」
どたどたどた・・・・・・・・・・・・・・
「届を出したことで認可されると思ったのでしょうか?」
「気が早いことだというか・・・・・・・・・・・・・自身が消えて、思い通りになるように誘導するつもりなのか。」
「単純に勇者(笑)が来てからの食事事情が変化しているから好奇心がうずいたのでしょう。」
「あの豚・・・・・・・・・・・・あらあら、私ったら汚い言葉をごめんあそばせ。でも見かけによらぬ素早い動きですわね。」
「あれでも当時は速さを売りにする剣士であり用兵家だからな。」
「そうでしたわね、あの当時はすらりとした美形で令嬢達はおろか侍女や市井の女にももてていましたわね。今思えば不思議なほどに・・・・・・・・・」
「想像できないのだが。」「私も。」
「貴方達若者が生まれる前の話ですわ。奥方を貰ってから肥え始めましたから。」
「がははははっ!奴は言うに事欠いて『おれの腹にはあれの愛情が詰まっているのだ!』等とほざいていたな。」
「まぁ、肥え始めてそのせりふを聞いてからの奥方が奴に対して摂食をしろと煩くなったっけな。」
うん、なんというか御馳走様。という表情をしている若き公爵達に
「とりあえず奴を確保することから始めねばなるまい。仕事から逃げるなぞ【挟間】の官僚か!」
「その例えを言いますと【聖王】の御末裔であられます。【王室顧問卿】やら【盾の血筋】の方々も含まれますんで・・・・・・・・・・・・」
「第二、我らが城にまで【狭間】の悪影響が広まっておると信じたくないぞ。」
広まってます、十分広まっています。信じたくないと言った第一公爵の御息女様を始めとして、神殿の聖女様とか色々・・・・・・・・・・・
「なぁ、地の文そこでわが娘を例として挙げるのは勘弁してくれないか?」
どう考えても腐教している影響が出ているのは事実だし、後地の文に(略)
会議はぐだぐだと続く。この会議を元に国内の有識者や有力者と共に大会議が始まるのだが別の話になるしやり取りが地味なので割愛する。
ちなみに東南門子爵は西方平原国で市場美食の旅を奥方としていた所を確保され聖徒王国に連れ戻されるのであった。
なんか意味もなく聖徒王国での話を綴ってしまった。
東南門子爵は度々隠遁願を出し続け、根負けした公爵達から隠遁を許可されるまで数年かかったとかかからないとか。
さて、酒でも嗜むか。




