送稿しているうちに霜降国
霜降細工
霜降国に伝わる職人芸の数々、かの国は木材や鉱物輝石等の細工物の材料を産出しそれを輸出する事で生計を立てている。
これらを加工して付加価値をつけて売りに出そうという考えが出るのも不思議ではなく、これらの材料を求めて職人達が移り住むのもよくあることである。
そして長い【家の季節】に無聊を慰めるため、小銭稼ぎの為に其々の家では下処理等を内職とすることは当たり前の光景である。そのためか霜降国の出身者は何かしらの技芸を持ち合わせていることが多く、その子孫にも家の伝統とかいいながら職人の元に修行させることが多い。
細工と一概に言うけど木材、竹材、角、骨、金銀、輝石、石材等々、材料となる物は多々あり其々を霜降細工と称している。その特徴は霜降国産の材料を用いる事、製作者の名を入れること、そして実用に耐えうる事の三点である。
使い込む度に風合が増して馴染んでいくこの細工物、実用する事を基本として作られる素朴で無骨ながらも手放せなくなる逸品ぞろいである。
さて、今回我が店にて展示しているこの銀細工は霜降国は北の銀山より無口一派が誇る細工師【五代目口無】作の水差しで御座います・・・・・・・・・・・
とある銀細工店の商品説明より
人日卿は聖徒王国に送る報告書を綴っている・・・・・・・・・・
「人日卿、報告書といっても隊商・巡礼団向けの美味しいスープの調理法とその器材の話で終わらせているのは如何かと思うよ。」
「ならばもう少し話を盛り上げる事を用意してもらいたいものだ。」
「騒動を嫌っているのはどっちだよ、大人しく道中ではしているのに酷い話だ。」
「良く考えてみろ、このスープ一つで旅路での食糧事情が変わるのだぞ。予め用意しておけば後は時間が勝手に味を作ってくれるのだし、冷めにくいから作ってから離れた場所に持ち込むのにも便利だ。暖かい食物と言うのは貴重なのだぞ!」
「だからってスープの美味しさに文章を費やすなんて・・・・・・・・俺が調理人みたいじゃないか!」
「でもどう見てもお主の行動は厨房神殿の神官だぞ。」
確かに人日卿の言っている事は正しい、西方平原国では浮浪児達に生計を立てさせるために屋台料理の技法を教えて独り立ちさせているし厨房神殿でなくても豊穣神殿でも通用するのだろう。どちらも似たような物だし・・・・・・・・・・
スープに野菜煮たもの同士・・・・・・・・・・ぷぷぷっ!(by演芸神)
はいはい、駄洒落は良いですから・・・・・・・
「で、それで助かる者が居るからいいじゃないですか。」
「まぁ、つまみ食いする連中を叩きのめすのだけは何とかして欲しかったが・・・・・・・」
「あはははははっ・・・・・ そ、それは・・・・・・・・・・」
「それはそれで彼等も楽しんでやっているみたいだからいいけど・・・・・・・・・・」
勇者(笑)が発った後も子供達は自分等の工房と化した神殿の調理場でつまみ食いする貴族達と攻防を繰り返しているのである。その一戦でその日の興亡が決まるといわんばかりに・・・・・・・・・・
今の彼等に知る由もない。
霜降候が切り開きし国は常に霧が降っている様である。冷涼な気候ではあるが霧で満ちているために着生植物や土が見当たらないような岩場やら樹上にも草が生えている。岩場に張り付くように小さな蘭が咲いているのであるが馬車の中に居る彼等にはそれを眺めることはないのである。
それでも、空気に霧の匂いが立ち込めているのは馬車の中に居ても感じ取れるので遠くに来たのだなという実感を肌に感じさせる。
「騎士様ぁ、普通に『おにーちゃんはスープで商人さん達を誑しこんでます。』じゃだめなの?」
「そうなんだがもう少し飾らないとなにを見ているのだといわれるのでな。」
「貴族様って大変なんだねぇ・・・」「僕ら死霊でよかったね。」
「お前等計算問題は終わったのか?」
「おわったよー」「いちたすよんはごで・・・・・・・・ううっ!」
「後で試験をするからな!」
「えー!」「やだ!」
「僕らにはがっこうもしけんもなんにもないんじゃなかったの?」
「それはお化けの話だ。お前等は死霊なんだから関係ないだろう!」
「な、なんと・・・・・・・・・・・・世界には絶望しかないのか・・・・・・・・・・」
「計算が解けないくらいで絶望するな。そこで引っかかっているのか・・・・・・・・・・・1個と6個・・・・・・・・・あわせたら幾つになるか数えてみろ。」
「いちにのさんのしの・・・・・・・・」
人日卿が書き物をしている間に勇者(笑)は死霊っ子達に計算を教えているようだ。馬車の中は退屈だから手慰みに色々するものが居る。勇者(笑)と小僧っ子の料理師弟コンビの厨房馬車はやりすぎだがちょっとした書き物や繕い物をするものは多い。この一団において何もしていないのは極北戦士達だけだろう。誰もどうこう言う者はいないのだが・・・・・・・・・・・
霜降国に入って数日、王都である【霧の都】に到着する。
立ち込める霧のために前が見えなく町並みも城の様子も描写できない・・・・・・・・・・・・
それは霧を理由とした手抜きだぞ(by霜降神)
聖徒の都や白の都に来れば小さく見えるこの町は常に霧が立ち込めており、大通りには昼間であっても灯火の光が絶える事がない。消えそうになると【灯火】の術法で街灯に光を燈す者が巡回して霧で彷徨う事がないようにと心砕いている。裏に入っても家々には灯火がぶら下がっていて家ごとに趣向を凝らしている。その細工の見事さは旅人である勇者(笑)の目を捕らえて離さない。
ある家では雲母の馬が揺らめく灯火によって跳ね回るように形をかえ、またある家では花の形をした外灯に色付き水晶の蝶が漂っている。霧の中に浮かぶ灯火はある意味幻想的な光景である。
「見事なものだな。」
馬車より降りた人日卿の感嘆の声はこの国を始めて訪れたものが良く口にする一言である。その言葉に対して荒野の民も勇者(笑)も極北戦士達でさえも同意するのである。
ただ足元の道は舗装されていないのかぬかるんでいるのが残念である。まぁ、地球某半島の近代みたいに糞でぬかるみということがないだけましというべきか。それでも道は砂利が敷き詰められて踏み固められているので歩くに不便というほどではない。その灯りの一つをしげしげと眺めて・・・・・・・・・・
「これが名高い霜降細工というものか。」
「霜降細工とは?」
「初めて聞く言葉だな。」
「勇者(笑)も逆立つ髪卿も存じないか、霜降国は細工物が名物でな霜降国の産物を利用した細工をそう呼び習わしているのだよ。」
「ほぅ、この明かりは夜道によさげだな。しかも細工がしてあって面白い。」
「うーん、いい仕事してますねぇ・・・・・」
勇者(笑)お前は何処の鑑定士だ!
「うーん、こういった土地の個性を見ると異世界に来たという実感がするねぇ。」
「我等からすれば異国なのだが。」「そだねー、ちがうばしょにきたというきがする。」
「しばらくこのまちでいるの?」「半年くらい?」
「おいおい、死霊っ子共そんなに居たら根っこはえちまうだろうが。」
「熊皮のおじちゃん、うちのおにーちゃんの定住率を馬鹿にしちゃ駄目だよ。」
「いざとなったら引っこ抜いて運ぶために俺達が居るんだがな。」
「せいぜい数日といった所だろう、我等も知り合いと会いたいしなそのくらいは勘弁してもらおう。」
「じゃあ、その間は俺らは観光でもしてるか。お勧めとかあるのか?」
「判らん!」「我に聞くのは間違っているぞ。」
「宿で聞いたほうがよかろう。」
「それもそうか・・・・・・・・・・・宿は取ってあるの?」
「一応知り合いに勧められた場所を押さえてある。えっと【揺れる南瓜亭】とな・・・・・・・・・・場所は・・・・・済まぬが其処の者この場所は何処かな?」
馬車から降りた一同はまた馬車に乗り込むと指定された宿に向かうのであった。
異相の一行移動中
【揺れる南瓜亭】前
「ここで良いのだよな?」「ふむ看板にはそう書いてあるが・・・・・・・・・」
「でもこれは南瓜ではなく」
「芋だよなぁ・・・・・」
揺れる南瓜亭・・・・・・・・・・・南瓜を模した灯りがあるのかと思いきや、芋をくりぬいた灯りであった。
「なぁ、これはツッコミ待ちなのだろうか?」
「気にするほどでは有るまい、まずは向かおうぞ。」
何か言いたげな勇者(笑)を気にせず逆立つ髪は宿に入るのであった。
「いらっしゃい。」
「連絡を入れた荒野の赤岩子爵だが部屋はあるかね?」
「はい、この宿の奥の棟を押さえてあります。何かありましたら担当にこの者を付けておきますので御用をもうしつけください。」
「ふむ、世話になる。」
誰も表の明かりにツッコミが入らなかったことに宿の主は不満そうな表情を一瞬だけしたがそれに気がつくものはいなかった。
宿の広間、部屋割りが終わり着替えを置いて久方振りの風呂を堪能したあと、逆立つ髪と戦鎚は勇者(笑)と人日卿にこの地での日程について取り決めをする。其々補給も必要だし、物資を誰が仕入れるかとか何が必要なのかだの色々話し合う。滞在は数日から十日程、人馬共に英気を養う予定だ。その英気の養い方が旧知の者と酒を酌み交わすのだとか観光だとかは其々なのだが・・・・・・・・・
こうしてその日は終わっていくのである。
中々すすまないな、と思いつつ酒を飲もう。




