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認めることの難しき

当世屋台事情


自由市場にて屋台料理を供する店は数多くなっている。その中で西方平原国は白の都にて流行の屋台というものを挙げてみる。

この屋台の屋号はなく店は子供達にて運営されていて、いくつかの屋台でさまざまなものが供されている。一つの火元に鉄板があり、珍しくもその場で調理されたものが手に入る。ほとんどの屋台が調理済みのものを販売しているのを考えるとこれは面白いことであり他の品でも出来るのだろうかと少し思案する価値があろう。

燃料として炭が用意されており、筆者が訪れたときには薄焼きの生地が焼かれていて焼かれた生地に果実の砂糖煮(ジャム)やら乳酪(チーズ)やらが好みではさんでいるのである。

この料理自体は白の都よりも離れた【秋分地方】の家庭料理としてよく見られるし、そこの出身者が料理屋で提供しているのは見かけたが市場の真ん中で焼き立てを販売しているのは始めてみたのである。最も料理屋台というものは【狭間の国】にて発達しているらしく着想を得たものが真似をしたのだろう。

一つ注文してみる。焼きたての甘い生地に酸味が残る木苺の果実煮(ジャム)、近郊の農家で仕入れたであろう生乳酪(チーズ)・・・・・・・甘味と酸味が包み込まれて食事というよりは軽食か・・・・・・・・・


客等を見ていると市場に通う女性衆や連れの子供が立ち寄っている。

市場の利用するものが彼女等である事を考えれば狙い定めた者は中々な商売上手なのかもしれない。それでいて一つ当たり銅貨二三枚という低価格なのもうれしい物である。

もっとがっつりした物が食べたいという者には甘く煮込んだ肉を挟んだのもあるらしい。残念ながらその日は売り切れらしく店の子供達が申し訳なさそうに謝っていたのが印象的である。


他にもどのような店があるのかと聞いてみれば兄弟分が串焼きを売っているとか、卵と牛乳に浸したパンを焼いているとか家の形をした菓子を売っているだの色々手広くしているようである。しかも考えたのが厨房神殿に食客として滞在している神官様で孤児である子供達の生計の足しになればと指導したらしい。


でも、彼等の店にある看板になぜ貴族風の顔がいくつも描かれているのだろうか疑問である。



とある道楽貴族の旅行手記より抜粋

国王陛下に挨拶は無理だとしても門衛卿や終雷伯に挨拶をしておいて託をお願いすればと思っていたのだが、一度会いたいということで少し出立が遅れるのである。

もう、その辺は諦めるしかないという事で極北の民も荒野の民も延びた期間をそれぞれの準備やら土産物を仕入れるやらで費やすのである。


「おい!極北の!お前等の荷物酒しか入っていないのはどうしてだ!」

「ふむ、食料ならばお前らと分かち合えば・・・・・・・・・もちろん酒は提供するぞ。」

「そういう問題じゃないだろ!」

「食糧ならば途中で買いながら進めばよいが、酒はそうもいかんだろう。」

「だめだ、誰かつける薬ないのか?」



びゅん!(匙投げる音)


「にーちゃん、野菜はともかく。塩蔵肉と乾酪は入れておいたほうがいいよね。」

「そうだな、後大鍋とそれに合わせたチグラ(藁で編んだかご)を用意して・・・・・・・保温調理で途中でも美味しい物が食べれるように・・・・・・・・」

「にーちゃん、どんだけ拘るんだよ。」

「小僧っ子、食べることは大事だぞ。」

「そーだよ、あじけないしょくじはだめだめだよ。」「おいしいのたべたーい。」

「おいしくできるの?」

「ああ、一度火にかけて沸騰させておけば冷めるまでの余熱で味がしみこむのさ。」

「にーちゃん、馬車の中で倒れない?」

「その辺は大丈夫だ。下の方に広がりがあるので余程の事がなければ倒れないように工夫してある。」

「そういう魔道具はないの?」

「あるにはあったが・・・・・・・銀貨30枚は高いだろう。」


勇者(笑)はどれだけ食べることに貪欲なのか?

馬車の中が調理場と化してきているのは笑い話。加熱調理用の魔道具もそのうち仕入れかねない勢いである。



そんなこんなで数日が過ぎ・・・・・・・

国王が王妃様やらお付の貴族や騎士達を伴って神殿参りを理由としてにくるのである。

神殿参りの理由は生まれたばかりの王子の成長を祈願してというよくある理由なのだが、ついでに厨房神殿で作られる美味を楽しもうとしているのは・・・・・・中々にちゃっかりしているというか・・・・


「しかし、あの神官様が色々美味を隠しておいでとは憎らしいですわね。」

「ふむ、門衛卿や処暑三子が旨いと色々話しているのを聞いて、菓子作る神官がいるうちに食べておかぬと食いそびれてしまうからな。」

「陛下、ワシはそこまで言った覚えは・・・・・・」

「違ったか?終雷伯だったかな?」

「・・・・・・・・いえ、多分光明神殿の副神殿長か処暑神の祭司だったと・・・・・」

「伯、神殿側はそのようなことは・・・・・・・言っていたな。三子と共につまみ食いで叩きのめされていた白露神の神職あたりが・・・・・」


結局お付の者やら神職連中は言っていたのである。下々の者に人気がある物としての話題だったのだが自分でも食べたくなっての今回の神殿参り、神殿も勇者(笑)達も色々と大忙しで準備をするのであった。警備の準備とか掃除とか・・・・・・・国王陛下に供するのであるからと神殿調理人と頭をつき合わせて検討したり・・・・・・浮浪児達も・・・・・・・・

大量の仕込をする羽目となったり、小汚いなりだと駄目だろうと風呂に叩き込まれておぼれかけたりで散々であった。


まぁ、その甲斐もあって当日は王を迎え入れるに相応しい状態で・・・・・・・



常日頃から掃除していれば(by厨房神)


「これはこれは国王陛下・・・・・・我等が神殿にようこそおいでくださいました。礼拝の準備は整っておりますので・・・・・・・」

「ふむ、神殿長。急に悪いな。」

「いえいえ、神の慈悲はすべての者に降り注ぐべき物ですからいつでもお訪ねになっていただいても大丈夫でございます。」

「そう言ってもらえるとありがたい。では、礼拝を済ませるとしよう。」

「はははっ、陛下の目的は礼拝よりもその後の・・・・・」

「言ってくれるな。一応我等は神々の敬遠なる僕としてここに居るのだからな。」

「はいはい、神々は寛大であり節度ある楽しみであれば大いに推奨されましょう。妃殿下におかれましても御子の御出産真におめでとう御座います。その後は健やかで御座いましょうか?」

「ええ、やっと軽くなった気がしますわ。今日は菓子作る神官の腕を楽しみにしてますわ。」

「あの者も大恩ある御二方の為に腕を振るうことでしょう。」

「それは楽しみだな。」「そうですわね。」

「ほぅ、それは楽しみじゃ。」「そうですな豊穣の」「然り処暑の」

勇者(笑)の知らないところでハードルがあげられていた。





礼拝が終わり、厨房にて・・・・・・・・・・

「ふむ、これが城下で人気となっている屋台料理か。」

「ほうほう、ちょこまかと働いている子供達が初々しいの。」

「なんと言うかこれは白露の家庭料理ではないか。」

「どこにでも似たようなものがあるものらしいな。」


勝手に言い合う一行に気がついた勇者(笑)

「これはこれは陛下・・・・・・・・・挨拶にも参りませんでご無礼をば・・・・」

「よいよい、そなたにも役目があろう。それよりも一つ尋ねるが・・・・・・」

「なんですか?」

「我が配下が散々つまみ食いしたりとか・・・・・・・・・・・・どれだ?」

「こちらの肉の甘煮となっております。」

「あらあら、これは甘い匂いがしますわね。」

「王妃様に置かれましては世子の御生誕寿ぎもうしあげます。」

「あらあら、硬い挨拶はよろしくてよ。私にも一つ馳走してくださるのでしょう。」

「それは勿論、作るたびに半分はそこに居る連中のつまみ食いによって消えてしまう者でありますが今日は陛下がこの者達と留め置いてくれている御蔭で・・・・・・・・・・・・」

「おい!菓子作る神官、言うに事欠いて我等をつまみ食いの常習犯扱いするとは!」

「えっと処暑三子さん。4日前に・・・・・・・」

「ぐっ!」

「何をしておるのだ?お主は・・・・・・・」

「そういう白露の神職さんも7日前に秋分の神職さんたちとともに・・・・・・・・」

「ぎくっ!」

「そなた等何をしておるのだ?こんな小さな子の生活の糧を・・・・・・・・・嘆かわしい。」


「まぁ、それは置いときまして。陛下も妃殿下もお一ついかがですか?」

「ふむ、貰おうか。」

「まずはそのままで・・・・・・・・・」


「ふむ、これは美味だな。」

「美味しいですわね。そばに添えてある生姜と共に食べるのも悪くないですわね。」

「我としては苣の葉に来るんで食べるのが良い。」

「それぞれに食べ方が御座いますし、我が故郷では【ウドン】なる麺に添えて食べたり粥の味付けとしても・・・・・・・・・・」

「ふむふむ、これはつまみ食いしたくなる気持ちは良くわかるな。」

「美味しいですわねつまみ食いは許しがたいことですけど。」

「美味しいからとこんな生計の術を持たぬ子供から奪い取るとは・・・・・・嘆かわしいことだ。」


美味しそうに肉の甘煮を食べる国王夫妻、言っていることは過激なのだが・・・・・・・・

その一言一言に周りのお付達は顔を青ざめさせる。って、言うか平然としているのは数名しか居ないのはどうしてか?


「ワシは子供達に断ってから食べておるぞ。」(by門衛卿)

「まぁ、礼拝のときに幾つか余計に貰ったりはしておるが、神殿で買い取っておるからの。」(by終雷伯)

「あたしは物々交換だね。」(by神殿料理人某)


「ちゃんとほしいといってくれれば分けるのに。」「そだね」

「きぞくさまってかねないの?」


「「「「ぐはっ!」」」」


子供達の呟きに冷や汗物の貴族・神職達。それを冷ややかに見つめる国王夫妻に上記の連中。

ちなみに厨房神殿の連中は最初のうちこそつまみ食いをしていたが、その内にしなくなったりこれでどうだと改良品を持ち込んで味勝負したりと・・・・・・・・・


人それを食べ飽きたと言う。(by厨房神)

飽きの来ない味なのに(by処暑神)

後引くよな(by白露神)



「陛下に置かれましたは彼等に一言申してもらえれば・・・・・・・・・」

「まぁ、そなたの立場で言っても効き目なさそうだがな。我が言っても聞くかどうか?」

「とりあえずは彼等にはつまみ食いの代金を支払ってもらったら如何かしら?」

「大した額ではないのですが・・・・・・・・・」

「おいくらなの?」


勇者(笑)は浮浪児に詳細を持ってこさせて・・・・・・・・

「あわせて銀貨3枚です。」

「「・・・・・・・・・・・・」」

あまりの額の小ささにあきれ返る国王夫妻。一人頭に直せば銅貨30枚いくかいかないか。

「普通もう少しふかすものでは?」

「あまりに小額過ぎて馬鹿馬鹿しく感じるな。取敢えずつまみ食いした連中はそれぞれの家・神殿から金が届くまでここで留め置くので良いか?」

「場所ふさぎで邪魔ですけど。」

「国王命令である!」

「判りました。」


その後伝令が走り金が届くまで数刻、それぞれの家宰だの神殿長が態々銅貨を持ってくるのは壮観であった。

「旦那様、流石に情けのう御座います。」

「はははっ!爺よ、あれは魔性の食べ物だ。」

「そんなことを言っても駄目ですぞ!」


「お前ら・・・・・・・・・何をしておるのだ・・・・・・・後で奉仕作業を命ずる!」

「はい・・・・・」


それぞれの所から迎えが来て・・・・・・・・・・色々言われている。


「お父様、なにを・・・・・・・・・・」

「娘や言ってくれるな。」

「お嬢様お一つどー?」

「あら、かわいい坊や 宜しいの?」

はみゅ

「あら、これは美味しいですわね。つまみ食いしたくなる気持ちもわかりますわ。」

「だろだろ!」

「でも、やっていいことと悪いことがありますわよ。後で家族会議ですわ!坊や、うちの父が恥ずかしいことをして申し訳ありませんでしたね。」

「つまみ食いはある程度想定ずみなんだけど・・・・・・・・この貴族様鍋一つ・・・・・・」

「お父様、食べすぎですわよ!」


まぁ、色々言われて絞られて・・・・・・・・・・


その様子を見て陛下は

「子供達よ、これで一件落着で良いか?」

「「「はいっ!ありがとうございますへいか!」」」

「あっ!できましたらひとつ。」

「なんだ?そこの錆色の髪をした子供。」

「私らの屋台に【貴族様も思わずつまみ食いしてしまう料理】という銘を掲げる許可を・・・・・・・・・もらえたらなぁ・・・・・・・・なんて」

「ぶははははははっ!それは面白いな。流石にそれをすると彼等の体面もあろう。認められぬが、【貴族もつまみ食いしたくなる料理】であるならば許すぞ。」

「有難う御座います。これで私たちの宣伝材料になってうはうは・・・・・・・」

「あらあら逞しい事、つまみ食いされるのも商売の機転とするなんて。」

「おれた・・・・・・・私達は寄る辺もない者ですから使えるものは何でも使わないと・・・・・・・・」

「ふむ、頼もしいな。そうは思わぬか草露伯婦人。」

「ええ、陛下。この子ならば今から召抱えて教育すれば一角の人材となりましょう。」

「えっ!えっ!なになに?おれどうなるの?」


図々しくも逞しい子供を見て品定めをする国王一派にうろたえる子供。

「確かこの子は街角で自ら屋台を商っておりますから計算等出来るはずですし・・・・・・・・・」

「はい、屋台に立つ子には読み書き計算を仕込んでおいてます。つり銭をごまかしたりされたりしないように・・・・・・・・後調理の分量なども計算できるようにと。」

「ふむ、ちょっとした会計業務くらいは出来るわけだ。」


「え、えっと・・・・・・・おれ、計算ばっかりはいやだなぁ・・・・・・・・」

回れ右する錆髪の子供に

「うんうん、機転が利く子は得難いよな。」

「ちょうど王子殿下の守役にぴったしではないか。」

「平民であるのが問題だが何処かの家の養子にして置いとけば・・・・・・・平民だから子守の経験もあろう。」

「そ、そりゃあるけど・・・・・・・・な、なに?」

「うん、君のような前途ある子供を迎え入れようとしているだけだよ。」

「決して、つまみ食いで絞られる意趣返しじゃないからね。」

「出世じゃないか。」


つまみ食い貴族や神職達が肩をつかんで逃亡を許さない。

お前ら少しは自重しろ。


まったくだ。(by節制神)


「にーちゃん、けいさんとかきらいだったよな。」

「何時も逃げ出して、しんかんさまにつまかえられてしばりつけられてたし。」

「役人になったら頭から煙りだしそうね。」

他の子供たち(死霊っ子含む)から計算嫌いをばらされているが聞いているものは居ない。


「貴族様たちって人の話し聞かないよね。」

「暴走してるね。」




「うおっほん!まぁ、我が臣下達よ。こどもで憂さを晴らそうとするのはやめるが良い。」

「「「「「はっ!」」」」」

「そこの子供よ。」

「は、はいっ!」

「美味であったぞ。そなたの生業これからもしっかりと励むように。」

「はいっい!ありがとうございます。」



なんか陛下にきれいにまとめられた。

後にこの子供の屋台は時折貴族の会食にも呼ばれることになるのだがそれはそれで別の話。

流石に【貴族も思わずつまみ食い】という表記はしなかったものの、つまみ食いした人数だけの撃墜マークならぬつまみ食いマークをしるしていたのはご愛嬌。このマークは厨房神殿貢献の孤児屋台の美味しさを示す指標となるのだがちょっと後の話となる。


その後陛下は神殿にて荒野の民と極北の民とも言葉を交わされ、勇者(笑)の事を託されるのであった。

なお、後日『この美味を作れるほどに精進を重ね民の舌を喜ばしているのだから』と恩赦が下されるのである。


めでたしめでたし・・・・・・・・・・なのかな?


なんか脱線している気が・・・・・・・・・・

次からは旅に入るのかな?


ああ、酒が私を呼んでいる。

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