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荒野の人

荒野の民


【狭間の国】荒野領域及び綿羊国、啓蟄地方、魔王領の一部に居住する遊牧民族。独特の文化を持つ民族で農耕文化をもつ人族連合とは一部相容れない部分があり魔王勇者戦争時代においてはどっちつかずの態度で双方から攻撃され民族存亡の危機に陥るが幸いにも【叫びの子】や他の【建国公】と共に【狭間の国】建国の礎となり今に至る。


時代は巡るとも彼等の暮らしぶりは荒野で牛や羊を追いかけてと変わることはないが(啓蟄や綿羊国、魔王領における彼等は一般民と紛れている場合も多いが)その文化は異質で他の民族からはなかなか受け入れがたいものである。

神殿の説法日、勇者(笑)の元に訪れたのは秋雷伯に連れられた異郷の民である。

片方は毛皮の服をまとった大男達で他の者よりも優に頭一つ大きく色素の薄い肌色に筋骨隆々の体躯をした威丈夫達である。もう片方は歩き慣れていないのか蟹股気味で全体的に細身でありそのまとった皮の服と相成って悪人のようにも見える。子供達が振舞うものを美味しそうに食べているが無体する様子もないところを見ると直接的な暴力を振るうつもりはないのだろう。


「お菓子の神官殿よ、彼らを紹介しようか。でかいのは極北連合の【極北戦士】で細身なのは狭間の国は荒野の民の【騎馬戦士】だ。あまりに遅いものだから神官殿を連れ出しに来たのだそうだ。」

伯の紹介に彼等の中で頭目分と思われる者が一歩前に出て挨拶をする。


「お初にお目にかかる、狭間の国は荒野を統べる馬の民が一派、赤岩の一族の群長である赤岩子爵と申す。異界の若者よ、剣合わす事のない出会いに感謝しよう。」

と、髪を逆立てた皮服の男が挨拶をする。


「ふむ、黒髪の若いの。俺はこの極北派遣戦士団を束ねる極北戦士の戦槌だ。よろしくな。」

と毛むくじゃらな大男が気楽に言う。


礼には礼を既知である伯の面子をつぶすのは宜しくなく、新しい案内人だろうと挨拶を交わす。

「異世界人の【菓子作る神官】です。よろしくお願いします。」

と頭を下げる。


三者の挨拶が終わると伯は

「神官殿よ、我が国を気に入ってくれるのは嬉しいが色々とせっつかれての彼等が迎えに来たというわけだ。」

「終雷伯、聖騎士さんや光の神官さんが先に行かれて終わりかと思っていましたが、迎えが来ましたか。」

「お主が根っこ生やしてこの地にいるからというか・・・・・・・・・・この子達の事を思って残っているのだろ。仕返しを考える連中も居なさそうだし、そろそろ行かれるがよかろう。」

「せっかく居つくことができる場所ができたと思ったら・・・・・・・」

「つべこべ言わず用事を済ませて来い!」

「はははっ!仕方ありませんね。」


伯と勇者(笑)のやり取りを聞いて

「ふむ、勇者と聞いて危惧していたが争い事が嫌いな若者ではないか安心だな。」

「俺としては一度遣り合ってみたかったがこのなりではな、弱い者いじめにしかならんな。」

と二つの群の頭はそれぞれの感想を言う。

「俺に戦闘能力を求めるのは間違いでしょうに何処にでも居るような異世界人なんですから。」

「いやいやいやいや、異世界人というのは滅多に居ないから何処にでも居ないから・・・・・・・」



「まぁ、神官殿その身一つでも大丈夫なので旅立ってくれぬか?そろそろ外務担当の秋分候が胃痛で泣きそうになっているのでな。」

「それは知らずとはいえ惨いことを・・・・・・・・準備ができ次第向かうといたしましょう。」

「無事に勤めを果たしてきたら酒でも酌み交わそうではないか。」

「はははっ!酒は旨かったけど二日酔いするほど飲むのは勘弁しますよ。」

「あれしきの酒で情けない、ちょうど極北の連中は酒に強いから鍛えてもらうがよかろう。がっはっはっ!」

伯は言うだけ言うと戻っていった。帰り際に子供達から振る舞いの料理を幾つかせしめているのがちゃっかりしている。屑肉で作ったものだが気に入ったらしい。


伯が居なくなってから最初に口を開いたのは荒野の民の頭、赤岩子爵である。

「我等も綿羊の兄弟分を訪ねた帰りに頼まれたのだが異界の者よ、我等に同道してもらうぞ。と言うが暫し我が群のものも旅に疲れがあるから補給も兼ねて数日程この地に居る予定だ。しかし孤児院でもないのに子供が沢山居るのはどういうわけだ?神殿に弟子入りしたわけでもなさそうだし一時的に借り出されたわけでもなさそうだ。」

「ああ、子爵様。それはこの子達は見てのとおり孤児だったりするのですが其処の孤児院が酷かったり孤児院に預けられる前だったりで色々ありまして罪人扱い・・・・・・・保護と矯正を兼ねて神殿で預かっているのですよ、其処の後見として私もなっているので旅立つにも・・・・・・・・・・」

「色々とは何だ?」

と極北戦士が聞いてくる。

「色々は色々ですよ、ここで語るべきではないでしょうし蒸し返してもよくない。」

「むぅ、口が堅い男だな。」


そりゃ、市場でのかっぱらいはともかく体を売った娘とかと言うのは彼女の為に口にするべきではないと勇者(笑)の価値観で口を閉ざしているのである。概ね、それは正しいのだが・・・・・・・・


子供たちを思う彼の心意気は嬉しく思う。(by性愛神)


「所でこの子達は孤児という事は親代わりは居ないのだな?」

「何人かは弟子入りとかの話はありますけどそうなりますね、それがなにか?」

「誰も守るものがない子供であれば貰おうかとおもってな。子供はよい、常に世界に変化をもたらし我等の跡を継いでくれる、富は自らは増えないが子供たちは富を増やしてくれる。」

「子爵様、子供を道具として考えると言うのならばその話は・・・・・・・・・・」

「逆立つ髪でよい。お前の案じるのは良く判る、我と荒野の神々の名において子供達が健やかなる事を誓おうぞ。」

「異界のにーちゃんよ、横から口出しするがこいつら荒野の民は孤児を育てるのが義務としているし子供好きな連中だからむしろ甘やかし過ぎないかどうかが心配だぞ。」

と勇者(笑)と逆立つ髪のやり取りに説明を加える。


「ごめん、俺の勘違いだった。」

「ふむ、謝罪を受け入れよう。子供達のために怒るのは当然の事だ。で、そっちの子供はお前の技前を越えていそうだがあれも孤児か?あれを我らが一族に迎え入れたいぞ。」

と小僧っ子や浮浪児のガキ大将をみて物欲しそうにする逆立つ髪、細身で凄みのある顔で言われると何かの獲物を狙うようである。


「地の分、我が悪人面であるのは否定せぬが言われる筋合いではない。」

逆立つ髪地(略)



「お、おいらかい?聖徒の都にかーちゃんがいるから・・・・・・・」

「おれかい?ちびドモ置いていけねぇだろ。」

小僧っ子にガキ大将それぞれの返答が返る。

「残念・・・・・・・・・では其処の悪餓鬼、ちび達と共にならば我が一族にくるか?」

「・・・・・・・・・・・うーん・・・・・・・・・・」

ガキ大将は悩んでいるようだ。結構この暮らしも捨てがたいのだろう、どう見ても異郷の民の暮らしになじめるかと言うのも考えどころだ。


「ところでよぅ・・・・・・・・・・」

と戦槌が前置きをして提案をする。

「俺たちも今しがた都に着たばかりだ。飯でも食って休みたいのだがどっかいい場所ないかい?」

「飯!」「酒!」「女!」

極北戦士達はそれぞれに要求を言い始める。最後の女は各自で花街に行くなりして確保してもらうとしてそれはもっともだと思う勇者(笑)も説法の報酬が手に入るからどこかで食べるのも悪くないかと・・・・・・・・・


「そうだな、飯でも食いながら話を詰めようか。ここだと俺たち邪魔くさいし。逆立つ髪さんもいいよね。」

「うむ、旅の食事と言うものは味気ないものだ。特に男だらけだと大雑把でいかん。」

「一番大雑把なんは頭じゃないですか!」「塩もかけない肉を出して!」「旨い飯が食いたい!」

「うるさい!」

荒野の民の方からも同意なのか良く判らない声が上がる。


背後では勇者(笑)の説法(料理教室とどう違うのだろうか?)の後片付けをしている子供達が居る。

「おいっ!お前らもさっさと片付けろ!終わったら飯食いに行くぞ!」

と怒鳴る。


「やったー!」「ぼくおにくがいい!」「おさかな!」「ねーチャンからきいたなんぽうりょうりがたべたい!」「ぼくも!」「あたちも!」

と浮浪児達は口々に勝手な要求を言ってくる。それに苦笑しつつも・・・・・・・・


「小僧っ子、南方料理の店に行って席を確保して来い。これは前金だ、あまったら駄賃にしろ!」

と銀貨を数枚小僧っ子の手に落とし込む。

「にーちゃん、わかった。先に行っている。」

と駆け出していくのである。



その後、南方料理店はわけのわからぬ異民族と子供で満席となり、子供達は遠い地の話に目を輝かせながら美味を食べることになる。最初は怖い人だと思ってびくついていたが子供好きの良い人だと判ると段々に懐くのである。


「マンインオンレイダイカンシャ!デモジモトキャクガハイリズラソウ。」

「客は客だろ。其処のほうれん草とチーズのカレーお代わりね。」

「おにーちゃん私其処の魚の煮たの。」「こっちの芋も」「ばーんぐらっしーおかわり!」

「ハイハイ、スグツクルネ。」

「バーングラッシーは駄目だろ!」

ごんっ!

「いたっ!」

「ッテ、バーングハヤテナイヨ。」

「誰だ、教えた馬鹿は・・・・・・・・・・・」


教えた馬鹿は療養神殿の癒し手某である。


「ふむ、暖かい食事は体を元気にするな。」

「これは体を温めるんだな。極北(くに)に土産としてもっていけるかな?」

「からっ!」

「これくらいで怖気づくな!我ら蛮勇を以って知られる極北の民ではないか!」

「オッキナオキャクサンモトカラクスルカ?」

「いや、これくらいでいい。」

「コレマダショシンシャムケヨ。」

「くっ・・・・・・・・南方の民は化け物か!」


「美味だな。この香辛料は羊に良くあう。ヤギだともう少し癖のあるのが・・・・・・・・」

「こっちの柔らかな乳酪は面白い食感だ。それに果物にあわせると美味美味。」

「生の果物がこんなに安いなんて・・・・・・・・・」

「おじちゃんたちのところって果物ないの?」

「ないわけではないが、取れる場所と時期が限定されていてな結構高いのだよ子供よ。」

「ふーん、そーなんだー。」

「その代わりに羊の肉は安いぞ。毎日肉が食える。」

「すごいね。」


「おにーちゃん、なんかすごい一団だね。」

「なんか異世界っぽい雰囲気だな。それぞれの個性豊かな異民族達が混沌とした宴会をするなんて俺の居た世界では見られないな。」

「普通見られないから、異世界で一緒くたにしないで!」


「おらっ!其処のちっこいのもっと食べぬか!俺たちみたいに大きくなれないぞ!」

「うぷっ!もう、いっぱいいっぱい・・・・・・・・・」

「食が細いな!がははははっ!」

「おじちゃんほどからだおおきくないもん!」


がつがつむしゃむしゃ・・・・・・・・・・・

「リョウリオイツカナイネ、」


その日勇者(笑)の懐から銀貨が数十枚飛んでいったのは当然の結果と言えよう。

久方ぶりにカレーが食いたくなってきた。

でも縞舌平目しかない・・・・・・・・・・


そうかカレー煮にすればいいのか!

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