流石にのんびりしすぎていれば
聖域守護辺境伯家
【狭間の国】の名門貴族一門、【古戦場地域】を治める。
前身は【人族連合】設立以前に存在していた【人国】の【聖王家】の分家【盾王家】、聖王家の嫡流が途絶えた今、聖王家の本流となるのだが人族連合に所属していないために王位継承権を主張できない。もっとも聖王家が存在していたのは遥か昔なので何を今更と言う意見が過半数を占める中でも、かの一門を人族連合に迎え入れて聖王家の復活を願う声も大きい。
ここは【狭間の国】王都・・・・・・・・・・・
木々にサカサムクドリがぶら下がっているが余り気にしてはいけない。
王都内にある市場の一角、飲食区域に溢れかえる貴族共と神々とかが酒盛をしている中で市場の主とも言える男が傍らに愛しい娘が寄り添い、手には報告書の束を眺めるために掴んでいる。
主は報告書を眺め嘆息する。
「えっと、まだ西方平原の王都かよ。まともに旅をするつもりがあるのか?」
「・・・・・・・・・・それでも喧嘩する気がなくてよかった。戦いになれば貴方も出なくてはいけないから。」
「そうなればお前も共に行こうとするだろ、そんなことは俺が認めないぞ。」
「貴方が決めることじゃない。私の居場所は貴方の腕の中、私はそう決めているのだから。」
「お前が居なければ・・・・ 傷跡娘、俺の手が寂しがる。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ばか。」
「で、酒盛卿。貴公は何故に機密書類をここで読んでいるのか?」
「どうせ、この情報はここにいる連中は知っているだろ。報告がてらに旅路を進めて貰ってくれる方法をさがさねぇと何時までたっても片付かない。それに俺に街道とかの状況がわからん。」
「・・・・・・・・・・・・あの近辺は国が多いから其々に挨拶回りが大変そうだものね。」
「傷跡娘、それは判るんだが・・・・・・・・・西方平原に二月は滞在しているぞ。食事が美味だから離れたがらないのか?」
「処暑候、貴公の国であろう。甥である王に一言口ぞえが出来ぬのか?」
「・・・・・・・・・・・・・そんな事をしてみろ、領地ほっぽり出して遊び歩いているのがばれているだろ。」
「普通に遊び歩いているのは見て判りますし、西方平原国から戻ってくるよう口添えしてくれと来ておるが・・・・・」
「外務官それは破り捨てておいてくれ。やっと王位継承の騒動から解放されると言うのに奴等はどうせ『仕事しろ叔父上』とか『王族としての責務を』だの言ってくるに違いない。そう言う事よりも西南交易都市国の御隠居も国に戻らないんで?息子の王様も孫を見せたくてうずうずしていたと思うんだが?」
「ああ、わしん所は政体を王政から選挙王政に変わっての息子達も王位を追われたからこっちに物見遊山に来る予定じゃ。やや寒い気もするが、隠遁所としては中々良い環境ではないか。」
「それって、亡命と言わないかご隠居!」
「そうとも言うな。まぁ、あの国での我等が血筋は甥が保っておるだろうし我等はのんびりと余生を楽しむさ。」
「何暢気にしているんだぁぁぁっぁぁぁ!!外務官!陛下に報告しないと!」
「いくら小さな都市国家だからって交易に・・・・・・・・・・」
どたばたどたばた・・・・・・・・・・
市場の主と官僚の一人が慌てて飛び出していった。
それを黙って眺めていた道楽貴族らしき男は傍らにいる栗色の髪の娘を抱き寄せながら。
「奴もそろそろ落ち着きと言うものを覚えればよいものを嫁を貰えば落ち着くかと思えばその気配もないし・・・・・・・・・・」
「御主人様流石に国が変わるのは一大事だと思われるのですが。」
「国など常に代わり続けるものだ。そうして我等も歴史書の一行となるのだろう。」
「そんな大げさに言わんでものぅ。そういえば【聖王家】の末裔たるお主は【異世界人】についてどう見る?」
「ご隠居、現地からの報告を信じるならば呼び寄せる必要も感じないでありましょう。定期的に所在を確認できれば問題ないでしょう。なんなら私等で人となりでも見に行きますか?」
「なぁに、こっちに向かっているのに面倒な事をする気はない。」
「ごもっとも・・・・・・・・・・・・」
「なぁ、ご隠居。あの勇者(笑)と当代の魔王。出会ったらどうなりますかね?」
「ふむ、互いに喧嘩する意思はないし荒事が得意と言うわけでもあるまい。仲良く飯でも喰らって終わりじゃろ。寧ろ取り巻き連中が血祭りにとか・・・・・・・・・・見物しがいがありそうじゃの。」
「確かにそれは面白そうな見世物でしょうがあっちにも私は投資しているんで騒動は勘弁願いたいのですが・・・・・・・・」
「何ならばお主が行って手助けすれば宜しかろう。なんたって【悪辣なる王室顧問】なんだろう、行けば人外どもは右往左往するはず。」
「いやですよ、面倒くさい。それになんですか【悪辣なる王室顧問】って、私が悪人みたいな言われ方じゃないですか。それに王室顧問の役は降りていますしね、今の私は可愛い娘を愛でる道楽貴族ですよ。」
そう言いながら傍らの娘の頬に口付けを落とす。照れて真っ赤になりながらも娘は満足そうにそれを受け入れる。
片手に娘、片手に杯。なんと羨ましいあり方であろうか。
彼等の元に勇者(笑)が来る日は未だ判らず。
酒盛市場は今日も平和である。
さてと、不味い●ジョレーで飽きた。
他の酒を探しに行こう。




