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願わくば子供の幸いのために

貴人聖域法アジール


過失や止むを得ない罪のために追われる者達のために残された聖域。法治主義を掲げぬ世界で謂われなき罪人達が求める最後の避難所。


起源をあげるならば罪人達が他の領地に逃げ込んだ事をあげるだろう。その領地でも罪を犯すなどをしたために引き渡す。その繰り返しで無実の罪人達が自衛のために自治区域を作り上げたり、凶悪犯化したり・・・・・・・・・・・

その無辜の民を利用する心算で保護したら戦争になったりとか・・・・・・・・・・


神殿勢力が憂い、指定された神殿に駆け込めば一定の奉仕をもって調停に乗り出したのが始まりである。その調停において神々の代理人達(各神殿勢力の有力者達)が判定するのだが基準もいい加減で無実の者を共謀して陥れたと神々に直接訴える者も出て一定の基準が必要と定められるのである。


一定の条件とは

・訴えられる者が有力者(聖域も含む)に正当性を認めさせること。

・その正当性に対して有力者が責任を持てること。

・その報酬として一定の労役等を差し出すことが出来る事。


もっとも、これが認められたからと言って有力者側からそれに応えるかといわれれば別の話である。だが、酔狂な者や互いにこれを利用して名声を得ることを行う者がいて名もなき民はそれに利用されるのである。


これの利用についての実例ならば【全裸賢者とその弟子】の物語を挙げる事が出来るだろう。


かの物語は・・・・・・・・・・





西岸騎士団領法務講座【貴人聖域法】冒頭部より


うむ、この子の死亡を認めることが出来ないですね。ちゃんと生きることが出来て幸いです。(by案内人)

「いいんかい?死人を連れて行くのが仕事だろう?」

勘違いしていないかね、我等の仕事は死人を導く事だけど生きて生きて生き抜いていこうとする者を無理やり連れて行くことじゃない。足掻き疲れて零れ落ちた者を休ませる事だ。まぁ、誰だって普通生きていたいと思うだろう。(by案内人)

「無駄足だったと怒らないのか?」

無駄足上等、お前さんだってそう思うだろう。少なくともこのガキが死ぬには俺は惜しいと思うんだ。(by案内人)

「では、これ少ないけど待機の報酬としての菓子。後悪いけど冥界神様にも届けてもらえるかな。」


どさっ!

勇者(笑)は大量の菓子を案内人に渡す。


悪いね、賄賂を要求したみたいで・・・・・・・後冥界神様には責任を持って届けさせてもらいます。うちの者がこれ気に入ってねぇ・・・・・いつも仕事仕事でご機嫌取りできなかったからたすかるわ。(by案内人)



案内人は解けるように消えていった。尤も冥界の入り口で賄賂としてもらった菓子を冥界神達に没収されて涙目なのは勇者(笑)の知ったことではない。



生者の世界からの賄賂は受け取るべきではない。これは我が責任を持って処分しよう。(by冥界神)


あっ!冥界神様の分は別口で用意されてますが・・・・・・・・・・こっちは私用の為に手持ち無沙汰にされたと詫びとして私のために用意された菓子なのですが(by案内人)


む、異世界人がそなたの家庭環境を案じて持たした菓子までは哀れであるな。うんうん・・・・・・・・・・(by冥界神)


そ、それはそれで・・・・・・・うちは家庭環境は悪くないと・・・・・・・・・・(by案内人)


ちゃんと家庭の安定を図るのだぞ。世界と言うのは家から始まるものだから(by冥界神)





と言った冥界事情はさて置き・・・・・・・・

勇者(笑)は浮浪児達から事情を聞き、身の上話を聞いて保護せざるえなくなる。

神官と言う身分もそうだし自分より年下のガキ達に不憫を味あわせるのは間違っていると言う青臭い美意識からかもしれないし・・・・・・・・・・・何よりも


「おにーちゃん・・・・・・・・・・・・・なんとかならないの?」

「たすけようよ。」「お願い。」「神様殴るくらい力あるんでしょう。」

と死霊っ子達の懇願に負けたのが理由だろう。


勇者(笑)は豊穣神の神官と共に顔を見合わせながら・・・・・・・・・・・・

「何が出来ますかねぇ・・・・・・」

「うちだったら下働きをさせながら食わせるくらいしか・・・・・・・・・」

「俺なんかも誰かに頼んで働き口とか養子の口を捜すのがせいぜいだな。」

「にーちゃんに神官様、それよりもこのガキ共が盗みをしているのにそれをなかったものにするのか?盗人は強制労働が正しいあり方だろう。」


小僧っ子は飢えた経験がないのか過激な事を言う。それも正しい、盗みをするものを許し続けると真っ当な者が餌食になるからだ。その辺をどうするかと言うのも悩み所である。

とりあえず、食わせてやりたいな、飢えていれば誰もが聖人君子でいられない・・・・・・・・・・・これを言葉に出来ないもどかしさに勇者(笑)は悩む。


甘い粥を平らげて満足げな子供達に滋養に富んだものを与えられて安らかな眠りについている幼子を見て思案をするのである。


「取敢えずは身奇麗にする事か?臭くて嫌だ。」

と勇者(笑)は子供達を水場に導いて体を洗わせて、公衆浴場に連れて行くのである。

垢染みた子供の匂いと言ったら不快になるし、そんな状態だと衛生的ではない。

公衆浴場に連れて行って丸洗いしている間に小僧っ子に着替えを買いに行かせる。

汚いなりでいられても臭くていやだからである。


公衆浴場では管理人がとても嫌がっているが、集められた浄財を一部見せると機嫌を直して垢すりを用意して浮浪児たちを磨き上げるのであった。


「いたいいたいい!」

「うるさい!汚い者を洗い流しているんだからだまれ!」

「いやぁぁぁぁ!およめにいけない!」

「汚いままだと嫁にもいけないだろう!」


あちこちで悲鳴が聞こえるが気にしないことにする。お湯がとても黒いのだがどれだけ入っていないのかと見たくもないなと・・・・・・・・・・・黒い点々は・・・・・・・・・のみ?しらみ?

うん、管理人にもう少し積んだ方がよいかも・・・・・・・・お湯を換えて清掃をしっかりとしてもらって・・・・・・・・


そんなことを勇者(笑)は思ったかどうかは思ったとしておこう。

何故ならばお湯の黒さを見たときに思い切り顔を引きつらせて浴場の管理人に更に銀貨を積み上げていたのだから。






そして浮浪児達が風呂から上がると痩せこけてはいるけどもそこそこ見れるようになっている。

多少細かい傷とか暴行の跡とか見れるけど命には別状ないから取敢えずはもう一度飯を食わせるかと・・・・・・・・・

小僧っ子が買い込んだ古着をまとわせて・・・・・・・・・・・


「にーちゃん、女物の肌着とか何の虐めか?」

「悪かったな、これは駄賃だ。」

「強請ったみたいで悪かったな。」

「これならば街を歩いても問題なかろう。」

「だね。」


「身の振り方は兎も角として、飯を食うぞ。」

「神官様おれ達に如何して?」

「ふんっ!この状態で見捨てたら俺の立場が悪くなるだろうが。」

「でも、光明神殿の神官さん達は見捨てたけど・・・・・・・・・」

「あたしは一晩銅貨10枚で・・・・・・・」

「ぼくはなぐられた・・・・」


勇者(笑)は勿論、豊穣神殿の神官からも青筋が見え隠れしている。

近くにあった南方料理屋を・・・・・・・・・・・顔見知りだからと言う事で無理を聞かせることにする。


「マタアンタカ、コンドドンナムリナンダイ」

「心配するなガキ共が一杯いるだけ。あまり飯喰えてないから体調を整えるものを。」

「ソノクライナラダイジョブヨ、シカシヤセコケテルケドコノマチハコドモニクワセナイノカ?」

「取敢えずは飢えてるから何とかしてくれ。」

「ムチャイウネ、デモオマカセヨ。コノナンポウリョウリンニハムチャニコタエルリキリョウアルネ」


それだけ言うと南方料理人は厨房で

「オマエタチ!キアイイレルネ!コレカラウエタガキガオソイカッカルヨ」

「オヤカタナニヲムチャヲイウ」

「バーングラッシーデエイギョウテイシクラタアトナノニキャクトハ」

「オマエラグチイウナ、ワレラタヨテキテイルキャクダゾ!カネタクサンヨ!ソレヨリモアワレナガキタスケルジョリョクシタトセンデンアルヨ。ナウレレバキャクウハウハヨ!」


うん、内部でのやり取りは聞かなかったことにしよう。

出てくる料理は飢えて胃が縮んだ子供達の食欲を回復させ体力を付けさせるには十分すぎるほどである。

豊穣神の神官が

「なんて香辛料の無駄遣い!しかも、体力増進の薬膳!」

と感心しながらマジ食いするほどであったから味わいも効果もあるのだろう。


浮浪児達も貪り喰らうようにくらい、涙流しながらがっついている。

「チビドモイキナリタベスギルトダメヨ!」

とある程度料理を出したら南方料理人が料理を出さなくなる。まだ食べたりなくて不満気な子供達を前に

「コレイジョウハタベタラカラダコワスヨ。マタカセイデキナ。」

と薬湯を出して飲ませる。


食べる事を薬にする南方料理人の技前は人族連合には見られないものである。

その辺の差配は小僧っ子が目を輝かせて見落としがないようにと目で盗んでいるのだが笑い話するべきか・・・・・・・



「寝床は我が神殿を開放しよう。」

と豊穣の神官様が器量を見せてくれる。それに純粋に感謝を示しながら勇者(笑)はこの子達が幸あるようにと願うのである。






翌朝、豊穣の神官が手配した療養神殿と性愛神殿の者の診察を子供達に受けさせながら、勇者(笑)は厨房神殿やら西方諸神群神殿やらに詫び状を綴る。当然だろう、貴族や神殿の威信をかけた行事を私情で踏みにじったのだから・・・・・・・・・・その辺に関しては豊穣神殿も連名にて詫びを入れているのだから何とかなるのだろう。小僧っ子の身柄は別だが・・・・・・・・・・


「ちょ!おいらはどうなるの?」


せいぜい、門衛卿から同情を受けて上巳卿からにらまれる程度。首切り(物理)から首切り(職業)になる程度だろう。って、言うか地の文に(略)



それよりも問題なのは浮浪児達の処遇である。浮浪児であることに合わせて、食べるためとは言え盗みをしたりゴミアサリをしたり不法売春もしているのだから法によって裁かれるのだろう。

そうなれば何時自由になるのか・・・・・・・・それよりも命が・・・・・・・・・・・

その辺は裁判官の裁量なので賄賂か・・・・・・・・・・・民の声か・・・・・・・・・・と悩むのである。



翌日に勇者(笑)に詰め寄った上巳騎士爵は

「うむ、勝負事を抜け出した小僧っ子に対しては勝つことを条件に許しますよ。浮浪児に関しては法によって裁かれるのが筋でしょう。出来るだけ穏便な罰になるように口添えはしますけど基本的に私はこの国のものではないですから。」

と答え(小僧っ子涙目)

人日卿は

「この国の王は若いけどこんな些細な事で無体はしないでしょう。賠償と労役ですむのでは?」

聖騎士は

「また、面倒事か?浮浪児ならば狭間の孤児院に入れてから仕込んで国に役立てればよかろう。」


いやいや、それはむごいから。あそこの子供達の行く末知っていっているのか?(by啓蟄神)

あそこにいた官僚って・・・・・・・丈夫な竜族が三日で逃げたよな。(by雨水神)

それ以前に孤児院の教育自体が・・・・・・・・・・貴族が一日持たなかったような。(by某王国担当地方神)


うん、えげつない。それならば奴隷として綿花伯に下げ渡したほうが・・・・・・・


それは罰ではなくて保護と言うのだ。(by秋分神)



門衛卿は

「ふむ、然る理由ならば【菓子作る神官】殿の行いを非難する言われはない。某のほうからも話を通しておこう。」


厨房神殿は・・・・・・・・・

「さて、我等厨房神に仕える兄弟姉妹たちよ!飢えた事があるだろうか?見捨てられて朽ち果てたことがあるだろうか?世界にはその痛みを未だ受け続けている者達がいると言う事を忘れてはいけない。恵みを受け取る我等が受け取らざる者達を無碍にする理由はあるのだろうか、あると言うのならば我が前にてその是非を語るが良い!我は喜んでその間違いを正そうではないか・・・・・・・・・・・・・・いないのか?ならば一度我は兄弟姉妹たちに問う!世界に飢えているものがいる事を許せるか?」

「否!そんな飯が不味くなるようなことが許せない!」

「誇りある兄弟よ、恵みを分かち合おうとする君の言葉を嬉しく思う。再び問う!飢えたる者を救おうと願うことは愚かしいと思うか?」

「是!自らを削ることはとても愚かしい行為である。なれど、愚かさを笑うことは私には出来ない。私もまたその愚かさと共に生きているのだから。」

「率直なる姉妹よ、貴女の言や良し!自身の欠点を抱えてと言うが我は誰が言おうとそれは美点だと認めよう。三度問う!飢えたる者を救おうとして立ち上がる【菓子作る神官】殿とその一統を礼儀の面以外で問題視する必要はあるだろうか?」

「否!」「否!」「否!」


否という声が響き渡る中一人

「是!」

と言う声がする。

「一人違う声を挙げるものよ汝は何を持って【是】の意見を申すのか?」

「ああ、同胞達よ。救わんとする志が尊きものであることは私も認めよう。何故、救いが我等のうちからではなく異世界より来る根無し草に宿るのかと怒りと悲しみを覚える。だが、それを脇において私は問いたい!それで救われたのかと!それで飢えたるものが救われきったのかと!聡明なる長にして神々の代弁者たる神官殿!我等は昨日、飢えたる死霊を救おうと行いを興した。その中で【菓子作り】殿は我等も見落とした・・・・・・・・・・・・言い方を悪く言えば見捨てた者達を救わんと行いを興したのだ。その焔を消すことが正しいだろうか?彼は小さな種火だ!今ここで吹き消せば世界は無慈悲と不条理を旨とするものとなろう!今や選択の時である、この場にいる兄弟姉妹達よ我から一度問う!飢えたる子供を身捨てる世界が身捨てるほどに愛おしいかと。そして私は問いかけよう、餓鬼を飢えさせていながら食らう飯が旨いのかと!」


一人の是とする者の問いかけに

「否!」の声が響き渡る。

一人是という者は更に問いかける。

「ならば何をもって救いとする。そして我は問う、かの飢えたる者を幸いの道に引きずり出し、どうすれば我等が旨い飯を食えるのかと!」

そこで意見が紛糾する。


この騒ぎは一時も続き、人々は小さき種火を守り小さき子供を守り小さき誇りを胸に抱いて意見を言い合う。無知なものも愚かなる者も的違いない件を言うも願いは一つ幸いなる世のあり方である。

言の愚かさを笑うのは許されるが、思いを笑うことは許されず。百の意見が述べられるのを見て神官は・・・・・・・・・


「兄弟姉妹達よ、君達の思いは良く判った。ならば、我等が厨房神殿の意見として路傍の子供達を救わんとして行動を起こすことを認めるかね?」


神官の問いかけに

「是!」

と言う声が響き渡るのである。







十日ほど経って・・・・・・・・・・・・・多くの神殿勢力が言葉を発した事の大きさに裁判官は王に丸投げして王は罪に罰を与えるのが筋として判決を下す。

『盗みと不法売春の罪を償うために、労役3年を命ずる。尚、年齢と状況を鑑みて身柄を神殿預かりとする。保護を願った神殿の責任をもって労役を行わせ、更生させること。』


法のあり方に則りながらも子供達の幸いに繋がる判断であろう。

更に数ヵ月後には世子誕生による恩赦で子供達は解き放ちになるのだが、王の温情に感謝している子供達は仕方なかったこととは言え自らの犯した罪と向き合いたいときっちり3年の間労役を勤め上げたと後の史書に伝えられている。


まぁ、実際の話解き放たれても居場所がないから3年の間労役と言う名の保護を受けていたのが事実なのだが・・・・・・・・・

彼らはその後更生して其々の幸いの道をすすむのである。

さて、酒を飲むかな。

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