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会食

手長蝦


川で取れる淡水蝦(海老という表記は基本的に海産につける)

塩焼きが旨い。

謁見が終わり、暫し後


「【菓子作る神官】様、死霊っ子の皆様方、陛下が共に食事でもとお誘いですが如何致しましょうか?」


と陛下付きの侍従の一人に呼びつけられる。

「今からですか?」

「はい、そうなります。」

「では、少々待ってもらえますか?身支度を整えますので。」

「では、暫し後に案内の者を用意させますのでそれまでに準備願います。」


そう言って、侍従は立去る。

事務的なのは、決定事項だということなのだろう。

共に飯を食らうくらい良いかと勇者(笑)は軽く請け負うのである。

そうと決まったならば、身支度を整えて死霊っ子達を着替えさせ・・・・・・・



どう見ても変身なんだが・・・・・・・・・(by秋分神)

基本、【幻影】というか死霊っ子の外見設定技能だからな。(by処暑神)

衣装代がかからないから良いではないか。(by白露神)



えっと西方平原の神々の皆様、地の(略

更に略されてる!



それはさて置き、半時も過ぎたであろう頃

「【菓子作る神官】様、用意が整いましたでしょうか?陛下の下へとご案内いたします。」

と案内役が来るのである。


取り残されるのは小僧っ子、彼は神官さん達と夕餉をとることになる。

そこでも、高価な食器に囲まれて神経をすり減らすのだがそこは笑い話。

そもそも宮廷料理人見習だから馴染みがあるだろうが・・・・・・・


「自分で使うのと仕事で使うのは別なんだよ!」


ご尤も、でも、地の文に突っ込みを入れるのは礼儀に反するぞ。

おっ!今度は最後まで言えた。


そりゃ、私の文字数稼ぎ(by作者)


この酔っ払いが!






王族専用の食堂に案内される。正確には王族とその私的な客の為の部屋なのだが、隣には召使だの護衛だのの控え室があり逆隣は大厨房に続く通路を持った専用厨房がある。この宮殿の造りは貴賓用の部分と下働き用の部分が平行して作られている。そうすることによって、王侯貴族の目に映る下働きの数が少なくなるのだろう。ついでに作業中に貴族だのが礼儀を求めたりして邪魔が入ることが無くて効率的なのだろう、道理で廊下には特定の私室に向かう者しかおらずすっきりとした印象がするわけだ。


部屋に入ると謁見の間にて見かけた年若き国王とやや腹回りが膨らみかけた王妃が着席しており

「おおっ!勇者(笑)!待っておったぞ。」

と王自らの声掛りがある。


「これはこれは陛下におかれましては私目如きを・・・・・・・・」

と勇者(笑)が挨拶を述べようとすると

「よいよい、ここは私的な場だ。それに長ったらしい挨拶を繰り返したら食事の美味なる時を逃してしまうではないか。」

「では、遠慮なく。」


「【菓子作る神官】様こちらへどうぞ。」

案内役が勇者(笑)と死霊っ子達を席に案内すると給仕達が飲み物を用意し始める。


「我は終雷伯領の林檎酒を貰おうか。」

「私はヤヤコが居りますから干し林檎を漬け込んだ炭酸水を」

「俺・・・・・私は飲み物の種類が判りませんのでお任せで・・・・・・・・あと、死霊っ子達には酒精の入っていないものを。」

「それでしたら神官様には陛下と同じく林檎酒などいかがでしょうか?」

「では、それでお願いいたします。」

「死霊っ子達には王妃様と同じく林檎の炭酸水と檸檬の蜂蜜漬を炭酸で割ったものか、水若しくはお湯で割ったものが御座いますが・・・・・・・・・・後は香草茶とか牛乳がありますけど・・・・・・・・・」

「では、あたしは王妃のおねーちゃんと同じ林檎の炭酸水」


おねーちゃんと呼ばれた王妃様は、おやまぁ、と顔を綻ばせる。実際の年齢・・・・・・・・・より年若く見える麗しい王妃様だから自身の姉と勘違いしたのであろう。粗野な下々の言葉遣いではあるが純粋な賞賛にそれを受け入れる。懐広い国母である。

「ぼくは檸檬の蜂蜜漬を水で割ったの。」

「僕も同じく」

「牛乳で・・・・・・・」

「冷たい香草茶があればそれで・・・・・・・・・匂いが少ないので・・・・・・」


他の死霊っ子達も銘々に注文するが給仕は嫌な顔一つもせずに承る。

他の貴族等の賓客に比べれば注文が楽なのであるし、ある程度注文を絞れるように誘導している節もあるのだが・・・・・・・・・そこは給仕の職業上の技能と言うべきか。


其々に給仕がつき飲み物が貴重品である桃笑国の硝子の器に注がれる。死霊っ子達の器がやや小ぶりなのは身体に合わせてなのだろうか?もてなしの心が見えている。


そこで王が器を掲げて

「皆の者乾杯といこうか。乾杯。」


「「「「「「乾杯!」」」」」」


下々の場面だとお互いの器をぶつけるのだが、高価な器が用意されている場においては器を掲げるだけですませるのである。ぶつけて欠けたりしたら泣きが入る・・・・・・・・・主に王城管理を司る者達の。


そして一杯目は出来るだけ飲み干すのが礼儀なのだが、そこは無理強いはしない。


乾杯が終わると料理が運ばれる。


前菜は鍋ごと饗される手長蝦の香草焼。

身の詰まった手長蝦を香草の詰まった鍋にて蒸し焼きするだけの一品である。

あえてソースだのを用意していないところを見るに素材の良さに自慢があるのだろう。

其々の鍋から漂い出てくる香草と蝦の香りに空腹が刺激されたのか勇者(笑)の腹がなる。


ぐぐぐぐぐぅぅぅう~


「さぁ、腹を空かせている勇者(笑)を待たせるのは酷であろう、皆でいただこうではないか。」


王は赤面する勇者(笑)を見ると好ましい者を見るように号令をかけ、自ら蝦を手づかみでかぶりつくのである。

そして会食が始まる。

王妃が蝦を殻ごと喰らい付くのを見て驚く勇者(笑)に給仕が

「神官様、蝦は脱皮直後の物を用意しておりますのでそのままお召し上がりになれます。」

給仕の説明を受けて蝦に挑む勇者(笑)、


かりり・・・・・・・硬いなと思いつつも食えない殻の固さではないのでそのまま齧り付く。

しゃくしゃくとした殻とその下に埋まっている甘く柔らかい身、頭のほうには味噌の風味が口の中で混ざり合っている。口中を香草の香りが通り抜け、舌先はほのかな塩味が蝦の甘味を引き立てるのである。


「これは美味ですね。単純な料理だからこそ手が抜けない、陛下が羨ましいですな。料理の腕もそうですが場の流れを読んでそれを供する事が出来る料理人に。」

「そうかっ!そうかっ!自ら美味を生み出すものにそう言われるとは我が料理人達も捨てたものではないな!」

「これは私の好物ですのよ。欠点は食べると手が汚れることくらいかしら。」

「王妃様、手を汚す価値のあるものでありましょう。丁度蝦の殻には御腹の子の骨の為に良いとされる成分が有るそうですので好物でしたら良い事でございましょう。」

「おや、まぁ・・・・・・・・そのような効果があったのですね。これからは毎食でも・・・・・・・」

「いえいえ、何事も過ぎたるは及ばざるが如しでありますから・・・・・・・・他にも必要な成分がありますので満遍なく食べることが重要かと・・・・・・・・・」


蝦が好物過ぎる王妃様とそれを嗜める勇者(笑)、異世界知識(とは言え厨房の者ならば伝え聞いているのであろうが)が妊婦と赤子の栄養の話題とは・・・・・・・・・

ほのぼのしすぎている。


「他にはどのような成分が必要になるのかしら?」

親というものは子に心砕く者である。王妃は後ろに控えている給仕に内容を記させる準備をさせると質問をする。


「そうですねぇ・・・・・うろ覚えで悪いのですが、人の身体を構成するのが肉と骨となります。これを補う食べ物が肉の部分は肉ですね。他にも豆類や芋等からも取れますし乳や乳製品等も含まれております。骨の部分は骨といいたいのですが骨そのままだと人の口で齧れませんし消化不良をおこす事がありましょう。先に述べた蝦の殻もそうですし、手ごろな物だと小魚とか小エビ等を丸のまま食べれば殻とか骨とかの成分を取り入れることが出来ますし・・・・・・・・・苦手でしたら乳製品からとることが可能です。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


と、何故か栄養学っぽいことを語る羽目になっている勇者(笑)。

御腹の子を無事に産みたいと願っている王妃は真剣に聞いている、それを見て王様は


「異世界の面白い話を願おうかと思ったら、王妃に取られてしまったか。」


と苦笑している。王自身も自らの子が健やかに生まれてくる事を願っているので王妃の興味を満たすことを受け入れている。この話自体は生まれてくる子供の為の物と限定しても母子共の健康に役立つ、民にその情報を流す事をすれば流産死産や未熟児などが減るであろう。健やかな子が多ければ将来的には民が増えて国力になるのである。しかし食べ物から整えるとはよくある発想であるが、結果があるならばそれを使わせてもらうのは悪い考えではないと考えている。


それでも、手にしようとした玩具(勇者(笑))を王妃に取られてばかりいるのと王妃が異世界人にかまっているのが癪なので

「ふむ、我が妻にして国母ならんとする王妃よ。そろそろ勇者(笑)を解放せぬ哉?彼は逃げないだろうが料理の食べ時は待ってくれぬのだぞ。」


王妃が赤面して

「興が乗ってしまい申し訳御座いません。我が夫にして国の要たる国王陛下よ。給仕よ、次のものを用意するように。」

「はっ!」


「はっはっはっ!子を思う母のあり方だから咎めだてするのは無粋だろう。勇者(笑)も災難であったな、うまい物を食べられるかと思ったら母子の健康の講義をする羽目になるとはな。」

「いえいえ、陛下。そのくらいは食事の話題として問題ありませぬ。まぁ、この世界に降り立ってから自分が何者なのかと判らなくなるときがありますけど。」

「ふむ、どのようなことかな?」

「【勇者】として呼ばれてみれば用済みだし、聖徒の都では【菓子職人】なのか【文官】なのかよくわからない扱いでしたし、旅に出れば【神官】としてなんだかんだの面倒事に関わっておりますし、旅の理由が【危険物】・・・・・・・・・・・一体どれが私なんでしょうか・・・・・・・・・・と」

「ぶはははははっ!なんとも贅沢な悩みであるな。我なんぞは【王族】一本であるからな。他になりたいものがあっても周りが許してくれん。しかしお前の場合は【異世界人】これに尽きるだろう。」

「大雑把なくくりですね。お互いに無いものねだりと・・・・・・・・・」


そこで、料理が運ばれる。

年若い鶏を葡萄酒で煮込んだものが出される。煮汁に鶏の血が混じっているのか鶏の味に深みが増している。なじみの無い味わいに勇者(笑)がこれはと思いつつ食べていると王が問いかける。


「所で話が変わるが勇者(笑)よ。お前は魔王討伐に行く気はないのか?」

「しなくてすむために旅をしているんですけど・・・・・・・・・」

「魔王を討伐するとなればお前は一国の将軍位よりも遥かに権力を持つのだろうし、後には英雄として扱われるであろうに興味は無いのか?」

「俺・・・・・・・・・もとい私に英雄願望とか欲が無いとは言いませんけど、面倒くさいですからね。のんびりと菓子でも作ったり文官みたいな事で十分暮らせますし、なにより他人のために戦うなんて馬鹿馬鹿しいですからね。自分でけつを拭け!っていいたいですね。」

「神官様言葉遣いが・・・・・・・」

「おっと失礼致しました。」

「まぁ、よいよい。その程度の言葉遣いで気にしていたら本音が聞けぬだろう。お前に野心が無くて安心したぞ。間違って戦争になってみるが良い、働き手が取られるは戦費の負担を求められるはでこっちが面倒だ。ただでさえ国王の仕事が多すぎるのに仕事増やされて溜まるか!ただでさえ、【異世界の勇者】がいるから魔王に対して仕掛けろとか言う声が出始めているのに・・・・・・・・・・」


ぶはっ!


王の剣幕に勇者(笑)が噴出した。給仕や侍従達は仕事嫌いが発病したかと見てみぬ振りをしている。

「笑い事ではないぞ!」

「失礼致しました。でも、私の方もこれで安心しました。勇者なのだから戦いに行けとか言われたら本気でどうしようかと・・・・・・・・・・・・」

「勇者なんて者は我が国ではお呼びでないのだよ。欲しいのは有能な文官とか私の補佐して楽させてくれるものとかだ!」

「殿方の遊び(政治)はどちらでも宜しいですが私としましても安心致しましたわ。勇者を矢面にして戦争などとなりましたら御腹の子やら貴方の心配をなさらねばなりませんから・・・・・・・・・・・」

「我が愛しの花よ、汝が種は兎も角我をも案じてくれるか?」

「当たり前でありましょう。国の要でなくとも我が夫を案じぬ妻など何処にありましょうか?」


国王夫妻は見つめあっている。仲良きことは美しき哉。

二人の世界に浸っている夫妻を見て勇者(笑)は話と緊張で渇いた喉を湿らすために給仕に飲み物を注文するのであった。



「給仕さん、飲み物のお代わりお願いします。出来れば甘くないもので・・・・・・・・・・」

「畏まりました、でも陛下夫婦で甘味を食べ過ぎた顔をするのは止めて下さい。」

「そういう給仕さんだって・・・・・・・」

「そこは見ない振りをするのが礼儀というものでしょう。」


「うおっほん!聞こえているぞ給仕に勇者(笑)!」

「平に平にご容赦を!放逐されたら十を頭に13人の子供と3人の妻と4人の老母が・・・・・・・・・・」

「計算合わんぞ!」

「そもそも生計が成り立つんだ、そこが凄いと思う。」

因みに給仕はその後色々陛下に弄られるのだが別の話。



その後も色々な料理が出され、他愛も無い会話を交わしつつ最後の甘味まで楽しんで会食は終了する。

死霊っ子?


美味とは沈黙にさせる作用があるものだ。(by厨房神)

腹が減ったのでこれにて

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