えっけん
玉座
王の地位を示す椅子。別に椅子と決まっているわけではないのだが、王の地位にいる者が座る場所とかと考えれば宜しかろう。
どっちにしてもすわり心地のあまりよろしくない高級な椅子だったり座布団だったり・・・・・・・・・
私の一生はこの玉座から逃げることで費やされている。
某狭間の国聖域守護辺境伯一門の男の手記より
勇者(笑)は悩んでいる。謁見に際してどのような服装で望むべきか?
一応所属している神殿協会の神官服か?異世界人と言うふれこみに合わせ召喚されたときの服装か?
死霊っ子達は儀礼官や侍女官の忠告を得て、町方の子供ちょっと富裕層の坊ちゃん嬢ちゃん風にまとめている。
「ほらっ、そのセピア色の髪にはオリーブグリーンで合わせて・・・・・・・」
「えー、フォッグの上っ張りにコーラルがいい!おねーちゃんしきもう?」
「ほらほら嬢ちゃんはマンダリンのワンピースにローアンバーなんて渋い組み合わせすぎる。」
「あまり派手だと服に負けちゃうじゃない。」
「いやいや、可愛いんだからもっと冒険しないと!ホライズンブルーにラズベリーとか・・・・・・」
「おじちゃん、ラズベリーだったらリラとかカメオでしょ。」
「うむ、それの方が映えていいね。」
「じゃあ、それできまり!」
「あと上着の方は少し刺繍とか入れられる?こんな模様とか・・・・・・・・」
「できるよ、ほらっ!」
世話役の儀礼官と侍女官は客人である勇者(笑)をそっちのけで死霊っ子の衣装合わせに腐心している。
そりゃ、旅装を解いただけで着飾るものが無い勇者(笑)より、【幻影】の術式を利用して・・・・・
正確には死霊としての思念で己が外見を変えられる能力を持つ死霊っ子のほうが色々衣装あわせで楽しめる。
因みに小僧っ子は、謁見に参加しようとせずに部屋で待機することとなった。
「にーちゃん、この部屋落ち着かないんだけど・・・・・・・」
「確かにちょっと物を壊しただけで俺たちの稼ぎが数年分飛びそうだものな。」
「うん。」
因みに勇者(笑)も調度品の豪華さに引いている口である。
「まぁまぁ、お二方大丈夫ですよ。そう簡単には壊れないような品物を用意してますし、絨毯なども実は丸洗いできる代物ですから。」
「絨毯丸洗いできるんだ!」
「ええ、基本不特定多数の方には粗相する人とかいるじゃないですか。汚れとかに強く補修の利くものでないとこういった所に向かないでしょう。」
「そうですわね、花瓶なんかも焼き締めて出来上がった後に樹脂を塗って艶出しと耐衝撃性を強めておりますわ。余程思い切り叩きつけないと壊れることがないですから安心して宜しいですわよ。」
「ほむほむ、そうなると元手がかかるのでは?」
「絨毯自体は普通の倍くらいかな。それでも、汚しても大丈夫だから買い換えるよりは楽かな。」
「花瓶のほうも樹脂と加工賃くらいですから一つ銀貨二三枚上乗せする程度ですわ。」
「元の値段が・・・・・・・・・・・から考えれば安いのかな?」
すっかり主婦っぽい感覚が身についてしまっている勇者(笑)である。
まぁ、小僧っ子がお茶をこぼしたくらいでは問題ないということだけが判って安心である。
小僧っ子も椅子で伸びをして背中をほぐす仕草をする。
「ああ、そうそう小僧っ子が今座っている椅子は200年前の代物で再現不可能・・・・・・・・・」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
吃驚して飛び跳ねる小僧っ子、儀礼官弄りすぎである。
「おいら、こんな怖いとこヤダ・・・・・・・・・・町の宿にしたい・・・・・・・」
下手に触ると生涯収入を越えるものがゴロゴロしていると言うのは落ち着かないらしい。
「びびり過ぎだよ、にーちゃ。」
「落ち着かないならば厨房とかいってれば?」
「それがいいかも・・・・・・・・・・・」
「侍女官さん小僧っ子を厨房で預かってもらうこと出来ます?」
「うーん、お付とは言え【死者慰撫する聖者】の御一行ですからねぇ・・・・・下働きの者と一緒にするのは・・・・・・・・謁見についていってもらいたいくらいなんだけど。」
「ぶほっ!」
「小僧っ子、よく考えてみろ。お前は見習とは言え宮廷料理人だ、王とか貴族とか色々相手にする事もあるんだから慣れてないと駄目だろう。今日は聖騎士さんとか神官さんとか色々いるから後ろで控えていれば大丈夫だから付いて来い。」
「えー!」
「えーじゃない!いくぞ!どうせ、菓子が必要になるんだから助手がいなくてどうする。」
「にーちゃん、ゆーしゃぱわーのちから(意味不明)で出せるんだからいらないじゃん!」
「ふっ、一応無害な異世界人と言う設定だからそれは封印中だ。勇者云々は秘密事項だぞ。」
「ばればれじゃないか。」
侍女官さんに儀礼官さんは聞かなかった振りをしている。情報として知っていても一応機密事項だし巻き込まれるのは面倒であるし、そういうことは問題ない限り知らん振りをするのが礼儀である。
下手すれば国際問題だし・・・・・・・・・・・
「小僧っ子も謁見に行かれることをお勧めしますよ。陛下が態々話しかけることは無いのでしょうが、死霊を慰撫するときに重要な役割を担っていたのは事実ですし、菓子を作る所を見たいとか言われるかもしれませんならねぇ・・・・・」
「うちの陛下は好奇心が強いですから。」
「サボる口実では?」
「その後に宰相様に強制連行されて・・・・・・・執務室で缶詰にされるのが決まっていますのに。こりないですわね。」
「まぁ、そうなんだけど・・・・・・・・・・・もう少し外部の者がいるのだから発言に・・・・・・・」
勇者(笑)一行は聞かなかった振りをする。死霊っ子達に関して言えば色々衣装を変えて遊んでいるのだが・・・・・・・・・・・
「ちゅーぼー神殿のちょーりしの格好ー。」
「やるじゃない!ならばこっちはりょーよー神殿鬼畜な二日酔いの薬飲ませるげどーの格好!」
「ぼくはけっとー神の剣闘士のかっこー」
「とーぞく神様の格好をまねてみる。」
「ああ!ずるーい。ならばけんしんさまのすがたを・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・えっと、異世界人様?この子達神々の姿を写していますけどお会いになったことが・・・・・・・・・・あるのですか?」
「結構な頻度で・・・・・・・・・・盗賊神様は色々引き連れて俺の菓子を盗もうとしているし・・・・・・・・文芸神と芸術神の腐れアマはちょっと道行く男が二人連れ添っているのを見ると直ぐにそっちのほうに話を持っていこうとするし・・・・・・・・・・・・療養神は匙を投げたり二日酔いの薬をぶっ掛けに・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・えっと、何ですか?その神職の方々が見たら泣いて驚き跪きそうな光景は・・・・・・・・」
「異世界だから神様も普通に出てくるだろう。そんな物だと思っていたから気にもしていなかったが。」
「にーちゃん!異世界だからって非常識を片付けないで!この世界でだって十分珍しい事なんだから!」
小僧っ子はツッコミがうまくなったな。(by療養神)
うむ、一応彼は神官位で小僧っ子から見たら雲の上なのにな。(by大地神)
気安い兄貴分としてみているからなんだろう。(by決闘神)
お前等、少しは自重しろ!勇者(笑)が我々が地上にいる事を普通と思ってしまうではないか!(by節制神)
実際神々はそこかしこに降臨されている気がしないでもない。だれだろう、珍しいといっていた者は?
・・・・・・・・・それはさておき、神々に遭った事があるというのは非常に稀有な事である。
どこぞの国の市場で酒盛しているとか、そこを管理する若き男爵の恋物語を茶化しているとか、更にその国の王妹殿下と腐った話題で盛り上がっているとかはあるのかもしれないが・・・・・・・・・・それは例外としておこう。って、言うか置いてください。
一般の者であれば王侯貴族でも神単体に遭う事もまずないといっていいだろう。神職等の神々に仕える者であっても神託と言う形でしか触れ合うことが無い。その神託もツッコミみたいなものでしかないのだが・・・・・・・・
こんこん
「失礼します、異世界からの客人様。西方平原諸神群神殿から参りました神職です。処暑神様からの神託です『地の文、神託をツッコミ扱いするな』との事です。では、失礼致しました。」
ばたん!
「えっと、いまのはなんだったんだ?」
「多分神様からのツッコミだと思うけど・・・・・・・にーちゃん、おいら神様の導きを求めて引き篭もろうと思ったけど止めた方がいいかな?」
「導きどころか混乱に拍車がかかりそうだからそれが正解かも。」
「「・・・・・・・・・・・・・・」」
儀礼官と侍女官は沈黙している。神託がくるのは滅多にないことなのだが・・・・・・・・・それがツッコミだとは・・・・・・・・・・
「な、なんなんですかそれは!神々の神託がツッコミだし!普通何かが起きるから気をつけろとか、よくやったとか言いようがあるでしょうが!」
「そうよ!なんで始めて目の当たりにした神託が『ツッコミ』なのよ!もう少し雰囲気のあるのを夢見てた私が馬鹿みたいじゃない!」
いきなり暴発した。とりあえず、勇者(笑)とかに言うのは間違いだと思うが・・・・・・・・
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて・・・・・・・・・・・・神様だって色々いるんだから色々な神託があっても・・・・・・・・」
「そんなことじゃないわよ!」
「そうですとも、何で地の文に突っ込みを入れるのに神託を使うのか・・・・・・普通に地の分相手に呟けばいいじゃないですか!」
ぎゃーぎゃー
儀礼官と侍女官は客室周りを警護していた近衛兵達に連れて行かれ、『魂の導きをえるため』に西方諸神群神殿に向かわされたのであった。多分謁見の間、向こうの神職と愚痴のいいあいをしているのだろう。
ツッコミの神託だっていいじゃない。かみさまだもの(byみつ・・・・・・・・・『さくじょぉぉぉぉぉぉby節制神』じゃなくて 処暑神)
うん、彼等に幸あれ。
そして謁見。
彼ら二人が導きを失ったお陰でいしょうを選ぶことができなかった勇者(笑)と小僧っ子は旅装のままで謁見に向かうこととなる。
二人の姿を見た神官は顔を顰めるが、すぐに表情を引き締め謁見の間に向かう。
「聖徒王国より聖騎士様ご一行来場です。同行の方は光明神殿の【光燈す神官】様、聖徒王国人日騎士爵様、上巳騎士爵様、【菓子作る神官】様他お付の方々となります。」
儀礼官(先程神殿送りにされた者とは別)が勇者(笑)一行の訪れを告げる声を発すれば、場にいる百官は軽く礼をして来訪者に敬意を示す。
そして一行は定められた場にたどり着くと跪き頭をたれて来訪者の礼をする。
頭を下げたままの一行の中で座を代表して聖騎士が挨拶の言葉を発する。
「西方の大国の至尊の座に座られるは慈悲深き王に挨拶申し上げる。旅装を解かぬままの非礼まことに・・・・・・・(略)」
「人族の砦たる勇ましき聖騎士よ丁重なる挨拶、有り難く承ろう。一同の者楽にされるが良い。この度は我が招きを受け取り良くぞ参った。急な誘いゆえ旅装を解く間も無いのは重々承知気にすることは無く・・・・・・・・・・(略)」
長々しい挨拶が続き・・・・・・・・・・綴らないのは作者の酒が切れて気力が無いからではないぞ。
そこっ!勝手な事言わない!(by作者)
長々しい挨拶の後で、
「大儀であった。下がってよいぞ。」
陛下の宣言に一行
「「「「「「ははっ!」」」」」
というなり、一歩後ずさりしながら下がり、その後に回れ右して退出するのであった。
こうして謁見は終わるのである。
さて、眠いのでこれにて。




