白銀の城門
とある国にて西方平原の奴隷と聖徒王国の貴族が居た。
その国の門番は二人を見て奴隷を主人、貴族を従者と勘違いした。
そのことに怒る貴族
「だって、体格が血色よく肥えているし着ているものも清潔で仕立てが良い。それに比べて貴族様は栄養状態が悪いし着ているものも時代遅れじゃないですか」
国家間冗句より
西方平原国の王都は白金色に輝いていた。
古来の詩人いわく
『西に幸いなる都あり、白銀に輝く城壁は敵の軍勢のみならず飢餓疫病も寄せ付けず。』
聖徒王国の都はどちらかというと黒っぽい石を建材として利用しているから色の違う都というのは見ごたえがあるのだろう。小僧っ子は目を見開いて感動というか驚きをあらわにしているし、勇者(笑)も感嘆の声を上げる。
「ようこそ白銀の都へ聖徒王国の方々、あまりに美しいからといっても目を見開いていると目玉が零れ落ちてしまいますよ。」
護衛として着いてきている兵士がおどけて言ってくる。
ほかの兵士も
「まぁ、我等が都と称する石ころの群れに感動する他国者が多いのですがその時に片目を手で抑えておくことをお勧めしますね。少なくとも抑えている方の目玉は零れ落ちないですから。」
等と軽口でいってくる。
西方王国王都、通称【西の都】人族連合最大級の都市。衛星都市や周辺の農村を含めれば百万を超える人口とそれと同等の旅行者、商人、遊学の徒等を抱える世界の最先端のひとつ。
ここに比べれば聖徒王国王都は・・・・・・・・・・よしておこう。聖徒王国担当地方神様が睨んでいる。
我等が黒金の城も人族の牙城としてあったのに・・・・・・・・・・そんなにでかいのが良いのか?栄えているのがよいのか?我が子供達の血と汗と涙の結晶が・・・・・・・・(by聖徒王国担当地方神)
はいはい、いじけているならば話の邪魔なんでどいてくださいね。
話を戻そう。
護衛の兵士達(西方平原国所属)は聖徒王国の無骨な旗を立てて王都の門に先触れとして向かっていくのである。それに続いて神官の乗った馬車に勇者(笑)一行を詰め込んだ馬車が続く。その後に便乗していた隊商やら巡礼たちやらが続いてくる。ある意味百をも超える人数が追うとの城門に向かう様は見ごたえがある。聖騎士に二人の騎士爵はそれぞれの乗騎に騎乗して馬車の前を先導するが如くに進んでいく。
先触れの兵士は
「聖徒王国より【異属と語らう聖騎士】様、【光燈す神官】様、【菓子作る神官】様一行来訪である。王都の門を高貴なる方々を迎え入れるよう命ずる。」
白髪で壮年の門衛が応えて
「黒金の都より参られし神職の方々に我門衛兵団男爵が歓迎の意を申し上げる。ようこそ、我らが都に。汝らの高名我が耳にも聞き及んで居るがこの地においては活躍の場がなかろう。何故ならば我らが都と称する囲いの中には賢王の治世が隅々まで行き渡り他国から迷い込んできた食い詰め者以外には幸いなき者が居ないからだ!我らが王も汝等の偉業に心動かされている様子。さぁ、我に続いて参られよ。柔らかな寝床とたおやかな乙女、花の香りがする酒に脂滴る肉をともに分かち合おうではないか。おっと、神官様にはたおやかな乙女は毒でありましたかな。」
門衛かと思いきや出迎えの貴族様であった。少々物言いが高慢であるが自らの国を誇りに思いそれを素直に語っているだけに過ぎないので気にしないのが礼儀だ。
普通ならば旅の途中の神官や聖騎士であれば出迎えもないのだが珍しい異世界の勇者が居るということでそのまま旅立たれぬように確保に来たのだろう。
「我一行の導き手たる聖騎士が一同を代表して歓迎に感謝の意を申し上げる。いつ来ても幸いなる都、栄える光あらば照らされざる闇の深きに頭を抱えるのだろうが、裏町の隅にまで幸いの歌が満ちている。如何にして幸いなる治世を施すのかこの幸いなる都を見るに疑問に思う。」
「はははっ!それは国家機密と言いたいが大した事ではなかろう。民にはちゃんと食わせて、まっとうに生きていても食えない者が出ないように気を配る。ただそれだけよ!見よ、満ちて居ればこそ誰かに優しさ向けることができるのだ。」
そこで馬車から降りてきた神官と勇者(笑)、出迎えの門衛兵団男爵に頭を下げ挨拶を述べる。
「光明神に仕える我が挨拶申し上げる。白金に輝く都に常に光明の煌きが絶えずあらん事を。とはいえ、これ以上光り輝いてもまぶしくて仕方ないでしょうな。」
「然り、【死者まで照らす神官】殿。これ以上光り輝かれても某の目に覆いが必要になるではないか。過分なる祝福感謝いたすが、世界の照らされざる所に光差すように祈られるがよい。」
やはり男爵様は高慢な物言いであるが気にすることはない。
大業な所作で腕を広げながら歓迎の意を表す。その背後からは光が差し込んできて光り輝く都はいっそうまぶしさが増す。実はこの男爵様日照も計算に入れて舞台効果を上げようとしていないか?
「ところで光の神官殿、そちらの黒髪の青年が異界より誘われし【菓子作る神官】殿かな?」
「はい、お初にお目にかかります。私がその異世界人です、一応は異界云々は公表しないこととなっているはずですが・・・・・・・・・・・・・」
「ふむ、そうであったかな?それでもお主の活躍はもう人の口に上って居るからあまり意味がないと思うのだが・・・・・・・お主が呼び寄せし綿花伯の侍女長の話は久方ぶりに笑わせてもらったぞ。あの引きこもりの一族がどれだけ油絞られているかと思うと胸が熱くなる。」
「なんか恨みがあるんですか?」
「なぁに、我が所領に雇おうと思った料理人をあろうことか奴隷如きの為に雇い入れたんだ!しかも某の提示した額の三割り増しだぞ!普通は遠慮して交渉が終わるのを待つのだろうし、権力の横暴だ。」
勇者(笑)は奴隷集落の無駄に美味なる料理を思い出して納得する。
そういえば、『綿花の奴隷に過ぎたるものは実りの美味に親の学』なんて笑い話があったなとも思い出す。
「おかげで我が所領の農夫達が旨い物が食べれなくてこっちに不満が来ているではないか。」
「そっち!」
思わず素で返してしまった勇者(笑)、神官もまだまだ甘いなという顔であきれ返っている。
「馬鹿を言ってはいかんぞ異世界人。綿花の奴隷よりも我が眷属を大事にするべきであ
ろう!綿花の奴隷どもが肥え太っているのに我が眷属達が粗末な物を食わされているなんて・・・・・・・・・・・・・口惜しくて口惜しくて・・・・・・・・・しかもあの引きこもり散々出仕命令出しているのに逃げやがる。そのしわ寄せでこっちに苦情が来るは仕事押し付けられるは所領が隣だからってこっちにすべて面倒ごとが来るのだぞ。普通宰相とかが処暑侯あたりが対処するべき問題だろうに!」
ああ、なんか納得。この男爵様もどこにでも居る西方貴族なんだな、と勇者(笑)は理解した。
「なるほど、納得いたしました。男爵様、ひとつ願いがございますが。」
「何事かな異世界人。」
「そろそろ我等は脇によいた方が宜しいかと、王都の門を塞ぐには我ら一同では少なすぎますしなにより民と物流を滞らせるのは国を痩せさせる元になるかと・・・・・・・・・・」
「ふむ、そうだな。我等が滞らせたせいで王都が痩せ始めている。貴重な忠告感謝するぞ。」
白髪髭をにやりとゆがめて男爵様が号令を掛ける。
「護衛の兵達は各自宿舎に戻り体を休めるがよい!ここよりは王都門衛兵団が受け持つ!表12担当の隊は某に続き王城へと聖徒の客人達を先導する。残りは通常業務だ!では、出立は四半時後、それぞれの準備をするがよい!」
「はっ!」
男爵の号令に兵達は其々に与えられた命をこなす。
王都の兵だけに連度が高い、その動きに見とれていると勇者(笑)の下に護衛の兵たちが来て
「神官殿、楽しい旅路でした。」
「ご壮健で」
等と挨拶に来る。旅路の間にそこそこ馴染んでいたし同じ釜の飯を食べた仲だ、別れを惜しんでくれているのだろう。
「こっちも世話になった。これ皆で食べてくれ。」
と大袋に詰められた菓子(勇者(笑)謹製)を差し出す。
「これはこれは・・・・・・いい酒の肴になりますな。」
とにやりと礼を述べる護衛の兵士達、菓子を酒の肴にするとは・・・・・・・・・作者じゃあるまいし。
「こらっ!勤務中に金品の受け取りは軍規に違反しておるぞ!」
と白髪の男爵様が釘を刺す。
「し、失礼いたしました!」
と勇者(笑)にしぶしぶ菓子を返す護衛達・・・・・・・・舌の肥えた西方の兵達を楽しませる異世界の菓子。
「受け取るならば非番のときにするが良い。」
と抜け道を堂々と放言する男爵様、固いだけではない様だ。
「後で届けさせるよ。」
「すまんね、神官殿。」
後ろにつかえていた同行の隊商に後ほどにこの菓子を兵舎宛に届けてくれと勇者(笑)が手はずを整えるとその間に準備を終えていた門衛兵達が
「団長、準備ができました。」
「うむ、聖騎士殿達も準備は宜しいかな。いざ、我等が白銀の城と呼んでいるものに向かおうではないか!」
そう宣言すると男爵は自ら黒い馬にまたがり西方平原国の旗を担ぐ。
それに導かれるように勇者(笑)達の乗った馬車も続きその周りを囲むように門衛兵達が一部隊続いていくのである。
馬車に乗り込んだ勇者(笑)小僧っ子や死霊っ子達と王都の様子を眺めながら
「まるでお偉いさんになった気が・・・・・・・・・場違いだな俺達。」
「異世界人に、見習い料理人に奴隷の死霊。おいら達の場合だと刑場に護送とか」
「やめてよー」「ぶっそー」
「わりぃ!」
「俺が勇者として呼ばれて外交問題になっているのを考えるとそれもありえるんだけどな。それだったら、最初から軟禁するかどうかするだろうし、最悪狭間の国に届けられた時点でという事だから今ここでということはないだろう。それ以前に俺のような良識人をどうこうするほど非道な者は居ないし状況でもないと・・・・・・・・・信じたい。」
「りょうしきじん?」
「死霊っ子、にーちゃんは良識はあると思うよ、良識は異世界のだけど。」
「神様殴ったり死霊をどつきまわしたりするのが良識人のすること?」
「お前ら・・・・・・・」
「きゃー!」「いたいいたいいたいいたい!つぶれる!」
軽口をたたく子供達に勇者(笑)は握りつぶれろとばかりにつかんで握る。
御者さんから
「お前ら馬車の中で暴れるな!」
と注意されるまで続くのである。
良識ねぇ・・・・・(by文芸神)
良識はあると思うぞ、常識はないが。(by境界神)
そして馬車で進むこと一刻、馬車は王城の馬車乗り付け口に到着する。
門衛兵達が馬車を取り囲む中、近衛兵達が列を成して抜剣し剣礼を行う。
聖騎士を先頭に進む一行。
先触れの伝令が声を上げる。
「聖騎士 駐狭間の国聖徒王国大使一行様御来訪!」
その声に近衛兵達は剣礼の剣をさらに高く掲げて剣のアーチを作る。
その下を潜り抜けるようにして進むとその先には上級官僚と思われる貴族が居る。
その背後には城付の使用人がずらりと並んでいる。彼等も貴族の子女であるのだろうか立ち振る舞いが洗練されている。
「聖徒の民の来訪を歓迎する。私は王城の管理を司る終雷伯である。何か用向きのことがあればこの者達に申し付けるが良い。いきなりで申し訳ないのだが王との謁見があるので身支度を整えてもらいたい。」
珍しい黒髪に堂々とした体躯の終雷伯を名乗る貴族の言葉が終わるや否や神官が履くに語りかける。
「久しぶりでありますな終雷伯、お変わりがないようで。」
「おおっ!光明神の神官か、久しいな。お主が出張ってくるとは珍しいな、しかも聞いて居るぞ旅の途中で色々やらかしたそうではないか堅物のお前が女の涙に絆されて神殿ひとつ叩き潰すとは・・・・・・・・」
「その話は後ほど・・・・・・・・しかし、国王陛下との謁見とはまた物々しいですな。」
「なぁに、ほとんどはそこの異世界人を見てみたいという好奇心だから気にすることはなかろうよ。それに貴族連中も暇をもてあましているというか・・・・・・・・・仕事すればよいのに。のぅ、門衛兵団男爵。」
「それを某に振りますか、どっちに答えても厄介ごとにしか・・・・・・・まぁ、本音で言えば仕事しろといいたいですな。特に綿花伯。」
なんか男爵の恨みは深そうだった。
「まぁ、そういうことだ、悪いが少々付き合ってくれ。大体一刻後に呼びに遣らせるから身支度だけを整えておいてくれるとありがたい。」
「すいません伯爵、謁見の礼儀とかわからないのですが。」
「ふむ、異世界人や子供だとそうなるな。そこの神官の後ろに控えて大人しくしていればよい。多少の無作法は仕方ないと心得ているから気にすることはない。最悪、儀礼官の一人でも付けるからその指示に従えば宜しかろう。」
「助かります、後この子達はどうしましょう?」
背後でふゆふゆ浮いている死霊っ子達をみて・・・・・・・・・
「まぁ、大人しくしているならば問題なかろう。やはり儀礼官遣すから最低限の作法だけは覚えさせておけばよい。陛下の事だからこの子達も見たいというに違いないし・・・・・・・」
珍しいもの見たさだとぶっちゃけている。
なんだかなぁ・・・・・という思いがあるが、これも契約のうちかなと受け入れることにする。
そうして、一行は使用人達に案内されて謁見の準備をするのである。
禁酒が持たなかった。酒がうまい。




