おお君のためには死ねず
神術
自らの力を捧げて、神々に奇跡の行使を願う術。捧げるものは魔力だけとは限らない、奉仕だったり金銭だったり色々ある。
この術の良い点は神々を本気で信仰すれば誰でも使える事が出来ることと気に入られればただに近い労力でいろいろ叶えられることである。
しかし神々の僕として相応しくなければどれだけ祈りを捧げるとも叶えられることはない。ある意味いじめに近い術。
死霊少年は冥界への行き損ないだった。それくらいはよくあることだ。
後ほど近隣の弔い手の手に委ねれば良いだろう。野営地も村落に近いからそのくらいの情報は・・・・・・・・・・
しかしなぜに死んで川に囚われていたのだろうか?
その点を勇者(笑)が問うと
「兄さん、友達と10日ほど前に水遊びしてたら足を取られた子がいてそれを助けたら一人力尽きてしまって・・・・・・・・・・・・そのまま水神の慈悲に委ねる(水死の比喩表現)羽目になってしまって。」
よくある話だ。助ける方も引き込まれるなんてザラだしよく助けることができたものだ。
「まぁ、なんだ明日にでも近所の弔い手の所で送ってもらおう。今夜は俺等の野営地に泊まってけ。」
「お世話になります。」
死霊っ子に人数が増えることを伝えるよう頼むと駆けるように先走っていく。
野営地に着くと勇者(笑)が持っている手長蝦を見て嬉しそうにする護衛の兵士がいる。
「お菓子の神官殿、これはこれは俺の好物を・・・・・・・・・これを炙ってから柑橘を絞って食べると麦酒が進むんですよねぇ。」
「そういえばこの近辺でよく捕れたっけ、この辺に任地があったとき非番の度に食べて飲んだもんだ。」
「しっかし、よくもこんなに捕れたもんだねぇ・・・・・」
そして、死霊少年の姿を見て
「またですか?」
「勇者(笑)無闇矢鱈と拾ってくるものではない。先の後始末にどれだけ手間がかかったかわかっているのか?」
「ちょっと、またって!」
「そこに五匹もぶら下げておいて何言ってやがるんだ!」
「五匹って・・」
「一匹目デース☆」
「二匹目。」
「三匹目だよー。」
「四匹目だねー。」
「五匹目なんだよー。」
死霊っ子達はノリが良い。なにをしているのやら。
実際に実例を挙げられて反論できない勇者(笑)は神官を睨みつける。
「そういう神官さんだって、女性の涙にほだされて街を襲ったじゃないか!」
「街を襲ったなんて人聞きの悪いことを言うな、ちょっと神殿の風通しよくしただけだろう。」
「いやいや、神官殿。神殿に穴を開けるのは風通しを良くするとは言わないぞ。」
「聖騎士殿まで!」
あっけにとられる死霊少年、なんか怖い人達に囲まれてしまったのかと青ざめる。
「もともと死霊は青ざめた顔していることが多いけどね。」
そこのちっこい死霊っ子!地の文にませっ返してはいけません。
「死霊の兄ちゃん、大丈夫だってここの人たちは神様だって殴っているけど優しいから。」
「わけわかんないよ。なんだよ、その人外魔境な集団は」
神を殴っているのは勇者(笑)だけである。聖騎士は神々を酔い潰して戸板送りにした程度だし、神官は忠実公正な神の僕。
「そこの死霊少年、我々をそこの危険人物達と一緒にしないように。吾等は彼等危険人物の暴走から国を守るために派遣されたんだから。」
「ちょ、ちょっとまて!なんだそれは!俺はそんなこと聞いてないぞ!俺のどこが危険人物だ!」
「神を殴って、神殿協会から苦情が来ているが・・・・・・・・」
「そ、それは・・・・・・・・・」
否定できなくなった勇者(笑)どうでもよい言い合いで夜は更けていくのである。
言い合っているうちに小僧っ子が手長蝦を塩焼きにしてハフハフしながらかぶりついているのであった。
「小僧っ子、俺にもくれ。」
「あいよ、兵隊さん。」
「うむ、これはいけるな。採れたてで身が痩せていない。塩が甘味を引き立てているし・・・・・・・・・・」
言い合いに参加してない御者さんやら兵隊さん達も捕れたての蝦の美味を楽しんでいるのであった。
そうして勇者(笑)達が気がついたときには蝦は残骸のみとなっていたのは言うまでもないだろう。
エビ、カニの類は活物を購入するときはとれたてでないと身が痩せて旨くないぞ。(by漁労神)
活物にこだわらずに浜茹でを購入するのもひとつの手だな。(by厨房神)
だから都内某店舗で北海道産活物を買うのは金をどぶに・・・・・・・・・・・ひぎゃ!(by作者)
次の日の朝、太陽があさーというわけでもない。
あーーーさーーーー!(by太陽神)
太陽神様、そこはネタに走る所では・・・・・・
見張り番についていないものは酒が入っていたのか鈍る頭を振りながら身支度を整える。
旅路は順調に遅れているが仕方がない。それも含めて日程は組まれているのだ。それにしても順調に遅れているのである。まるで作家の(まてまてまてまてぇぇぇぇぇぇぇ!!by節制神)・・・・・・
生まれ育った村に戻った少年はほんの十日ほどしか離れていないのに懐かしそうに眺める。少年にとって十日というのは長い時間なんだろう。そしてまた別れるしかない故郷、愛しい人々・・・・・何を言っていいのか言葉にもできない。
そんな複雑な少年の心中を知っているか知らずか神官は慈悲深い笑みを浮かべた表情で
「少年、死霊になってとはいえ戻って来れたんだ。まずは『ただいま』だろう。」
「そうなんですけど神官様、おれ怖いんです。とーちゃんが受け入れてくれるか、カーチャンがわかってくれるか・・・・・・・」
「大丈夫ですよ。貴方は愛されて育ってきたということは今までの振る舞いからよく理解できますから、それよりも大丈夫ですか?多分、心配かけてと叱られるのは確定ですよ。」
「うわぁ!そっちは考えていなかった。」
家族に心配をかけたら叱られる。溺れ死んだなんてことはどれだけ叱られるか・・・・・・・・・・・・
諦めて覚悟決めておくがよろしかろう。
兵隊さんの一人に近所の弔い手を呼びに行かせて、少年の家へと向かうのである。
少年の家には誰も居らず、見わたすと畑で働いている村人たちの姿が見えるので少年の家族かと聞くと父親だと答えた男が死霊少年の姿を見つけるとともに
「このバカ息子がァァァァァァァァァ!!」
と少年に向かって駆け寄り殴りかかる。
すかっ!
死霊には物理攻撃は通じない。
「親より先に死ぬバカがどこにある!」
と空振りした拳の行きどころをもてあましながら叫ぶ。母親らしき女も抱きしめようとするけどすり抜ける息子にどうして良いものかどうか困惑しながら説教している。支離滅裂なのだが心配をかけたことを骨身にしみて理解している(骨身がないのだが)少年は素直にごめんと繰り返す。
ともに畑仕事していた村人達も死霊となったことには吃驚としているが見知った少年だと判ると奇妙な再会を微笑ましく眺めるのである。
しばらく錯乱した母親を慰めようと手を伸ばして抱きしめたくてもすり抜けてしまう自らの身に悔しさを感じながら
「ただいま、かあさん。」
と一言。
「帰ってくるなら無事に帰ってきなさいよ!このバカ息子!」
と涙を拭う。
親子の再会が終わったと同時に少年の妹と思しき幼女が飛び込んでくる。
「にーちゃ!」
ぼすっ!
「げふっ!」
「にーちゃのばかばかばかばかばか!!」
どすどすどすどすどす!!
幼女は少年の懐に体当たりをかますように飛び込むと胸を叩く。しかし、何故にと思う周囲にいま到着したのか兵隊さんに連れられた弔い手がそこにはいた。
「光の神々の神官様、お初にお目にかかる。私は冥き眠りの神々に仕えるこの村の弔い手である。」
「これはこれはお手数おかけする。我等が一行のお節介者の為に助力頂き感謝いたす。しかし、そこな幼女が死霊に触れられるのは何故であるのか?」
「ああ、それでしたら【対死霊属性付与】の神術を幼女の体にかけて一時的に死霊と対抗できるようにしただけですが。」
「・・・・・・・・・・・・・それって普通武具にかけるものでは?」
「いたいいたいいたい!痛いって妹。」
「にーちゃのバカバカ、なんで先に死んでしまうの!このばかばっかばかばかばかーー!!」
妹の攻撃を受け続ける死霊少年、しっかり叱られて反省するが良い。しかし【対死霊属性付与】その一撃一撃はとてつもなく重たい。(死霊少年主観)
ドスドスと攻撃を受け続けて崩れ落ちそうな少年を庇うかのように一人の少女が幼女の手を止める。
「妹ちゃん、少年が困っているでしょう、それくらいにしておこうね。」
「うん、ねーちゃ。にーちゃ、どっかいかないよね?」
「ゴメンネ妹。」
幼女の頭を撫でる少年、【対死霊属性付与】のせいで撫でるだけでもきついのだが、そこは男の子、我慢してそんな素振りを見せない。そんな少年に少女は荒く結んだ栗色のお下げを振り乱して
「私も言いたいことがあるの。どうして私なんかを助けて自分は死んでしまうの馬鹿ァァァァァァ!!」
ばぁん!
自分を助けるために溺れて逝った少年に平手の一撃が襲いかかる。少年は少女の平手を受けて遥か遠くに張り飛ばされる。
「ここは素直に殴られる場面でしょうから私からの好意で【対死霊属性付与】をかけておきました。」
「それは良いけど、少年が消滅しかけているぞ。」
空気が読める弔い手が気を利かせてくれたおかげで少女のお下げですら風切る音が聞こえそうな一撃が少年に綺麗に決まるのである。あれは本当に痛そうだ。
「所で、【対死霊属性付与】で攻撃を受け続けたら少年が持たないんじゃ?それにそれでやられたらどうなるんだ?」
勇者(笑)が疑問に思って言葉にしているうちに少女は少年に駆け寄り馬乗りになって
「このばかばかばかばかばかばかばか!」
どすどづどすどすどすどす!!
打撃が叩き込まれる。少年がボロボロになった時に
「どうしてどうして私なんかを助けて一人だけさっさと死んでしまうのよぉォォォ!」
と覆いかぶさるのである。
ちなみに【対死霊属性付与】発動中なのでこの抱きつきも少年に対して打撃が入る。
それでも、愛しい幼馴染のために意地を張って優しく頬をなでて
「ごめん・・・・・・・・・・」
と一言謝りを入れるのであった。
「でも、君には生きていて欲しかった。おれの身に代えても・・・・・・・・」
「そんなことわたしも一緒だよ。あんたに死なれてまで助かりたくなかった・・・・・・・・おじさんもおばさんもわたしを許してくれているけど・・・・・・・・・それでもそれでも・・・・・」
泣きじゃくる少女を少年は優しく撫でることしかできないのだった。
さてと、酒を飲むか、昨日の月見のリベンジだ。




