乳の麺麭を越える者たち
異世界人の生態。
会話で説明をするときに【カクカクシカジカ】といえば通じると思っている。
【異世界人の弄り方】より抜粋。
【眠りの園】を管理する弔い手達は混乱している。
「えっと、神官様方この群れは一体?」
「こんな大人数で誰かお偉い方でも亡くなられたので?」
そのわりには死体がないし、手に持っている種々の食料飲料はこの場にそぐわない。
訳がわからないという目で問いかけてくる。
そこで勇者(笑)が一歩進み出て弔い手達を安心させるように説明をする。
「俺は菓子作る神官というものだがカクカクシカジカというわけで・・・・・・・・・・」
「いや、神官様それはわからないから。」
「いやぁ、異世界だからこれで通じるかと思ったのに・・・・・・・・・・・カクカクシカジカ。」
「勇者(笑)殿、流石に普通に説明しませんと・・・・・・・」
「おにーちゃん、それはお話の中だけなんだから。」
「さすがにかくかくしかじかはないとおもうな。」
神官と死霊っ子達のつっこみは勇者(笑)の心に悲しみの風を起こす。
「どうしてなんだ、こういった異世界ものだとカクカクシカジカで話が通るのがお約束じゃないか!絶望した絶望したよ異世界!!話が通じるのならば説明省略が使えてもいいじゃないか!」
可哀想な人を見る目で勇者(笑)を見る弔い手達。そこで神官が
「そこの(主に頭が)哀れな若者は置いといて、我等は聖徒王国より来た者で其処にいる哀れな若者が買い込みすぎた飲食物を死霊達に振舞って慰撫したいということで参ったのですよ。」
「なるほどお話はわかりました。其処の哀れな(存在が)若者の心持は敬意に値する者です。そういったことであれば我等弔い手一同も協力しましょう。」
「ご助力感謝いたします。優しき眠りを守る黒衣の神の使徒達に。」
古き言い回しで神官は謝辞を述べ、弔い手達は頭を垂れる。
そして、哀れなと称された勇者(笑)は項垂れているのであった。
「おにーちゃんおにーちゃん、おにーちゃんはりっぱだから。」
「そうだよ!」
「神様の心を動かすなんて聖女様だって出来ないじゃない。」
いえ、出来てます。但し文芸神と芸術神(腐属性)だけど。死霊っ子達に励まされて復活しようとしている所で一言。
「何時まで寝ているんですか?邪魔なんで起きてください。」
神官の冷たい仕打ちに復活までに時間が更に掛かるのであった。
暫し時がたって崩れ落ちている勇者(笑)には気にもせずに神官は巡礼達にに指示を出して飲食の準備をする。弔い手達は湯を沸かし茶を煎れる。
敷物の上には菓子だの麺麭だのが並び良い匂いをさせている。
勇者(笑)はいじけていたのから立ち直り、ゆるりと菓子を一つ取り木々の影に向かう。
其処にいたのは痩せこけた男性の死霊。
「一つどうだい?」
菓子を差し出す勇者(笑)に
「ええだが?おらがもらても?」
と訛りの強い口調で受け取る。そして受け取った菓子を傍らにいる娘に半分割って与え残り半分を息子に渡す。それを食べている姿を妻らしき女性と満足そうに見ている。
「おっさん、自分が食べないと駄目だろう。」
「生きてるお方、おら達はガキ共にくわせらんねぇことがつらいんで・・・・・・・本当 ありがてぇこって、ガキ共に食わせることが出来て。」
「あっちにまだあるから皆で食べるがいいさ。」
勇者(笑)は死霊の家族に食べ物が用意されている場所を指し示す。一家は勇者(笑)に頭を下げながら向かうのである。
それを見届けた勇者(笑)は
「死霊共!食いもん持ってきたぞ!」
蛮声を張り上げる。その声を聞いた死霊共は世界の片隅から滲み出るように現れ食べ物に群がる。
あああああああ・・・・・・・・・だの
おおおおおおお・・・・・・・・だのとわけのわからぬ唸りを上げながら食べ物に群がる死霊共。
十を越え、百にも届き、千に近き死霊の群れは食べ物を食べ、巡礼達から飲み物を供され、弔い手達に諭されて不幸に苛まれて失っていた己を取り戻す。
嗚呼、一口の麺麭で満ちるとはなんとも慎ましき者達であろうか、死霊っ子達は形を崩しかけている死霊の手を引いて食べ物の元へと導く。
形の崩れかけた死霊は一口の酒を含むと喜悦の涙を流す。形をやや取り戻し其処にあったのは傷だらけの古強者といった風情の戦士であった。
「礼を言うぞ小さいの。」
傷だらけの顔に笑みを浮かべて礼を言う戦士の死霊。
「おじちゃん、礼ならばあっちのおにーちゃんに言って。おにーちゃんが食べ物用意してくれたんだから。」
「あの生きている若者には後ほど礼を言おう。だが、小さいのお前等が導いてくれなければ我は未だにあそこでいたはずだ。あそこに我の配下が居た筈だが彼等にも振舞ってくれぬか?」
「在るだけしかないから早くつれてこないと!」
ふゆふゆと浮いていた死霊っ子はびゅんと駆け出すが如く飛び出し死霊戦士のいた辺りを探し回る。
巡礼達も死霊の群れに驚いていたが、勇者(笑)や神官が菓子を振舞っているのをみて一人の子供がおずおずと菓子を渡す。
「ありがとよ。」
菓子を渡されてニカッといい笑顔をする死霊。半分骨が見えている顔でそれをやられると怖いだけである。子供は顔を引きつらせて後ずさる。
「おいおい、こんな人のよさそうな俺を見てびくつくなんてどんだけ臆病なんだい!」
苦笑いする死霊。
「おじちゃん骨が見えているし怖いよ!」
「そりゃそうか、でも怖いといいながらも俺に菓子を呉れるなんて坊主お前は優しいな。」
死霊のおっちゃんは骨が見えかけている手で子供の頭を撫でる。骨ばったくてごつごつしているが妙に優しい温かみがある感触だった。
子供は微妙に引きつりながらも振り払おうとしなかった。
「嗚呼、この一杯のために生きているって感じだよなぁ・・・・・」
「お前さんは死んでいるだろうに。」
「ちげぇねぇ・・・・」
「「わははははははははっ!!」」
弔い手とか巡礼の男衆と杯を交わしている死霊達。つまみには色々と食べ物が・・・・・・・・
尤も彼らには酒があって酌み交わす友がいる、それだけで十分なのだろう。
「しっかしうめぇなぁ・・・・・こんな酒は初めてだ。」
「そっか、これは普通だが。」
「俺がいた時代は葡萄酒の酸っぱいのとかしかなかったぞ。時代と共に工夫がされるもんだな。ほんとうめぇ。」
「時と共に変わり行く酒に乾杯といった所か。」
「わるくないな。この酒と出会うために俺は此処で彷徨っていたのか、出会えた酒に乾杯!」
「おおっ!乾杯だ!」
かちん
杯がぶつかる軽い音の次は馬鹿話に興ずる男達の姿があった。
酒とは偉大だ。飲めない者は人生の半分を損しているぞ。
ちがうねー、よき酒と出会い、よき朋と飲むのが人生の目的ねー(by酒精神)
「いやぁ、本当に生き返るようだ。」
「だから、おめぇ。死んだままだって。」
「ちげぇねぇ!わははははははははっ!!」
酔っ払いはほっておこう。
酒もあり食べ物もありで宴状態となれば、羽目をはずす者が出てくる。
「ねぇ、此処数百年ばかりいい男がいなくてさみしいんだよ。若いの私と・・・・・・・・・げふっ!」
巡礼の若者に粉かけようとした女性の死霊は彼の恋人から手痛い一撃を喰らったり。
「ぐへへへへへっ!生きてる女若い女!!しりちちふとももーーーーーーー!!」
「きゃー!」
「教育的指導ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「ぐへぇ!」
酒に酔ったのか女性に襲い掛かる死霊は勇者(笑)の教育的指導を受けてずたぼろにされるのである。
「お菓子の神官様怖かったです。」
勇者(笑)にしがみ付く若い娘、ささやかな膨らみが彼の腕に当たる。
勇者(笑)も多少顔が赤いし照れているのだろう。若いっていいなと周りも微笑ましく見ている。
「うわぁ、微笑ましいですねぇ・・・・」
「あついあつい。」
「いいなぁ、私も生きている間にこんな彼氏欲しかったよ。」
菓子を食べている間になんか打ち解けている巡礼と死霊達の女性達。若い二人のあれこれは彼女達にとって格好の話のねたなのであろう。
でれでれしている勇者(笑)に死霊っ子の少女は
「おにーちゃん、だらしない!」
とプンスカしていたのは可愛らしい嫉妬なのだろう。
そんな年嵩の死霊っ子の様子にも
「二股修羅場?」
「あのお菓子の神官様も大人しいなりして意外とやりますな。」
「これはこれは微笑ましい取り合いですこと。」
と更なる燃料を与える結果でしかなかった。そのやり取りに気がついた娘はあわてて離れて、耳の先まで真っ赤にして卒倒するのである。
死者との宴はその後も続いているのだが、巡礼の子供達は死霊達に馴染み色々な話をねだっている。
昔々の戦の話とか物語、神々にあったという貴族の自慢話・・・・・・・・・・
そんななか、巡礼の子供の一人がこんな質問をする。
「ねぇ、どうして死んだときの姿でいるの?見てて痛そうだし。其処の死霊っ子達なんか毎日違う服着ているから姿形を自由に出来るのかと思っていたんだけど?」
「えっ!」
死霊達が凍りついた。そんなことを考えた事がなかった死霊共は答えに詰まるのであった。
「そういえば出来るのか?」
「考えた事もなかった。」
「死んだときの痛みに囚われていたからなぁ・・・・・・」
「たしかに・・・・・・・・・・」
「出来るのか?」「やってみるか!」
死霊達は死霊っ子に如何やってやっているのかを聞くと
「深く考えないで僕はこうなのと思うと出来るよ。【幻影】のまほうだって言ったけど、まほうなのかな?」
死霊っ子の答えになっていない答えでも試しにやってみるかと傷ついていない姿綺麗な格好・・・・・・・・・・と念じてみると、傷だらけの戦士は傷のない鎧をまとった偉丈夫になっているし、痩せこけて薄汚れた娘は綺麗な衣装をまとった娘になる。若者も小奇麗な格好をして傍らの娘の肩を抱く。
其々に変化して生きているとかわらぬ姿をしている。其処にあるのは痛みになく死霊ではなく、一人立つことができる人々の姿である。
「粉屋の!おまえ少し身長高くしてないか?」
「いいじゃないか!俺だってチビだチビだといわれていたんが悔しかったんだ。如何だお前より背が高いぞ!」
「婆さんや少し若作りしすぎでないか?孫娘より若い姿というのは・・・・・・・・・ぐえっ!」
「お爺さん、女心がわからないなんて・・・・・・・女という者は何時までも若く美しくありたいものなんですよ。」
「それでも、17の頃の姿なんて78で・・・・・・・・・げふっ!」
「嫁よ、なんていうか・・・・・・・・・・・・・少し胸の膨らみが・・・・・・・・」
「なぁに?あ・な・た・・・・・・・・・・・」
「いや、可愛くて豊満な嫁さん貰って俺は幸せです。」
「よろしい。」
まぁ、誇張だの色々あるけどそのくらいは仕方ないよね。
うん、通常の範囲だし、幸せそうならばそれでいいか。
「なぁ、いくらなんでも男のお前が美少女というのは・・・・・・・・・・」
「おおっ!これが胸か・・・・・・・・・・・・ほれほれ、乳の麺麭より柔らかだぞ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・(見なかったことによう」
さすがに性転換はやりすぎだと・・・・・・・・・・・思うのですが。
突っ込みはいれたくないな。入れるつもりはないけど。
あたまいてぇ。
(地の文は薬を取りに行くために話を中断します。)
連休何それおいしいの?
さて、酒を飲もう。今日は鮭の白子をムニエルだ。
そして悩んだのがこの話の題材「しりちちふともも」とするべきかどうかだったのは気にしてはいけない。




