乳の麺麭
チーズ入りの麺麭
聖徒王国西部衛星国家群でよく食べられる軽食の一種。
愛称としては【乳の麺麭】これは乳製品で作られている事と小ぶりな形がその地方の女性の乳を連想させるからとも言う。これが南西部衛星国家群だとうちのカカアの乳はでかいぞとばかりに大振りなものとなる。
戦が在り食糧の輸入が滞り穀類が不足した折に
「粉がないならチーズを食べればいいじゃない。」
と粉の増量剤としてチーズを使ったのは始まりとされている。
そのモチモチとした食感は好みが別れるが現地ではおやつ代わりに食べられるほか、主食として少々粘性の高いシチューと合わせて食されることが多い。
雑穀粉一に対して、生チーズ三を加え、それを適度な硬さまで乳で伸ばす。
チーズの塩分により塩を加えるが基本加えなくても良い。
これを適度な大きさに丸め、くっつき防止の為に粉をまぶす。
麺麭焼窯はあらかじめ熱しておき、貴方の旦那が一発抜く程度の時間焼く。
といったら入れてすぐになるので、隣の旦那が一発抜く程度(20分)焼く。
焼きあがった者はそのまま食べても美味しいのだが荒熱を取っても美味である。
食堂の女給仕を正気づかせるのに時間が掛かる。
野次馬が来る、警邏が続々投入される。冥界神殿から弔い手が派遣されるし、巡礼から聖騎士が登場して沈静化する。
ただ、勇者(笑)としては街を歩いて適当に店に入っただけなのにどうしてこんな大騒ぎになるのだろうと思う。
異世界とは懐が狭いなとも思ったりしているのだが・・・・・・・・・・・・・
「えっと、勇者(笑)殿聞いているのかね?普通死霊は街をうろついたりしないし見たことがないものが殆どだろう。君は少し常識というものを覚えるべきだろう。いくら回りにいたのが聖女だの灰汁の強い貴族達だのと言った面々ばかりだとは言え一般市民は無力なんだからおびえさせることは止めるように。」
「この子達は無害なのになぁ・・・・・それに巡礼とか隊商の皆さんは普通に応対したじゃないの・・・・・・・・」
「それは前評判があったのと、最初から普通に出ていたから誰も突っ込めなかったんだ。中途半端に隠隠して出すな!悪戯心は否定できないだろう!」
「ハイ、それは否定しませんスイマセンでした。」
聖騎士に叱られる勇者(笑)。死霊っ子達も
「ごめんなさい。」「おどかしてしまったことはんせいしてます。」
等等と女給仕に謝罪する。
給仕に店主も人族の守護者である聖騎士の仲立ちを得て、当の若い神官からも謝罪を受けたのを受けて矛を収める。そもそも、神官(笑)も害しようと意図していないのは明白なのでこれ以上の追求は出来ない。なにせ相手は神官様だから!
これ以上ごねても・・・・・・・・・・有形無形のあれこれが・・・・・・・・神官様は権力者だから・・・・・
勇者(笑)自体にはその意図はなくとも不信心者の烙印を押されたら面倒である。
仕方なく泣き寝入りを・・・・・・・・って、麺麭を買い込んでいる勇者(笑)に揉み手を押さえきれない女給仕。
その中の一つを齧って、独特のモチモチ感と雑穀の風味を楽しんでいる勇者(笑)。両の手に麺麭を持ってぱくついている死霊っ子達。
あまりの非日常的な光景に笑うしかないのであった。
「おにーちゃん、流石に食べきれないけどどうするの?」
「捨てるのは勿体無いよね。」
「まぁ、直ぐに腐るものではないしな。皆に分ければいいだろう。」
「だったら、【眠りの園】でお腹すいて眠れない人たちに差し入れするのはどう?」
「それもそうだな。」
死霊っ子達は自分達も飢えた経験があるから飢えた者を身捨てることへの嫌悪感があるようだ。
勇者(笑)も数日逗留するこの町でやることもないからと死霊っ子の言を受け入れて明日の行動を決定する。テレビもネットもないこの世界、どうせ願うならネットの閲覧が出来るようにしてもらえばよかったかななんて少々後悔している勇者(笑)であるが明日も町をぶらついて細々とした物を買うとかしかすることはないのだし・・・・・・・・・・・・
名所とか言っても市場とか神殿とかだから何処に行っても一緒だろうと思い込んでいる。その辺は画一的な建物ばかりを見て全国展開のスーパーだのコンビニで何処行ってもも代わり映えのしない生活をしていた影響だろう。
市場に行って土地土地の美味だの変な掘り出し物を探したり、建物ごとの差異を探したりなんていうのはあまり縁がないのだろうな。その辺の楽しみ方に目覚めるにはあと20年ばかり必要かどうか。
一杯の麺麭を持って宿への帰途につくのであった。
宿の夕食
【乳の麺麭】【雑穀の麺麭】
【蕪のシチュー】
【チーズ入りのオムレツ】
【干した蕪の葉っぱの炒め物】
なんていうか、普通に現地の名産だのを利用したものであった。
「ちょっとチーズの麺麭飽きた。」
死霊っ子のぼやきはとりあえず無視。
美味しいからと10個も平らげれば飽きもするだろう。
さて短いですけどこれまで。明石ウィスキー(ホワイトオーク・レット)で一杯寝酒引っ掛けて。




