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巡礼途中に金が湧く

休憩所


主な街道において一定間隔で置かれている広場。付近の村落の広場も兼ねている場合もあるが基本的には集落から少しはなれたところにあることが多い。煮炊きできる炉や井戸等の水場が用意されている所が多く、その運営には現地の民が労役代わりに行っている(正確にはその土地の領主などが運営を任されている)。

この場において隊商等が商売をすることもあり、旅人と地元民の交易の場でもあったりする。(実際に定期的に休憩所で市を立てる場所もある。)


この休憩所で旅人相手に商売をする者もいて、宿場町として栄えた所もある。

馬車の中というのはガタゴトガタゴトと尻に響くものである。座布団を敷いているのだが年中馬車の運行をしている御者に痔が多いのも頷ける。


勇者(笑)は大型馬車を一つ占有して死霊っ子達と小僧っ子を供に窓からの景色を眺めている。

「ところでにーちゃん、どうしておいらまで連れて行くんだい?」

「子爵様曰く『先々で【異世界の菓子】を望まれるだろうから手元がいた方が良いだろう。』とのことだ。まぁ、誰も手助けがない中で大量の菓子を作るなんて面倒なことをしたくないぞ。」

「なんかにーちゃん勇者というより菓子職人だな。」

「これが終わったら菓子屋でも開くか。」

「だったらおいらも雇ってよ。年金貨4枚でいいから。」

「たけーよ。」

「ちぇ!」


ちなみに人族連合有数の戦士であり最も敬意を表される騎士である聖騎士の年収は金貨6枚(役料経費別)。勇者(笑)は聖騎士の年収を知らないが小僧っ子は大きく出ていることだけはわかって突っ込みを入れている。安月給な聖騎士、魔王領に鞍替えすれば倍はもらえるのに狭間の国でも倍以上はもらえるのになんと哀れな聖騎士。清貧の思想で誤魔化されてはいけないぞ!


「ううっ!ほっとけ!」


どこかで聖騎士が突っ込みを入れた気がするけど気にしてはいけない。

話を戻そう。



馬車はガタゴトと眠たげな音を立てながら進んでいる。他の馬車には聖騎士をはじめとする神殿側の使節や聖徒王国側の使者が乗った馬車も複数ある。それを護衛するのが聖徒王国国軍、これは別の国に着いたらその国の軍若しくは護衛団が就く手はずになっている。軍を他国に持っていくのは礼儀に反するというよりも喧嘩売っていると思われても仕方ないからである。一応は使節の随行武官という名目で少数の護衛を用意しているのだがそれは軍に含めない。殆どが秘書というか侍従みたいなものであるし。

便乗しているのか隊商やら巡礼者の乗った馬車も続いている。

貴族様相手に商売したり人脈(コネ)を作ったり、巡礼あたりだと徳の高い(とされている)神官様が同道しているから有難い話が聞けたりご利益があるかなと少々おこぼれ狙いな部分もあるが追い返すほどでもない。

巡礼等に紛れてしまえば異世界人(勇者)がいると言う事が誤魔化せるし、数がいるので盗賊除けにもなる。

巡礼等を含めて総勢100を超える人が移動する様は中々壮観である。




町と町の中間地点、休息のための広場にて小休止する一行。

馬に水をやり体を拭いてやったり飼葉を与えたり、人の側も馬車の中で強張った体をほぐしつつそれぞれの行動をする。


休息時において巡礼等から貴族や神職達の世話をして小銭を稼ぐ者もいるし、勇者(笑)が振舞う菓子に目を輝かせる子供もいる。巡礼達からは異世界から連れてこられた菓子職人で菓子の美味さから神々から神官位を授けられたと思われている。

実際に打ち捨てられた死霊に同情して菓子を振る舞い彼らの心を慰撫した話や死霊となってしまった母親が子供を案じて菓子をねだる話など巡礼達の涙腺を緩めるには十分であり勇者(笑)に浄財がうす高く積まれそうになるのだが勇者(笑)はそれを受け取らない。


「菓子の神官様、なぜにおらが差し出したるを拒まれるので?」

「巡礼の親父さん、俺はあんたらの金を受け取るほど上等なもんじゃねぇよ。それに巡礼中は何かと物入りだろう、金は大事にしないと。」

「そんな事言わずにさ神官様、受け取って祝福をくださいよ。」

「おばさんも勘弁してくださいよ。祝福の与え方なんて知らないし・・・・・・」

「神官様これ上げる。」


大人たちが我先に寄付している中で子供が差し出したのは銅貨一枚。流石の勇者(笑)も苦笑い。

子供の頭を撫でながら。


「お金は大事に使いな。銅貨一枚だって君の大事なお小遣いだろう?ただで人にくれるもんじゃねぇよ。」

「うーん、でもおにーちゃん御菓子くれたじゃん。お菓子のお礼!ただじゃないもん!それにただで物をもらうのはいけないとおかーさんにいわれたもん!」


美味いこと切り返す子供、さすがにそこで強く出れない勇者(笑)。単純に子供に弱いというだけである。親御さんの躾もしっかりしている。


「うんうん、わかった。お菓子の代金だな。でも、あれは普通に皆に配ったものだから代金は要らないぞ。」

「じゃぁ、これからもらう菓子の代金。」

「意地っ張りだな。」


勇者(笑)は子供から銅貨を受け取ると菓子を取り出し子供に渡す。

「ほら、お菓子だ。俺の菓子で無駄遣いするんじゃないぞ。」

「うん、おにーちゃんありがとう!」


子供は菓子を受け取ると親の元に向かっていった。銅貨を懐にしまうと周りの大人たちがまだいた。


「神官様!おらも菓子の代金ということで。」

「あたしも菓子もらったしね。」

「黄金色の菓子の代金としては不十分かもしれませんが・・・・・・・・・・」


寄付にかかる巡礼達、なんか隊商達も集まっているけどどうしたものか。


「おにーちゃんもてもてだね。」

「おかねがっぽがっぽ!後の旅がうはうはだね。」

「くみとってあげようよ。」


死霊っ子達も周りの大人達の真摯な様子に助け舟を出す。そもそも神官が金を受け取ってよいものかどうか悩んでいる勇者(笑)、彼の困惑した様子に気がついた神殿連合側の神官は


「勇者(笑)殿彼等の想いを汲み取って受け取りなさい。その金を大事に使えば彼等の功徳にもなるでしょう。」

と助け舟を出す。


「あんまり物入りな旅の人から貰うのは気が引けるのだけど。後、祝福とかの仕方がわからん。」

「確かにこの世界に着てからそういうことを習っていないから仕方ないといえば仕方ないですが・・・・・・・・・・・一応は神職だからそういうことも覚えておかないと。今回は私が手助けしますから。」

「助かります。」


神官の仲裁で話がまとまったと知った巡礼達は群がって金を差し出す。そこで勇者(笑)は彼ら一人から銅貨一枚しか受け取ろうとしない。山盛りの銅貨や銀貨、中には金貨を出すものがいる中でそこだけは頑として譲らない。


「そこそこ、金貨なんて払いすぎだ!そっちも銀貨払うほど俺は偉くない!」

「お菓子の神官様どうして銅貨一枚だけしか取らないので?」

「金を払えば功徳が得られるってもんじゃないだろう、そういう差をつけたくないの。」

「金を持っているものが払うのは美徳であり義務でもありますぞ。別に差をつけてほしくて寄付しているわけでもないし、受け取ってもらえませんかねぇ・・・・」

「旅の間は物入りだろう、払いたかったら俺じゃなくて各地の神殿や孤児院にでも払えよ。」


頑として銅貨一枚以上は受け取ろうとしないのであるのだが、そこに屁理屈というかこねるものがいるわけで。

「一人銅貨一枚というならば皆の分を出すのもありだろう。」


「では、わが一族の者達の分として銀貨2枚を寄付します。」

「こっちは自分の隊商に所属する者達すべての分で銀貨1枚を。」

「家族の分も含めて銅貨8枚。」

「ならば、わしはこの機会に遭うことのない縁続きのもの達のために金貨一枚。」


一人が言い出すと我先にと金額が上がりだす。

「勇者(笑)殿、そこまで言われては諦めた方が楽ですよ。」

神官にも窘められて受け取る羽目になる。


「お前ら、ちゃんと旅の資金残しているだろうな!そこだけは流石に譲れないぞ!」

と凄んでも


「だいじょうぶでさぁ。」「次の町で交易すれば直ぐに取り返せますよ。」

「酒の一杯我慢すれば。」「お前さん酒は巡礼中飲まないと誓い立てていなかったけ?」

「物の例えだよ、例え!実際飲んでいないだろう。」「どうだか?」


まぁ、大丈夫そうだ。ちなみに禁酒の誓いを立てていたおっさん(酒精神の信徒)は次の町で酒を飲んでいるのが奥さんにばれて折檻されるのだが関係ない話である。


死霊っ子達はフユフユと漂いながら鉢を持って回り、その中には硬貨が貯まっていく。ちなみに気を利かせたのか衣装を神の使い風とか神職風に変えている。【幻影】の術の便利なこと便利なこと。

神官は参列した衆に祝福を与え、見様見真似で勇者(笑)も祝福を与えている。

さらには勇者(笑)は菓子を取り出すと参列の衆に振舞う。流石にただで金を貰うのは気が引けるようだ。もちろん旅の間で菓子を作る暇もなければ材料もないので勇者パワーの力(意味不明)で菓子を創造するのである。


「おおっ!奇跡が!」

「なんと見事な菓子が・・・・・・・・・」

「とーちゃん、お菓子の家がある!たべていいのかな?」

「こらっ、それはお菓子の神官様の奇跡だから俺達如きが手を出して「食べていいよ。」

・・・・・・・」

「いいの?」


遠慮する参列者に目を輝かせる子供、勇者(笑)は遠慮なく食べるように言うと異世界の神官様の奇跡(笑)の恩恵に与るべく群がるのである。


その光景に聖都に向かう他の巡礼団やら隊商達からも寄付やらが集まるのは笑い話。

この集まった浄財は躊躇う事無く全て孤児院やらの運営にと諸所の神殿に寄付したのは勇者(笑)の人徳か?


「これ、どうするよ。」

「おにーちゃんあてに貰ったものだから旅のお小遣い。」「僕達にも分け前分け前。」

「にーちゃんおいら菓子作るからそれをにーちゃんが【功徳ある菓子】として振舞えば金貨くらい直ぐ・・・・・・・・いたっ!」


「うん、これはお前らの教育上悪いから全部寄付しよう!」

「「「「えっー!」」」」


「えー、じゃない!えー、じゃ!こんな金に慣れたらまっとうな道に戻れなくなる。これは困っている人たちを助けるために一時的に預かっている金。俺達の金じゃない!」



「ぶーぶー!」

「えー!」


ただ、単に大金を持って怖がっているだけのようだ。そんなんじゃ、宗教家になれないぞ!


「うるさい!」

勇者(笑)地の文に突っ込みを入れるのは(略


「地の文さん、私達神官が金に汚いような言い方をするのは・・・・・・・・・」

神官も地の文に(略)!

実際汚いだろうが!

さてと、秋刀魚の刺身で一杯といきますかね。

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