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聖女様だってヤル時はヤル

【眠りの園】と【弔い人】



【眠りの園】

墓地と言うよりも死体の投げ捨て場。別名【投げ込み】・【死体捨て場】・【弔い人の作業場】等など。遺族は幾許彼の金を弔い人達に渡して遺体の処置を頼む。大概は火葬か土葬。水葬は水源が汚染されたり、流れ着いた死体がいい感じに不快感を醸し出すので殆どの場所で禁止されている。

獣葬、鳥葬等の食べさせる弔い方もあるが、ごくごく一部の地域の事である。

墓標の類は場所が限られているために基本的にない。板切れに名前を記した物を使われることもあるが、朽ちたらそのまま新たに建てられることはない。死者を悼むときは弔われた場所ではなく【眠りの園】を対して行うか、遺髪・遺品を持って悼む事が多く昨今では後者のほうが主流となっている。


弔い人達はその地域地域に適応した弔い方に精通しており死体原因の疫痢は災害後か戦争後でもない限り殆ど起こらない。また、信奉する冥界神から齎される神術も【弔いの火】【大地の揺り籠】【死化粧】等葬送に関連したものや【御魂送り】【魂降ろし】等の死者と生者を繋ぐ者が多い。

また、職務行為の重要性から人族連合内において、徴兵拒否や不敬罪等での不逮捕特権等の特権が認められているが一般的には死体と関わる汚い連中と認識されている。


聖徒王国神学校神学教本【冥界神とその教団】の章より抜粋。

「聖女様、【勇者ならぬ者】様が王都近郊の【投げ込み】で飢えに苛まれる死霊達百あまりを開放し冥界に送りました。」


罰としての聖典の写本中聖女は報告を受けた。因みに普通の写本である、一度BL風味に味付けした聖典を綴っていたら神殿協会議長の目に留まって雷が落とされた。

だからどうしてそっちに持っていくのだろうかと普通破門されても文句言えないのに・・・・・・・・・

聖女だからか、表に出したくないだけなのか?


あら、其れでしたら私達のお墨付きがあるからよ。(by文芸神)

そうそう、【荒野の神×風の神本】狭間に居る文芸神の女紡ぎ手の本はまさしく芸術でしたわ。(by芸術神)


知りたくもなかった解説有難う御座います。

他の神々が青筋立てて苦い顔しているのが目に浮かぶようです。


聖女は報告を聞くと報告の神職(聖徒王国地方担当地方神の徒)に

「【投げ込み】等と死したる者と【弔い人】達を侮蔑する表現はおやめなさい。で、どのようにあのヘタレ受けは死者達を安堵せしめたのかしら?」

「はっ、侮蔑の表現につきましては失礼致しました。【勇者ならぬ者】様は持ち込んだ菓子を無造作に振舞い飢えを満たしたそうで・・・・・・・・・その時にも行き倒れと思しき死者の願いを聞き、生き残りの保護も行われたようで多少の騒動はありましたが、王都の貧窮院や孤児院に数名が養生しております。その時の菓子の手順書(レシピ)は彼自らの手で公表されておりますが極々普通の菓子であって何故と神官達は頭をひねっております。」


酷い表現で質問をする聖女を流し答えを紡ぐ神職。実際彼も、この目にしているわけではないのだから眉唾物と思っているのだが【療養神殿】【冥界神殿】から神々直々の神託と言う形で報告されているから疑うわけには行かない。でも、菓子一つで救われる魂があるというならば一応(此処重要)聖職者としては見逃すことが出来ない。実際に迷える者を導いたとなれば名声が上がって寄進の浄財も・・・・・・

職業教団である【療養神殿】や【冥界神殿】はそれなりに寄進がなくても収入があるのにこっちときたら寄進頼りで・・・・・・・・・・自身で行動して実績を挙げて神々への信仰と寄進を得ておかないと・・・・・・・・BL本も買えやしない。

世知難い事である。


聖女は書き上げた聖典を側仕えの者に命じて片付けさせ、本当にできる物なのか如何か試すことにする。


聖女が居る部屋の外では

「ねぇ、老女。私の何処が受け臭いのか教えてくれる?」

「あっ!そんな!わたくしの口からは・・・・・・・・・・ああっ!」

「ほらほら、まだまだ答えは聞いていないよ・・・・・・・・・・」


老女と副宰相の睦言が聞こえているし・・・・・・・・・

お前等ここは仮にも神聖なる場所だろうが。


窓の外では・・・・・・・・・・・

「我が愛しの薔薇よ、またこのような本をいけない子だねぇ・・・・・・そんなにこれの通りに試してみたいのですか?」

「いえ、公爵様・・・・・・・・・・・あの、その・・・・・・・・・・・悶える様がキュンときまして・・・・・・・・・・つい・・・・・・・・・」

「では、この本をじっくりと朗読してもらうとしましょうか。もちろん受けの子の所はじっくり情感をこめてね。くっくっくっ・・・・・・・・・・」

「では、攻めの方は公爵様がじっくりと読んでいただけますか?」


第二公爵と第一公爵令嬢の寝室への語りが始まっている。

お前等ここは(略)



その光景を見ていた聖女(ぼっち)は深く溜息をつく。

「聖女様?」

側仕えの女性雑役は心配そうに声をかけるが返答はなかったのである。



それから暫し後、聖女(ぼっち)は厨房の片隅に居るのである。

竈には火が熾され、何時でも準備が万端となっている。


卵を割ろうとしてぐちゃぐちゃになっているし殻も入り込んでいる。粉をふるうけど残っただまが勿体無いと放り込むし・・・・・・・・・・・・・乳脂(ばたー)をとかそうと直火で・・・・・・・

見かねた厨房付きの料理人(厨房神殿からの派遣)は聖女(ぼっち)の手伝いをする事となるのである。


まずは手のこんだケーキを作ろうと思わずクッキーやビスケットの類を焼く事にすることはよいことである。

それは勇者(笑)が来たときにでも教わればよいだろう。其れよりも一番良いのは彼に作らせることである。


知っているかい?異世界ではクッキーもビスケットも同じものを指すらしいぞ。地方ごとに意味合いが違うから注意しよう。(by厨房神)


厨房神様の横槍が入ったけど気にせず話を進めます。

料理人の注釈や説明を受けながらおっかなびっくり作る聖女、まともに厨房に立つことがなかったから仕方ないことであるがそれなりの形になっているのである。

まぁ、不恰好だったり焦げ目が着いているのはご愛嬌だ。これはこれで・・・・・・・『初めて作った、たべてみて。』なんて言われて差し出された日には・・・・・・・・・・


地の文、地の文。自身の妄想が駄々漏れだぞ。(by厨房神)


失礼致しました。


まぁ、その気持ちは我も激しく同意するがな。我としてはもじもじしながら差し出されるのがつぼだが(by厨房神)


それらのクッキーだかよく判らない焼き菓子を前にして聖女が両の手を前に組み。祈りを捧げ、おもむろに


くるくると回りながら

「おいしくなぁれ、もえもえきゅん☆」


きらっ!

無駄に光を撒き散らしながら最後には親指と人差し指でハート型を作り其処から桃色の光が菓子に降り注ぐ・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(地の文絶句)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(料理人絶句)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(厨房神絶句)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(諸神共絶句)



なんか見てはいけないものを見てしまった気がする。(ぴー)才過ぎた女がやるのはとても痛い・・・・・・・・・世界が悲鳴を上げている。


「ちょ、ちょっと地の文!其れって酷いですわよ!」

失礼致しました(棒読み)、でも地の文に突っ込みいれるのはマナー違反ですよ。


「え、えっと・・・・・・・・・・・・・・せ、せいじょさま?そのじゅもんはなんでしょうか?」

あまりの状況に料理人質問するだけで精一杯である。


「これって、異界の呪文で料理が美味しくなるものだそうですわ。狭間の国の王妹殿下にお聞きしましたから・・・・・・・・・・・ついでに聖女の力も加えて置きましたので更に味が良くなりますわ。」


料理人は

「そ、そうですか・・・・・・・・・・・」

一言返すだけで精一杯であった。



この精神的打撃は労災降りるのだろうか?


そもそも地の文には労災などない。(by厨房神)

ですよねぇ・・・・・・・・・・

料理人に対して降りるかどうかも他人事ながら心配である。


焼き菓子を軽く冷まして包むと聖女は【眠りの園】へと歩みを進めるのであった。


残された料理人は思い切り疲れた表情で茶を入れるのである。






がたごとがたごと・・・・・・・・・・・

二頭の白馬に引かれた豪華な馬車が【眠りの園】へとむかう。

其処にいるのは日常の弔い人と冥界に向かう前の死霊達。因みに死霊達は盆踊りは踊ったりしない。


聖女の姿を認めたのか弔い人の頭は

「これはこれは聖女様、此度はどのようなご用件で?」

「先日勇者(笑)が飢えに苛む者達を解き放ったと聞きまして、真似をするようで恥ずかしいので御座いますが私もその一助になればと菓子を持参いたしました。」


其処には大量の菓子が・・・・・・・・・・・

其れを認めた弔い人の頭は

「これはこれは・・・・・・・・・・・・・・勇者(笑)殿でも行き渡らせる事が出来ませんでしたので、溢れた者達の助けとなりましょう。」


そうして、弔い人の頭は側にいた死霊に

「聖女様がお前達を哀れんでくださったものだ。有り難く頂戴しなさい。」

形の崩れかけた死霊は

「おおおおおおでにええのか?ぼんどうにええだが?」

と涙ながらに崩れかけてそれが本当に手なのかと思える部分で押し頂くように受け取り口に運ぶ。


ぶげらばっ!!!


形の崩れかけた死霊は口に含み咀嚼した瞬間、その身を砕け散らせた。

その光景を見て引く一同。


「あらあら、私の菓子の美味しさに思わず体が砕けるほどの衝撃を受けたのですわね。」


いやいや、違うから。これ本当に菓子かどうか聞いてみてくれよ?お前行けよ。いや、お前行けよ。じゃぁ、おれがいく。それなら俺が行く。どうぞどうぞ・・・・・・・・・・・等と周りがヒソヒソ話している。

そんな中本物の勇者(ばか)が居るのである。


「はははっ、彼はあまりの美味しさに感激して世界に還ってその喜びを満たそうとしたのでしょう。今代の麗しき聖女様、寄る辺なく彷徨える哀れな私に聖なる菓子をお恵み戴き恩寵に身を満たす光栄を下さいませんでしょうか?」


聖女の菓子を求めたのは薄い色合いの金髪が煌く光の雨となっている優男である。白いシャツが赤黒く染まっているのはあえて突っ込み入れないけど・・・・・・・・・・・・

優男の死霊は跪き聖女に菓子の下賜を求めるのである。


聖女も優男の丁寧な求めに気を取り直して

「貴方にも幸いの道を見出すことが出来ますよう。」

と菓子をさしだすのである。


「ああ、菓子なんて久方振りです。とても美味しそうな香りが・・・・・・・・・・」

金髪の優男は菓子を口に含み・・・・・・・・・・咀嚼して・・・・・・・・・・・・飲み込んだ。

死霊なので青白い顔を更に青くして・・・・・・・・・・・脂汗すら流している。

死霊が脂汗を流すなんてどうすれば出来るのだろうか?


「嗚呼、とても美味しゅう御座いました。」

優男は蒼白を通り越した顔色ながら笑顔を浮かべて聖女に礼を言う。

「満足していただけて嬉しゅう御座いますわ。宜しければもう一ついかがですか?まだ足りなければ後用意いたしますので。」


脂汗を流す優男(の死霊)。女性に優しくあれということを是とする彼はその誘いを断るわけに行かないのである。震える手を必死に宥めつつ・・・・・・・・


「あまりの美味の感激に手が震えて・・・・・・・・・・・」

等と言いながらもう一つ菓子をつまむのである。此処で不味いとか要らないとか言えばよいものを・・・・・・・・・・そこが彼をして勇者(ばか)と呼ばしめる所なのだろうが・・・・・・・・・・・


周りの死霊達はそっと群れから抜け出す者が出たり、後ずさったりしている。

あれ、くいものか?いや、神殿協会の新兵器だろう・・・・・・・・俺達駆除するついでのじっけん?

流石にそれは・・・・・・・・・・、怖いよぉ・・・・・・・、これ、なくんじゃありませんめをつけられたらどうするの!

死霊達五月蝿い。気持ちは判るけど、俺地の文でよかったとつくづく思うよ。


円形の場の中心には聖女と優男の死霊。

菓子を食べるなり優男は打ち崩れるように

「とても美味しゅう御座いました。私はこの余韻に浸っておりますので他の者にも喜びを与えてやってください。」

泣きながら、脂汗をたらしながら男は崩れ落ちる。

一言も不味いといわず吐かずに飲み下したのはある意味賞賛に値する。

でもこれって、死なば諸共で周りにも同じ目にあえと・・・・・・・・酷いな。


ひくっ、ひくっ!と死霊でもやばげな動きをしている優男を置いといて聖女は死霊達に菓子を進めるのである。


聖女が一歩足を出せば引き下がる死霊達。

「あら、遠慮なさらなくても・・・・・・・・・・」


小さな死霊なんか手近にいる大人の死霊にしがみ付いて泣きたくても泣き出せないけど恐怖を露にしている。

大人の死霊もこれまでかと覚悟を決めて・・・・・・・・・

弔い人達も自分達よりも階位が確然に上の聖女様の下され物があのような劇物だと知らず、そしてどうすればこの惨劇を収めることが出来るのか・・・・・・・・・


そこで一歩前に出たのは老爺の姿をした死霊。

「今代の聖女様の格別のご配慮、真に有り難くこの失った身に染み渡り生前に戻ったかのような感動を得ております。我はその優しさだけで満たされ遺してきたことなぞ些事と思い知らされました。嗚呼、聖女様の優しさを身に受けて我は旅立ち幸いを求める生を再び得られるよう精進したいと思っております。」


そう言って身を透けさせて冥界への旅路に向かうのである。

旅立つ者に祝福を与えるのは冥界神、死者の神として厳しく忌み嫌われながらも死者の幸いを願うのは彼なのである。嗚呼、偉大なる哉神の愛。


面前に届く冥界への道に老爺の死霊は

「神よ、この世界との別れに優しさに触れることが出来たことに感謝いたします。聖女様、御身の優しさはまこと世界の宝で御座いましょう、我等は御身のやさしさに触れる事が出来たことを誇りに旅立ちたいと思います。さらばだ!」

と悠然とした足取りで(内心で逃げ出したい気持ちを出さないよう気をつけながら)進むのである。

それに同調したのか

「嗚呼、道は開かれた。聖女様の菓子を味わえぬのは残念ですが、冥界神様が御身を削られて道を開いてくださった。死してから幸いを得られるとはまこと稀有な事。我等はこの感謝を噛み締めながら進むと致しましょう。行くぞ家族達。」

と壮年の男が家族と思わしき粗末な衣を纏った一団に旅立ちを促す。それについていく一団。

死霊達は口々に

「ありがとうございました。」「優しさだけで胸がいっぱいです。」「私は旅立っていきます。」

等等と口々に礼をのべながら進む(にげる)のである。


しばしと言うか長いときがあったというか、冥界への道が消えたとき。其処には生者達の姿とうずくまる金髪優男の死霊くらいしか残っていなかった。



優男は

「あいつ等逃げやがったな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ううっ。」

感涙咽ぶ振りをして呻き苦しんでいるのである。



ひゅるりらー



その日、【眠りの園】で無情を嘆いていた死霊はほぼ一掃されたのである。

嗚呼、彼らの魂に幸あれ。





追記:死霊を満足させる焼き菓子というので分析を依頼したら、しっかりと劇物指定されたのは笑い話である


さて、酒を飲もう。今日はいわしがいいかな。

そういえば昨日一日で4800アクセス・・・・・・・・・・何があったのだろうか?


何はともあれ御覧の皆様には有り難く思っております。

またご縁がありましたら読むなり絡むなりしてください。

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