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降灰の薊

中の凍らず


【極北連合】の中央南部に位置する不凍港、極北の産物の積み出し港の一つ。主な産物は慣鹿の毛皮や角、毛長牛の肉、毛皮等である。変わった処で近くに存在する氷河の流れにもまれて出てくる貴石類が以外と高評価を得ている。

氷河から貴石が出てくるので運が良ければすぐに見つかり、小さい子供が石蹴り遊びをしている石を見たら貴石の原石だったなんて言う笑い話も。

楽しみ方として大きい原石のままで飾ったりするのも当地での流儀であり装飾品とするのは好まれない。大きい原石にはいくつかの貴石がくっ付いているものもあり、そのままで輸出されて珍品として愛でられたりもする。



【極北地勢図】より

船乗達の間では【菓子作る神官】様の御座船となることがとても幸運だとなっている。

考えてもみよう冷たい海の上で温かい一椀の汁、そして薫り高く焼かれた塩蔵肉、粥であっても麺麭であっても出来たての暖かい物を饗じてくれる。そのどれもが美味で一口ごとに力となってくれるのである。

その話は彼の料理を知らない者達の間でも噂となり、釣り上げたばかりの海ザリガニの魚醤焼きの旨さと言ったら水平線の彼方にいる船にも匂いが届いてひもじい思いをしたとか、海に朽ちた船乗の死霊が一口口に含んだだけで歓喜に満ち溢れて自らが遭難した難所である岩礁に一人立ち永久の焔と化したとか・・・・・・

話が段々に大きくなり、彼と子供達の作る料理は海上においては王侯貴族でさえも食べる事が出来ないだろうと声を大にして褒め称えられる始末。

更には海上にて健やかなる体を作れと干し野菜や果物を多用し【船乗病(壊血病)】を予防する術を広めたりする。その知識だけでも一財産を築けるのに何故に広く分け与えるのかと聞かれると

「ああ、ちょっとした豆知識ですよ。でも、海上をさまよう死霊の皆さんの死因で結構あったんでね、取り敢えず防げることは防いでおこうかなと船乗の皆さんがつぶれたら俺も一蓮托生だし・・・・・・・・・・・」

と気軽に言う。

【極北内海】の船乗の間で彼の事を悪く言う者はいない・・・・・・・・・・


・・・・・いた。彼の作る匂いでひもじい思いをした他船の船乗達・・・・・・・・・・(笑)

彼の作る料理の美味なる匂いはある意味暴力的である、その匂いを嗅ぎながら更に空腹をまし自らの粗末な料理を惨めな気持ちで食べるのはどれだけ苦行なのだろうか?思わず海賊になってもいいかと船長に詰め寄って反乱寸前となった船もあったとか・・・・・・・・・


面白可笑しく騙られる(?)彼の料理に陸の者達は馬鹿な話をと笑うのだが、結構重要な話なのである。

海の交易で成り立っているこの港で船乗り達を敵に回したら即衰退する事は確実だろう。その原因がまずい飯だなんてなったら・・・・・・・・笑うに笑えない。まだ、航路が数日毎に港に寄るようになっているから不満も洒落で済んでいるのだろうが長期の航海となれば・・・・・・・・

船乗達の食糧事情を知っている船主(船の持ち主である商人)は表面上笑いながら、何しやがるこの神官様は等と毒気づいていたのは内緒にしておこう。

それでも状況判断に優れた船主は船ごとに料理人を雇い入れるか、【焼石くん】(調理熱源用魔道具)を用意して船内で調理当番を決めるようにするのである。

後の時代に舌の肥えた船乗達は美味い飯を用意してくれる雇い主を求めて船から船へと渡り歩いたりなんて言う冗談のような話が出てくるのだが彼等のあずかり知らぬことである。



「赤薊、3番船に出来たと合図してくれ。そっちはどうだい?」

「わかった。」

「後仕上げをするだけだよ、神官さん味見て?」

「うん、いいんじゃね?最後に生姜をすり入れて・・・・・・・」

「これで体がポカポカだね。」

「体を暖かくするのは大事だよ、海の上だと医者がいないからね体は大事に・・・・・・・・」

「だね♪」

「あんたら本当に船の上で温かい物作っているんだねぇ・・・・・・」

「食べるなら美味しいもんが良いじゃないか姐さん。」

「そりゃ、そうなんだけど・・・・・・・・」


姐さんは昔ながらの航海の事が当たり前だと身に染みついているせいなのか船内で調理をする勇者(笑)達の姿に戸惑いを隠せないでいる。それでもおいしい物の恩恵にはちゃんとあずかっているのだが。

【紅鮭港】を出航するとき麦酒売りの姐さんも酔っ払いに付き合いきれなくて勇者(笑)の乗る船に移っているのである。なんだかんだ言いながらも調理の手つきは慣れた物である、お蔭で勇者(笑)も多少は楽が出来るのだった。


「うーん、我ながら上出来。」

「海苔と卵の粥はいいねぇ・・・・・・」

「まだお代わりある?」「あと少しだけならば・・・・・・」

「うまうま・・・・・・・・」

「あー、もうたべてるー!」

「大丈夫だって、お前等の分も残してあるから。」


「うむ、これは美味美味。うちの船主様も調理人入れてくれるとありがたいのだが・・・・・・」

「ふむ、航海において不味い飯は我慢せねばならぬことだとばかり思っていたが。」

「所で貴族様?貴方様は別な船で旅をする予定だったのでは?」

「何を馬鹿なことを不味い飯よりもうまい飯がある方に乗り換えるのは当たり前じゃないか!」

「そうですわよ、ここの食事は美味しくてついつい食べ過ぎてしまいそうですわ。」

「そういう意味じゃなくて、貴方様自国船籍の船団使わなくてどうするのですか!」

「そんな縛りはあったかな?」

「いえ、旦那様慣習としてはありますけど守らねばならぬわけではないです。現に自国船籍の船でたどりつけない場合は他国船籍の船で移動されるお方もおられますし・・・・・・・・・・・」

「隣り航行しているでしょうが!俺等が客を取ったと恨まれちまう。」



何故か航海中の食事が上手いとうわさを聞きつけて某貴族様ご一行も同乗する事に・・・・・・・・・・

お蔭で客を取ったと恨まれる始末なのだが、取られた方も馬鹿ではなく飯がまずいからだと料理人を雇い入れて船内で温かい食事をと攻勢をかけるのである。数年後客を取られた船団は極北内海一飯が旨い船団として名を馳せるのだが別な話。どこに力を入れているのやらと突っ込みの声が聞かれたりするのだがその時の調理人が船内で簡単で美味しい料理の調理法をまとめて書籍にすることで更に名を挙げているのである。

数年後その話を聞いた勇者(笑)は

「旅客船団として色々面倒な身分の人を運ぶことに特化したとなれば・・・・・・・・・ありじゃない?需要は採算取れる程度にあるかどうかは知らないけど。」

等と言っていた。




数日後、【極北連合】の不凍港【中の凍らず】にて到着し数日の補給を兼ねた交易作業が始まる。

その間勇者(笑)にその他諸々は何事もなくゆるりと過ごす。一部の極北戦士達は姐さんの醸した麦酒の樽を売り払ったが為に埋め合わせの為に色々儲け口を探していたようだが・・・・・・・・・・・

【北岸諸侯連合地方】では基本麦酒の樽は醸造家か酒屋が貸し出している形になっているため、空の容器は返すのが一般的である。【極北】でも大抵は元の酒場若しくは醸造所に持ち込んで詰め替える形になっているために似たり寄ったりなのであるが、酒の代金の一部の樽の預かり賃が含まれて樽と共に預かり賃を返してもらう形となって居た為に樽は売り物だと勘違いしたようだ。


「あんたたち、あたしの商売道具を勝手に売り払ってどういうつもりだい!ちゃんときっちり返してもらうよ!」

「姐さん、樽50なんてすぐにそろう・・・・・・・・・・・それに売り払った金は・・・・・・・・」

「なんだって?」

「すいません【東の凍らず】に着きましたら樽の職人に作らせますんで・・・・・・・・・」


この件に関しては【極北戦士】を総べる長老衆は庇いきれんと樽の弁償だけを命じて我関せずである。

多少の保証人代わりにはなって居るのは良心と言うべきかどうかは知らないけど空き樽は元の店に返すのは当然だと思っていた常識が覆されて長老衆達も頭が痛いのである。



ここは頭痛が痛いというべきか?(by極北諸神群角笛を吹く英霊神)

・・・・・・・・それこそ頭が痛くなる酷い表現だ。(by極北諸神群砥石の盾を抱く英霊神)

殆どの所では村に一つとか街に一つしか醸造所がなかったというのもありますからね。(by極北諸神群薊の髪飾りをした女性神)


彼等の社会常識の欠如に手痛い教訓が加えられたという事で・・・・・・・・・・


その間にのんべんだらりとして過ごしている勇者(笑)は当地の孤児院の子供達を愛でつつ、死霊達を慰撫しつつ・・・・・・・・・・・・

聞き分けのない死霊を火攻めにして燻しつつ・・・・・・・・・・



燻しつつ?(by文芸神)


はい、文芸神さま合の手ありがとうございます。だけど地の文には(略)


合の手欲しがっていたくせに(by芸術神)


いらんことを言わないでください!

そうしてこうなったかと・・・・・・・・・・・・・

勇者(笑)と暇な子達は街の散策をして死霊の慰撫等も行ったりしている。正確には茶をしばきながら世間話をしているだけなのだが・・・・・・・・・・・・・・

死んだ実感がないとかちょいとこの世の見納めだとか・・・・・・・・・・・・本当に世間話である。全ての者が無念の死を迎えているわけではないのだから当たり前なのである。その実例を少し上げてみよう


「ううっ、俺はもう一度酒を飲みたかった。病気してから嫁さんに酒をやめろと止められて・・・・・・・・二十年、周りからは酒を飲むなんて認識をされないから酒の一つも差し入れてくれない・・・・・・・・・・」

死霊のおじさん、貴方は少し自重しなさい(死因:慢性肝炎の合併症)


「死因が馬の糞に足を滑らせて頭を打ったなんて言うのはどうしてだぁぁぁぁぁぁ!!」

「なんか俺も自分の死因を思い出したら人ごとじゃないんだよなぁ・・・・・」

「おまえさんもか・・・・・・・・・・・・」

「俺もこの世界に召喚されるときに元の世界では死亡していてさ、その時に腐った豆の中に突っ込んでしまって・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「うわぁ!それって最低だ・・・・・・・・・・おれだったら泣いてしまうぞ。」

死霊の若者(死因:脳挫傷)は勇者(笑)と互いに傷をなめあう。

勇者(笑)退場・・・・・・・・・


きゃー!男同士で舐め合うって!(by芸術神)

どっちがどこを舐めるの?きゃーきゃー!(by文芸神)


どっから湧いてくる!この記腐神(きふじん)


「孫の顔が見たかったんだけどねぇ・・・・・・」

「お孫さん生まれるところだったの?」

「うんにゃ、倅にゃ嫁どころか女の影もなかったんじゃよ・・・・・・・・・・・・・甲斐性見せて孫の一人や二人こさえてくれれば・・・・・・・・・・・」

「今から行ってせっついてくれば?」

「せっついてなんとかなるものであればねぇ・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

婆さん(死因:心臓麻痺)、死霊っ子に答えられない質問しない。

「これから少しせっついてみるかね。」

そう言って死霊の婆さんは街へと向かっていった。倅に向かってチクチク孫の顔見せろと言ってくる婆さんの死霊は子供のいない若者連中からは苦い顔をされて、年寄り連中からはウムウムとばかり納得されるのである。程無くして倅には女性が紹介されたのは別の話である。


「姐さん【寒鱈】から来たんだ、私もあっちの出でねぇ・・・・・・そう言えば、【やもめのジョナサン】はいまだ主人は独身なんかね?」

「そう言えば独り身だったねぇ・・・・・」

姐さんは同郷の者と世間話だ、遠く離れている場所で同郷の者と故郷の話をするというのはなかなか良いものである。もっともこれで異郷の者と話す機会が失われることもあるので多用は注意なのであるが、たまにならば望郷と郷愁を味わえる悪くない時間である。そうして壮年男性の死霊(死因:流行風邪)

「頼みがあるんだが・・・・・・・・・・・・故郷へ伝言を・・・・・・・・」

「ごめん、あたしも【白雪草の郷】へ行くから・・・・・・・・・・・・手紙託すのが精一杯。」

「それでも良いさ、では代筆をお願いできるか?恥ずかしながら文字を知らなくてね・・・・・・・・・・・・」

「それなら、赤薊!ちょっと、彼の手紙代文してくれる?」

「わかった!ちょっと待って書くもの持ってくる!」

姐さんも文字は苦手なようだ。



そんなこんなで【眠りの園】で死霊達と世間話をしていると姐さんに絡んでくる馬鹿がいるわけで

「よぉ、姐さんおれといっしょにしっぽりいかね?」

「はいはい、一昨日お出で。」

「そんなつれないこといわないでさ・・・・・・・・・」

「女の尻追いかけまわしてないで、とっとと冥界行ってな。」

基本麦酒売りで酔っ払い達の相手に慣れている姐さんが軽く流していると更に絡んでくる。

「どうせ、相手いないんでしょ。この俺が相手にしてあげるからさぁ・・・・・俺巧いよ。」

何がだ?


ナニです。(by文芸神)

其処の駄女神、茶々入れするな!


「はいはい。馬鹿言ってんじゃないの。自称でも酷いよ。」

「そうやってお高く止まっていると男に見向きもされなくてぶっかけられるのは【壺漬鰊】の漬け汁くらいじゃないのか?それとも・・・・・・・・・・・・」

馬鹿は更に下品な言葉をつづけた。

「どうせ男の味を知らないのは食わず嫌いなんだろ?それとも面は多少良いけど中身がお粗末で上げ底だったり中には毛がびっしりとか(節制神削除)が凍りついているとか・・・・・・それとも糞でもこびりついて・・・・・・・・・・・・・・ぐえっ!」

中々に色々出てくる下品な言葉に姐さんの堪忍袋の緒が切れたようだ、姐さんは馬鹿の胸元を掴んで殴りつける。馬鹿も一応は死霊なので非実体化すれば逃げられるのにそれを無視されて一撃をくらう。


「・・・・・・・・・・・・・・・な、なにしやがる!このくそあまぁ!」

「おやおや、かよわい女性の一撃で切れるとはダメダメなアマちゃんだねぇ・・・・・お姉さんが優しくお仕置きしちゃうよ。」


ぶんっ!どすっ!げすっ!


なんか肉を叩く音が湿った音になっているのは気のせいだろうか?そもそも死霊が生者に叩きのめされている光景のほうが非常識というか・・・・・・・・・・・・・・

「ねぇ、こんな可愛い乙女に対してなんて口をきくんかな?かな?」

「何がおと・・・・・・・・・・・・・・・年増・・・・・・・・・・・・ぎゃー!」

馬鹿は自分の死刑執行状に署名してしまったようだ。


そうして馬鹿は吊るされて、下から生木で燻されているのである。煙が立ち込め灰が降る。

この光景に他の死霊達はドン引きし、孤児っ子達は回れ右をして【弔い手】達に助けを求め、死霊っ子達はあまりに凄惨な光景に【幻影術(みせられないよ)】をかけて見たくない物にふたをする。


あの馬鹿の言ったことは確かに酷いがここまでされる必要があるのだろうか?(by冥界の案内人)

女性を怒らせてはダメっていう良い教訓ね。(by冥界の女門衛)

・・・・・・・・・これは惨い・・・・・・・・・・・(by極北諸神群砥石の盾を持つ英霊神)


そして【弔い手】達が姐さんを宥めるまで馬鹿は吊るされたまま燻されているのである。

【眠りの園】に灰は降る、女性に舐めた口聞くと慰撫するその手で燻される・・・・・・・・・・・




「馬鹿には良い薬だわ!」

「いやいやいやいや、色々やりすぎだから・・・・・・・・・」

「大丈夫、馬鹿な事を言わなければ良いだけの事なんだから。簡単でしょう・・・・・・・・・・」

「御説御尤もで・・・・・・・・・・・・・・」

この一見に関して男性女性の反応はくっきり分かれ男性側は白旗を上げる羽目となるのは笑い話としておく。

タイトルが出てこなくなっているw

酒でも飲もう、今日はひやおろしと秋刀魚の塩焼きだ。

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