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硬隗の薊

工房


職人達の活動単位、単独から複数の職人で構成される事が多い。

地域ごとによって構成は異なるが、工房主が職人や見習いを率いて作業を行うのが一般的な構成となっている。

工房の上下関係としては工房主―【号】持ち―【名入り】―職人―見習(例外もある)となっており、【号】持ちや【名入り】は其々に突出した技術を以ている職人に与えられる特権で自分の製品に【号】や【名】を刻む事が出来る。職人として自分の名を入れた製品を送り出すのは一種の憧れとなっていて【名入り】となって一人前とする風潮もある。【名入り】、【号】持ちは工房長と同業者組合の認可が必要とされるが認められる数にほぼ上限はなく一定以上の技量を示す事さえできれば認められることが多い。


工房の数はある程度制限されていて領主もしくは国王と同業者組合の認可が必要とされている。その理由としては質の確保、経営環境の保護、機密技術の流出防止等がある。

工房長となるには技術面だけでなく経営面や人材教育面でもある程度の実績を示さねばならず、単なる職人馬鹿では成る事すらできない。勿論、そういう事が苦手な者は一人親方として細々と独立する事も出来るし、工房内の熟練の職人としての生き方もあるのでどちらが良いともいうわけでもない。(勿論一人親方等も同業者組合に所属し何処かの工房の構成員として名を連ねている場合が多い。)


工房の名は代々伝えられている物が多く、古い工房長ともなれば下手な貴族よりも由緒正しい名跡として扱われる事が多く平民階級における出世の到達点の一つとして認識されている。


工房神殿・商業神殿共著【工房経営教本】より抜粋。

神殿を後にした一行は次は商業神神殿を見物する。そこに展示されている硬貨は見る価値があるのだが見物料が少々高いものであった。(銅貨20枚)ある種の教育施設であって授業料という意味合いではあるのだろうが人数がいるため銀貨が数枚飛ぶのである。もちろん勇者(笑)の懐からである。


「これは面白い意匠だね。」

「わかりますか?この項垂れる男の意匠は浮気がばれて奥方様やら側室達に折檻される【抜かず三発】様の記念硬貨ですね。王妃様達がこの意匠を広めることにより悪い虫を・・・・・・・・・・・・」

「とりあえず『ハーレム野郎は撲滅、抹殺、月夜ばかりと思うなよ』ということですか。」

「おにーちゃんそれ違う。」

「神官様、誰かいい人いないの?」

「神官さん誰か紹介してもらったら?」

「神官様の持て男死すべしの意見は尊重できますけどそこは色々と問題あるのでおおっぴらに・・・・・・・・・・・・」

「はいはい、浮気男は死ねばいいと思うのはあたしも否定しないけどいい大人がなに子供らの前で無様晒しているんだい。」


麦酒売りの姐さんは良識的になだめにかかる。案内役と勇者(笑)は頭をかきながらもごまかしにかかる。いつの間にか死霊っ子も姿を現しているけど誰も気にしてもいないし突っ込みも入れていない。

子供達も硬貨資料室に散っていて興味ある硬貨を眺めている。小さい硬貨につけられている説明文はまた小さく見づらい。それでも書かれている説明は結構好奇心を煽る説明が綴られていて資料をまとめた先人の苦労がしのばれる。

そんな子供達の様子をほほえましく見ている案内役は


「そうそう、硬貨の一覧図が銀貨2枚で売っているんですよね。」

「ううっ!高い!でも欲しい・・・・・・・・・・・・・」

「みんなで出し合って買わない?」

「手持ちで買えないこともないけど・・・・・・・・・・・」

「銅貨30枚までなら・・・・・・」

「何でそんだけしか出せないんだよ。」

「だって、【寒鱈】で食べたニシンの酢漬けがおいしかったんだもん。ついでに【壷漬鰊】というのを進められて10壷ほど・・・・・・・・・・・」

「それって・・・・・・・・・・・・」

「ちみっこ、それは危険だから部屋の中であけてはいけないよ。風上に立ってあけるもんだからね。」


ちなみに鰊の酢漬けは航海中におやつとして食べようとしていたら船乗りやら極北戦士連中に奪われて涙目になる可能性が高い。そろそろ船内の食生活をどうにかしたほうがよいのではないのだろうか?


そこは地の分が突っ込みいれるところではないと思うのだが(by商業神)


商業神様こそ地の文に(略)


結局互いに融通しあって一冊購入する事となるのである。孤児っ子達は手に入れた本を代わる代わる抱きしめては読むときを楽しみにしているのである。その様子を年上連中は微笑ましく見ているのである。


とはいえ硬貨の種類があってもそれほど広くはない室内を見尽くすのはそんなに時間がかかるものではない。もともとは商業神殿が硬貨の真贋を見極めさせる為の講習用に用意したものであるので観光目的で訪れる勇者(笑)達の興味を引き続けるものなんてものはないのである。寧ろ観光で来る方がおかしいのであるという感覚だったりする。知らずとは言えそれを行う異世界人、そこに痺れも憧れもしない。案内役も小銭稼げるからいいやと思って付き合っているが誰も指摘する者がいない。

勇者(笑)にしても硬貨の種類って色々あるなとか硬貨を何枚か組にして販売したら売れそうだなとか暇つぶしの延長線上で思っていたり。

ちなみに勇者(笑)が売れるかなと思っていた硬貨詰め合わせは神殿の売店(図鑑も同じ場所で販売されている。)で資料用に販売されている。銅貨基本種類見本セット(銅貨40種)が銀貨3枚という値段は高いのか安いのかよくわからないが・・・・・・・・・・銀貨も勿論ある(銀貨50種)金貨1枚・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「お金って売れるんだ・・・・・・・・・・・・」

小僧っ子の一言が場の一同の思いをよく現していた。

「ええ、商人とは金で品物を買っているのと同時に品物で金を買っているのですよ。見る立場の違いによって売る買うとなるだけで。」

案内人の言は余計に混乱させるものであった。


なんか消化不良のまま商業神殿を出た一同は今度は工芸神殿に向かうのである。

こちらは礼拝堂と宿坊を除けばどう見ても工房である。鍛冶、彫金、木細工、輝石細工・・・・・・・・・

寄進された作品にこれまた目を輝かせる。こっちは一度礼拝をすれば入場料を取らないようですっかりと観光客と化している面々は案内役を仰せつかった若者の説明を興味深そうに聞いている。少々売り込み口調になっているのは可笑し感じているが実際の話、それぞれの作品を通して工房の売り込みとかも兼ねているからである。特に自分の所属する工房の作品を説明するときは熱がこもっていた。こっちは綺麗な物とかあるので観光客は結構来ている。


「どうです、この鍋?実は三層になっているから熱が逃げにくく・・・・・・・・・・・・」

「それだったら、わらの入れ物に入れておけば逃げないよ。」

「神官さんそれで船の中や馬車の中で調理していたしね。よねつちょうりだっけ?」

「こらこら、ちびども。案内人さんの説明を邪魔しない。すいませんねぇ、うちのちび共が・・・・・・・・・」

「でも、この鍋ならば薪代が節約できそうだねぇ?」

「わかりますか姐さん、元々本職の調理人達が煮込み料理するときにじっくり火が通るようにとしているものでして・・・・・・・・」

「鍋や蓋が重たいのも加熱したときに蒸気が逃げないようにしているんだ・・・・・」

「そこの少年も料理わかるんだ・・・・・・」

「小僧っ子のにーちゃん、一応宮廷料理人だもんね。」

「見習いだけど。」

「そこっ!一言多い!」


案内役の若者は鍋等を主に作っている工房のようだ・・・・・・・・・・・よく見ると鍋のままで食卓に饗じてもよいようになのか微妙な細工が施してあったりするのは見て取れる。

小僧っ子がただの神官のお付ではなく宮廷料理人(見習い)であることに驚くも更に売り込みをかけてくるのは職人じゃなくて商人だろうと突っ込みいれたくなったのは笑い話である。

それでも鍋の質は良いらしく、小僧っ子は浅鍋を手にとって重さと使い勝手を気にしている。なんだかんだと言いながら道具に魅了されている小僧っ子を置いといて他の調理道具の説明をする案内役の若者。


「にーちゃん、お菓子の抜き型とかってある?」

「どんなんだい?」

「焼き菓子を作るときなんかに丸めるんじゃなくて型でもって抜き取るの。そうすると色々な形で面白いの。」

「どんな形か教えてもらえる?」

「うーんとねぇ、こういう形で・・・・・・神官さん説明お願い。」

「説明は俺に丸投げかよ・・・・・・・・・・船に戻れば幾つか作ってもらったのがあったが・・・・」


見知らぬ調理道具があるということで若者は逆に話しに食いついてくる。実際には抜き型というのは存在するのであるがそこまでして料理を形作るのは一般的でなかっただけである。

若者の勉強不足なだけであるが・・・・・・・・・・・

話の流れで食いついてきた若者の所属する工房にお邪魔することとなる。


「で、薄い金属の板を曲げて作るとして形はどうする?」

「うまー」「ねこー」「いぬー」「りゅうー」

「あたしとしては花の形なんていうのも悪くないね。」


工房までは少々距離があるがその間に色々注文を聞いていたり商売につなげる気が満々である。


「なんか、職人の見習いというよりも商人だな。」

「神官さん、そりゃ間違いですよ物を作っても売れなければ俺らだってお飯の食い上げなんですから。黙って売れるのは一部の職人だけですよ。」

「そりゃ、そうか・・・・・・・・・」


そんなこんなで若者の所属する工房につく。

「おやかたー、客っぽいの連れてきたぜ!」

「っぽいのかい!」

「だって、商談成立してないだろ。」

「馬鹿もんが!商談成立してなくってもこっちに興味持ってきてくれるもんに礼儀をつくさんか!」


ごつんっ!


失礼な口を聞いている若者に拳骨をひとつ落とす親方。中を見てみるとちょうど一服中だったのか、親方をはじめとする数名の職人衆がそれぞれに茶等を喫していた。中には酒精の香りを漂わせているのがいたのは極北の血でも流れているのだろう。


それは偏見であるぞ。(by極光神)


「うちの若い者が失礼いたしました。で、どのようなご用件で?」

「いやぁ、そこの若者が菓子の抜き型についての話に食いついて実際に作ってみるから見てくれと・・・・・・・」

「お前の方の客じゃないか礼儀をわきまえろや!」


ごつんっ!


「だって、菓子を作るのに方を抜いてつくるなんて始めて聞くしおもしろそうじゃん!」


ごつんっ!

「それは、貴族様とかの料理で使う道具だぞ。お前の勉強不足だ!すいませんねぇ・・・・・うちの若いのが・・・・・・・手間かけさせてしまって。」


ごつんっ!


「いえいえ、話しついでに見物するつもりでしたのでお構いなく。」

「狭くて退屈でしょうが存分に見ていってくだせぇ。丁度良いや、抜き型を作ってみるか。」

「はいよっ!親方!」


親方のいっていた通り工房は狭かった。というか、勇者(笑)一行の人数が多すぎなのであるが。

それでも鍛冶仕事に興味津々の子供達は目を輝かせて火に見入っている。


「火に魅入るって、放火魔みたいな・・・・・・・・・」

そこっ!地の文に(略)


職人衆の一人が柔らかい金属を叩いて板を作ると親方が火であぶりながら曲げていく。形が出来た物に火入れして固めると若者が磨いてバリを取る。

出来上がったものを見て若者が


「・・・・・・・・・へぇ、これで菓子の形を作るのか・・・・・・・・・どんな風に使うんだ?」

と不思議そうに見てみる。

「それを菓子の生地を抜いて・・・・・・・・・・・・・・焼くとその形に・・・・・・・・・・」


幾つか型を作っていると孤児っ子の一人が

「形作ったのに模様とか出来ない?」


と聞いてくる。親方がふと思案して、

「型に合わせて判子みたいなん作るか・・・・・・・・・・・若者、この丸型に合わせて模様の判子作ってみろ。」

「はいよっ!親方っ!」

「神官の旦那、感想聞きてぇから付き合ってもらえねぇか?」

「いいですけど・・・・・・・・・・・菓子の生地でもこねます?」

「そうしてもらえると助かる。こっちも抜き型は初めてなんでねぇ・・・・・」


なぜか菓子作る事となっている一行である。工房の隣にある親方の家にて親方の奥さんと娘さんを助手に孤児っ子やら死霊っ子達が菓子を作る。菓子焼く窯は脇に取り出し口ついている持ち運び式の窯を利用する。下は炉の火を利用して上でも火を焚く形である。

火を用意して窯の温度を上げたりしている間に菓子の抜き型に判子が出来上がる。

若者の判子はさすがに金属性のものを作る時間がなかったのか木製(鍋等の柄の流用)で丸に合わせて金貨っぽい模様が描かれていた。


「おにーちゃん、これで【黄金色のお菓子】がそれっぽくなるね。」

死霊っ子は前に神殿等に配り歩いていた賄賂用の菓子を揶揄して来る。

「でも、この判子は応用がききそうだな。」


ぺたこんぺたこん・・・・・・・・・・・・

菓子の生地を抜いて、判子押して模様つけて・・・・・・・・・流れ作業で菓子が作られる。


「窯をもう少し大きいのにしたほうが良かったか・・・・・・・・・」

と、親方が一人呟いたのは誰も気にしていない。

そもそも大量に菓子を作るなんて事はまず無いのだから。奥さんも娘さんも甘いものが嫌いでないらしく出来上がる菓子を心待ちに見ているのは微笑ましいことである。


赤髪薊を含めて孤児っ子達も菓子のにおいに期待に目を輝かせている。

そして出来上がった最初の数枚、少々歪ながら金貨っぽい模様が浮かんだ菓子が出来上がるのである。


「おおっ!」

「これは面白い。」

「親方、これって売り物になりませんかねぇ?」

「そんな数は売れねぇが、客の目を引くには面白そうだな。おいっ!若いの、ひとっ走り神殿に行って菓子の奉納をして来い!俺達の技術のお披露目だ!」

「はいよっ!」


出来上がった菓子を笊に盛って駆け出してくる若者。

その間にも菓子はどんどん作られていく。結構な数が出来て、職人衆と共に一息つけるかと皆が思った矢先に・・・・・・・・・・・・・・・・


「鍋工房の親方、及びに異国の神官一行、贋金作りの疑いで商業神殿に来てもらおう。」

「「えっ?」」


わけもわからぬままに商業神殿へと向かう一行と親方。勿論菓子の抜き型と菓子は没収されている。



商業神殿に着くと港国の重鎮やら金貨工房の主やらが・・・・・・・・・・

若者が顔を青ざめさせて座り込んでいる。

その前に菓子が・・・・・・・・・置かれていて、商業神の神職が疑問を問いかける。


「この菓子を作ったのは誰だ?」

「俺達ですけど・・・・・・・・・・・・・何か問題でも?」

「何故に金貨を模しているのだ?」

「冗談みたいなものだよ、なぁ、親方。」

「だな、歴々が目くじら立てるほどではないだろう。誰だって金貨と勘違いしないだろう。」

「だまれだまれ!金貨を模しているのが問題なのだ?その型を使えば贋金が作れる可能性のことを案じているのだ!それにそこの連中は硬貨図鑑買っていただろう!それを基に作るつもりじゃないのか?」

「神職殿落ち着かれよ。主らが分かるように経緯を説明するとそこの若者が『工芸神様、我等の技術をお納めください。金貨っぽい菓子です。』って言ったのが贋金を作るだけの技術と疑いを持たれたのだ。」


勇者(笑)と親方の答えに神職と金貨工房の主が更に応じる。

「まさか、これで金貨出来るのか?」

と親方が抜き型と判子を見せる。

「出来そうもないな。良い所菓子を作るのが精一杯だろ。」

と金貨工房の主が認め

「紛らわしいものを作るんじゃない!」

と神職が不機嫌そうに言う。そこで一言も言葉を発していなかった港の重鎮の一人が

「まぁ、そこの若者の紛らわしい発言は兎も角、問題ないということでよろしいかな。皆の衆?」

と同輩達に問いかける。

「ふむ、問題なかろうって・・・・・・・・・・」

「旨そうじゃな、一つもらって良いか・・・・・・・・・・・・」


ぱりっ。


答えを聞く前に食べている。

「むむっ、美味っ!」

「我も一つ相伴に・・・・・・・・・・・・」

重鎮達は菓子を摘む。金貨工房の主が菓子を手に

「この模様程度ならば贋金とも言えぬだろうって稚戯の範囲だ。やるならば・・・・・・・・・・・・ふむ、これは美味。」

金貨とも呼べないと切って捨てるが菓子の美味しさだけは納得したようだ。ついでに要らんことを考えているようだけど職人とはそんなものである。


稚戯と言われたのに口元を引きつらせた若者がいたが誰も気がつかない。

「まぁ、これは模様はわざと金貨っぽいけど間違えないようにしてありますな。やっつけ仕事だし。」

更に若者の額に青筋が

「異国の神官殿に親方、態々すまなんだな。この程度贋金と言われるようでは、【紅鮭】の名が廃る。冗談の代物であろう。」

顔色が怒りの赤を通り越して白くなっている。技前を貶されたのが気になるのだろう。

無言で何かを抑えている・・・・・・・


「疑いは晴れたか?」

と勇者(笑)の言に

「うむ、贋金ではなくて金貨を模した菓子であっただけだと我等一同認める。神職殿も納得するか?」

「・・・・・・・むぐぐっ! ええ、若者の言が少々怪しかったのは問題でしたが、こちらも問題ありません。」

神職殿も食べている。

「この菓子は美味だの、神官殿譲ってもらってよいか?」

「工房で奥さん達が楽しみにしていたんですけどいいですよ。また作ればよいし・・・・・・」

「悪いな、ではこれは菓子代だ。」

「そんなにいただけませんよ。」

「いやいや、口止め料とかも込みだ。こんな馬鹿な話で騒ぎがあったなんて言いたくも無いしな。」

「でも港の顔役、うわさとしてなるんでは?」

「笑い話程度ならば良いだろう。無実の者を引っ張ったという話にならなければな、特に神官殿は異国の者であろう。外交問題としたくもないしな。」

「それならば・・・・・・・」


互いに和解をしてその場はお開きとなる。顔役は菓子の作り方を教えてくれと言ってくるし、神職と金貨工房の主はなにやら相談している。ただ一人技前を貶された(と感じている)若者は無言でついてくる。

「親方すいません・・・・・・・・」

「若いの、気にするな。お前の言い方と間が悪かっただけだ。」

「でも、貶された・・・・・・・・・・・おれ、悔しいです。」

「お前にも技前に誇りが出てきたようだな。」

「一晩工房つかわせて貰っていいですか?」

「もう一度作り直します。俺の本気を見せてやります!」

「そうか・・・・・・・・・・・・・・」

師弟はそれっきり言葉を交わさない。



「神官さん、いい話で終わっているけどおれ達って騒動に巻き込まれただけ?」

「赤薊、俺宿に戻ってから人日卿にお小言食らうのが目に見えるようだ・・・・・・・・・・・・」

「にーちゃん、あきらめな。」

「おなかすいたー」

「ほらほら、あんたらといると騒動が尽きないねぇ・・・・・・退屈しないよ。」

「姐さん・・・・・・・気楽だね。」

「赤薊が考えすぎだって・・・・・・・・・・禿げるよ。」

「お、俺は禿げない・・・・・・・・・・・・・・・・禿げないんだ・・・・・・・・・・・・でも親父の名前が飛び立つ綿毛だし・・・・・・・・・」

「姐さん、男には触れてはいけない部分とかあるから・・・・・・・・・・・」


宿に戻ると案の定人日卿の説教を受ける羽目となる一行であった。




翌日、工芸神殿に目の下に隈をこさえながらもやり遂げた顔をした鍋工房の若者が

「これこそが俺の本気だぁぁぁぁ!」

と抜き型と判子を片手に菓子を高々と掲げている姿があり、それに応じるように

「甘いな、若いの。金貨模した菓子というからにはこの程度を創りこんで見やがれ!」

と金貨工房の主が自身の技巧の粋を凝らした菓子を見せる姿があったという。

取り敢えず神殿の前で騒ぐのは良くないと私地の文は思います。


そのやり取りでどちらが優れていたかという勝負となったり、勇者(笑)一行が菓子の生地を用意するために呼び出されたり、その影で神職殿がこの菓子は売れると算盤を弾いていたりするのは別の話である。


久しく間を開けてしまった。

派遣の職人に丸投げする職場のなんと多い事よ、おかげで色々遊んでしまうではないか。結果赤字が増えたとか私のいない時の売り上げ減少が酷いとかと言う話は受け付けたくない。


さて、眠ろう。

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