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ラウ・ファミリア ~正しさよりも、共にある温もりと優しさを~  作者: 言ノ悠
第二話 パーティの行末、そして日常
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「楽しんでるか?」

 ジンガは椅子を引き、オルトリアとレイラが談笑している席に歩み寄った。

 軽い調子の声に、二人は同時にこちらへ視線を向ける。


「楽しんでますっ! ……ですよね、オルトリアさん?」

 ぱっと笑みを浮かべたレイラが元気よく答える。

 美しい銀髪を揺らすその姿は素直な少女そのものに見える。

 だが、ジンガの目には――計算の上で振る舞っているようにも映っていた。


「そうだな。このように受け入れてもらえるとは夢にも思わなかったし、私自身もこうなりたいとは思っていなかった。だから、正直に言えば今も驚いているよ」

 オルトリアはまとめていた髪をほどき、肩に流しながら言った。


「俺としても、戦力を増やしたかったからな。ちょうど良かったんだよ」

 ジンガは卓上のグラスを煽り、快活に笑った。


「戦力を……増やしたかった?」

 きょとんとした表情で、オルトリアが問い返す。


「この家、子供が多いだろ? 俺とミササギがメインで依頼を受けるにしても、彼らを守れるのはミレイ一人。子供三人に大人一人じゃ、やっぱり不安でさ」

 ジンガは卓に並んだ料理をひとつつまみながら、軽い口調で言った。


「そんな事情があったのか……」

 オルトリアも彼に倣うように、料理をひとつ口に運んだ。


「けど、俺とミササギについてこれる奴なんて、そうはいないからな。正直、困ってた」

 飲み下したジンガは、肩を竦めてみせる。


「それは……そうだろうな。ジンガ殿も剣技だけなら、《ミスリル》ランクの下位には負けないはずだ」

 オルトリアはジンガとの剣合わせを思い出し、冷静にそう言った。


「それは持ち上げ過ぎだろ」

 ジンガは自分の剣技に自信はない。ミササギが隣にいる環境で、自分が剣に秀でている必要もなかった。


「いや……持ち上げたつもりはないのだが」

 オルトリアは返答に迷い、言葉を濁す。

 真面目が服を着ているような奴だな、とジンガは内心で苦笑した。


「オルトリアさん──オルトリアは、なんでそこまで剣に拘るんだ?」

 雰囲気が重くならないように、ジンガは話題を逸らすように問いかけた。


「私の師が剣術の師範代でな。もう亡くなってしまったが、とてもよく目を掛けてくれた」

 オルトリアは目を伏せ、淡い記憶をたぐり寄せるように言葉を継ぐ。

「気付けば剣を磨くことそのものが楽しくなっていて……気付いたら、この道に進んでいたんだ」

 恩師との日々は、今でも瞼の裏に焼き付いている。


「そっか、いい話だな」

 ジンガにはその情景を完全に理解することはできない。

 だが、それがオルトリアにとって確かな宝物であることだけは、素直に伝わってきた。


 ジンガとオルトリアの会話に、レイラはほとんど口を挟まなかった。

 ただ、相槌を打ちながら大人しく聞いているだけ。


 その静かな様子がかえって、普段の無邪気な振る舞いが計算の上で成り立っていることを、ジンガに改めて実感させた。


 ジンガはそんな少女の振る舞いに、わずかな不安を覚えたものの、ミササギとミレイの教育方針に口を挟むつもりはなかった。


 ふと視線を巡らせると、ミササギとミレイの席にクルスの姿もあった。

 最近のクルスは、ミササギに格闘術を教わることに夢中で、今も食堂の椅子に腰掛けながら、小さな拳を前に突き出している。


 その姿に、ミレイは「はいはい、もうやめなさい」とでも言いたげに眉を下げ、隣で苦笑していた。


「随分と楽しそうだな」

 そんな彼らの様子を眺めていたジンガに向かって、オルトリアが言葉を投げた。

 まるで珍しいものを目にしたかのように、その瞳には面白がる色が浮かんでいた。


「ああ、幸せだよ。ずっとこういう日が続けばいいんだけどな」

 ジンガは子供たちから視線を外し、名残惜しそうに息を吐いた。

 その声音には、冗談めかした軽さではなく、胸の奥底からこぼれた本音が滲んでいた。


「ま、何にせよ。明日からはよろしくな」

 軽く片手を上げ、ジンガは席を立った。

 賑わいの残る食堂を背にしながら、どこか安心したように扉の向こうへと歩み去っていった。


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