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ラウ・ファミリア ~正しさよりも、共にある温もりと優しさを~  作者: 言ノ悠
第二話 パーティの行末、そして日常
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「な、なんでお前がここに……」

 ミササギは思わず足を止め、声を漏らした。


 食堂の円卓には、剣聖オルトリアの姿があった。

 整然と椅子に腰掛けた彼女は、迷いのない眼差しでミササギを見据えている。


「……お前の仕業か?」

 既に円卓には、クルスとレイラ、エリシアの姿があった。

 それでもミササギの鋭い視線は、ただ一人ジンガに注がれていた。


「まあまあ、とりあえず話を聞こうよ」

 ミササギと共に食堂に入ってきたミレイは、軽く彼の腕を押し、宥めるように促した。

 その落ち着いた声音は、張り詰めた空気をわずかに緩める。


「……むう」

 渋い息を吐き、ミササギは視線を逸らした。

 それでもミレイにそう言われては、一度は耳を傾けねばならないと感じ、しぶしぶ椅子を引く。


 円卓の木が小さく軋み、彼が腰を下ろすと、当たり前のようにミレイも隣へ腰掛けた。


「ミササギが嫌がることをしてるんだから……ちゃんと意味のあることなんだよね?」

 ミレイは首をかしげつつも、にこりと微笑んだ。

 柔らかな声音の奥に、問いかけの確かな重みが潜んでいた。


「どうしても嫌だって言うなら、それでいいんだ」

 ジンガは肩を竦め、あくまで軽い調子で言葉を継いだ。

「ただ……これなら、ミササギも少しくらいは得を感じられると思ってさ」


「……得?」

 ミササギが低く呟いた。訝しげな視線がジンガに向けられる。


「ミササギがオルトリアさんを圧倒できたら、彼女をパーティメンバーに迎え入れるって話だ」

 ジンガはわずかに口元を歪め、視線をオルトリアに流す。

「そして、基本的にミササギの指示に従わせる予定。……どうだ?」

 それから再び、ミササギに視線を戻した。


「ジンガは……彼女が戦力になると思ってるんだな?」

 ミササギの声音には探るような色が混じっていた。


「《ミスリル》ランクだし、俺はそう思ってるけどな」

 ジンガは軽く肩を竦めて言った。

「……ミササギから見たら、どうなんだ?」


《ミスリル》は冒険者ギルドで《オリハルコン》に次ぐ階級だ。

 そこに辿り着くまでに、数えきれない修羅場を潜り抜けてきたはず。

 なら、弱いわけがない――ジンガはそう考えていた。


「んー……わからないな」

 ミササギは腕を組み、しばし考えるように目を細めた。

「俺には、彼女が世間一般で強いのか弱いのかなんて、さっぱり分からない」

 少なくとも彼は、オルトリアを脅威に感じていない。

「ただ……ジンガの術は、人と比べるまでもなく桁違いだと思うけどな」

 彼自身が脅威を感じる物と比べても、やはり、剣聖という存在は脅威には感じなかった。


「あー……まあ、そうだな」

 ジンガはバツが悪そうに視線を逸らした。

「ちなみに、俺も剣で戦ってみたんだけど、勝てなかったよ」

 そして、話を逸らすように、新たな情報を付け足した。


 ジンガは、剣で自分に勝てない彼女を、ミササギに紹介する意味はないと考えていた。

 だからこそ、紹介する前に、自分の手で彼女の腕を確かめたのだ。


「必要最低限の腕はあるはず……と」

 ミササギは右手を顎に添え、深く思案するような表情を作った。


「……ああ、わかった」

 短く息を吐き、彼はゆっくりと頷く。

「俺にも……いや、俺たちにもメリットはありそうだな。いいよ、相手をしよう」

 どこか納得したような表情を浮かべながら、ミササギはオルトリアを真正面から見据えた。


 オルトリアの瞳が大きく見開かれる。


「……本当に、受けてくれるのか?」

 彼女の声には、口元には、抑えきれぬ昂ぶりが混じっていた。


「ああ、庭に行こう」

 ミササギは椅子を押し引きし、静かに立ち上がった。視線はまっすぐジンガへと向けられる。

「審判はお前がやれ。……言い出したのはお前なんだからな」

 その瞳には、冗談を許さぬ鋭さと、決して逃さないという強い意思が込められていた。


「わかってるよ」

 ジンガは苦笑を浮かべ、肩をすくめた。

「オルトリアさん、外に出てくれるか?」

 そう言って、視線を件の剣聖に向ける。


 彼らの呼びかけに応じるように、オルトリアの瞳がぱっと輝きを帯びた。

 彼女は椅子を静かに引き、余計な音を立てぬように立ち上がると、真っすぐに二人を見据えた。


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