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ラウ・ファミリア ~正しさよりも、共にある温もりと優しさを~  作者: 言ノ悠
第二話 パーティの行末、そして日常
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「え、嫌だ。興味ない」

 即答だった。

 ミササギにとっては、わざわざ考えるまでもない問いだったのだ。


「……断るのか?」

 オルトリアの瞳がわずかに揺れる。

 まさか拒絶されるとは思わなかったのだろう。

 意外そうに目を瞬かせる。


「暇じゃないんでな。勝手にやってろ」

 ミササギは視線を逸らし、まるで興味を持つ価値すらないとばかりに言い捨てた。


「そう言わずに応じてほしい」

 オルトリアは一歩前に出る。

 その声音には苛立ちではなく、真剣な願いが宿っていた。


「私は剣を極めたい。そのためには、強き者との交わりが不可欠なのだ」


「悪いな。それでもやる気はない」

 ミササギにとって、相手にならぬ相手と剣を交えることに意味はなかった。

 必要性を感じなかったのだ。


「……それほど自信があるのか?」

 オルトリアの口元に、わずかな笑みが浮かんだ。

「自分の方が格上だから、私と刃を交えるまでもない――そう言いたいのだろう?」


 挑発めいた言葉。だがその眼差しは冗談ではなく、本気の色を帯びていた。


「んー……まあ、無いとは言わないが」

 ミササギは肩を竦め、気のない調子で答えた。


「この後は大切な人と、大切な時間を過ごす予定なんだ。

 だからやる気はないし、そんなことに暇を割くくらいなら、その時間を少しでも増やしたいんだ」

 そう言って、ミササギはふと自嘲した。

 昔の自分なら、脅して圧倒して叩き潰して、相手を傷つけることに躊躇しなかっただろう。


 その断言に、オルトリアはしばし言葉を失う。

 やがて肩を落とし、深いため息をついた。


「……まったく、剣聖として名を得てから初めてだな。そんな理由で断られるとは」

 呆れ半分、諦め半分の声音だった。


 だがその瞳の奥には、なお消えぬ興味の色が残っている。


「お前も人を愛したらわかるよ」


 一日二十四時間。

 八時間は眠り、八時間は仕事に費やす。

 どれだけ頑張っても、大切な人と一緒にいられるのは残りの八時間だけだ。

 つまり、どれだけ努力しても人生の三分の一も時間を割いてやれやしない──それを知っているからこそ、ミササギは無駄にそれを減らすようなことはしたくない。できることなら、もっと大切な人と一緒に居る時間を増やしたいのだ。


「私にとって、それは剣だからな」

 オルトリアの声音には、一片の迷いもなかった。

 彼女にとって剣を握る時間こそが、生きる意味であり愛するものだった。


「そっか。ならそれは勝手にやれ。俺を巻き込むな」

 もう話す時間すら惜しいとばかりに、ミササギはオルトリアに背を向けた。


 オルトリアは言葉を返せなかった。

 唇がわずかに動いたが、声にはならず、その背中をただ黙って見送るしかなかった。


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