はじめてのいらい
ボードに依頼書が貼ってある。そしてボードの横には、AとかBとか書かれてある。
定番だと、このAとかBとか書かれているのは、依頼書を受諾できるランクを示して
いるのだと思うが、大方相違ないだろう。
俺は、定番は定番だが、この世界は違うと言われる可能性も考慮して、俺はそれと差
異がないか、ヒランヤに確認することにした。
「受けられる依頼は決まってるのか」
「はい。ライセンスを交付された初めはFランクなので、そのひとつ上のEランクまで
の依頼しか受けられません」
「そうか」
どうやらそれほど差異はなさそうだ。
観るに、Fが一番下のランクのようだ。なので、俺が受けられるランクはFとEだろ
う。ということで、俺はEとFと書かれているボードを観ることにした。
Fのボードには猫探し、犬探し、猫探し……。本当に駆け出しのハンターが受けるよ
うな、いわゆる雑用系の依頼書が貼り出されている。
次にEランクなのだが、そもそも依頼書がほとんどない。あるとしたら、薬草探しく
らいだろう。
ヒランヤが貼り出されている依頼書を観て言う。
「Eランクだとゴブリンの討伐依頼くらいあるのだけど、昨日の騒動があった後だから、
ランクが上がっているのね」
Dランクのボードを観ると、確かにゴブリンの討伐依頼の紙が貼ってある。いつもより
依頼のランクが上がっているようだ。
ヒランヤは言った。
「初めてなのですから、肩慣らしに薬草採取の依頼でも受けてみてはいかがですか」
「習うより慣れろか。では、そうしよう」
ヒランヤは薬草採取の依頼書を取り、「はい」と俺に差し出した。
「依頼書をカウンターに持って行くんですよ」
「わかった」
俺は依頼書を受け取った。そこで丁度受付に居るマリーに、名前を呼ばれた。
「ドルミルさん。こちらへ」
「ああ」
俺とヒランヤは、カウンターへ。するとマリーは、一枚のカードを差し出した。
「こちらがドルミルさんのハンターライセンスです。再発行にはお金がかかりますので、
大事にしてくださいね」
「わかった」
俺は返事をし、ライセンスを受け取った。ライセンスには、ライセンス番号と名前、そ
してハンターランクのFと、発行日が主に書かれていた。電話番号はなかった。
続けてマリーが説明する。
「依頼の掛け持ちは基本できません。受けられる依頼は、ひとつ上のランクまでで、ひ
とつ上のランクの討伐依頼を三件クリアすれば、更にひとつ上のランクに上がれます。
それとパーティーを組む時は、一番下のランクの人しか依頼を受けられませんので、注
意してください」
一番下のランクの人しか依頼を受けられないということは、受ける依頼は一番下の人に
合わせなければならないということか。
更にマリーは続ける。
「あっ、それとハンターライセンスは二年更新です。裏に更新日が書いてありますが、
期限の一か月前から一か月後の二か月の間に更新手続きをしてください。それと更新に
はお金がかかります」
「わかった」
ハンターライセンスの裏を見ると、確かに更新日が書かれていた。
「他に気になることや、何かわからないことはありますか」
「いや、問題ない」
「そうですか。また何かわからないことがあったら、いつでも聞いてください」
「ああ。わかった」
俺はズボンのポケットにハンターライセンスをしまおうとした。が正直、どこかで落
としてしまいそうだ。なので、ヒランヤに言った。
「すまんが、預かっといてくれ。ポケットだと失くしそうで怖い」
「あら、意外と心配性なんですね」
「そうかもな」
しかし、チャックも付いてないポケットに入れておくのは、やはり怖い。なぜなら、今
の俺はお金を持っていないのだから。
ヒランヤは俺のハンターライセンスを受け取ると、自分の鞄にしまった。俺もお金が
入ったら、小さくてもいいから、自分の鞄を買おう。
ライセンスの受け取りが終わると、俺は持ってきた依頼書をマリーに見せた。
「これを受けたいんだが」
マリーは依頼書を受け取る。
「……この依頼、町の外での薬草採取なんですけど、昨日魔物の大群が攻めてきて、町
の外はまだ危険だって言われてるですけど……この依頼って、魔女様もいかれるんです
か」
ヒランヤは、「ええ」と肯定した。
「それなら安心ですね。でも、十分に注意してください」
「ああ。わかった」
マリーは依頼の手続きをし、俺に判の押された依頼書を差し出す。俺はそれを受け取
った。
マリーはヒランヤのことを信頼しているようだ。
ヒランヤのハンターランクはいくつなのだろうか。