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家を建てる

 翌日の朝。俺は人の気配を感じ、目を覚ました。

 目を開けると、そこには三人の冒険者っぽい人物が立っていた。

 一人は剣を持ち、鎧を着た戦士っぽい男性。もう一人はローブを着た、魔法使いっぽ

い女性。もう一人は神官っぽい服を着た、僧侶っぽい男性。

 戦士っぽい男性が言う。

「見つけたぞ。お前がカモリに現れたドラゴンだな。我々が討伐してくれる」

 カモリ? この森のことだろうか。

 戦士っぽい男性は問答無用と言わんばかりに襲いかかってきた。しかし、戦士っぽい

男性の剣は、俺の体を斬ることはできなかった。

 昨日、飛ぶ練習をした時に、散々木にぶつかったり地面に激突したりしたが、まった

くもって痛くなかったし、体にかすり傷もついていなかった。俺の体は相当頑丈らしい。

 戦士っぽい男性は、何度も俺の体を斬りつけた。しかし、俺にまったくダメージはな

い。

 ……鬱陶しいな。

 俺は息を吹いた。

「ふっ」

「うわあああああああああああぁぁぁ!!!!」

戦士っぽい男性は、空の彼方へ吹き飛んでいった。

 魔法使いっぽい女性が前に出る。

「次はわたしが相手よ!」

 チームワークとかないのだろうか。

 魔法使いっぽい女性が杖を俺に向けた。

「ファイヤーランス!」

 杖の先から炎が現れ、まるで槍の様に俺を襲う。が、やっぱり無傷。

 この異世界には魔法というものがあるようだ。教えてくれてありがとう魔法使いっぽ

い人。

「ふっ」

「きゃああああああああああああああぁぁぁぁ!!!!」

魔法使いっぽい女性は明後日の方向に飛んで行った。

 僧侶っぽい男性が前に出る。

「次は私が相手です!」

「ふっ」

「わたしだけ雑つつつつつつつっっっ!!!」

僧侶っぽい男性は暫し地上と別れを告げた。

 辺りは静かになった。

 ……寝よ。

 俺は、二度寝することにした。


 ――次の日。

 惰眠を貪っていると、また人の気配に目を覚ました。

 目を開けると、そこには大勢の人たちがいた。しかも今回は少人数ではない。

 同じ色の鎧を着た戦士っぽい感じの人が、二百人ほど。魔法使いっぽい人が五十人ほ

ど。そして僧侶っぽい人が五十人ほど見える。

 先頭に馬に跨り、白髪で顎鬚を蓄えた六十代くらいの男性が、剣を掲げる。

「邪悪なる竜よ! プリモの町が領主、ガリウス・ド・ロレーヌドが見事討伐してくれ

よう! 攻撃開始!」

 プリモの町。近くにあった町の名前だろう。

 二百の戦士が襲いかかっていくる。それと同時に、魔法使いが唱えた火の矢や風の矢

が、俺目がけて降り注ぐ。

 まったく効かないが、やっぱり鬱陶しい。

 昨日は息で吹き飛ばしたが、流石にこの人数を吹き飛ばすのはめんどくさいなので、

すっかり扱いに慣れた翼を使うことにした。

 翼を羽ばたかせると、辺りが暴風に見舞われる。魔法はかき消され、辺りの木は傾き、

兵士っぽい人たちは、悲鳴とともに吹き飛んで行った。ついでに馬も吹き飛んだ。しか

し、剣を地面に突き立て耐えた領主だけは残った。

 領主は息も絶え絶え、言った。

「はぁはぁ……くっ……まさかこれほどとは……。しかし、悪しき竜よ! わたしは諦

めんぞ!」

俺はその言葉を聞いて、言った。

「降り注ぐ火の粉を払っただけなのに、なんで悪しき竜なんだ。俺は眠っていただけだ

ぞ」

「……えっ?」

「お家に帰りなさい。ふっ」

「アーーーーーーーーーーーーッ!!!」

領主は鳥になった。


 一週間後。

 あれから誰も来なくなった。

 俺は食っちゃ寝食っちゃ寝を繰り返していた。

 狩りも上達し、それと同時に、空を飛ぶことにも大分慣れた。

 魔法使いっぽい人が魔法を使っていたので、見様見真似でやってみたら、できた。し

かし、森の樹を十本ほど黒焦げにしてしまった。練習が必要だろう。

 今の生活に大分なれたが、ひとつだけ思ったことがある。それは、昨日の夜のことだ。

 昨日の夜、雨が降った。俺の肌は雨に濡れた所で、体温が下がったりすることはない。

しかし、雨に濡れながら寝るのは、流石に居心地が悪い。

 ということで、家を建てることにした。

 まず家を建てる場所なのだが、近くに小さな山があり、その上に建てることにした。

この山の上は平らで、家を建てやすい。それに、この山の周りは崖になっていて、人は

簡単に登ってこれまい。一か所だけ登れそうな所があるが、なかなか気づけないだろう。

それに、景色もいい。

 家を建てるにあたって、まず最初にすることといえば、材料の調達だ。

 俺はその辺に生えている木を引っこ抜き、山の上へ運んだ。そして枝を爪で切り、樹

皮を剥く。次に木を並べ、積み上げていけば、あっという間にログハウスの完成だ。

「ってできるかーーー!」

 俺は木を地面にぶん投げた。

 素人がアニメや漫画みたいに、ログハウスなんて建てられるはずがない。

 ……寝よ。

 俺は、ふて寝することにした。

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