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本当に優秀なやつは、Sランクパーティーをクビになったりしない

 ハンターズギルドを出発した俺たちは、北門に向かった。

 北門を抜けると、俺が破壊した石畳の道が見えてくる。が、凸凹だった道は綺麗に整

地されている。そして作業員たちは、その整地された地面に石を並べているのが見える。

更に、昨日ヒランヤがアースクエイクで凸凹にした道も、綺麗に整地されていた。

補修にはもっと時間がかかると思っていたが、昨日今日でここまで補修できるとは、破

壊した身としては、頭が下がる思いだ。

 補習中の道を過ぎ、昨日マナマグワートを採取した獣道も過ぎ、石畳の道を更に進む

んで行くと、左手側に新たな獣道が見えた。

 バナーレはその獣道を指して言う。

「あの先がゴブリンの生息域みたいですね」

それを聞いたエストレが言う。

「そうか。それなら早速行こうぜ」

エストレさんはそう言うと、獣道を大股で進んで行く。

 バナーレはため息を吐いた。

「勇敢なのはいいのですが、マイペースというかなんというか……」

なんだか少し、心労を感じる……。

 エストレを先頭に、俺たちは獣道を進む。

 しんがりを務める俺は、目の前を歩くバナーレに訊いた。

「ふたりとパーティーを組んで、長いのか」

「いえ、ふたりとはパーティーを組んで一か月くらいです。その前は、サントリオの首

都、ウノモラルキアでSランクパーティーにいたんですけど……クビになってしまいま

した」

「……」

 Sランクパーティーをクビに……これはもしかして、『Sランクパーティーをクビに

なった最強剣士が辺境の町で無双してみた』なのか。

 バナーレが少し怪訝な顔をしているが、俺の期待は少し高まった。

 獣道を歩いて少し経つと、少し開けた場所に出た。

 先頭を歩いていたエストレが止まる。

「出たぞ。ゴブリンだ」

 子どもほどの身長、緑色の肌に尖った耳。間違いなくゴブリンだ。一体は手に短刀を

持ち、二体はこん棒を持っている。短剣は刃こぼれしているが、切られたらかすり傷だ

けでは済まないだろう。まぁ、俺には効かないが。

 バナーレさんが指揮を出す。

「エストレさんは左のゴブリンを。ドルミルさんは左。わたしは正面のゴブリンの相手

をします。ディゾルさんは援護を」

エストレとディゾルが返事をする。

「おう。任せろ」

「了解じゃ。魔法で援護をしよう」

俺も「わかった」と返事をし、右のゴブリンの前に立つ。

 俺は腰の短剣を抜いた。

 実はハンターズギルドに寄る前、武器屋に寄ってなけなしのお金で短剣を購入したの

だ。なぜなら、拳で殴ると敵が粉々になるからだ。短剣ならば、真っ二つになるくらい

だろう。

 モンスターを粉々にしたとなったら、折角ヒランヤが気を利かせてくれたに、実は龍

だということがバレてしまう可能性がある。しかし短剣なら、モンスターが真っ二つに

なる程度だろう。

 俺目がけてゴブリンが襲いかかってくる。が、正直遅い。俺は目を凝らして観ると、

あらゆる物がスローモーションに見える。これも女神の加護のスキルのお陰なのだろう

か。

 俺はゴブリンが振り下ろした短剣を避け、手に持つ短剣をゴブリンの胸目がけて振り

下ろす。

「ギャアアアアァァァーー!!!」

ゴブリンは胸から下腹部にかけ出血し、断末魔と共に倒れた。

 安物だったが、意外と悪くない。

 俺は短剣に付いた血を払い、鞘に納める。

 さて、他の二体のゴブリンと戦っている三人はどうなっているだろうか。バナーレを

見てみると、ゴブリンの攻撃を手に持つ剣でさばいているようだが……。

「慎重に慎重……次のタイミングで……いや、やっぱり次のタイミングで……」

ちょっと慎重過ぎるのではないだろうか。

 エストレはゴブリンに攻撃を仕掛けようと、突進した。

「うおおおおおおぉぉぉ!!!」

しかしエストレはゴブリンを通り過ぎ、木に激突した。

 なんでやねん。

 ディゾルは魔法を唱えた。

「ファイヤー……ファイアー? ファイアーボ……なんじゃったっけな……」

ボールだよ!


 ――五分後。

 バナーレは額を拭った。

「いやー、ようやく倒せましたね」

「そうだな」

全部俺が倒したがな。

 エストレが言う。

「楽勝だったな」

お前は木に突撃していただけだろ。

ディゾルは言う。

「ガンダーラ……サンダーラ? なんじゃったっけな……」

ランスだろ!

 依頼達成の証拠品として、ゴブリンの耳を切り落とすバナーレと、ゴブリンの死体処

理をするエストレ。そしていまだに魔法が唱えられないディゾル。

 俺は思った。Sランクパーティーの判断は、一般では間違いないのだと。

 俺たちはプリモの町に帰還することにした。

 今日はなんだか疲れた……。依頼達成の報告をしたら、とっとと家に帰ろう。

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