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龍の覚醒

 目を覚ますと、目の前は真っ暗だった。きっと布団に潜ったまま、眠ってしまったの

だろう。

 布団を除けて、顔を上げると、そこには人が居た。

 その男性は、無精髭を生やし布でできた作業着の様な服を着ている。

 体格は、平均よりも多少大柄だろう。おそらく、何か肉体労働をしているのだろう。

その証拠に、何やら工具がはみ出している麻袋を持っている。

 それにしても、なぜこの男性は怯えてるのだろう。

 声をかけてみようか。

「あっ……」

「うわあああああああぁぁぁぁ!!!」

 目の前に居た男性は、逃げ出してしまった。

 人の顔を見るなり逃げ出すとは、なんて失礼な人なんだろう。それとも、俺のうしろ

に何かいるのだろうか。

 俺はうしろに振り返った。しかし、何も居なかった。

 そもそもなぜ自室に知らない男性が居るのだろう。もしかしたら、幻覚でも見たのだ

ろうか……。

 俺はまだ、寝ぼけているのかもしれない。……そうだ。顔を洗おう。そうすれば、頭

の中もすっきりするはずだ。

 俺は立ち上がり、水の音がする方向に進んだ。

 水場は、すぐに見つかった。

 そこは、自然に作られた池だった。よく見ると、小さな川から池に水が流れ込んでき

ている。

 俺は、顔を洗おうと池に近づいた。すると、池の反射して自分の顔が見えたのだが、

そこには、有り得ないものが映っていた。

 これ……ドラゴンだよな……。なんでドラゴンが映っているんだ……。

 取り敢えず、当初の予定通り顔を洗おうとすると、そもそも自分の手が人の手ではな

いことに気がついた。

 俺は顔を洗いながら、自分がなぜドラゴンになったのか、思い返すことにした。


 龍崎誠は、社畜だった。

 大学を卒業し、勤めた会社が所謂ブラック企業だったのだ。

 勤め始めた当初はそうではなかったが、段々仕事量が増え始め、勤めてから五年ほど

経ったころには、会社で寝泊まりしていた。平均睡眠時間三時間くらいだろう。

 そんな生活をし始めてから二年ほど経ったころ。俺は過労死した。享年は二十九歳だ

った。

 死んだ後、誰かに会ったような……。えっと確か……金髪の女性に、

「あなたには、新たな人生を用意しましょう。どんな人生がお望みですか」と言われ、

それで俺は、

「眠いので寝ます」と言って、そしてそのまま寝た。

 そういえば、寝る直前に何か言われたような……。そうだ。確かその金髪の女性はこ

う言ったはずだ。

「じゃあ、わたしのおすすめのプラン。最強のドラゴンコースにしておきますね」

 つまり要約すると、俺こと龍崎誠は、異世界転生して金髪女性のおすすめのプランと

やらで、最強のドラゴンになった。つまりそういうことらしい。


 顔を洗い終え、元の場所に戻ってきた。

 俺が布団だと思っていた物は、どうやら瓦礫と土砂の塊だったようだ。そりゃあ、瓦

礫と土砂の中からドラゴンが出てきたら、あの作業着の男性は驚いて逃げ出すよな……。

 取り敢えず、現状を把握しよう。

 現在俺がいる所は、森。辺りに木以外の物はほとんど見えず、それ以外は俺が破壊し

た瓦礫の山くらいだ。

 次に自分のことだが、体は白色で、手と足に爪がある。つまりは、俺は白竜というこ

とだ。

 背中に翼がある。自分の体を覆えそうなほどの大きな翼だ。ということは……俺は飛

べるのか。

 背中に意識を集中し、翼を動かしてみる。すると翼は羽ばたき、体が浮き上がった。

 この先ドラゴンとして生きていくなら、この飛ぶ能力は必須になるだろう。後で練習

することにしよう。

 俺は地上に戻り、あることを試すことにした。所謂風物詩のようなものだ。やってお

かないと……。

「ステータスオープン」

……何も出ない。出てくれたら、自分のスキルがまるわかりになるのに……。

 次に、この周辺を調べてみよう。高く飛べば、周辺に何があるかわかるはずだ。飛ぶ

練習にもなるし。


 一時間後。

 だいぶ飛行に慣れてきた。これなら高度を上げても大丈夫だろう。

 高度を上げて、周辺を確認する。

 見えるのは、森。そして十キロほど離れた所に町が見えた。そして、その奥に大きな

屋敷が見える。この周辺は誰かの領地なのだろうか。

 それと、町の方向とは反対側に、大きな塔が見える。ダンジョン的なものなのだろう

か。

 それ以外には何も見えない。ひたすらに森だ。しかも高くて太い木も多く見れる。

 一通り辺りを観察し、そろそろ地上に降りようかと思った時、そこでわたしの腹が鳴

った。そういえば何も食べていない。口にしたものといえば、顔を洗うついでに、池の

水を飲んだくらいだ。

 そういえば、飛行訓練中に色んな生物を見た。

 見えた生物は、木や植物の様な見た目の魔物的なやつ。リスの様な小動物。それから

熊の様な猛獣。それから……。

 俺の真下に、豚の様な猪の様な、おそらく魔物的なやつが見える。

 この体で町に行けば、町はおそらくパニックになることだろう。しかし、生きていく

ためには、食料は必要だ。食料を買わず入手するとなると、狩りをしなければならない

だろう。

 というわけで、俺は狩りに挑戦してみることにした。

 豚猪に空から近づき、爪で引き裂く。鼻をクンクンさせていた豚猪は、思わぬ強襲に

血を流して、その場に倒れた。

 予想以上に簡単にできて、少し拍子抜けしてしまった。

 さて、この豚猪を食べるには、解体をする必要がある。いや、丸かじりすればいいの

か。

 ……そういえば、ドラゴンって火を吐けるんじゃ……。

 試してみた。何となく炎を口から出すイメージで、息を吐いてみた。

 ……豚猪は消し炭になった。


 あれから悪戦苦闘すること何時間経ったのだろう。

 豚猪を狩り、ブレスの火加減を調節したり、その辺の木を引っこ抜いて、簡単な肉焼

き機を作ったり。

 豚猪を食べられた時には、辺りはすっかり暗くなっていた。

 ……疲れた。今日はもう寝ることにしよう……。

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